この曲げ木の椅子は トーネットではありませんが-
パリやウィーンのカフェなどにありそうな有名な椅子に 「トーネット」(“THONET”)の「曲げ木」の椅子があります。「トーネット」は ミヒャエル・トーネット(“Michael Thonet”)が1819年に創業したドイツの家具会社です。日本では AIDEC が取り扱っています。現在は Steel製などのモダンな家具を作っていますが,社名が代名詞になっている「曲げ木の椅子」(“Bentwood Chair”)も まだ数種類作っているようです。代表的な「曲げ木の椅子」のタイプを紹介します。
左は “214”,1859年 のデザイン,座は籐張りです。AIDECのホームページによれば価格(税込み) \101,850 です。
右は “209”,1900年(1871年?)のデザイン,座は同じく籐張りです。価格(税込み) \153,300 です。
材質はいずれも ブナです。
ところで 我が家に 曲げ木の椅子があります。
左は 約27年前にワイフが 雑誌「家庭画報」の通信販売で購入したもので おそらく\18,000 程度でした。“214”に似ていますが,座面の形状(これは円)と背もたれと座面交差部の補強材の有無が異なっています。
ところが “214” の旧No.である “14” (左の写真)には この補強材があり,かつ座面が円のようなので 我が家の椅子は “214”の古い型を真似たものと言えるようです。
右は 22,3年前,ヤマハ家具を通じて購入しました。座のフレーム後部に AIDECのシールがあり,“209” とのデザイン上の違いは写真では確認できませんが,THONETではないようです。値段は \28,000でした。
右の “209”もどき の座フレームの裏側に シールが残っており,「チェコスロヴァキア」と書いています。
調べると- 第二次世界大戦前,THONETは自国外の旧東欧に工場を持っていましたが,大戦後,社会主義国家となった国に接収されたため,THONETはドイツ国内の工場でしか製作できなくなりました。一方,東欧に残されたかつてのTHONETの工場は それまでの技術とデザインを使って THONETのブランド名のない 曲げ木椅子の製作を続けたということらしいです。
我が家の曲げ木椅子の素性がわかりました。
ところで 籐編みの座面の耐久性には当然限りがあり, 使っているうちに 弛みがでてきて そのうち プチッと1本切れ,1本切れるとあとは・・・・。
で,修理に出すことになります。我が家の 椅子のオリジナルは6脚すべて 座面フレームに孔を開けて 直接,籐を編み込むという手の込んだものでした。(昔の籐の座面は全て その造りでした。)
ところが 現在,オリジナルに復活させる修理(=手編み)は不可能で(もし 無理に注文したら おそらく東南アジアあたりに送ることになり,修理代がオリジナルの値段の何倍かになりそう) 機械編みしたネットを填め込み 竹のようなフレームで留める方法が採用されます。そのために 残念ですが,座面のフレームに溝を加工することになります。写真には オリジナルで籐を通した孔の跡が少し残っていますね。
オリジナルでは 座面のかなりの厚さがあるフレームの下面まで籐を通して編んでいるので修理後,その孔が下面に残っています。(左の写真) 修理する工房によっては 下面まで編んでいる籐をそのまま残しています。(右の写真)修理代は よく覚えていませんが,7,8千円程度だったでしょうか。
因みに 現在では THONETのオリジナルも 座面フレームからの手編みではないようで 機械編みしたネットの填め込み式になっているようです。職人がいなくなったのと コストが掛かりすぎるのが理由でしょう。
座を 板張りや クッション(布張り)タイプにすれば耐久性があり,実用的ですが,籐編みの雰囲気は捨て難いものがあります。それで 結婚以来 ダイニング・チェアとして ずっと使ってきました。尚,27年前 同時に購入して なお使用中のテーブルは ポーランド製のようです。
もし 手編みの籐椅子が今あれば 希少です,大切にしましょう。
追記(11月15日) その後,青山のAIDECショールームで “209”の実物を見て,我が家の“209”との違いが判りました。現在の “209”は アーム・レストが直線であるのに対し,我が家の“209”は 微妙に 下側にカーブしています。AIDECの方の話では カーブしている方が オリジナル・デザインに近いとのことです。
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