« 安芸灘とびしま海道 Cycling Map (第4版) | トップページ | 「インシデント」と「アクシデント」の違いとは? »

2016年2月26日 (金)

ニュースでも 「犬に餌をあげる」? 桃太郎はどうする?

昨年11月,福生市で発生した,顔の皮が剝げた変死事件に対し,死因は薬物中毒,皮が剥げているのは ペットの犬が食べたものと,2月19日に警視庁が断定しました。

これを伝えるTVニュース番組を観ていて,全ての局が 「2,3日,犬に餌をあげてなかった ・・・ 」 とアナウンスされるのが耳障りでした。犬に謙譲語?

アナウンサーは原稿を読んでいるだけでしょうが,少なくとも 2人(原稿を書いた人間と,それをチェックした人間)以上が 「犬に餌をあげる」の表現を当たり前と思っていることになります。
数年前,TVインタビューに応える父親が 「息子に ・・・ してやりたい。」 と正しい日本語で話している画面に 「・・・ してあげたい。」 と,あたかも誤った,あるいは粗野な日本語を訂正するかのような,謙譲語を子供に使わない,常識ある,その父親が見れば不愉快になるであろうテロップを流していたくらいですから,当然と言えば当然でしょうか。

因みに NHKでは このニュースを聞いてないので どう言ったのか分りません。

それにしても,いつの間にか「犬に餌をあげたり,子供にお八つをあげる」のが当たり前の世の中になったようです。

2001年の「教えて!goo」に次のような質問がありました。
今朝,車を運転中 『NHK第1』を聞いていたら,女性アナウンサーがスズムシにエサを『あげる』 と言ったところ,男性アナウンサーが,虫どもに 『あげる』とは言わない,『やる』です,と訂正しておりました。
  ・・・
  が,愛犬,愛猫に実際 『やる』 と言っている人はいるでしょか? 殆どの方は,人に対してと同じように 『あげる』 と言っていると思いますが,皆さんは如何?
  ・・・   
  犬,猫,スズムシに対しても 『あげる』 という言い方がぼちぼち市民権を得てもいいと思うのですが・・・・


15年も前に,既にこの傾向は始まっており,更に NHKのアナウンサーは正しい日本語を遣うことに気を配っていたことが分ります。

そのうち 桃太郎も 犬,猿,雉に,黍団子を 「あげる」ことになるのだろうかと思っていたらー
不思議なことを書いているブログ(2014)があってー

最近,童謡 『桃太郎』 の歌詞が昔と違ってしまったのだそうだ。 昔は ・・・ 2番は 『あげましょう あげましょう』 で始まったものだが,今の幼稚園などでは 『やりましょう やりましょう』 と歌われているらしい。
『あげる』は 『やる』 の謙譲語なので,家来になる犬,猿,雉に対して使うのはおかしいというのである。それでいつの間にか,『やりましょう やりましょう』 に統一されてしまった。この国では根本的な改革はちっとも進まないが,重箱の隅みたいなことは,ずいぶんマメに対応するのである。・・・

全く 理解できない内容なので,年齢を確認するため Profileを見ると,昭和27年生まれの62歳(当時),このブログの内容は冗談か,皮肉としか思えない年齢でした。

「あげましょう あげましょう」で 2番が始まった昔とは いつのことでしょうか?
戦前の昔から(生まれていませんが) ずっと 「やりましょう やりましょう」(やりませう やりませう,作詞者不詳)で,「あげましょう あげましょう」と聞いたことは一度もありません。
2,30年後の未来で書いたブログだとすると辻褄が合うのかも知れません。

ところがー
その後,この件を調べると,私と同じ団塊の世代に 「あげましょう あげましょう」で覚えていると言う人が少なからずいて,本気で 昔は「あげましょう あげましょう」 だったと思っているのです。
戦後の一時期(?),一部地域で(?) ‘民主主義教育’の名の下に(?),日教組の影響で(?) 「あげましょう あげましょう」 と教えたことがあったーとみるべきでしょうか?不思議です。

中にはー
・・・ これはすでに有名な話のようだが,桃太郎の歌,『お腰につけたきびだんご,ひとつわたしにくださいな』 と請われたところのフレーズは,『あーげましょう,あげましょう』 ではなく,『やーりましょう,やりましょう』 という文言が現在のスタンダードになりつつあるらしい。少なくとも僕の聴いた複数のソースでは,幼児教育の現場で言葉の正しさを教える意味も含め,『あげましょう』から 『やりましょう』 にシフトチェンジしているところもあるようだ。・・・ 」(2015/5,著者 年齢不明)と書いたブログがありました。

「あげましょう あげましょう」が存在するという条件で,これが(幼児教育の箇所)本当なら 好ましい傾向です。

【参考 1】 上述の 「あげましょう」から 「やりましょう」に変わっているという状況を,『安住紳一郎 正しい言葉遣いコンプライアンス問題を語る』 と題する,安住紳一郎さんの TBSラジオ 『日曜天国』(2014/5)でのトークを書き起こしたブログに示されているので抜粋して引用します。
*************************************

