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2020年4月10日 (金)

新型コロナウイルス後の世界予想。

世界的に 流行が広がる 「新型コロナウィルス」は,まだ先が見えませんが,その終結以後の世界に関して書いているものがありました。

ウェブサイト `Foreign Policy’ のMarch 20, 2020付けの  “How the World Will Look After the Coronavirus Pandemic” (「コロナウイルスの世界的流行の後の世界はどう見えるか」です。

下記,拙訳・転載します。

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The pandemic will change the world forever. We asked 12 leading global thinkers for their predictions.
パンデミックは世界を永遠に変える。我々は12人の主要なグローバル思想家に彼らの予測を求めた。

ベルリンの壁の崩壊やリーマンブラザーズの破綻のように,コロナウイルスのパンデミックは,我々が今日想像することしかできない,広範囲にわたる(far-ranging)結果をもたらす,世界を揺るがす(world-shattering)事件である。

以下は確かである:この病気は生活を打ち砕き(shattered),市場を混乱させ(disrupted),政府の力量(competence)(またはその力の欠如)を露呈させたように,それは後になって初めて明らかになるように,政治的および経済的力の恒久的な変化(permanent shifts)につながる。この危機が進展するに従い,我々の足元のベースが変化している様子を理解するために,‘Foreign Policy’ は世界的に主要な思想家12名に,パンデミック後の世界秩序の予測に関する意見を求めた。
(12人中 5人の意見を抜粋します。)
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A World Less Open, Prosperous, and Free
開かれていない、豊かでない,自由のない世界 
by Stephen M. Walt スティーヴン・マーティン・ウォルト,合衆国・国際政治学者,ハーバード大学ケネディ行政大学院教授

パンデミックは国家を強化し,ナショナリズムを強化する。 すべてのタイプの政府は,危機を管理するために緊急措置(emergency measures)を採用し,多くの国は 危機が去った時に これらの新しい権限を放棄する(relinquish)ことを嫌う(be loath)。COVID-19はまた,西から東への力と影響力の移行を加速する。韓国とシンガポールが最もよく対応し,中国は初期の過ちの後でうまく対応した。それらに比べると 欧米での対応は遅く,場当たり的(haphazard)で,西洋の「ブランド」のオーラをさらに傷つけている(tarnishig)。

変わらないのは,世界の政治の根本的に対立する(conflictive)特性である。1918年から1919年のインフルエンザの流行(epidemic)を含むこれまでの疫病(plagues)は,大国間の競争(great-power rivalry)を終わらせることも,世界的な協力の新しい時代を先導する(usher)こともなかった。COVID-19 も同様である。市民が政府を保護するために国家に目を向け,国や企業が将来の脆弱性(vulnerabilities)を削減しようとするので,超グローバル化(hyperglobalization)からさらに後退することになろう。

つまり,COVID-19は,オープンではなく,繁栄が少なく,自由が少ない世界を作り出す。 そのようになる必然性はないが,致命的なウイルス,不十分な計画,および無能なリーダーシップ(incompetent leadership)の組み合わせにより,人類は新たな気になる(worrisome)経路に置かれた。
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The End of Globalization as We Know It
我々が知るグローバリゼーションの終焉
by Robin Niblett ロビン・ニブレット英王立国際問題研究所所長

コロナウイルスのパンデミックは,経済のグローバル化の限度を超えて破綻をもたらすbreaks the camel’s back)かも知れない。中国の増大する経済力と軍事力は,米国の超党派的(bipartisan)決意をすでに引き起こしており(provoked),米国から流れる高度な技術と知的財産権から中国を切り離し(decouple),同盟国にその追随を強制しようとしている。炭素排出削減目標(carbon emissions reduction targets)を達成するための公的および政治的圧力の高まりは,多くの企業が長距離サプライチェーンに依存していることに疑問を投げかけている。現在COVID-19は,政府,企業,社会に,経済的孤立の長期化に対処する能力を強化するように強いている。

この文章においては,世界が21世紀初頭を定義した相互に有益な(mutually beneficial)グローバリゼーションの理想に戻ることは,ほとんどないように思える。そして,世界経済統合(global economic integration)から得られる共通の利益を保護するインセンティブがなければ,20世紀に確立された世界経済統治(global economic governance)のアーキテクチャは急速に衰退する(atrophy)。そして,政治指導者が国際協力を維持し,公然とした(overt)地政学的競争(geopolitical competition)に後退しないようにするためには,大きな自己規律(self-discipline)が必要になる。

COVID-19の危機を管理できることを市民に証明するためには,指導者は政治的資本を受け入れることになる。しかし,失敗したときは,失敗したことで他人に転嫁する誘惑に抵抗するのが難しいことに気付く。
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A More China-Centric Globalization
より中国中心のグローバリゼーション
by Kishore Mahbubani キショール・マブバニ, シンガポール大学リー・クアンユー・スクール 院長

