トム・クランシーの 「国際テロ」を読んだ。
映画化された 「レッド・オクトーバーを追え」(‘The Hunt for Red October’,出版:1984,映画公開:1990)や 「いま,そこにある危機」(‘Clear and Present Danger’, 出版:1989,1994 映画化,邦題は 「今そこにある危機」)の ジャック・ライアン シリーズで有名な トム・クランシー(‘Tom Clancy’,1947~2013)の 「国際テロ」(‘The Teeth of the Tiger’, 2005)を読みました。
2001年の 「アメリカ同時多発テロ」の後なので この邦題にしたのでしょうが,センスがよくありません。 潔く 「虎の歯」でいいではありませんか。
本作は ジャック・ライアン シリーズ ではありますが,本人自身の登場はなく,大統領の座を退いた後,CIA等政府機関の活動に限界を感じていた彼自身の考えで創設された,ヒットマンを擁する‘民間’情報機関 “ザ・キャンパス” がメインの舞台です。
活動資金を政府に頼らず,自らの表の顔である投資会社としての利益のみで活動し,ヒットする対象も “ザ・キャンパス”が決定し,政府への情報なしに実行します。
小説らしい都合のいい偶然で,この組織の初代の工作員(ヒット・マン)として ジャック・ライアンの双子の甥,海兵隊特殊部隊の大尉(すぐに少佐に昇進,20歳代で!)と,直前の少女誘拐事件捜査で一人,犯人のアジトに乗り込み,少女惨殺死体を見た後,犯人の心臓に3発の銃弾を撃ち込んだ FBI特別捜査官の二人が リクルートされ(出向の形で),更に 大学を出たばかりのジャック・ライアンの息子が,父親とは無関係に自らこの組織の存在を嗅ぎ付け売り込みにきて採用されます。
双子の兄弟の最初の任務は ‘9.11’後,最初に米国で発生した大規模テロ殺人事件(4州,4ケ所のショッピング・モールでの同時無差別発砲)の関係者(計画,指示,テロリスト・リクルーターなど)のヨーロッパでの暗殺で,途中から 分析官としてライアン・ジュニアが加わり,ローマでの最後のターゲットは 予期せぬ状況で已むを得ず,ジュニアが手を下します。父親と同じ道を辿りそうです。
全体に冗長さを感じました,文庫本 一冊に収まりそう。
話の中に日本でも馴染みのアパレル・ブランドが 3つ 出てきます。
“ ・・・ ドミニクは兄を指さし,笑いだした。「こいつはダサイ服装をするんでアルド。『流行にとらわれないワイン,アルド・チュラ』というコマーシャルがあるでしょう。あれです,こいつは 『流行にとらわれない男』。家族に大受けしたジョークです。」
「よおし,ブルックス・ブラザーズへ行って,もう少しましな服を着ろ」 ピート・アレグザンダーはブライアンに指示した。・・・ ”
“・・・ と言うなり,アレグザンダーは自分のパンツを買いにエディ・バウワーの店のほうへ歩いていってしまった。・・・ ”
“・・・ アメリカン・イーグル・アウトフィッターになら何かあるにちがいない,とブライアンは思った。くるぶしまでおおうハイトップスの革のスニーカーでもいい。そのほうが足首にはやさしい。・・・ ”
おそらく 米国人なら 各ブランドのステータスから その場の雰囲気が伺えるのでしょう。
最近,エディ・バウワーにはご無沙汰しています。
日本の店が一時より 少なくなった?
洒落た会話が多く出てきますが,暗殺ターゲットをどのように決定するのか,正しく決定されるかの議論の中でー
“ターゲットとなるのは,直接的または間接的にアメリカ国民を殺した者,または,それを意図する計画に直接かかわった者だ。教会で賛美歌を歌うときに大声をあげすぎた者とか,図書館の本を期限内に返さなかった者とかは,対象とはならない。” との明確な幹部の発言があります。
「共謀罪」審議での野党質問に,このくらいの洒落た答弁をしておればー,と つい思ってしまいました,野次は そうとうあるでしょうがー。
あの,答弁に知性の片鱗さえ感じさせなかった金田さんには到底無理な注文でした。
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