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2018年10月26日 (金)

周防大島に断水を引き起こした貨物船は?

10月22日午前0時30分,山口県周防大島と大畠町をつなぐ 「大島大橋」の橋桁に ドイツ船主・マルタ船籍のばら積み貨物船がぶつかり,橋桁を損傷させると同時に島への給水管と通信ケーブルを破断する事故を発生させました。

この事故を 海運情報専門の海外電子ニュースのいくつかが報じています。

例えばー

THE MARINE EXECUTIVE’は10月22日付けで “Handysize Takes Out Town's Water Supply in Bridge Strike” 「ハンディサイズ(バルカー)が橋に衝突し,町への給水を奪った」の見出し記事の内容は次の通りです。

(翻訳転載)
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クレーン付きばら積み船(geared bulker) 「エルナ・オルデンドルフ」(Erna Oldendorff) が,月曜日,そのマストが橋の下側にあるパイプを引っかけ,日本の周防大島町への給水を遮断した。

「オルデンドルフ」は,月曜日早く,江田島港へ向かう途中,本州と周防大島を結ぶ橋の下を通過していた。 船は橋の下面にぶつかり,約800フィート(240m)長さにわたり,島への給水管とインターネット・アクセス用の光ファイバーケーブルを破断した。

これによる被害は,周防大島の約1万5千人住民に影響を及ぼしていると伝えられており,地方自治体はタンクローリーを使って住民に緊急飲料水を提供している。 橋は車両交通を規制している。

日本の海上保安庁は,事件の頃に橋の下を通過した 「エルナ・オルデンドルフ」の主マストの損傷に衝突証拠があると述べている。

船は調査のために錨泊に命じられた。 運航会社 「オルデンドルフ・キャリア」は,月曜日の声明で衝突を認めており,事故の確認直後に当局に通知したと述べた。

「事故原因の完全な詳細解明にかかわらず,『オルデンドルフ・キャリア』は,不運な出来事の結果として,関係者にもたらされた混乱を謝罪したい。」 と同社は語った。
「現在,日本の海上保安庁の調査中であり,オルドデン・ドルフ キャリアは完全に協力をしている。」

月曜日の夜,「エルナ・オルデンドルフ」は,その‘AISA :Alarm Indication Signal’信号に従って呉近くの湾に投錨していた。

(転載了)
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日本の報道には,例えばー

「船には,船長(インドネシア国籍)を含む船員21人が乗船し,6300㌧のアルミナ(酸化アルミニウム)を積み,韓国オンサン港から広島県呉港沖を経由(検疫)し,江田島港を目指す予定だった。高さ約40㍍のレーダーマスト,さらに35~36㍍のクレーン4基を搭載した船体で,大島大橋(海面からの高さ31.9㍍)の下を通過しようとして衝突。その後も船を止めることも通報もすることなく,クレーンが破損し,マストが折れた状態で呉港沖まで向かっていた。事故時は船長が操船指揮していた。」と書いています。

日本の報道と,海外の報道の決定的違いはー
日本での全報道は 「『船を停めることも 通報することもなく・・・』 ,海上保安庁が調べて衝突した船を特定した」 とあり,
海外の報道は全て ‘Immediately after the incident Oldendorff Carriers informed all relevant authorities and parties.’とあって事故後 ただちに関係部門に通報したとあるところで,ひょっとすると  海外報道に対して 船主が情報操作した可能性があります。

又,海外の報道には 「橋にぶつかったが,人的被害も海洋汚染もなかった。」 とだけ書き,もっとも肝心な 橋の被害,給水管を破損させたことに触れてないものもあります。

Map船長 および 運航会社の責任は重大です。
事故の経緯からすると 初めての瀬戸内海で,パイロットを雇わず,海図(当然,橋の情報がある)で 自船の ‘Air Draft’(海面上の高さ)と橋の高さの関係の確認せず通過しようとした重大過失です。

上右図に示すように 関門海峡から瀬戸内海に入り,呉湾に向かうルートは複雑なのです。
(この地図は 倉橋島が本土と繋がって 「音戸の瀬戸」がないなど,やや雑)

最短ルートをとった結果の事故のようです。

Erna_oldendorff_001Erna_oldendorff_004

Erna Oldendorff’の大きさはー
  ・Gross Tonnage:  25,431 t            
  ・Deadweight: 38,330 t            
  ・Length Overall x Breadth Extreme: 179.99m × 30.06m
です。
尚,報道で 総重量 2万5431㌧ と示しているのが多いようですが,この値は容積を示す グロストンであり,貨物船では載貨重量(Deadweight)トン :積載可能な貨物重量: で示した方が船の大きさとしては分り易いでしょう。
尚,この船の場合,載貨重量:4万トン弱に対して 貨物が 6.300トンで,トリム(前後部の適正喫水・傾斜)調整のためバラスト水を積んでいたとしても,事故後の写真を見る限り,ほぼバラスト喫水で,マストのかなりの部分が橋に衝突したと思います。
但し,写真で マストが折れた位置は 構造接続部の低強度のヶ所で,当たった場所を示すものではありません。
因みに 本船が所属する “Oldendorff Carriers GmbH&Co.KG”は ドイツ最大の輸送会社で,合計 約4千万トンの輸送能力を持つ,約500隻の貨物船を運航しており,鉄鋼貨物の輸送では世界トップです。(独文 Wikipedia による。)

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