COVID-19のパンデミックは 世界経済の方向性を根本的に変えることはない。それはすでに始まっている変化を加速させるだけである。米国中心の(U.S.-centric)グローバリゼーションからより中国中心の(China-centric)グローバリゼーションへの移行である。

なぜこの傾向が続くのか? 合衆国(The American population)はグローバリゼーションと国際貿易への信頼を失っている。トランプ米大統領の存在にかかわらず(with or without),自由貿易協定(Free trade agreements)は有害(toxic)である。対照的に,中国は信頼を失っていない。何故なのか? より深い歴史的な理由がある。中国の指導者たちは,中国の 1842年から1949年にかけての100年間の屈辱(humiliation)が,自己満足(complacency)と,世界を遮断するための指導者の無益な(futile)努力の結果であったことをよく知っている。対照的に,過去数十年間の経済復活(resurgence)は,世界的な関与(engagement)の結果だった。中国の人々はまた,文化的自信の急増(explosion)を経験した。彼らはどこでも競争できると信じている。

その結果,私の新しい本の“Has China Won?” でドキュメントとして示したように,米国には2つの選択肢がある。その主要なゴールが世界的な優位(primacy)を維持することである場合,中国と政治的および経済的に,ゼロ・サム地政学コンテストに参加する必要がある。しかし,米国のゴールが,社会情勢が悪化している,米国人の福祉を改善することであれば,中国と協力すべきだ。賢明な弁護士は,協力がより良い選択であろうと提案するだろう。しかし,中国に対する米国の有害な政治環境を考えると,賢明な弁護士は勝たない(not prevail)かもしれない。
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American Power Will Need a New Strategy
アメリカの力は新しい戦略を必要とするだろう
by Joseph S. Nye, Jr. ジョセフ・サミュエル・ナイ・ジュニア,合衆国の国際政治学者,ハーバード大学特別功労教授。

2017年,米国大統領ドナルド・トランプは,大国競争(great-power competition)に焦点を当てた新しい国家安全保障戦略(national security strategy)を発表した。COVID-19は,この戦略が不適切であることを示している。米国が大国として優勢(prevails)であっても,単独で行動することで安全を守ることはできない。
リチャード・ダンツィヒ(Richard Danzig)が2018年に問題を要約したように:「21世紀のテクノロジーは,その分布だけでなく,その結果(consequences)においてもグローバルである。他国が誤って放出する可能性がある病原体(Pathogens),AIシステム,コンピューター・ウイルス,および放射線は,彼らと同様に 我々自身の問題になる可能性がある。我々の数多くの相互リスクを和らげる(moderating)手段として,合意された報告システム,共有コントロール(shared controls),共通の緊急時対応計画(common contingency plans),規範(norms),および条約を追求する必要がある。」

COVID-19や気候変動のような国境を越えた脅威については,他国に及ぼす米国の力を考えるだけでは十分ではない。成功の鍵は,他国と合わせた力の重要性を学ぶことでもある。どの国も国益を第一に考えている。重要な問題は,この関心がどの程度広く,または狭く定義されているかである。COVID-19は,この新しい世界への戦略を適合させることができていないことを示している。
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The History of COVID-19 Will Be Written by the Victors
COVID-19の歴史は勝利者によって書かれる
by John Allen

いつもそうであるように,歴史はCOVID-19危機の「勝利者」によって書かれるだろう。すべての国,そしてますますすべての個人が、この病気の社会的緊張(the societal strain)を新しく強力な方法で経験しています。必然的に,ユニークな政治的および経済的システムのおかげで,また公衆衛生の観点から,忍耐する(persevere)国々は,異なる,より破壊的な結果(devastating outcome)を経験する国々に対して成功を主張するだろう。一部の国にとって,これは民主主義,多国間主義(multilateralism),そして普遍的な医療に対して,偉大で決定的な勝利(triumph)として現れるだろう。他の国々には,決定的で権威主義的な支配の,明確な「利益」を見せる。

いずれにせよ,この危機は,我々が想像を始めることしかできない方法で,国際的な権力構造を改造する(reshuffle)だろう。COVID-19は,引き続き経済活動を抑制し,国家間の緊張を高める。長期的に見ると,パンデミックは世界経済の生産能力を大幅に低下させる可能性が高く,特に企業が閉鎖し,個人が労働力から離れる場合は,特にそうである。この転位のリスクは,経済的に脆弱な労働者の割合が高い,発展途上国やその他の国にとって特に大きい。その結果,国際システムは大きな圧力にさらされ,その結果,不安定になり,国内および国外で紛争が広がっていく。

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(部分転載了)
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世界情勢への影響は 少なからずある,とする見解が多いようで,中国への力の移行が加速されるようです。

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