シャツと上着の袖の長さについてー
リタイアしてタイをして上着を着ることは ほばありませんが,現役時代,スーツ(ジャケットも)を着る時(or 購入する時),2組の寸法(長さ,幅)のバランスに注意していました。
一組は 「上着の袖口から出るシャツの長さ」と「上着の背中トップのラペルから出るシャツの長さ」であり,
もう一組は「上着のラペル(最大)幅」と 「シャツのポイント(襟)長さ」と 「タイの(最大)幅」です。
上着とシャツとタイを,それぞれの組内で寸法を合わせることが基本です。
色や柄,およびそれらの組み合わせは個人のセンスの問題であってルールはあってないようなものですが,幾何学的バランスは測れるものであってルールがあります。
上着の袖口からシャツが全く見えない上着を,何の疑問もなく着ている方々は以下を読む必要はありません。
‘Gentleman's Gazette’ のサイトに “Sleeves Length Guide for Suits, Jackets and Shirts” の見出し記事がありました。
下記,拙訳・転載します。
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Sleeve Length Guide for Suits, Jackets and Shirts
スーツ,ジャケット,シャツの袖の長さガイド
メンズウェアで最も一貫して紛らわしい(consistently confusing)問題の1つは,シャツ,ジャケット,スーツの正しい袖の長さである。それぞれの長さ,およびそれらをどのように効果的に組み合わせるべきか?
シャツとジャケットの袖の正しい長さは,メンズウェアの専門家の微妙な(subtle)個性(hallmark)である。 それは細部への心遣いと,見た目を適切にするための専念(dedication)を反映している。また,注意を払わずに無視できる部分でもない :ずさんな(sloppy)袖の長さは,成長して合わなくなった服や,借りてきた服を着た少年のように見えることがある。
残念なことに,袖の長さは,着こなしに関してどれだけ知っていても,知らなくても,専門家のように主張できる灰色の領域であるように思える。
多くの場合,ルールが引用され,絶対的な測定値が提供されるが,ほとんどの場合,袖口(sleeve-cuff)の組み合わせの外観は長さだけではないことを忘れている。また,2つの衣服(garments)間の相互作用(interaction)の正しい適合性と調和についても説明する。
袖がすべて適切な長さであることを確認するために,まずシャツの袖の長さを,購入前に適切なものを見つけるため,シャツの特徴を評価するところから深く掘り下げる。次に,ジャケットに進み,可能な限り最高の組み合わせを実現するために,ジャケットとシャツの袖のベストなペアリングの方法を説明する。
What is the Correct Shirt Sleeve Length?
正しいシャツの袖の長さとは?
答えは,シャツの袖口(cuff)が親指の付け根に落ちるべきだが,正解を得るには 多くの考慮が求められる。基本的に,ドレスシャツのすべての要素(feature)(カット,アームホールのサイズ,カフ・ボタンの配置,カフの幅)は,シャツの袖の長さに影響する。
各要素がドレスシャツの袖の長さにどのように影響するかを見てみよう。
Sleeve Length for French Cuff Shirts
フレンチ・カフ・シャツの袖の長さ
理想的には,フレンチ・カフ・シャツは,たとえ動いても常に親指の付け根に届くようにすすべきである。腕を持ち上げたときにカフが動く場合,アームホールまたはシャツの長さに問題がある。シャツのアームホールが大きすぎるか,袖より大きい場合,動いた時にシャツの袖を引き上げる。これを避けるには,快適にするのに十分な大きさで,シャツの袖口を適切な長さに保つのに十分な大きさのシャツのアームホールを選択する。
適切な袖の長さを達成することに関して,フレンチ・カフまたはダブル・カフ・シャツに関する考慮事項を以下に示す。
French Cuff Shirts Should Have a Horseshoe Shape Cuff
フレンチ・カフ・シャツは、カフを馬蹄形とすべき
フレンチ・カフまたはダブル・カフ・シャツのカフは,きつすぎたりゆったりしすぎてはならない。カフが親指に負担をかけたり滑り落ちたりすることなく,手首の周りに馬蹄形を形成するようにぴったりと(snugly)収まるべきである。このように,袖に余分な長さがある場合でも,カフは上下に動かない。
The French Cuff Buttonhole Should Be Positioned Closely to the Edge of the Cuff
フレンチ・カフのボタンホールはカフの端近くに配置する必要がある
