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2020年3月18日 (水)

小説の中の ジェームズ・ボンドは何を着ていたか?

映画 「007」シリーズの第一作 「007は殺しの番号」(現在は 「007 ドクター・ノオ」,‘Dr. No’)が日本で公開されたのは 前回の東京オリンピックの前年,57年前の1963年,私が中学3年生のときでした。
ショーン・コネリー(‘Sir Thomas Sean Connery’,1930~ )演じる 英国 MI6の秘密諜報員 ジェームズ・ボンドのスーツのスタイリッシュな姿が眩しく感じられました。

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これは映画の中の秘密諜報員だからだったのか,それとも 原作の中では・・・ 。

以下 ‘Gentleman’s Gazette’,Sept. 4,2019 から 拙訳・転載。

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The Literary James Bond:How to Dress Like the Original 007
小説の中の ジェームズ・ボンド:オリジナル007のように着こなす方法

ほとんどの人が秘密諜報員 007 について考えるとき,ショーンコネリーの初期の映画からの時代を超越したエレガンスさが思い浮かぶだろう。
しかし,ジェームズ・ボンドのスタイルのルーツは,イアン・フレミング(Ian Flemig)の小説の創作にまでさかのぼる。 現代のスパイ小説から学べるものはあるだろうか?

この記事はゲスト寄稿者の ジェシー・ビーミッシュ(Jesse Beamish)によって ‘Gentleman's Gazette’ ために書かれたものである。

ショーン・コネリーの狭いラペルのフルカット・スーツ,ロジャー・ムーアの気障なベルボトム,ピアース・ブロスナンのイタリアン・ソフィスティケーション,またはダニエル・クレイグの縮んだような,時には合ってないスーツであっても,人々はめったに 小説の中のジェームズ・ボンドの原点である素材に戻って考えることはない。もともとの「国際的な謎の男」は常に部屋(room)の中で,最高の着こなしの男だったか?

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この記事では,最初の007のワードローブを見て,彼のスタイルの癖(quirks)を分析し,オリジナルののジェームズ・ボンドのスタイルを現代に持ってくる方法を説明する。

James Bond’s Wardrobe, According to Author Ian Fleming
著者 イヤン・フレミングによるジェームズ・ボンドのワードローブ

元の小説を読み返すと,イアン・フレミングは彼の主人公(protagonist)が着る服装をめったに描写しない-そして,彼が描写するときは,非常に(exceptionlly)希薄な(sparse)詳細を描写するのみである。オリジナルの小説でのボンドには,スクリーンの彼とは対照的に広範なワードローブを所持してない。実際,スクリーンの姿からはほど遠く,小説では,彼は非常に最小限の実用的なスタイル(minimal,utilitarian style)で,これは、今日,私たちがカプセル・ワードローブ(capsule warfrobe)と呼んでいるものである。

すべてのものは非常に明確に選択され,すべてのアイテムは非常に古く,かつ着古されている。彼は本質的にユニフォームとして説明できるものを着ている。 彼は保守的であり,流行のトレンドに従わないが,選択のいくつかに関しては,反抗的(rebellious)であるとも言える。

The Suits of James Bond
ジェームズ・ボンドのスーツ

ジェームズ・ボンドは,2着の異なる重さのダーク・ネイビー・ブルーのスーツを持っている。この2着が,ボンドが90%の割合で着るスーツで,彼のワードローブの基礎を成している。
1着はトロピカルな軽量の,ウーステッド・ウールのサージで,もう1着は わずかに重く,アルパカまたはアルパカ・ブレンドの可能性がある。著者のイアン・フレミングは、彼の中心的なキャラクターのために、彼自身の個人的なワードローブの名前を明かさない(anoymous)控え目な(pared-down)バージョンを選択した。
彼は、彼自身の型にはまらない癖の多くを引き継ぎ,1つは、軽量スーツの傾向(penchant)がある。今日の基準では重いと考えられるが,当時は,特にイギリスでは,このような軽量のスーツを着ることはかなり珍しいことだった。
フレミング自身の友人達は,フレミングはスーツを着古したとき,ボタンをテーラーに戻し,新しいスーツに縫い付けさせると冗談を言った。しかし,現代のスーツはほとんどの場合軽量であるため,フレミングは最後の笑いをとったようだ。

