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2015年6月23日 (火)

フレデリック・フォーサイスの“A Little Bit of Sunshine”

フレデリック・フォーサイス(‘Frederick Forsyth’,1938~ )の(スパイ)サスペンス小説読破計画で 17作品目として  「カリブの失楽園(1991)」 (‘A Little Bit of Sunshine in The Deceiver’,1991)を読みました。

今まで読んだのはー
   ・「キル・リスト(2014)」(‘The Kill List’,2013)
   ・「コブラ(2012)」(‘The Cobra’,2010)
   ・「アヴェンジャー(2004)」(上下)(‘Avenger’,2003)
   ・「アフガンの男(2010)」(上下)(‘The Afghan’,2006)
   ・「戦士たちの挽歌(2002)」(‘The Veteran’,2001)
   ・「オデッサ・ファイル(1974)」(‘The Odessa File’,1972)
   ・「悪魔の選択(1979)」(上下) (‘The Devil's Alternative’,1979)
   ・「イコン(1996)」(上下) (‘Icon’,1996)
   ・「第四の核(1984)」(上下) (‘The Fourth Protocol’,1984)
   ・「マンハッタンの怪人(2000)」 (‘The Phantom of Manhattan’,1999)
   ・「シェパード(1975)」 (‘The Shepherd’,1975)
   ・「ジャッカルの日(1971)」 (‘The Day of the Jackal’,1971)
   ・「神の拳(1994)」(上下) (‘The Fist of God’,1994)
   ・「騙し屋(1991)」(‘Pride and Extreme Prejudice in The Deceiver’,1991)
   ・「売国奴の持参金(1991)」 (‘The Price of The Bride’ in The Deceiver’,1991)
   ・「戦争の犠牲者(1991)」 (‘A Casualty of War’ in The Deceiver’,1991)
の16作品です。

Img_8863本作品「カリブの失楽園」は,日本では 「マクレディ・シリーズ」四部作の第四弾ですが,オリジナルは,4つの作品が,1冊に収められており,作品のタイトルは 日本発行での第一弾に付けられた‘The Deceiver’(騙し屋)です。
 
主人公のサミュエル(サム)・マクレディ,イギリスの秘密情報機関 SISSecret Intelligence Service)の一部門である  DDPS(‘Deception, Disinformation and Psychological Operations’, 「欺瞞,逆情報及び心理工作」)の部長が,冷戦終結によって開始されたSIS組織の人員整理計画のスケープゴートにされて引退勧告を受けます。
現役に留まるため,開催を要請した聴聞会で,弁護役として指名した 10歳若い副部長 デニス・ゴーントが 聴聞会の委員に語る マクレディの功績となる 4番目の事件です。

事件は1989年,北カリブ海の英国領(信託統治領)バークレー諸島の主島,総督府のある “サンシャイン”で発生しました。

たまたま米国で,「二十世紀最後の十年に自由世界の情報機関が果たすべき役割に関するセミナー」に1週間参加した後,1週間の休暇をマイアミで過ごそうとしていたマクレディが その事件の一つをホテルのプールサイドで読んでいた新聞で知り,偽名の英国外務省職員として島に渡ることを決めます。

事件はふたつ -
ひとつは “サンシャイン島”に休暇で釣りに来ていたマイアミの刑事 フリオ・ゴメスが休暇を消化する予定 2日前に切り上げ,定期便がなかったため便乗させてもらったキーウェストに向かう自家用機 パイパー・ナバホ・チーフがキーウェストの南50マイルで爆発して行方不明になった事件。
もうひとつは バークレー諸島の総督 マーストン・モバリー卿が,“サンシャイン島”の総督府裏庭で 夕方,ウィスキー・ソーダを飲んでいる時に射殺された事件。

ひとつめの事件に対しては フリオ・ゴメスの相棒だったエディ・ファヴァロ刑事が事件の解明のために休暇をとって島に渡り,ふたつのめの事件に対しては 本国 スコットランド・ヤードから警視正以下2人が飛び,加えて マクレディが密かに島に渡ります。

英国はカリブ海にある旧植民地をほとんど手放していますが,ケイマン諸島,ヴァージン諸島などの旧植民地は,圧倒的多数の住民が英国の保護下に留まることを望んだため 「信託統治領」として残っています。
1989年初め,英国は財政的負担を軽減するため,バークレー諸島を独立させることにして,首相を決める選挙を,その任務を遂行するために赴任した総督 マーストン卿が推進している最中の出来事でした。

初代首相の座を目指す候補者は二人ー
   バークレー諸島を開発,発展させて島民に富みをもたらすと公約している地元出身のビジネスマンの マーカス・ジョンソンと,
   プロレタリアート,持たざる者一般に,土地や資産を国有化して彼らの生活水準を上昇させる公約している ホレイショー・リヴィングストン。

そして この二人とは別に,選挙の実施,すなわち 独立の強制に反対して独立是非の住民投票を求める牧師 ウォルター・ドレーク師がいました。

島に渡ったマクレディは 候補者二人の正体を暴きます。

ジョンソンは コロンビアの麻薬組織に属し,バークレー諸島を麻薬組織の国にする企みであり,リヴィングストンは カストロの配下でバークレー諸島をキューバの一部とする計画でした。

牧師 ウォルター・ドレークは かつて米海兵隊の軍曹としてヴェトナムに従軍し,勲章を受けた強者で,逮捕活動に協力しました。

マーストン卿を殺害した犯人は かつてマクレディとは懇意の関係だった意外な人物でしたが,証拠不十分で逮捕に至らず,フリオ・ゴメスが乗った自家用機を爆破したのは,ゴメスがかつてマイアミで取り逃がした麻薬密売人で,ジョンソンの配下として島に滞在中,バーでゴメスに顔を見られたための犯行でした。

この事件の説明が終わったあと,公聴会の結論を待たず,マクレディは辞表を提出します。

物語は次のようにおわります。

「四週間後,サダム・フセインがクエートに侵攻した。そのニュースをサム・マクレディは,デヴォンの沖二マイルの海上で釣りをしているときに聞いた。彼はそのニュース速報が自分に対してもつ意味を測り,そろそろ餌の替えどきだというという結論に達した。」

スパイ小説というより,推理小説でした。

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