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2019年7月28日 (日)

映画『アルキメデスの大戦』を観た ・・・ 大人が気になるところ。

7月26日公開の 『アルキメデスの大戦』を 初日に観ました。

「数学で戦争を止めようとした男」のキャッチコピーと TVCMとから,帝国大学で100年に1人と言われる数学の天才が,どのようにして工学を身に付け,造船の専門家に対抗することが可能になるのか,興味がありました。

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原作は 「マンガ」で,太平洋戦争前の帝国海軍上層部での国防,兵器に対する意見の食い違いによる出来事を,史実と矛盾しないようなフィクションで描いています。従って 「戦艦大和」が建造されなかったパラレル・ワールドの話ではありません。とは言っても,廃艦する戦艦・金剛の代替艦として建造するのが巨大戦艦か空母かをテーマとしていますが,金剛は1944年 沈没するまで太平洋戦争に参加しました。
(下記には 作品全貌を予想できる内容があるので 要注意。)

映画の冒頭は 1945年,最後の出撃の「戦艦大和」への米航空部隊の攻撃と「大和」の沈没を VFXを駆使した映像で描いています。
この部分で興味深いのは,撃墜された米戦闘機からパラシュートで脱出して着水したパイロットを,戦闘爆撃機が攻撃中に 飛行艇がどこからか飛んできて着水し,パイロットを救助して 悠々と飛び去っていきます。この場面を大和の乗員が 呆れた顔をして眺めていました。このシーンの挿入意図は?史実?

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転覆後,ボイラーが爆発し,船体が折れるシーンが丁寧に作られていました。

話の主な舞台は 昭和8年(1933年)の海軍省です。

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主だった登場人物はー

櫂 海軍主計少佐(架空) :東京帝大数学科で100年に1人の天才と言われ,帝大を中退して(させられて)米国大学に留学する直前に 山本五十六 海軍少将に,巨大戦艦の建造費見積りの嘘を暴くために海軍にリクルートされる。架空の人物にしても 22歳にして少佐は少しやりすぎ。

山本五十六 海軍少将,海軍第一航空戦隊司令官(実在):巨艦・巨砲の戦艦の時代は終わり,これからの戦争は航空機の時代となり,空母が必要。単なる飾りの巨大戦艦は,その誇大宣伝により国民を戦争に駆り立てるの論を持つ。戦争は避けたいが やるからには勝たねば・・・。

永野修身 海軍中将(実在):山本五十六の上官にして山本と同一見解を持つ。

嶋田繁太郎 海軍少将(モデルは 藤本喜久雄少将?) : 山本と同期。巨大戦艦建造を推す。そのために建造費見積りを過少改竄。老獪さを示す演出のためか 橋爪功さんの,海軍省の会議での演技は 知的雰囲気皆無の酔っ払いのおっさんにしか見えなかったのが残念でした。海軍将官に こんな人がいた?

平山忠道 造船中将(モデルは平賀譲 海軍技術中将,東京帝大総長,工学博士):巨大戦艦設計。巨大戦艦建造を推し,建造費見積り改竄する理由に 二重の深慮遠謀があるー開戦 そして 敗戦不可避を予想。しかし,日本国の滅亡だけは避けたい・・・ ,そのための日本国の身代わりとなる巨大戦艦建造を企図。

大角岑生 海軍大臣(実在):優柔不断。

田中正二郎 海軍中尉(架空):山本に命じられ,櫂 少佐の付き人となる。

ストーリーは リクルートされて 2週間後の次期艦船決定会議で 空母の建造費見積りに比して 安すぎる巨大戦艦建造費見積りの虚偽を暴くため 櫂 海軍少佐が奮闘する話。

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巨大戦艦の設計・見積り資料を一切入手できないため,櫂が実施したこと。
  「巨大戦艦を自ら設計する(基本設計) → 建造費を見積もる。」

そのためにー
 ・造船学修得(一晩で?)
 ・戦艦 長門に乗船し,メジャーで計測,参考とする → 設計実施。
 ・見積り資料ー価格表,建造工数入手(大阪の,かつて軍艦を建造したことがある民間造船所から)

大阪での作業途中で 会議開催が早まったことを知り,積算見積りは間に合わないと判断して,最後に選んだ手段は 鋼材重量と建造費の相関曲線を大阪の造船所の建造実績資料から作成し,自らが作成した巨大戦艦の図面から鋼材重量を求めて建造費を推定すること(単回帰分析)。

会議の席で 実績艦(水雷艇,巡洋艦)の鋼材重量から相関曲線で建造費を求めて 実績値と合致することを示し,巨大戦艦の建造費が 推進派が示す値の2倍かかると断言する。

しかし,建造費を半分にしていた理由が,欧米列強に 建造費から推定される巨大戦艦の建造を秘する目的があることを知り ・・・ 。

その後,巨大戦艦の,最重要設計条件のひとつ,対波浪縦強度(剪(せん)断強度)が不足していることを 平山造船中将が知り,自らの案を取り下げる。

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原作がマンガとは言え,大人の目と大人の常識で見ると ー

・いかに数学の天才とは言え,高々一昼夜で,戦艦の基本設計を可能とする造船学を理解し,身に付けることは?
  しかも 造船中将をやり込めるレベルに?
・戦艦の基本設計(あとから鋼材の重量が求められたので,「鋼材配置図」まで)には 天才ではないにしろ,おそらく それなりの技術者数十名が数ヶ月かかりそう。
 それを数日前までの素人が一人で,数日で?
・鋼材重量のみから,艦種に拘らず 建造費を一桁まで推計する,実績艦からの相関関係を求めるのは?
 艦種,馬力(プロペラ軸数),兵装,建造方法(船台 or 船渠),建造造船所(クレーン能力など)など多くの要素を考慮した 重回帰分析しても ±5~10% の精度がいいところではー。

ーと 気になるところ満載でした。数学は工学に対して必要ですが,この映画が描くほど万能ではありません。買い被りというものです。
数学の天才が 工学の天才とは限らないでしょう。
しかし,「戦艦大和」建造の,ある技術者が考えていた目的の提示は 面白いと思いました。

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「戦艦 大和」を描いた作品の多くでは 呉市で何らかの撮影が行われています。例えば 旧海軍墓地(現長迫公園)など。
本作では 「アレイからすこじま公園」付近の海上自衛隊の桟橋で,櫂 少佐が「大和」から下船するラストシーンが撮影されていました。

上は,桟橋側から 赤レンガ倉庫をバックに撮られています。軍人のエキストラは おそらく海上自衛隊員でしょう。

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