2着のネイビーブルーのスーツは どちらも 2つボタンのシングル・ブレステッドである。1950年代には 3つボタンスタイル・モデルがより一般的であったため,ボンドはここで再び慣例を破る。これらのスーツはどちらも「古い」,「着古された」とよく言われ,同じ服を繰り返し着用するボンドの傾向を示している。
(上記の逸話から明らかなように)フレミングが糸(threads)になるまで自分のスーツを着ていたことはよく知られている。彼は,ボンドのように,スタイルのためではなく,快適さを求めて服を身に着けている。スーツを着る時,ボンドはサスペンダー(suspenders/braces)ではなく,常に黒革のベルトを着けている。

ボンドのネイビー・スーツの詳細については,手がかり(clues)としてイアン・フレミングの例を見ることができる。ボンドのように,フレミングは彼の好みに関する限り同じように彼のやり方で設定した。
ボンドのネイビー・スーツは,わずかに狭いラペルで,ストレート・カットのフラップ付きポケット,場合によってはチケット・ポケット,袖口の4つボタンを備えていた。
彼のズボンは恐らくハイ・ライズで,フロント・ダブル・プリーツで,折り返しのある裾に向かってテーパしたフル・カットのシルエットだった。興味深いことに,ボンドと違ってフレミングは,ネクタイよりもボウ・タイを好む傾向があった。

ボンドの次のスーツは,黒・白の千鳥格子(dogtooth(原文),管理者注: 日本では‘houndstooth’)ツィードで,ゴルフや国内での仕事用である。
フレミングが所有するジャケットに似ており、ノッチラペル付きのシングルブレステッド,2つボタンのダーツ入りフロント、胸のウェルト・ポケットとフラップ付きヒップポケット,2つの黒い革ボタン付きの短いガントレット(gauntlet)折り返しカフスがある。

Bond’s Black-Tie Ensemble
ボンドのブラックタイアンサンブル

ボンドの最後のスーツはブラックタイのアンサンブルである。 軽量とも呼ばれる彼のタキシードは,シングル・ブレステッドで,ショールラペルが付いている可能性が最も高い。ボンドはディナージャケットを着て、細く,両端が同じ形の(double-ended)黒いサテンのボウタイを着ける。ボンドは重い絹のイブニング・シャツを着て,長袖とフレンチカフスの伝統に忠実である(adhere)。ムーンレイカーのオリジナル原稿では,フレミングはボンドのカフリンクスをカルティエに指定している。
また,彼はローファーを黒のカーフスキン・オックスフォードに切り替える可能性があるが,過去のスリップオンに固執することはしない(後述の履物のセクションを参照)。

James Bond’s Surprising Shirts
ジェームズ・ボンドの驚くべきシャツ
                                                                                                          

ボンドのシャツについて議論するとき、事はもっと型破りなものになり始める。まず、生地と色について話そう。 ボンドのシャツは,常に2つの生地のいずれかで作られている。白または青の非常に軽量で通気性のある,‘end-on-end’(織り方)の海島綿(sea island cotton),または白またはクリームの重い絹のいずれかである。青は興味深い,フレミングはしばしば「濃い」(dark)青と表現する。フレミングは,シャツが実際に彼のスーツに似た暗い色調であることを暗示してない(コントラストがないとひどく見える)。むしろ,標準の淡い(pale)ブルーと比較して、「ダーク」を意味する可能性が高く,これはミディアム・ブルーのようなものである。ポジティブな衝撃的なスタイルの癖になった。

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ジェームズ・ボンドのドレスシャツはすべて半袖である!そう,そのとおり,小説のジェームズ・ボンドは,スーツとネクタイに半袖のドレスシャツを着ている。想像どおり,イアン・フレミングはこの奇妙なアプローチを自分のスタイルから直接移植した(ported)。