シャツの袖口がきつすぎるため、エッジから離れすぎたボタンホール
ボタンホールはカフの中央で,エッジにかなり近づけて配置する必要がある。そうしないと,ボタンホールがきつすぎて,余分な折り畳まれた生地がカフに奇妙な「翼」(wing)を形成する。英国では,カフリンクスをより多く見せるために,ボタンホールがカフの前面にある場合がある。ヨーロッパ大陸,特にドイツでは,この機能は通常,一般的なデイ・シャツではなくイブニング・シャツまたはモーニング・ドレスでのみ見られた。
何を好むかは単に嗜好の問題である。
もちろん,時計を着用する場合は,その特定のシャツで使用する最大の腕時計用に十分なスペースをカフの下に残すことが必要である。片方のカフをやや大きくすることは,カスタム・シャツでのみ実現できる機能である。それでも,時計のサイズには大きな違いがある場合がある。つまり,一部の時計は決まったシャツとしかペアリングできないということになる。
Shirt Cuff Must Not Be Too Wide Otherwise It Slides Down
シャツの袖口は広すぎてはいけない,さもないと滑り落ちる
シャツの袖口の幅が広すぎると,カフリンクスを入れたまま手をスライドさせると,カフは手に滑り落ちる。
兄からのお下がりのシャツのように見えるだけでなく,見苦しい(unsightly)しわも生じる。
French Cuffs Should Not Be too Narrow Otherwise it Throws Off the Proportions
フレンチ・カフは狭すぎてはいけない,さもないとプロポーションが崩れる
シャツの袖口がきつすぎて幅が狭い場合,ジャケットの袖が大きすぎるように見えて(そうでない場合でも),シャツの袖とのバランスが崩れることがある。
Sleeve Length for Button or Barrel Cuff Shirts
ボタンまたはバレル・カフ・シャツの袖丈
ボタンの袖口は,生地が手首を包み,ボタン留めの部分が重なっているため,フレンチ・カフの袖口よりも狭くなっている。既にボタンが設けられているカフを閉じるために宝石は必要ない。理想的には,バレル・カフは手首にぴったりとフィットする必要がある。ほとんどの男性は「密接に」(closely)の意味を過小評価しており,過度に幅広のバレル・カフがある。バレル・カフが適切に調整されている場合は,肌とカフの間に1〜2本の指が入る余裕しかないはずである。このぴったりしたフィットは,バレル・カフに重要なトリマー・プロファイルを維持しながら,それらを所定の位置に保持するのに役立つ。
過度に幅広のシャツの袖口は手首を包み込まず,腕を上下にスライドさせると 手の上に垂れ下がったり,ジャケットの袖の下で捲れたりする(bunched up)。
腕時計をつける場合,少し余分なスペースが必要だが,フィット感はまだ調整する(trim)必要がある。
実際,カスタム,MTM(Make to Measure),または「別注」(bespoke)のドレス・シャツを注文すると,時計をつけない側をぴったりと保ちながら,時計をする側の袖口を少し広げることができる。
The Proper Jacket and Suit Sleeve Length
適切なジャケットとスーツの袖丈
適切なフィット感のバレルとフレンチのカフ・シャツを購入したら,それらをジャケットと組み合わせることができる。ここで,再びプロポーションのバランスを取ることは,見栄えを良くするための鍵である。シャツとジャケットの袖の両方のバランスは,それらが同時に機能する場合にのみ完璧になるので,衣服を購入するときは両方に注意を払う必要がある。
最良の結果を得るには,最初にシャツの袖口をフィットさせ,それに応じてジャケットの袖の幅を選択または調整することをお勧めする。
Jacket Sleeve Width
上着の袖幅
ジャケットの袖の幅はジャケットごとに異なるため,各ジャケットと調和するカフを選択する必要がある。その結果,理想的なジャケット・スリーブの幅は,選択したカフによって変わる。
伝統的に,ボタン・カフはスポーツコートとカジュアルな衣服の標準になり,フレンチ・カフはよりフォーマルなスーツで着用されてきた。
今日,男性は何でも好きなものを着ることができ,その結果,これらのルールはオプションと言える。ただし,見た目を良くするには,幅の狭いジャケット・スリーブをバレル・カフと組み合わせ,幅の広いジャケット・スリーブをフレンチ・カフと組み合わせる必要がある。
古いジャケットの袖の裾は非常に幅が広く,袖の裏地まで見えることがある。それは単に大きすぎて,手が小さく不均衡に見えるケースである。
カフとスリーブの間にスペースが多すぎるか少なすぎる場合は,間違った選択をしている可能性がある。
To Show Cuff or Not to Show Cuff?
