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2021年6月16日 (水)

“Ever Given” は 今,スエズ運河で-。

3月下旬,スエズ運河で座礁し,運河を6日間塞いだ,船主が日本の会社である 大型(20,124 TEU)コンテナ船 “Ever Given” は,エジプト政府との補償金問題が解決せず,スエズ運河の途中にある ‘Great Bitter Lake’ に コンテナを積載したまま拘束されています。

最近の状況を ‘The Guardian’ が June 11,2021付けで 報じています。

下記,拙訳・転載します。

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From bamboo to barbecues: the cargo caught up in Ever Given legal battle
竹からバーベキューまで:“Ever Given” の法廷闘争に巻き込まれた貨物

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(スエズ運河のグレート・ビター湖の “Ever Given” )

当局が乗組員と貨物を拘留しているため,船主が運河閉鎖事故の補償金を支払うまで,船はエジプト海域から出航できない。

レモン,タケノコ,豆腐が,バーベキュー,サン・ラウンジャー,水着,芝刈り機,キャンプ用品などを含んで,レノボ,イケア,ディクソンズ・カーフォン(Dixons Carphone),その他 多くのブランド品と共に,猛暑の中に留まっている - 夏が終わった後に目的地に到着することになるのか。

3月下旬にスエズ運河で,6日間 座礁した22万トンの “Ever Given” を撤去することに成功して以来,貨物船は再び座礁している。今回は,船の所有者,保険会社の,スエズ運河庁(SCAthe Suez Canal Authority)の間の激しい法的争い(legal battle)によるものである。

4月下旬,エジプトは,船の所有者が閉鎖事故の補償金を支払うまで,当局が船と,26人の乗組員,および数百万ポンドの貨物を拘束している(detaining)と宣言した。

問題が解決するまで,船はエジプトの海域から出航することができない。「我々はイライラしている。我々のクライアントの一部は憤慨している。」と,“Ever Given” に積載された1億ドル以上の貨物の荷主を代表する法律事務所Clyde Coのジャイ・シャルマは語った。貨物は公式に拘留されたままだが,貨物を物理的に降ろすには,巨大な船を接岸するのに十分な深さの港で,同じように巨大なクレーンで移動する必要があるため,選択肢になりそうにない。

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ディクソン・カーフォン,中国のテクノロジーメーカーであるレノボとイケアは,自社製品が船内に閉じ込められた(trapped)ままであることを個別に確認した。「少数の我々のコンテナが “Ever Given” に残っていますが,在庫レベルや事業運営に影響を及ぼす混乱はない。」とディクソンズ・カーフォンの広報担当者は述べている。一部の小売業者は,貨物を解放するようにエジプト当局に対する法的措置を検討している。「我々は商品を回収する方法を模索している。」とレノボのシャーロット・ウェストは言ったが,詳細は明らかにしなかった。

戦いは,今月後半にエジプトの港湾都市イスマイリア(Ismailia)の法廷に戻るため,補償をめぐる法的闘争にかかっている。SCAは,“Ever Given” の所有者である正栄汽船とその保険会社であるUK PI Clubに,貨物保険会社が負担するサルベージ費用を含め,91600万ドル(65000万ポンド)を求めていると述べた。

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(国際運輸労連(the International Transport Workers’ Federation)のメンバーが訪問中の “Ever Given”の乗組員。 写真:国際運輸労連)

SCAはその後,55000万ドルの和解を受け入れる準備ができていると述べているが,「サルベージ・ボーナス」に3億ドル,「評判の喪失」と運河への物理的損傷にさらに3億ドルをリスト化する以外は,その巨大な要求を説明する情報をまだ提供していない。エジプト当局は5月末に,サルベージ活動中に1人が死亡したことを静かに明らかにした。