これは本に直接記載されることはないが,フレミング自身の半袖シャツにはすべて胸ポケットがあり、私たちが見続けるように、彼は自分のスタイルの癖の多くをボンドに反映させている。
また,半袖のドレスシャツはカジュアルで,通常は胸ポケットが付いている。なぜポケットがあるのか? フレミングのボンドは1日に60本のタバコを吸うと言われており,彼のシャツの胸ポケットはそれらを収納する場所である。

Bond’s Minimalist Neckwear
ボンドのミニマリスト・ネックウェア

ボンドとフレミングの目立った違いは、ネックウェアの選択だけである。
フレミングは,通常水玉模様の蝶ネクタイを着けていた。 しかし,彼の描写でボンドは,細い黒のシルクニット・タイだけを着けている。 ボンドは,タイの結び方の選択にもこだわる。彼はタイをフォー・イン・ハンド(four-in-hand)で結び,かつて そのウィンザー・ノット(the Windsor knot)は「育ちの悪い男の印」(the mark of cad)と言われた。
黒のタイとネイビーのスーツはコントラストがほとんどないため,合わせるのがまた,難しい。さまざまなグレーの色合いがあるので,単色の(monochromatic)効果を生み出す。ボンドは生地の質感(fabric texture)のコントラストに依存している。黒のニット・シルクとネイビーのウーステッド・ウールの色調は似ているからである。

Footwear for 007 – Also Unconventional
007のフットウェア - また型にはまらない

ジェームス・ボンドの靴になると,事態はさらに型破りになる。ひとつには,小説の中のボンドは靴ひもを拒絶している(abhor)。彼の靴は よく磨かれた黒のスリップオン・モカシンと描写されている。基本的にボンドは,ネイビー・ブルーのスーツに黒のペニーまたはベネチアン・ローファーを履いている。彼のソックスも常に綿毛で作られたネイビー・ブルーである。これはボンドがスタイリッシュな慣行に逆らう別の例である。
我々は,彼が自分で課した「ユニフォーム」のパラメーターの範囲内で,服装を可能な限りカジュアルにする一貫した特性(trait)に気づく。

おそらく最も驚くべき型破りで反抗的なスタイルの動きは,ボンドの「熱帯への唯一の譲歩」であるスーツで素足に黒いサドル・ステッチのサンダルを着用する傾向がある。ボンドを想像してみてー 1950年代のナッソーの太陽の光の下で,暗いが軽量のネイビー・スーツ,通気性のある半袖の白い海島コットンシャツ,黒いニットのタイ,素足に黒い革のストラップ・サンダルを身に着けている。イアン・フレミング自身が証明するように,ボンドは時々サンダルにネイビーの靴下を履いた可能性さえある。 「ピッティ・ウォモ」(Pitti Uomo,管理者注: イタリアで開催される世界最大のメンズ・プレタポルテ見本市)で最初に着た人がトレンドを設定する!

Bond’s Accessories – or Lack Thereof
ボンドのアクセサリー – またはその欠如

アクセサリーに関しては、ボンドには興味の余地はない。彼は,タイ・クリップ,タイ・ピン,またはその他の装飾品(ornamentation)を着けない。彼はまた,ポケット・スクェアを着けることはないが,白いシルクのハンカチを内ポケットに入れている。ボンドの持つ 唯一のアクセサリーは,ダンヒルのガンメタル仕上げのシガレット・ケースと 黒の酸化ロンソン・ライター(black oxidized Ronson lighter)である。
ボンドには,エキスパンド・メダルのブレスレットに付けられたロレックス・オイスター・パーペチュアル・ダイバーズ時計がなくてはならず,常に 「ボロボロだが,かつては高価な」(battered but once expensive)ピッグスキン・スーツケースで旅をしている。

Outerwear and Other Outfits
アウターウェアとその他の服装

アウターウェアに関して,小説の中のジェームズ・ボンドはオーバーコートを1着しか所有してない。 フレミングは一貫して,シングル・ブレステッド・バルマカン・スタイルのベルト付きダーク・ブルー・バーバリー・マッキントッシュを着たスパイを常に描いている。他の詳細には,おそらくフロントに5つのボタン,ラグラン・スリーブ,プロイセンカラー,フライフロント,スラッシュ・ポケットが含まれる。あるとき,彼は濃い青のレインコートに柔らかい黒い帽子をかぶっていると描写された。