カフを見せるか,見せないか?
多くのメンズウェア・ガイドは,見えるカフの適切な量が1/2インチ(1.25 cm)から 1インチ(2.5 cm)の間にあると主張している。 我々を含めたほとんどのガイドは,1.25インチ(4cm)を超えるものはカフが長すぎて見せすぎであることに同意する ; 2つの袖の関係部(junction)は,どのように組み合わされるかを考慮していないように見える。
メンズウェアの専門家が,ジャケット・スリーブの下にカフをどれだけ見せるかを提案した例を次に示す:
〇アラン・フラッサー(Alan Flusser,(米)著作:正統服装論など) : 1 cm (2/5″)
〇ベルンハルト・レッツェル(Bernhard Roetzel) : 少なくとも 1 cm (2/5″)
〇バート・バカラック(Bert Bacharach): just 1/4″(0.64cm) in 1953
〇バロン・フォン・エルキング(Baron von Eelking) : カフが柔らかい場合は 2cm(4/5”),白のネクタイまたは黒のネクタイで着用する硬いカフスの場合は 1cm(2/5”)
〇シドニー・バーニー(Sydney Barney) : 著作 ‘Clothes and The Man’で,「袖の長さは好みの問題であり,あなたとあなたのテーラーはその時のトレンドに従うべきだ」と説明。
〇ニコラス・ストーリー(Nicholas Storey): 著作 ‘the History of Men’s Fashion’で,「一部の英国のオーダーメイドのテーラーは,シャツの袖口をまったく見せないことを好むことが多い」と指摘。
〇C・ノースコート・パーキンソン(C. Northcote Parkinson): 著作 ‘Parkinson’s Law’で,「米国人はカフを見せ,英国人は見せない」と書いている。
実際,米国やヨーロッパ大陸の多くの写真やファッションのイラストでは,男性はカフを見せているが,写真によって異なる。
見てきたように,メンズウェアの歴史を通して,多くの男性はシャツのカフを見せるためにコートの袖を短くして着ていたが,反対のことを選んだ他の粋な(dapper)紳士もいた。そのため,この問題に関する「ルール」は絶対的なものと見なされるべきではなく,男性が何を着るかを決める際に役立つガイドラインと見なされるべきである。
Matching the Amount of Cuff to the Shirt Collar
カフの量をシャツの襟に合わせる
‘Gentleman’s Gazette’では,ジャケットから見えるシャツの袖口の量が,首の後ろに見えるシャツの襟の量と一致すると最も良く見えると考えるため,約0.5”(1.25cm)とすることを好む。繰り返しになるが,すべてプロポーションと衣装の調和を作り出すことが全てである。
What Sleeve Length is Right For You?
あなたにとって正しい袖の長さとは?
分かったと思うが,袖には適切な長さ以上のものがある。要約すれば,プロポーションとハーモニーに焦点を合わせれば,常に身なりが整う。カフを見せる場合は,短すぎないことを確認し,上記のようにフィット感に焦点を合わせる。
(転載了)
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大した問題ではありませんが,「フレンチカフ」と「ダブルカフ」の違いが分りません。
日本の多くの人は 英国式を意識しているのでしょうか?
私は 上着から カフが 1/2” 出るのを目安にしていました。
上着を仕立てたことはありませんが(せいぜい パターン・オーダー),袖の長さは,右手が左手より 5mm長いことを注意して補正していました。
(1/2" に対して 5mmは大きい。)
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