・・・・・・・
(安住紳一郎) 『もーもたろさん ももたろさん お腰につけた きびだんご ひとつ 私にくださいな♪』 のこの後,みなさん歌えます?
(中澤有美子) 『あーげましょう あげましょう これから鬼の♪』
(安住) 『征伐に ついて行くなら あげましょう♪』って歌いたいですよね。
(中澤) 違うの!?
(安住) これ,違うんですよ。この間,私,東京の幼稚園にお邪魔した時に驚きましたけども。園児のみなさんが桃太郎を元気に歌ってましたけれども,なにか私が覚えた時の桃太郎と違うなと思いましたら,ここにも最近の,言葉問題コンプライアンスが入り込んでおりましてですね。
(中澤) ええっ!?
(安住) これ,詳しい方はご存知だと思いますけれども,動物に餌をあげるの 『あげる』ってこれ,バツって最近は言われてるんですね。
(中澤) ああー,そうでしたね。
(安住) 犬猫を人間と同格にしてはいけないということで,『子どもにおやつをあげる』っていう場合はいいんですけども,『動物に餌をやる』っていうのが正しいんですね。『お花に水をあげましょう』って言いたいところなんですけども,『花って人間と同格なんですかっ!? 』 っていうことになりますんで,『花に水をやる』っていうことですね。あと,料理教室なんかで,『では,ニンジンをちっちゃく切ってあげましょうね』とかってね,かわいらしく言いますけども,それもダメなんですよね。『「切ってあげる」ってなんですか?ニンジン?ニンジン!?ニン・・・ニンジンに人格がありますかっ!?』みたいな。
    ・・・・・
(安住) で,話戻りますけども,じゃあ最近の幼稚園生は桃太郎をどうやって歌っているか?というと,ご想像の通り,『お腰につけた きびだんご ひとつ私にくださいな♪ やーりましょう やりましょう♪』。
(中澤) 本当!?(笑)。
(安住) 『これから鬼の征伐に ついて行くなら やりましょう♪』って言っているんですよ。
(中澤) へー!自信をもって大声で普通に歌ってるんだ。
(安住) そうですよ。たぶんね,きっとあの,しっかりした幼稚園なんでしょうね。たぶん,誰かが。先生なのかPTAなのかがね,ご提案なさって。もしくは大きな音楽教育の中で,歌詞を変えたんだと思いますけどね。
(中澤) ええー・・・
(安住) 時代はここまで来てるんですよ。すごいですよね。ええ。
(中澤) でもそれはさあ,一緒に戦う仲間として,擬人化したっていう,『あげましょう』で。尊敬の念を仲間に表すっていうことでよかったんじゃないですかねえ?
(安住) そうですね。たしかに。
(中澤) あくまでも,目下?ペット。っていうかまあ,動物?
(安住) まあ,中澤さんもそれだけしっかりした意見を持っているんだったら,もうちょっと大きなリングに上って戦ってみるのもいかがですか?
(中澤) (笑)
(安住)そんな、私に言われたって困りますよ。私はただ、見聞きしてきたことを報告しているだけですから。
・・・・・・・・
(引用完)
*************************************

立派な大人の会話です。
世の中は こうなっているようです。すごいですね。

)「『やる』は ‘ニュートラル’,『あげる』は ‘謙譲語’である」という(かつての)日本語の基本は,とっくに消滅していて,()「『あげる』は‘人間’に対して,『やる』は ‘人間ではないもの’に対して遣うものだ」という考え(1段階)に対して ()理不尽だ(2段階)と 不満を示している議論のようです。

知らないうちに,世の中は 私の考えを 2段階 飛び越しており,こうなっては および に抗論して,を主張する勇気も体力も前期高齢者には ありません。ましてや,を 「言語コンプライアンス」などと言われると,もはやお手上げです。
2段階も飛び越えられたら,安住さんの「時代はここまで来てるんですよ。すごいですよね。」 どころではなく 「すごいですよね。」です。

もう,元に戻るのは難しそうです。

安住さん,残念です。

【参考 2】 文化庁による 「国語に関する世論調査」の,平成7年(1995年)と平成12年(2000年)に,「植木に水をやる/あげる」 と 「うちの子におもちゃを買ってやる/あげる」の比較結果がありました。

H7_h12

平成12年までは,かつての(?)正しい日本語を遣う人の方が多かったことがわかります。

「うちに子におもちゃを買ってやる」が,辛うじて 「買ってあげる」よりも多かったのです。
(平成に入っても,自分の子供に 「やっ」ていたのに,戦前,犬,猿,雉に 「あげる」わけがないというのが理屈です。)
しかし,翌年には逆転している気配,濃厚です。

「うちの子におもちゃを買ってあげる」などと言う親が,「おかしな日本語を遣う親だ」と奇異な目で見られた昭和の時代は遠くなりました。

|

« 安芸灘とびしま海道 Cycling Map (第4版) | トップページ | 「インシデント」と「アクシデント」の違いとは? »

言葉」カテゴリの記事

コメント

安住さんの話も本当なのでしょうか?
【♪あーげましょう】の時代があなたと私の間の時代にあったのでしょうか?

投稿: yoko | 2016年2月28日 (日) 10時44分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 安芸灘とびしま海道 Cycling Map (第4版) | トップページ | 「インシデント」と「アクシデント」の違いとは? »