« 見出しに見る「勘違い」(その505) | トップページ | 見出しに見る「勘違い」(その506) »

2019年8月24日 (土)

「井上陽水英訳詞集」(ロバート・キャンベル著・文)を読んだ。

図書館に借り出し予約していた 「井上陽水英訳詞集」が返却されたとの連絡が8月7日,図書館からあって借りてきました。

Dsc_2251Dsc_2244a

Dsc_22455月14日 講談社刊  ロバート・キャンベル著 「井上陽水英訳詞集」 301p.,¥2,916 です。
6月29日 朝日新聞の書評で取り上げられているのを見て,7月1日に 図書館に購入要求票を提出したところ,まだ購入はしてないが,既に購入要求票を出していた方がいたので,未だ購入してない本を借り出し予約で待っていました。

Native English Speaker にして 来日 30余年の日本文学者(近世・近代)のロバート・キャンベルさんによる井上陽水さんの歌詞の英訳とくれば,その質を信頼できる英訳として読みたくなるのは当然です。

本の構成は次のとおりです。

 はじめに                                 pp.1-12
第1章 時を彷徨う中で                pp.24-53
第2章 余白に気をつけろ             pp.55-177
第3章 井上陽水英訳詞集(50曲)  pp.179-301
   Endless Desire限りない欲望
   If We Could Live Life Again人生が二度あれば
   Rupture(断絶
   If by Chance Tomorrow It Is Clearもしも明日が晴れなら
   Go on Home家へお帰り
   No Umbrella傘がない
   Map of the World from a Frigid Roomつめたい部屋の世界地図
   To the East,then to the West東へ西へ
   It's So Damn Hotかんかん照り
   Summer Festival夏まつり
   Into Our Dream夢の中へ
   Images of the Heart心もよう
   The Two Who Can't Go Home帰れない二人
   A World of Ice氷の世界
   An Evening Cloudburst(夕立
   Clockwork Beetleゼンマイじかけのカブト虫
   A Two-toned Top二色の独楽
   A Show with No Invitations招待状のないショー
   Blue Sky,All by Myself青空,ひとりきり
   A Turn in the Road曲り角
   Words toward the End結詞
   Warings from the Blue Darkness青い闇の警告
   A Miss-something Contest(ミス コンテスト
   My Soft-word Darling甘い言葉ダーリング
   Somehow It's Shanghaiなぜか上海
   Come out to Sea海に来なさい
   Pegasus the Victor(勝者としてのペガサス
   Jealousy(ジェラシー
   A Perican Puzzledとまどうペリカン
   Canary(カナリア
   Just One Wishお願いはひとつ
   Can't Grasp Itワカンナイ
   45 Minutes to Her Back(背中まで45分)
   Ballerina(バレリーナ
   A Just-so Serenadeいっそ セレナーデ
   I Can't Dance So Wellダンスはうまく踊れない
   No Trinkets These Tears飾りじゃないのよ 涙は
   Wine-red Heartワインレッドの心
   So Miscastミスキャスト
   Smoldering恋こがれて
   The Last News最後のニュース
   Boyhood Days(少年時代
   A Tight FitJust Fit
   The Sighs of Do-re-miドレミのため息
   Lying Diamods嘘つきダイヤモンド
   Purity of Asiaアジアの純真
   The Ship without Cargo積み荷のない船
   On the Top Floorビルの最上階
   Frame aound the Painting of a Lengthy Slope長い坂の絵のフレーム
   The Dreams Goes on覚めない夢

詞は メロディとリズムを考慮した,歌える英訳ではなく,より正確に歌詞の意味を尊重した,読むための英訳(読詞)を心掛けたそうです。

キャンベルさんは NHKSONGSの井上陽水さんの回でコメントを述べたことがあって 陽水さんとその詞に興味を持っていることは知っていましたが,本書で 接した歴史を知りました。

キャンベルさんは 1979年 21歳で初来日し,しばらく東京で過ごし,このとき 井上陽水さんの歌を聞いたとのことです。
そのときの感想:「井上陽水は上手い,こんな歌手がいるのだ。」

次に来日したのが 1985年 27歳,九州大学に籍を置き,研究生,その後 専任講師になり,1995年に上京するまでの約10年間を 福岡市で過ごしています。
私は 1968年から1972年までの4年間,福岡市で大学生活を送ったので,キャンベルさんの知っている福岡は私の知っている福岡の約20年後ということになります。
キャンベルさんは 「リバーサイドホテル」(1982年)を福岡市,それも 那珂川沿い西中洲のラブホテル(の雰囲気)と考えていたようですが,20年前に住んだ私の ぼんやりしたイメージもほぼ同じでした。

