メジャーリーグの 「体感速度」とは?
大谷選手が米国に渡り,MLBで活躍しているのをNHK BS1でよく観ます。
MLBでは 球速を 体感スピード(Perceived velocity)で表現することが多いようです。
日本語では球速を ‘speed’(速さ)と言いますが,米国では ‘velocity’(速度)と言います。
*この違いは ‘speed’(速さ)がスカラー量なのに対して ‘velocity’(速度)は ベクトル量であって,速度(velocity)には 「方向」の次元があることです。
球速の場合,それほど拘ることはなさそうです。
上の米国TV画面には ‘PITCHING METRICS’(投球データ)として ‘EXTENSION:6.5FT’,‘VELOCITY: 96.9MPH’,‘PERCEIVED VELOCITY: 97.2MPH’と示されています。
体感速度には ‘Extension’が関係し,その値によって ‘Velocity’より速くなったり,遅くなったりします。上の場合,体感速度が 0.3MPH 速くなっています。
‘perceived velocity’解説のためには 英語の野球用語の理解が必要なので, ‘MJB.com’ での説明を読みます。
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Release: Measures the time from pitcher's first movement out of the stretch to the release point of the pitch.
リリース:投手のストレッチからの最初の動きから投球のリリース・ポイントまでの計測時間
Extension: Measures the distance of the release point of the pitch from the front edge of the pitching rubber.
エクステンション:ピッチング・プレート前端から投球のリリース・ポイントまでの距離。
Velocity: Measures the peak velocity of a pitch at any point from its release to the front edge of home plate.
速度:リリースからホーム・プレート端までの間の最大速度
Perceived velocity: Velocity of the pitch at the release point normalized to the average release point for MLB pitchers. For example, a 90-mph pitch at a 54-inch release point will seem faster to the batter than a pitch of the same velocity thrown from a 56-inch release point.
体感速度:MLB投手の平均リリース・ポイントで標準化したリリース・ポイントでの投球速度。例えば,リリース・ポイント 54インチでの球速 90 mph は,56インチのリリース・ポイントから投げられた同じ速度の投球がバッターにとっては より速く感じる。
Spin rate: Measures the spin rate of the ball at the point of the release from the pitcher's hand.
スピン速度:投手の手からリリースされたポイントでのボールのスピン(回転)速度
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更に 定義が詳説されています。
Perceived Velocity (PV)
Definition
体感速度(Perceived Velocity)は,投球の速さと ピッチャーのリリースポイントを考慮に入れて,バッターに球がどれくらい速く見えるかをを数値化する試みである。
速度がワンステップ進むー 投手が ピッチャー・プレートから 6フィートではなく 7フィートでリリースした場合,95mphの速球がより速く 打者に到達するからである。
体感速度を得るためには,平均的なメジャーリーグの「エクステンション」を先ず,知ることが必要である。
平均エクステンションの背後からボールを離した投手は,実際の‘Velocity’よりも低い体感速度となる。
一方,投手が平均エクステンションの前(ホームベース寄り)からボールを離した場合,彼は実際のベロシティよりも高い体感速度となる。
体感速度は,打者に対して うまい投球(sneakily good)をするように見える投手を評価する良い方法となり得る。
93mphで速球(fastball)を投げる投手は 一般に 打者を完全に負かすことはできないが,その速球が 96mphの体感速度を持てば,打者はそれに振り遅れることになる。
もちろん,投球には ‘Velocity’や ‘Perceived Velocity’の他にも要素が存在する。そして, - 緩い球では特に - 体感速度が常に投手の成功の指標ではない。
予想されるように,指極(両手を広げた時の幅)が長い,背が高い投手は,体感速度が大きい傾向がある。なぜなら,リリース・ポイントがホームプレートに より近くなる傾向があるから。
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下表は 2015年の直球(four-seam)での Velocity Margin(‘Perceived Velocity’と ‘Velocity’の差)が大きい 投球 Top 10 と Bottom 10 です。
‘Extension’の大小による ‘Velo Margin’の傾向(6 feet を境に ‘Perceived Velocity’がプラス あるいは マイナスになっているようす) は分りますが,計算方法は不明です。
米国のサイトを探しましたが,何故か ‘Perceived Velocity’の計算式を見つけることはできませんでした。
おそらく,‘Velosity’と ‘Extension’の関数で求められるはずですが・・・ 。
上表から求めようとして 少し考えましたが,大学受験生の勉強ではないので諦めました。
【追記】
大谷選手の ‘extension’はいくらか,調べていると ‘MLB.com’に 今期の速球ランキングがあって その中に大谷選手のデータがありました。
下表に示します。冒頭に 米国では ‘speed’ではなく ‘velocity’だと書きましたが,この表では ‘speed’と示しています。
4月24日の 2投が載っていました。‘speed’は どちらも 101.0mph で,‘extension’の 6.7ft と 7.0ft に応じて ‘perceived speed’は 102.0mph と 102.6mphに上がっています。
最速は Chapman でした。
5月8日の一投で,‘speed’:103.3mph,‘extension’:6.8ft,‘perceived speed’:104.1mph でした。
表中での最大 ‘extension’は Chapman の 7.3ft でした。
因みに 1mile=1.60934kmなので 103.3mph=166.2km/h,104.1mph=167.5km/h です。
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