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2020年9月 8日 (火)

モーリシャスで鯨が死んでー

日本の海運会社所有の大型(載貨重量 約20万トン)バラ積み貨物船 MV WAKASHIO が座礁,燃料油流出,その約1ヶ月後,分離し離礁した 前部船倉部を曳航して領海に沈めたモーリシャスの海岸に 鯨やイルカが打ち上げられているようで 海洋汚染に関連して世界の海洋関係NGOが関心を持って 動き始めているようです。

Forbes’ のAug.312020付けで “International Condemnation Of Global Shipping Grows As 47 Whales Confirmed Dead In Mauritius” (モーリシャスで47頭の鯨の死亡が確認され,世界の海運業に対する国際的な非難が増大)の見出し記事がありました。

下記,拙訳・転載します。

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月曜日(831日)に,モーリシャスの南東沿岸に沿って,妊娠中の雌および子供(juveniles)を含む47頭の鯨が死亡していることが明らかになった。座礁現場やWakashio前部の沈没周辺などで,その数は日々増え続けている。これは,船の後部を離礁させ,除去された油を処分し,海岸線の油を浄化するという作業の極度の秘密の中で起こっている。浄化に使用されている方法についての透明性(transparency)の欠如は,化学分散剤(chemical dispersants)の使用に伴う長期的なリスクに関する追加の懸念を引き起こしている。

現在,モーリシャスのクリーンアップと今月初めのベネズエラの有名なモロッコイ国立保護区(Morrocoy National Reserve)での油流出とクリーンアップの比較が行われている。

既に,Wakashioの前部構造をモーリシャス沖の非公開の場所に故意に沈めるという,論争の的となっている決定についての懸念があった。2日後,多数の死んだイルカや鯨がモーリシャスの海岸に漂着し始めた。

Concerns about Wakashio salvage operation
Wakashioのサルベージ作業への関心

・週末のモーリシャス および世界中の大使館周辺の主要なデモが続き,イギリスの独立系新聞の報道によると,10万人以上の行進者(モーリシャス人口の約10%)が集まった。 抗議者たちは首都の路上を平和的に行進し,死んだ鯨やイルカを含む汚染の環境への影響に対する正義と説明責任を要求した。

・国際的な海洋NGOであるシーシェパードは,モーリシャスのサンゴ礁に座礁したときに船に203,000トンを超えるバラスト水があったことを明らかにした(漏油量の200倍)。 バラスト水の放出を通じて海洋の有害な影響の拡大を阻止するために近年作成された懸念と国際法を考えると,このバラスト水が船舶から安全に取り出されたかどうかは不明である。 船主の長鋪汽船は,メディアからのコメント要求には応じていない。同時に,サルベージチームがモーリシャス沿岸の敏感な地域での地震爆破(seismic blasting,管理者注:適当な日本語訳を探せず,音波?)をサルベージオペレーションの一部として使用した可能性があることも現地で報告されている。ここは鯨の保護で有名な海域であり,過去数日間に数頭の妊娠中の小型ゴンドウ鯨(Melon-headed whales)と子供鯨がすでに洗い流されているのが見つかった。

そのような地震爆破が行われたことが真実である場合,何十ものテストがある中で,テストの前にそのエリアの徹底的な環境影響評価が行われたかどうか そのようなテストが行われた権限の下で深刻な質問をする必要がある。モーリシャスの東海岸沿いの豪華な5つ星ホテルでは,観光客にイルカとホエールウォッチングのツアーを提供している。

International NGO criticism of global shipping
世界的な海運業に対する国際NGOの批判

国際NGOコミュニティも,この事件における世界の海運業の役割について深刻な疑問を提起し始めている。 世界的な海洋保護NGOであるForbesへの声明で,オーシャン・コンサーバンシー(Ocean ConservancyOC, アメリカの環境NGO)によるモーリシャスでの鯨とイルカの死についての完全かつ独立した調査を求めている。

オーシャン・コンサーバンシーのScience Initiativesの責任者であり,BPディープウォーター・ホライズン(Deepwater Horizon,管理者注:2010年,メキシコ湾で火災を発生し,海底から多くの原油を流出させた石油掘削リグ)の悲劇の後,10年間油流出対応と生態系回復に取り組んだクリス・ロビンズ(Chris Robbins)は,特に大規模な油流出後のイルカのリスクを強調した。「イルカのような海洋哺乳類(Marine mammals)は,Deepwater Horizon災害の影響を受けた最も深刻に受けた海洋種の1つであり,回復には数十年かかると推定される。海洋哺乳類は,吸入(inhalation),摂取(ingestion),誤嚥(aspiration),皮膚吸収(skin absorption)により油中の毒素に曝され,肺疾患,免疫系の損傷,生殖不全などの直接死または亜致死影響をもたらす。オーシャン・コンサーバンシーは,当初,海洋哺乳類の個体数やより広い海洋生態系などの影響を受けた種の回復を追跡するためには,長期的な監視が不可欠であることを認識していた。

