次の作品は?原 尞 さん
20年ほど前,2歳違いの兄から 次のような話を聞きました。
「大学の軽音楽部のJazz Comboで一緒に演奏していたことがあって 卒業後,東京に出てプロのジャズ・ピアニストになった男が小説を書いて 直木賞をとった。学生時代,我々アマチュアとは違ってプロ並みの演奏をしていたけど 今度は小説とはね。 」
その人が 私立探偵・沢崎を主人公とするハードボイルド小説 「私が殺した少女」で1989年 第102回 直木賞を受賞した 原 尞氏でした。
あまり 本を読まない私ですが その時,文庫本になれば読んでみようか,と思いました。
そして いつの間にか1988年に出版された処女作 「そして夜は甦る」を含め 沢崎シリーズの「天使たちの探偵」(1990年),「さらば長き眠り」(1995年)まで読み,次はどうなっているんだろうと心配していたら 9年余りの沈黙の後,2004年に「愚か者死すべし」が出て,それを知りながら じっくりと文庫本を待って これを今年の初めに読みました。
「アメリカのハードボイルド小説の翻訳調」というのが初めて読んだときの印象でした。これはおそらく,それまでの日本人作家にない比喩を用いた心理描写,情景描写のせいだったのでしょう。
若い頃,暇つぶしに読んだ 誰が書いたかも覚えてない 「秘密諜報員モノ」で 日本に来た主人公が 「しゃぶしゃぶ」を食べるシーンがあって,ここで彼は思うのです。「今,『塩と胡椒』 を手に入れるためだったら二,三人殺ってもかまわない。』(ちょっと違うような気がしますが 内容は近いと思う。)に 「肉は『塩,胡椒』で食するに限る」と思っている私は感激したのでした。
原尞氏は そこまで過激ではなく上質な比喩を用いた描写をちりばめます。
「愚か者死すべし」の出だしでは 「・・・どこかに挟んであった二つ折りの薄茶色のメモ用紙が,翅を動かすのも面倒くさくなった厭世主義の蛾のように落ちてきた。」とくるのです。
そして「人間のすることはすべて間違っていると考えるほうがいい。すべて間違っているが,せめて恕(ゆる)される間違いを選ぼうとする努力はあっていい。」などと呟く中年私立探偵・沢崎に 叶わぬロマンを感じてしまうのです。
Wikipediaを見ると “主な作品”の最後に 「タイトル未定 (早川書房,2008)---第二期『沢崎シリーズ』」第二作」とありました。
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