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2019年10月10日 (木)

山口県周防大島に架かる「大島大橋」をドイツ貨物船が壊した事故から 1年たってー

2018年10月,山口県周防大島を本土と繋ぐ 「大島大橋」の橋桁に ドイツの貨物船が 橋桁より約10mも高いマストを引っかけるという,俄かには信じられないミスによる事故を起こし,橋自身の損傷による通行不能もさることながら,桁下を通している送水管と通信ケーブルを破断して,周防大島住民の生活に多大な被害をもたらしました。全9千世帯が断水となり,給水車が橋を通れないため 船で運ばざるを得ないなど苦労したようです。
貨物船は 海図も真面に読めない(橋の存在,橋の“clear height” 確認)乗組員で,初めての目的地なのに瀬戸内海のパイロットも雇わず,正規の,あるいは推薦航路を採らないで(知らないで)最短航路を選んだようで,重大な過失です。

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その後,1年経って その間,損傷部はどのように復旧したか,復旧費用に対する賠償はどうなっているのか,この1年間の報道で眺めてみましたー

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【事故発生】

20181022日午前030分,山口県周防大島(9千世帯,人口 16千人)と大畠町をつなぐ 「大島大橋」の橋桁に,ドイツ船主・マルタ船籍のばら積み貨物船「エルナ・オルデンドルフ」(載貨重量:38,330ton)のクレーンとマストがぶつかり,橋桁を損傷させると同時に島への給水管と通信ケーブルを破断する事故を発生させた。

6,300tonのアルミナ(酸化アルミニウム)を積み,韓国オンサン港から広島県呉港沖を経由(検疫)し,江田島港を目指していた。
航海士が作った最短航路における,本船の「エアドラフト」(海面から船体構造最高部ーマストまでの高さ)42mに対する周防大橋の桁下高さ(33m)のチェックがなされてなかった。
言い逃れできない重大過失だった。

【復旧工事発注】
山口県は同月,橋の復旧工事を約227000万円で JFEエンジニアリングに発注。さらに201812月,送水管を管理する柳井地域広域水道企業団から委託を受けて,管の復旧工事も同社に約28000万円で発注した。橋梁工事完了予定:20184月末。


【架設送水管設置】
201811月末 大島大橋上面歩道部に 300mm径の水道仮設管設置完了,12月初め 各戸への給水再開。
1ヶ月以上の断水が解消された。

【船主責任制限手続き決定と抗告】

20192.20広島地裁は,船を所有する独海運会社オルデンドルフ・キャリアーズ社の申し立てを認め,船主責任制限法に基づき,損害賠償の上限額を約245千万円(245500万円?)とする責任制限手続きの開始を決定した。決定は215日付。

橋や送水管の復旧工事をした山口県と周防大島町などは決定を不服として即時抗告し,町民分と合わせた損害総額を計441千万円と広島地裁に届け出た。


【復旧工事遅れ】

2019.4.23山口県は410日,大型貨物船の衝突で破損した大島大橋の復旧工事の工期を2ヶ月延長して,2019630日までとすると発表した。破損箇所の部材交換に必要な高力ボルトの全国的な不足によって、納入が遅れることが影響した。使用する16000本のうち、2000本の納入が遅れるという。

【損害賠償額 広島地裁に届け出】

2019.6.14貨物船の大島大橋衝突事故の損害賠償請求を巡り,県と周防大島町,柳井地域広域水道企業団は613日,船主責任制限法に基づく損害額をそれぞれ算定し,広島地裁に届け出たと発表した。3者だけでも計376900万円となり,既に広島地裁が認めた損害賠償の上限額約24億円を大きく上回る。

県の被害額は27億円。橋の本体工事費213000万円に加え,弁護士費用約24000万円や航路灯・照明復旧費約1億円,チャーター船による県発注工事資材運搬費1600万円などが加わった。町は給水活動費など25900万円,水道企業団は送水管の復旧費用など8900万円を届け出た。


【送水管工事完了】

201971日 大島大橋下面の水道管(450mm径)復旧完了。

【損害総額見直し】

2019.7.17大島大橋に貨物船が衝突した事故による断水や橋の通行規制で,被害を受けた住民や事業者が船主責任制限法に基づいて届け出た損害総額が約441200万円に上ることが17日,分かった。広島地裁が認めた損害賠償の上限額245000万円を大きく上回っており,管理人の弁護士が届け出られた内容を調査し,上限額の範囲内で配分する手続きを進める。

【補修工事完了】

2019729日 水道仮設管撤去。

【住民損害賠償提訴】

2019.7.30町民96人が生活に多大な支障が生じて精神的な苦痛を受けたとして,船を所有するドイツの海運会社を相手取り,総額約1580万円の損害賠償を求め,山口地裁岩国支部に提訴した。
船主責任制限法に基づく損害は物的損害のみで,断水や橋の通行制限によって住民が被った精神的な損害は含まれていないと指摘。1人あたり15万円の損害賠償を支払うよう求めている。


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損壊部の復旧は終わっていますが,損害賠償に関しては 「船主責任制限法」があって 解決してないようすです。

そもそも 「船主責任制限法」は 船舶事故被害への賠償金が多額になって海運業者が破産しないようにとの意図で制定されたもので,おそらく,油流出を伴う事故を起こしたとき,海洋汚染の賠償費用が天文学的額になることを想定して制定されたものと思われます。

船主が,広島地裁が認めた損害賠償上限 24億5千万円しか払わないとするなら,それと ほぼ同等の額を,おそらく税金で補填することになり,未熟な能力の乗組員のドイツ海運会社の船によって引き起こされた事故の後始末に何故 日本人の税金が費やされるのか?と納得できません。

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