« 見出しに見る勘違い(その694) | トップページ | 見出しに見る勘違い(その695) »

2021年4月 2日 (金)

十種競技の採点方法

陸上十種競技の勝者は「キング・オブ・アスリート」と呼ばれますが,その割に オリンピックの優勝者が誰か,あるいは 世界記録保持者は誰かと問われて 答えられる人は多くはなさそうです。
「各種目 1,000点満点の採点の合計点を 2日間で競う」,「かつて台湾に『東洋の鉄人』と言われた十種競技選手・楊 伝広がいた。(1960年 ローマ オリンピックで銀メダル,1963年に世界記録樹立,1964年 東京オリンピックで5位。楊伝広は 東京オリンピックで高校1年だった私がもっとも注目し,金メダルを期待した選手でした。)」  くらいの知識しかありません。

しかし,60年近く前の1960年代に 棒高跳びのポールの材質がそれまでの竹(あるいは木)から グラスファイバー(あるいは カーボン・ファイバー)に代わって,ポールのシナリから生じる反発力を利用するようになって,絶対に不可能と言われた 5mの壁が 1962年に破られ(6m1985年),それ以降,十種競技の選手も 5mを跳ぶようになり,5m1,000点としていたそれまでの採点方法を変える必要が生じたという話を中学生か,高校生の頃,聞いた記憶があります。(最近は 再度 棒高跳びの得点数式を見直す必要があるような記録が出ているようです。)

又,ある競技の得意な選手と,バランスのとれた選手のどちらが有利か,など得点方法に興味があります。

英文Wikipedia にあった “Decathlon scoring tables”(十種競技得点表)にどのように書いてあるか,読んでみました。

(下記,拙訳・転載)

********************

「デカスロン(decathlon)」という言葉は,「ペンタスロン(pentathlon)」という言葉と同様に,ギリシャ語の “δέκα”(デカ,「10」を意味する)と “θλος”(アスロス,または “θλον”,アスロン,「コンテスト」または「賞」を意味する)から造られた。

Decathlon scoring tables

十種競技の得点表は,約1世紀前の十種競技開始以来,数式の特性と数式の基礎となる指標の両方にいくつかの変更を加えて,継続的に進化してきた。

Early decathlon tables
初期の得点表

最初の正式な試み(attempt1884年に米国によって作成された)から1915年まで,十種競技得点を形式化する最初の試みはすべて,線形スコアリング式(linear scoring equations)を含んでいた。米国のモデルは世界記録に基づいていたが,北欧のいくつかの国で同時に使用されたモデルは,それぞれの国の記録に基づいていた。

十種競技は1912年にオリンピックに最初に加わり,統一された基準が必要だった。最初に採用されたオリンピック・テーブルも線形関数(linear functions)だった:それらは,世界や国内の記録ではなく,個々の競技ごとの1908年のオリンピック記録に基づいていた。テーブルはすぐに1912年のオリンピックの記録で更新され,競技スコアの小数点以下3桁への拡張は破棄され,整数スコアが採用された。そして,テーブルは次の4回のオリンピックで使用された。

スコアリングテーブルの急速な進化により,結果は大きく異なってきた。たとえば,1928年と1932年のオリンピックの両方で十種競技の銀メダリストであったアキレス・ヤルビネン(Akilles Järvinen)は,もっと後年の得点表の下だと,両方の年でかなり手軽に金メダルを獲得したと思われる。

Tests for legitimacy
妥当性のテスト

1920年初め,IAAFは,少なくとも,妥当な十種競技得点表について次の基準を検討した。:

(1) 表は,人体の生理学的制限のために,パフォーマンスのレベルが高い場合,パフォーマンスのレベルが低い場合よりも単位ゲイン(スプリント時間の0.01秒の減少など)が重要であるという事実を反映する必要がある。

(2)さまざまな競技のスコアは,さまざまな競技の同等のスキル・レベル(ただし,そのような概念を定義することは困難だが)が同等のポイント・レベルで評価されるように,比較可能である必要がある。

1934 scoring tables
1934年 得点表

1934年,IAAFは,“Suomen Urheiluliitto”(フィンランド陸上競技連盟)によって提案された新しい得点表を採用した。これは,フィンランドの全国大会ですでに数年間使用されていた。この得点システムは,次の機能を備えた大幅な変更を備えていた。

