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2017年10月20日 (金)

映画 「ドリーム」を観た。

伝記映画(biographical drama film) 「ドリーム」(‘Hidden Figures’,2016)を観ました。
邦題が浅薄で情けないのですが,原題は なかなか趣があり,‘Figures’は 複数の意味を含ませ,「数字」は勿論 「人物」もあると思われます。
原題を直訳すれば 「隠れた数字」 あるいは 「隠れた人たち」 となるのでしょうか。
むしろ 「人たち」がメインなので ‘Hidden People’でよさそうですが,「数字」を掛けた ‘Figures’と考えます。

もともと この種類の映画を自ら進んで観ることはありませんが,家人が観たいというので付き合いました。

Hidden_figures_01

話は 1961年~1962年,偏見と差別を受けながら NASAのプロジェクトに貢献した 3人の黒人女性 ー マーキュリー計画で 軌道(flight trajectories) を計算した数学者 キャサリン・ジョンソン(Katherine Johnson)を中心に,ラングレー研究所で 計算部門(Computing Group) で働いていた ドロシー・ヴォーン(Dorothy Vaughan),メアリー・ジョンソン(Mary Jackson) を描いています。

彼女たちの秀才ぶりは相当なもので,キャサリンは 14歳で高校を卒業し,18歳で数学とフランス語の学士資格をとったそうです。(‘8 Facts You Should Know About The Real “Hidden Figures”byESSENCE.com’から)

彼女たちは後にー
   ドロシー・ヴォーンは IBM計算室の室長(NASAで,黒人女性として初めての管理者)になります。導入されたIBM計算機を持て余していた白人男性職員を尻目に,密かに独学でコンピューターを勉強し,IBM計算機導入でリストラされる恐れのあった Computing Group 30人の同僚の黒人女性たちにも教えて,IBM計算室のプログラミングの仕事を勝ち取った経緯によって・・・。
   メアリー・ジョンソンは 人種による学歴差別,昇進差別に打ち勝ち,黒人女性として初めての 航空宇宙エンジニアになります。

   キャサリン・ジョンソンは,後の多くのNASAのプロジェクトに貢献した功績により  ‘Presidential Medal of Freedom’(大統領自由勲章)を受け,NASAは 彼女の栄誉を讃え,ラングレー研究所内のビルに 「キャサリン・ジョンソン 計算ビル」と名前をつけました。

この映画で描かれる黒人(有色人種)への差別ー 南部の州では 一般公共施設の使用禁止,あるいは区別が 総称して 「ジム・クロウ法」で定められており,1964年の公民権法制定まで存続していました。その関係の描写が多くあります。

Calculationキャサリンが 優れた解析幾何学のスキルを認められて 唯一の黒人女性として異動した ‘Space Task Group’(宇宙特別研究本部,本部長(director)は ケヴィン・コスナー演じる アル・ハリソン)の建物には 黒人用のトイレ(colored people's bathroom)がなく,1/2 マイル(800m)離れた West Computing Group があるビルまで走って往復するしかなく,自転車さえ貸してもらえませんでした。

後に,「何故,いつも長い時間 席を空けているんだ?」とキャサリンに問い,彼女から差別的待遇を聞いたアル・ハリソン本部長は 自ら 建物内トイレのプレート・サインをバールで叩き落とします。
差別待遇について抗議したとき,キャサリンは 「オフィスのドレス・コードに,女性のアクセサリーとして許されるのはパールのみとなっているが,黒人の私がパールを買える給料をもらっていると思っているの?」とも言いました。
キャサリンが ‘Space Task Group’を去るとき,彼女の再婚の祝いを兼ねて,その働きぶりに感謝して アル・ハリソン本部長は 彼女に パールのネックレスをプレゼントします。

ドロシーは FORTRAN を勉強するための本を 公共図書館で見つけますが,その棚は ‘Whites Only Section’にあって借りることができず,密かに持ち帰ります。
帰りのバスの中で息子に「盗んだ」と言われ,「私が払った税金で買ったものだから 私のモノよ。」と返します。

マーキュリー計画の有人宇宙船ロケット打ち上げの最終段階で,発射ギリギリのタイミングで届いた,IBM計算機で求められた大気圏突入時の計算結果に疑いが生じた時,アル・ハリソン本部長は,既に,‘Space Task Group’から外されていたキャサリンに 緊急の検算を依頼します。既に宇宙服を着て宇宙船への乗り込み待機中だったグレン中佐は,以前,計画確認会議の席上,突然の質問に応えて 着水海域計算を 鮮やかにおこなったキャサリンを知っており,「彼女がチェックするなら,信じる。」と言います。

Hidden_figures_book_cover伝記の映画であっても 描かれていることが全て歴史的真実とは限らず 脚色(時間軸,登場人物など)があるようです。
(右は 2016年9月に出版された原作 Paperback の表紙です。)
この映画の英文Wikipediaの ‘Historical accuracy’(歴史的正確性)には次のように述べられています。

「よかれあしかれ,歴史があり,本があり,そして,映画がある。タイムラインは合成せざるを得ず,合成されたキャラクターがいるが,それらが,映画を観た多くの人にとっては文字通りの事実となる。

映画の中では,描かれた仕事をしていた人々だけがいるように示されるが,実際の世界では,我々は 彼らが複数のティームで働いていて,これらのティームは又,他のティームを持っていることを知っている。

セクション,部門,事業部があって,それらは全て 1人のディレクターに繋がっていた。仕事を成すためには極めて多くの人々が必要だった・・・極めて多くの人がいたことを 人々が理解することが重要である。

キャサリン・ジョンソンは この映画の役割ではヒーローだったが,グレン宇宙飛行士のミッションを成功させるには,他のテストやチェックのために必要な,極めて多くの人々もいた。しかし,300人を登場させて映画を作ることができないことは理解できる。そうすることが可能ではないことは容易にわかることである。」

この映画の舞台になったのは バージニア州ハンプトンのラングレー研究所(Langley Research Center)です。
ラングレー研究所は  1917年,NACANational Advisory Committee for Aeronautics,全米航空諮問委員会)によって設立され,1958年に設立された NASANational Aeronautics and Space Administration,アメリカ航空宇宙局)に発展的解消する形で移行しました。
.現在は施設の2/3を航空工学研究に,1/3を宇宙機開発に使用しているとのことですが,1963年に テキサス州ヒューストンに 「有人宇宙船センター」 (Manned Spacecraft Center),現ジョンソン宇宙センターが開設されるまでは 宇宙船の管制はラングレーで行われていたということのようです。

ラングレーは アメリカのスパイ小説で CIA本部の代名詞としてよく使われますが,NASA設立の地であることを,浅学にして初めて知りました。

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