‘3オンス’では凍死する?
先日 NHK BSプレミアムで放映されていた ヒッチコック監督の 「裏窓」(‘Rear Window’,1954,アカデミー賞監督賞受賞)での ジェームズ・スチュアートとグレース・ケリーの会話のシーンです。
結婚を迫るグレース・ケリーに,ジェームズ・スチュアートは 何とか結婚を回避して,現在の関係を維持しようと カメラマンの生活が如何に過酷であるかを説明して 説得しようとしています。
この会話の中で,下着の厚さ(薄さ)を 「オンス」で話しています。
この「オンス」は,どうでもいい話ですが,会話としては 面白くなっています。
但し,オンスで下着を語られても 日本人には ピンとこない会話です。
字幕は簡単な日本語で,皮肉がうまく訳されていません。
この会話を英文で示すと (おそらく)次のようになります。
Jeff : “Did you ever get shot at? Did you ever get run over? Did you ever get sandbagged at night because somebody got unfavorable publicity from your camera? Did you ever...those high-heels, they'll be great in the jungle and the nylons and those six ounce lingerie... ”
Lisa : “Three!”
Jeff : “All right. Three! They'll make a big hit in Finland just before you freeze to death.”
アメリカでは 布地,例えば ジーンズ生地の厚さを 単位面積(1平方ヤード)当たりの重さ(オンス)で示すのは 服飾業界人でなくとも一般的ですが,下着の厚さ(薄さ)を現在でも オンスで示すかどうかは知りません。
いずれにせよ,‘6 オンス’ よりセクシーな ‘3 オンス’のランジェリー(60年前は ‘綿’ではなく,おそらく,より薄さを追求した ‘ナイロン’や‘サテン’が全盛?)を着けていると グレース・ケリーは強調したかったようです。
本心は ‘6 オンス’や‘3 オンス’の問題ではなく,ジェームズ・スチュアートの執拗な‘脅し’の話を遮るために,思わず “Three” と言ったのでしょうが。
これに対して ジェームズ・スチュアートは 「君が凍死する直前に フィンランドで (3 オンス ランジェリーは) 大ヒットするだろうよ。」 と言います。
字幕は 「そりゃ 薄手で魅力的だが,凍死する」 と直接的で,フィンランドは表示されません。
ここで何故 「フィンランド」が 突然 出てくるのか,の疑問があります。
単に寒いから選ばれた?
そうではなく,薄い下着から連想する ‘sexually free nation’として,当時のアメリカ人は北欧を思い浮かべ,その中から 「フィンランド」 と言ったのではないか,そして 彼の地の寒さから凍死に繋がった,と愚考します。
こんな洒落た(?)会話をする日本人が もしいたとするなら,「スェーデン」と言うのかも知れません。
が,60年前には無理でしょう。
| 固定リンク | 0
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- 映画「アルゴ」の元になった事件を読む。(2023.09.22)
- TV ドラマ「Dr.HOUSE」で懐かしい俳優がー(2023.09.20)
- 映画「アトミック・ブロンド」で見かけた車。(2023.09.13)
- 「ボーン・スプレマシー」を字幕で観た。(2023.08.26)
コメント