次の文がありました。
那珂川のいわば左岸にはふたつの色合いがありました。性風俗に従事する人たちが辻の物陰に屯しているのが上流に向かって路地の左側,川に面した路地の右側には新しいホテルと着飾った金持ちそうな男女がいる。
  賑やかな街から一筋奥まったところのホテルの鉄の扉を開けてチェックインし,私は博多のネオンに揺蕩う中州をなんとはなしに眺めていました。
  有線ををつけると陽水さんの 『リバーサイドホテル』が流れました。1982年にリリースされた『LION&PELICAN』の中の一曲です。飯塚なのか田川なのか,まだ田舎だった筑豊からやってきたであろう若い男女を想像しました。
この若い男女は 五木寛之著「青春の門」の信介と織江を連想させますが,織江が女給をしていたのは若松のキャバレーで,二人が結ばれたのも若松でした。

「春吉のブロック」に関する描写は 20年経っても変わってなかったことが確認できますが,「路地の右側には新しいホテルと着飾った金持ちそうな男女がいる。」は よく分りません。

又,「リバーサイドホテル」に関する記述の後に 「・・・ 橋を渡ったところの寿司屋の先にある狭い路地の入口付近,住吉橋のずっと手前にあったのがホテルIです。意匠を凝らした大理石をふんだんに使った,イタリア人の設計によるデザイナーズホテルでしたが,・・・ 」と書いています。
このホテルI は,私が暮していた時代にはなかった 「ホテル イル パラッツォ」(IL PALAZZO)で,予約サイト「一休」から予約できるホテルで,所謂,ラブホテルではありませんが,那珂川左岸に面する,ラブホテルがあって不思議ではない場所にあります。
川に浮かぶプールはありませんが,室内には円形のジャグジー・バスがあって 「リバーサイドホテル」の雰囲気があります。しかし,このホテルができたのは曲がリリースされた後の 1989年です。

一曲のみ ここに(遠慮がちに,密かに)転載します。

************************************

東へ西へ
To the East, then to the West

昼寝をすれば夜中に眠れないにはどういう訳だ
Why's is to hard to sleep nights on days that you've napped?

満月 空に満月 明日はいとしいあの娘に逢える
A full moon - there's a full moon in the sky,
and tomorrow I get to see my sweetheart.

目覚まし時計は母親みたいで心がかよわず
The alarm clock is like mom, we don't commune so well.

たよりの自分は睡眠不足で だから
Yours truly,the one who should be strong, is sleep deprived,
so everyone hang in there,hang in everybody.

ガンバレ みんなガンバレ 月は流れて東へ西へ
The moon flows out to the east,then to the west.


電車は今日もスシヅメのびる線路が拍車をかける
Today's train is packed again like sushi,spurred on by tracks that stretch far out.

満員 いつも満員 床にたおれた老婆が笑う
“Jammed full,always jammed full.” An old lady who fell down laugh back.

お情け無用のお祭り電車に呼吸も止められ
My breath is cut off on this cutthroat carnival train,

身動き出来ずに夢見る旅路へ だから
can't budge an inch;I'm off on a trip into dreams,

ガンバレ みんなガンバレ 夢の電車は東へ西へ
so everyone hang in there,hang in everybody.
The train of dreams runs to the east,then to the west.


花見の駅で待ってる君にやっとの思いで遭えた
Finally I met you waiting at the station near the flowering trees.

満開 花は満開 君はうれしさあまって気がふれる
They're in full bloom,the cherries are all out
ー so thrilled,you went over the edge.

空ではカラスも敗けないくらいによろこんでいるよ
In the sky,you know,ravens are as thrilled as we are.

とまどう僕にはなんにも出来ない だから
Me, puzzled,I can't do anything,

ガンバレ みんなガンバレ 黒いカラスは東へ西へ
so everyone hang in there,hang in everybody.
Black ravens fly east,then to the west.

***************************************

日本語原文での,日本語特有の曖昧な「主語」,「性別」,「単数・複数」,「時制」,「目的語」などを 英訳においては 明確にする必要があり,それらを考えることを通して,井上陽水の詞の心を明らかにしていました。

私より 英語の総合力は上であろう家人は 50作品 すべてをコピー(自身でキーを打って)しました。
その感想はー
 ・分り易い英語になっている。
 ・‘blue sky’,‘darkness’,‘dream’ の三語の頻出が印象的。
でした。

|

« 見出しに見る「勘違い」(その505) | トップページ | 見出しに見る「勘違い」(その506) »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 見出しに見る「勘違い」(その505) | トップページ | 見出しに見る「勘違い」(その506) »