イルカは寿命が長く,メキシコ湾北部で見られたように,流出による健康への影響は,今後数年間,地元のイルカ個体群全体に波及する可能性がある。」

De-carbonizing the international shipping fleet
国際輸送船団の脱炭素化

オーシャン・コンサーバンシーも大胆な海運業改革を求めるようになり,グリーンピース,WWFWorld Wide Fund for Nature世界自然保護基金),シーシェパードなどの他の国際環境グループも呼応して,この災害が非常に広範囲にわたる主な理由の1つとして使用された重いエンジン燃料(heavy engine fuel)に言及した。
「モーリシャスでの油流出の影響を評価するために科学が使用されているという現在進行中の不確実性において,1つのことは非常に明白である。化石燃料から再生可能エネルギーに急速に移行する必要がある。これには,優先度として,国際輸送船隊の脱炭素化が含まれる。パリ協定で設定されている摂氏1.5度内の目標を維持するには,2034年までに完全な脱炭素化が行われる必要があると推定している。したがって,それはHFOHeavy Fuel Oil,重油)を燃焼しているすべての船を水素やアンモニアなどの,よりクリーンなグリーン燃料に置き換えることを伴い,海洋哺乳類に影響を与える流出のリスクも劇的に低減する。MV Wakashioのオーナーである日本と日本を拠点とする長鋪汽船は,これらすべてにおいて重要な役割を果たす。日本は中国や韓国と並んで最大の造船国の1つであり,次のWakashioを防ぐための基準を設定し,完全な脱炭素化のためのIMOの国際的なタイムラインを加速することを公約することができる。この流出は,すべての造船国にとって目覚めの呼びかけとなるはずである。」

オーシャン・コンサーバンシーのこの発言は,「便宜置籍船」(flags of convenience)制度の改革の呼びかけを含むWWFの海洋に対する正義の呼びかけを反映している。これは,長年にわたって多くの人が議論してきたシステムにより,船主は世界の海で刑事免責(impunity)で行動することができた。モーリシャスのような国が西インド洋からの他の教訓に基づいて,このユニークな生態系を復元しようとする方法について、WWFは幅広い法的および金融的手段を強調している。

Warning about collateral damage from oil spill cleanup operations
油流出浄化作業による付随的な損傷に関する警告

オーシャン・コンサーバンシーのクリス・ロビンズはさらに進んで,BP Deepwater Horizon の悲劇から学んだ,さらなる害をもたらした,油流出クリーンアップ作戦の二次的影響の多くについて警告した。モーリシャスが Wakashio油流出への対応についてどのように考えるべきかについて,彼は5つのポイント計画をリスト化し,オーシャン・コンサーバンシー サイトの記事にこれらを示した。

BP Deepwater Horizon の悲劇の後,メキシコ湾からいくつかの教訓があり,モーリシャスの展開中の悲劇に対応することができる。対応の観点からの流出への対応,クリーンアップ,被害の文書化,責任ある当事者の明確化,長期的な修復計画を立てる。」

これまでのところ,船主の長鋪汽船,または数十億ドル規模の船を借りていた商船三井からの,イルカや鯨の死についてもコメントはまだない。特に,他のいくつかの主要な国連または他の海洋保護組織から,この主要な生態学的危機の37日間に,油流出に関する公式声明はない。

(転載了)
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商船三井(株)のプレスリリース(9/1)「WAKASHIO座礁および油濁発生の件(その8)」

・・・

【対応体制の強化について】
当社は、短期的には漏油の回収や除去作業に有用な資材、支援物資の提供等を行っていますが、自然環境とその保護活動について知見を持つ外部専門家に広く助力を求めながら、長期的な視野において生態系回復と地域貢献できる方法を模索し、実行していきます。これを推進するために、以下の組織を設置および設立します。

「モーリシャス環境・社会貢献チーム」の設置
9月1日付けで、モーリシャスの環境復元に取り組み、地域社会への支援、モーリシャスの環境・社会貢献に関する当局や地域社会との渉外を専門で担当する「モーリシャス環境・社会貢献チーム」を経営企画部内に新設し、専任3名と兼任10名で発足しました。

モーリシャス駐在員事務所の設立
現地における関係当局やモーリシャス地域社会との中期的な連携・対応を目的とするモーリシャス駐在員事務所を本年10月に設立予定です。

当社は引き続き、モーリシャスおよび日本の関係当局と連携して、船主と共に早期の事態解決に向けて取り組みます。

―と表明しています。

 記事中の「シーシェパードは,モーリシャスのサンゴ礁に座礁したときに船に 203,000トンを超えるバラスト水があったことを明らかにした。」とありますが,“203,000トン” は Wakashioの載貨重量(最大積載可能な貨物重量)そのものであってバラスト水の量ではありません。シーシェパードが素人集団なのか,意図的なのか分かりませんが,非常識な値です。そもそも,載貨重量と等しいバラスト水が積めるバラストタンクは存在しません。バラスト水で満載喫水線まで沈んだら大変です。

荒天時で採用する “Heavy Ballast Condition” で,専用のバラストタンクの他に 9つある貨物倉の1つのバラスト兼用倉にもバラスト水を積むことがあるようですが,それでも100,000トンを超えることはないでしょう。通常の “Normal Ballast Condition” でのバラスト水の量は 約5万トン程度?

ついに 貨物船の燃料,エンジンまで話が及んでいるようです。技術的に可能な手段はあるでしょうが 経済性が絡む問題なので 造船会社だけで片付く問題ではないと思われます。 

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