「伊丹十三選集 第二巻 好きと嫌い」を読んだ。
昨年(2018年)12月22日,呉市立図書館に 『伊丹十三選集』(岩波書店)の第一巻から 第三巻の購入依頼書を提出し,12月20日発行の 『伊丹十三選集 第一巻 日本人よ!』を 2月1日に図書館から連絡があって借りて読み,今回,1月18日発行の『伊丹十三選集 第二巻 好きと嫌い』 が入ったとの連絡が 3月1日にあって借りてきました。
編者は 第一巻と同じく,松家仁之(小説家,編集者),中村好文(建築家),池内万平(伊丹十三の次男。伊丹プロダクション取締役 等)の三人です。
A. 『ヨーロッパ退屈日記』(新潮文庫,2005年)
B. 『女たちよ!』(新潮文庫,2005年)
C. 『日本世間噺体系』(新潮文庫,2005年)
D. 『再び女たちよ!』(新潮文庫,2005年)
E. 『小説より奇なり』(文春文庫,1986年)
F. 『ぼくの伯父さん』(つるとはな,2017年)
目次はー
・好きと嫌い pp.1-32,出典:A,B, C
・ダンディズム pp. 33-64,出典:A,B,D
・美味礼賛 pp.65-114,出典:A,B,
・呑む pp.115-132,出典:B,D
・運転 pp.133-172,出典:A,B,D,E
・小咄 pp.173-252,出典:A,B,C,D,F
・脱毛 pp.253-284,出典:D,E
・猫 pp.285-330,出典:D,E
私は 全出典を持っていて,それも 『ぼくの伯父さん』(2017年刊)を除くと 文庫本になる前の ほぼ第一刷を,五十数年前の高校生から40年前の就職後にかけて読んでおり,懐かしさを感じながら読みました。
彼の本で 多くのことを知りました。
今では 日本人の誰もが知っているであろう 「アル・デンテ」を広めたのは彼だったのでは ・・・ 。
彼の 『女たちよ!』(第一刷:昭和43年,1968年,大学1年でした)より前に 「アル・デンテ」が活字になったことがあるでしょうか。
又,『ヨーロッパ退屈日記』には スパゲッティの正しい食べ方を書いており,①皿の隅にフォークに巻きつけるスペース(煙草の箱大)を作る。②2,3本(これは 50cmクラスの場合)のスパゲッティをフォークで引っかけ ③フォークを皿から離さないように(時計回りに)回転させて巻きつけるー を50年間,守っています。「スプーンを使う」とは書いていません。しかし,イタリア人にも使う人間がいるので 違反ではないだろうと書いています。
そもそも,この時代(1960年代半ば),日本においてパスタは,スパゲッティより,マカロニの方がポピュラーで,クリント・イーストウッドに代表されるイタリア製西部劇は 米国では スパゲッティ・ウェスタンと呼ばれたのに対し,日本では マカロニ・ウェスタンと呼ばれたのです。
嫌いなものを挙げている中に,食事中のコーヒーやウィスキーがあります。
このことだけで,アメリカ人がヨーロッパ人に軽蔑されている,と書いています。
アメリカのホテルで(日本でも) 食事中に 「コーヒーはいかがでしょうか?」と言うウェイターに 私は常に 「食後にー」と言っていたのは この影響もあります。
「好きと嫌い」と 「ダンディズム」の章は 50年たっても 完璧に覚えており,すなわち,影響を受けているようです。
「美味礼賛」の章,「食前の果物」に 『アヴォカード』 として 「アボカド」のことを書いています。
これが書かれた時代,まだ 「アボカド」という片仮名名詞は日本に存在してなかったのです。
すなわち 「『カジノ・ロワイヤル』 という小説のなかで,ジェイムズ・ボンド・ダブル・オウ・セヴンが美女と食事をする。その時,オードヴルに彼は 『鰐梨』を食べる,とある。」と書き,「この『鰐梨』 がフランス料理の典型的なオードヴルの一つ,英語では これを 『アヴォカード』と言って ・・・ 」 と詳述されているのです。
(*「鰐梨」は アボカドの英語の別名 ‘alligator pear’を直訳した和名。)
この出典は 『女たちよ!』 であり,1968年に,これを読んだ 大学1年の私は 見たこともない 『アヴォカード』 を その記述と挿絵から想像するしかありませんでした。
『アヴォカード』を 初めて見たのが,あるいは 食べたのがいつだったの記憶は全くありませんが,おそらく 30歳(1978年)を過ぎてからだと思います。
調べると,2005年における日本の「アボカド」輸入量は 28,150ton,それに対して,その25年前 1980年は 479ton しかなかったのです。1970年代に 「アボカド」を手にする,あるいは口にする可能性はほぼゼロだったと思います。
同じく 「美味礼賛」の章,「三ツ星のフランス料理」に 『ミシュラン』の話があります。
出典は『ヨーロッパ退屈日記』(第一刷:1965年)で,これには 「ダブル・オウ・セヴン,『ゴールド・フィンガー』の邦訳には,ミシュランが 『ミケリン』 となっていて ちょっとわびしい。」と書かれています。
55年前,日本では 「ミシュラン(の星)」が何かも分っていなかった時代,伊丹十三は フランスにあった 三つ星レストラン 9店のうち,敷居の高いパリの4店を避け,地方の5店のうちの3店を目指したのでした。
ー と,出典の本を持ち出して確認しながら,四分の一までしか読んでないところで, 様々な記憶が甦ります。
限がないので この辺で ・・・ 。
次の 第三巻を待ちます。
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