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2012年10月13日 (土)

「引っ張り」を考えない構造。

TVで 観たくない番組ばかりの時,あるいは観たい番組がないとき,OFF にすればいいのですが,地上波から BSに切り替えることがあります。
そんなとき よくやっているのが ヨーロッパの旅番組で,毒がないので つい観てしまいます。

これらの番組でよく現れるのが ローマ帝国時代の遺跡で,水道橋など 石を材料とする巨大な建造物が そのまま残っているのが感動的です。

これらの石造りの建造物を見ていると 「引っ張り力」が発生しない構造であることに気が付きます。
そもそも 石と石を繋ぐ接着剤(火山灰と消石灰などを混ぜた古代セメント)は「引っ張り力」に対する強度がほとんどなく,せいぜい ズレを防ぐものだと考えられます。
と,なれば 全て 「圧縮力」が働くような構造にするしかありません。
積み重ねるか,下部に空間を作ろうとするなら アーチ構造になります。
巨大な教会の天井も アーチ構造で,全ての部材には 「圧縮力」が働いて 強度を保つ様式です。
現存する煉瓦造りのビルの窓の開口は,全て 縦長で上部はアーチです。

「梁」について 考えてみましょう。
矩形や I型の上下対称断面形状の梁が,上から下に向かう荷重(自重を含む)を受けるとき,断面の上面と下面には 同じ絶対値の力(応力)が生じ,上面は「圧縮」で 下面は「引っ張り」です。深さ中央に力(歪み)が生じない点があります。(下図-右)
故に,石を接合させた梁構造は成り立ちません。

このこと(梁断面の力の分布)を 数百年前までは認識しておらず,上記の場合,当時の技術者は下面に生じる力(応力)は ‘ゼロ’で, 上面の「圧縮力(応力)」が,下面で ‘ゼロ’になるよう断面内で線形に分布する,すなわち 「引っ張り力(応力)」は なし,と考えていたようです。(下図-左)

このことを 40数年前の学生時代に読んだ ティモシェンコ(‘Stephen P. Timoshenko’,1878~1972,ロシア生まれで米国に帰化した物理学者。「工業力学の父」と呼ばれる。)の「材料力学史」(‘History of Strength of Materials’)で読んだ記憶があります。

そうであるなら,接着剤で繋げた石の梁が あってよさそうですが,ありません。
経験的,あるいは直観的に 危ないことは分っていたのでしょう。

Stress_distribution金属(鉄 あるいは 鋼)で構造を作るようになるまで 構造設計者は 「引っ張り力」を重要とは考えていなかった,あるいは 考える必要がある構造を設計しなかった,ということのようです。
「引っ張り力」に耐えられる構造材料・接合材が存在しなかったので 已むを得ません。

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