1)個々の競技はすべて,これまでのすべての十種競技得点表を特徴づけていた線形(linearfunctions)ではなく,指数関数(exponential functions)で採点された。フィールド種目の場合,これは簡単な(straightforward)統計手順だった:トラック種目では,速度を表すアスリートのタイムの逆数(reciprocal)が独立変数として使用された。

(2)テーブルは競技ごとに0から1150ポイントの範囲とした。
ゼロ点は訓練を受けていない学童のパフォーマンスに対応し,1000点のパフォーマンスは世界記録に緊密に対応した。

1950 scoring tables
1950年 得点表

第二次世界大戦後,フィンランドとスウェーデンの陸上競技連盟が協力して,オリンピック選手の戦後のパフォーマンスの向上に適した得点表を作成した。すべてのテーブルは本質的に累進的(progressive)だった:実際,10の競技すべての累進的な性格が高まった。

1962 scoring tables
1962年 得点表

1950年のテーブルの改良後の数年間で,得点表の非常に累進的な特性に関して論争が起こった。具体的には,この表は,個々の種目のスペシャリストである十種競技者に明確なアドヴァンテッジをもたらし,不得意な種目があっても それなりの総合スコアが得られた,バランスの取れた競技者(well-rounded athletes)には比較的不利だった。
この問題を解決するために,スウェーデンの運動連盟の ‘Axel Jörbeck’ は,トラック競技で累進的な特性を維持しながら,投擲競技の実際に退行的なテーブルを改良した。変更の背後にある理論的根拠(rationale)は,投擲道具に与えられた運動エネルギーとその初速度の2乗,つまり移動距離の比率だった - そのため,累進的または線形の表であっても,投擲競技のスコアが不当に大きく加点されていた。

1984 scoring tables
1984年 得点表

1980年代初頭までに,当時の得点表でさらに多くの問題が指摘されていた。具体的には,フィールド競技のためのイェルベック(Jörbeck)のテーブルの退行的な特性は,それらの競技でのエリート・パフォーマンスの重要性を取り除く(obviate)ように見えた; 十種競技のフィールド競技のパフォーマンスは,それ以上のスコアの増加が事実上無視できる程度まで改善された。
さらに,フィールド競技における改善するという十種競技のモチベーションを奪うことに加えて,これらの表はまだ累進的であり,これらの競技での十種競技のパフォーマンスが世界記録にはるかに近いため,トラック競技者に不公平なアドバンテージを与えた。

したがって,IAAF作業委員会は,1983年にプラハで会合を開き,今日も有効な改善された表を作成し,次の9つの原則を提示した。

1.十種競技の得点表は,個々の競技の得点に使用されるもので,それぞれで異なる必要がある。
2.それぞれの競技の得点は,各競技での同等のスキル・レベル(ただし,そのような概念を定義することは困難)が同等のポイント・レベルで報われるように,比較可能である必要がある。
3.新しい得点表は次の項目を満足すべき:
   ①それまでのものを修正したもの
   ②全種目で線形であること,あるいは
   ③全種目でやや累進的であること
4.得点表は,ユースからエリートまで,全てのパフォーマンス・レベルに適用可能である。
5.男女は それぞれ異なる表とする。
6.各競技の専門選手の記録を,表のスコアの基礎とすべき。
7.得点表は 将来も適用可能であるべき。
8.新しい得点表を使用した,世界トップクラスの競技者の合計スコアは,ほぼ同じ(約8500ポイント)ままであるべき。
9. 可能な限り,新しい得点表は,ある競技のスペシャリストが,他の競技の最高のパフォーマンスを負かさないようにすべき。

1984年の得点表は現在も使用されており,1998年にわずかに更新されている(槍投げで,1997年まで2 cmの次に低い倍数に丸められた奇数センチメートルのエントリが追加されている)。

(転載了)

****************

現在の 得点(計算)表を下に示します。

各種目で 1,000点となる記録と 現在 世界記録を持つ Kevin Mayer(仏)の各種目の記録とその得点を示しました。
1,000点となる記録は 私が計算したので 間違っていたら申し訳ない。

Kevin Mayer の公式記録は「9,126点」ですが,私が計算した得点の合計では 「9.131点」となり,その差の理由は不明です。

Table_20210320215701

|

« 見出しに見る勘違い(その694) | トップページ | 見出しに見る勘違い(その695) »

つぶやき」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 見出しに見る勘違い(その694) | トップページ | 見出しに見る勘違い(その695) »