「インガー・スティーブンス」に関する謎?
最近,BSの民放で 『奴らを高く吊るせ!』(‘Hang 'Em High’,1968)を観ました。
記憶が確かなら,この映画を観るのは初めてでした。
クリント・イーストウッド(‘Clint Eastwood’,1930~ )が,TV西部劇 「ローハイド」出演(1959~1965)の後,イタリアで,所謂 マカロニ・ウェスタンに出演し(1964~1966),ヨーロッパで有名になって,アメリカに凱旋して 初のハリウッド西部劇映画出演の作品です。
この映画に 「インガー・スティーブンス」(‘Inger Stevens’,1934 ~ 1970)が出ていました。
2,3年前に NHK BSプレミアムで 「刑事マディガン」(‘Madigan’,1968)で,リチャード・ウィドマーク(‘Richard Widmark’,1914~2008)演じるマディガンの妻・ジュリア役で出演しているのを観て懐かしく思ったにも拘らず,50年ほど前に,何を観て彼女を知って覚えていたのか思い出せず,そのままにしていたので調べてみました。
彼女の紹介は 日本語の Wikipedia にはなく,英文Wikipedia にあったので,出演作品を確認しました。
出演映画は 「刑事マディガン」と 「奴らを高く吊るせ!」の他,観た記憶のある作品はありません。
可能性があるのは TVドラマですが,ほとんどはゲスト出演(例えば 「ボナンザ」,「ルート66」,「トワイライト・ゾーン」など)で 1作品に1回,多くても2回の出演しかありません。
唯一 レギュラー出演していたのが ‘The Farmer's Daughter ’(101 episodes, 1963~66) でした。これが日本で放映されたかどうか調べると,邦題として 「すてきなケティ」がみつかりました。
1963年12月3日からNET(現テレビ朝日)系列で放映されたようです。
観ていたとするなら中学3年から高校生にかけてですが,50年前のことで はっきりした記憶はありません。
しかし,このTVドラマしか考えられないので ほぼ間違いないでしょう。
もう一つの謎は,1970年に 35歳の若さで亡くなっていることです。
Wikipedia に死亡経緯についての記述がありました。*************************************
Death
On the morning of April 30, 1970, Stevens' sometime roommate and companion, Lola McNally, found her on the kitchen floor of her Hollywood Hills home. According to McNally, when she called Stevens' name, she opened her eyes, lifted her head, and tried to speak, but was unable to make any sound. McNally told police that she had spoken to Stevens the previous night and had seen no sign of trouble.
1970年4月30日朝,スティーブンスの,時折のルームメイトだったローラ・マックナリーがハリウッド・ヒルズの自宅台所の床に彼女が倒れているのを発見した。
マックナリーによると,スティーブンスの名前を呼ぶと 彼女は眼を開け,頭をもたげて喋ろうとしたが,言葉を発することはなかった。
マックナリーは警察に,前夜 彼女に話しかけたが 問題ある様子は見られなかったと話した。
Stevens died in the ambulance on the way to the hospital. On arrival, medics removed a small bandage from her chin that revealed a small amount of what appeared to be fresh blood oozing from a cut which appeared to have been a few hours old. Los Angeles County Coroner Dr. Thomas Noguchi attributed Stevens's death to “acute barbiturate poisoning”.
スティーブンスは病院に運ばれる途中,救急車の中で絶命した。病院に到着後,医者が彼女の顎にあった小さな包帯をとると,2,3時間前のものと思われる切り傷から血がにじみ出ていた。
ロサンゼルス郡検死官トーマス・野口博士は,スティーブンスの死因を 「急性バルビツール酸中毒」と 診断した。(‘barbiturate’:バルビツール酸系催眠薬)
(引用了)
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検死を担当したトーマス・野口博士(1927~ )は,1962年のマリリン・モンローの検死で有名になった方で,25歳で渡米,1967年から ロサンゼルス検死局局長でした。
彼は シャロン・テート,ウィリアム・ホールデン,ナタリー・ウッド,ジョン・ベルーシ,ジョン・F・ケネディ大統領,ロバート・ケネディ上院議員などの検死を担当しています。
インガー・スティーブンスは 「1960年代の半ば,黒人ミュージシャンのアイク・ジョーンズと結婚してから,多くの映画関係者に露骨に村八分にされて雇ってもらえず,つらい思いをした。」と書いてあるサイトがありましたが,真偽は不明です。
人種差別を撤廃する公民権法が制定されたのが 1964年ですが,その後も実質的には人種差別は残り,例えば 1967年に公開された 『夜の大捜査線』(In the Heat of the Night)では 差別を受けながら事件を解明する,シドニー・ポアチエ演じる有能な黒人刑事が描かれています。
【補足】 「マカロニ・ウェスタン」に関してー
1960年代の日本では 「スパゲッティ」より 「マカロニ」の方が,イタリアの食材として 一般的だったので イタリアで作られる 西部劇映画を 「マカロニ・ウェスタン」と呼びました。
ところが,アメリカでは 「スパゲッティ・ウェスタン」と呼ばれました。
英文Wikipediaには 次のように書かれています。
‘Spaghetti Western, also known as Italian Western or Macaroni Western (primarily in Japan), is a broad subgenre of Western films that emerged in the mid-1960s in the wake of Sergio Leone's film-making style and international box-office success. The term was used by American critics and other countries because most of these Westerns were produced and directed by Italians.’
「イタリアン・ウェスタン」や 「マカロニ・ウェスタン」(主に日本)としても知られている 「スパゲッティ・ウェスタン」 は,セルジオ・レオーネの映画制作スタイル および国際的な興行の成功の波の中で,1960年代中期に出現した西部劇映画の広いサブジャンル。この言葉は,これら西部劇のほとんどが イタリア人により制作,監督されたため,アメリカの批評家および他国で使われた。」
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コメント
はじめまして。
彼女は、テレビで何度も拝見していましたが、親の世代ながら、とても好きでした。自殺の真相は解りませんが、残念なことだと思っています。
ジョージ・ペパード主演の頃はやつれた感じでしたので、その頃には精神的な打撃を被っていたのだと思います。「非情の切り札」という作品で、綺麗なお母さん役でした。私はそれと、ヒッチコックスリラーで旦那さんを待つ若妻役と、ミステリーゾーンでの人格化したロボット娘が好きです。未見でしたら、どうぞ見てあげてくださいね。
それでは......。
投稿: alex | 2023年3月 5日 (日) 21時41分
彼女はユルブリンナー主演(監督アンソニー・クイン)の「大海賊」に、ユルブリンナーが恋する女性として出ています。ちょっと受け口の品の有る女性だったことを覚えています。「奴らを高く吊るせ」では彼女を見たときイメージが違うので「大海賊」の女優であることに気が付きませんでした。「奴ら…」の時は、カトリーヌ・ドヌーブによく似た女優だと思い、イメージが重なって損だなと思いました。「大海賊」も「奴ら…」もそれなりに質の高い作品でもう少し私たちの記憶にとどめてもいい女優ではないかとわたしは思っています。
投稿: | 2022年10月31日 (月) 13時49分