ボンドが小説で身に着けている衣装は他にもいくつかあるが,それらについては詳細を説明したいが,それらの場合は,ボンドはキャラクターを考慮した服装をしているのでそれらを省略した。たとえば,「サンダーボール」の小説では,ボンドはバハマで億万長者を装う。この時,彼はメルロー・カマーバンドと アイボリー・ディナージャケットを着ている。「007 死ぬのは奴らだ」(Live And Let Die)では,ボンドはニューヨークで米国人を装っており,アイビー・スタイルのディテールを持つサックスーツやドレスシャツと大きなネクタイを着けている。
ボンドは、自分の工夫に任されたとき,彼の年齢から外れることはなく,信頼できる,コンパクトだが古典的なワードローブを装う。。

Conclusion – What Does Bond’s Style Tell US?
結論 - ボンド・スタイルは 我々に何を語るか?

では,ジェームズ・ボンドの着方(dressing)に対するミニマリストで実用的な(utilitarian)アプローチから,どのようなスタイルの教訓を引き出すことができるだろうか?
熱帯地方でダークスーツにサンダルを着用するボンドの傾向を模倣する(emulate)性格や性向さえ持っていないかもしれないが,ここで 何かを学ぶことができる。ボンドは自分のスタイルを厳しく,自分で設定した(self-imposed)パラメーター内で選択し,決してぶれなかった。
彼には独特の(peculiar)癖があるが,彼はこれらを所有し,自然に引き出す。彼は黒のニットタイが好きだと決め,それが彼が着ける唯一のタイである。 ボンドは靴ひもが嫌いで,単純にスリップオンを選ぶ。
地球上のすべての紳士のガイドは,スーツを着るときのローファーを勧めないが,ボンドは気にしない。
彼は黒ネクタイのルールを順守していることからわかるように,ルールを知っている。 しかし,ここで強調されている他の選択肢から明らかなように,彼はまた,ルールを破り,できるだけ早い機会に慣習に反するだろう。

現代の紳士は,ボンドのアプローチから確かにインスピレーションを集める(glean)ことができる。
ルールを知り,いつどのようにルールを破るかを決定する。 あなた自身の個人的なスタイルを取捨選択(curate)したら,他の人の意見をものともせず,それを固執する。ボンドは彼自身であり,他の道には興味がない。ボンドが厳しい(harsh)英国の冬の間,軽量のスーツ,半袖シャツ,ローファーを着ているという事実は、慣習を無視している(fly in the face of )が,ボンドはそれを貫いている。彼は非従順(non-conformist)で、古典的だが反抗的(rebellious)である。 ボンドはファッションのトレンドに追従しない。彼は時代を超越した高品質の品物を購入し,これらのアイテムを固執する。
彼は自分の服に誇りと愛着を持っていると思うが,同時に考え直しはしない。

彼の衣服は機能的であり,彼は第二の皮膚のようにそれらを着る。 彼のワードローブは小さく,コンパクトで交換可能である。 それはナンセンスではなく,見せかけ(affectation)ではない。彼は彼自身の型にはまらない伝統に基づいており,イアン・フレミングの著作で永遠に記念され,彼はそこにとどまる。

(転載了)
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イアン・フレミングが 007シリーズの第一作「カジノ・ロワイヤル」(Casino Royale / You Asked for It)を書いたのが 1953年。
この時から ジェームズ・ボンドのドレス・シャツが,季節によらず 半袖だったとは!
日本で 半袖シャツにタイをするスタイルが認められるようになったのは,1961年に 帝人が「ホンコンシャツ」の名前で それまでの半袖開襟シャツではない,タイを着けられる半袖シャツを発表してからでした。その3年後,高校に入ったとき,夏に半袖開襟シャツは野暮ったい(「ダサい」と言う言葉は存在してなかった)と,長袖シャツの袖をまくって着るというのが その頃の高校生の通常のスタイルでしたが,「ホンコンシャツ」はタイをしない高校生にも革新的で受け入れられました。

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