55000万ドルでさえ維持できない(untenable)」とシャルマは言った。 「私の印象は,主張全体が膨らんでいる(inflated)ということだ。」Clyde Coは,サルベージ・ボーナスの額に関して特定の問題を引き出した。「SCAは早い段階で800人のエジプト人が船を離礁するために6日間働いたと大ファンファーレで言った。800人の6日間の仕事に3億ドルが散在するのは気前のいい(generous)支払いパッケージであり,これがどのように意味があるかを考えるのは難しい。」 シャルマは言った。

SCAはこの非常に大きな主張に対して詳細な正当性を提示していない」とUK PI Club4月に述べた。「船は6日後に再浮上し,スエズ運河はすぐに商業運航を再開した。」

オブザーバーは,SCAが船,乗組員,貨物を拘束し続け,世界のサプライ・チェーンにさらなる損害を与えている一方で,評判の低下に対する補償を求めて続けているのか疑問に感じている。「多くの点で,この事件はエジプトを輝かせる機会だった」とUK P I Clubのダスティン・エノは語った。

UK PI Clubは,SCAがサルベージを支援し,6日以内に成功したことを認めている。これはエジプト人が誇りに思うべき素晴らしい成果であり,スエズ運河とその世界貿易への多大な貢献に多くの注目を集めた。なぜ彼らが評判が傷つけられたと思うのか見極めるのに苦労している。」

Clyde Co5月にSCAに手紙を送り,船内の一部の商品が期限切れになる,季節がずれる,または遅延が長引くにつれて売れなくなるリスクがあるという事実を考慮するように求めた。期限切れの商品は「重大な廃棄問題」を引き起こす可能性があるとClyde Coは付け加えた。

「世界的パンデミックの際にSCAが時間に敏感な貨物の解放を拒否していると報告された場合,そのようなアプローチはSCAに深刻な害の評判をもたらす可能性があると私たちは考えている。」との Clyde Coの提案に,回答がなかったと述べた。

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(国際運輸労連のボートが “Ever Given” に引き上げられ,船内の貨物の一部が表示さる。 写真:国際運輸労連)

船を座礁した原因についてはまだほとんど合意がなされてない。強風と砂嵐による視界不良が最初に考えられる原因として提起されたが,天候が船舶を危険にさらす場合に,何故,SCAが “Ever Given” を運河に入れることを許可したかについては論争が続いている。

事件のSCAの調査委員会の長であるEl-Sayed Sheishaは,記者団に “Ever Given” がスピードを出し,逸れた(swerved)として,船の船長を非難した。

SCAは,2人の運河パイロットがこのサイズの船に乗ったままで,細い水路を航行できるように制御することを義務付けているが,運河の規則により,発生した損害については第三者が責任を負う。

UK P I clubは,船長がスピード違反をしていることを含め,船長に対するSCAの主張に「疑念」があると述べた。運河を通航する船の速度は,通常,船団で移動するので規制される(regulated)。

「船長は最終的に船舶の責任を負うが,船団内の運河の航行は,スエズ運河の水先案内人とSCAの船舶交通管理サービス(vessel traffic management services)によって管理されている。そのような管理には,航行の速度と護衛タグの有効性(availability)が含まれる。」と UK P I club は言った。

SCAの会長であるオサマ・ラビー氏は,エジプト当局は,“Ever Given” が3月に座礁した,グレート・ビター湖の南にある18マイルの運河を拡張することを意図していると述べた。その間,“Ever Given”,乗組員 および貨物を 全て再び解放するための交渉は続けられる。

(転載了)
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カイロでのテロ事件で観光収入が減ったときに,国家収入を維持するため,スエズ運河の通航料を値上げした様に,エジプト政府の金額設定には合理性がないことは 世界的に有名であり,言い値をそのまま呑むことが理不尽であることは分かっています。しかし,それでなくとも困難なアラブ人との交渉で,船とその貨物を担保に取られた状態では西欧の理屈を通すのは難しそうです。

本船の乗組員は船長を含んで全員(25名)インド人のようですが,私が 36,7年前,“Ever Given” の 運航会社 “EVERGREEN” の自社コンテナ船に1ヶ月以上,日本からスエズ運河を経由してヨーロッパまで乗船した時,乗組員は全員 台湾人でした。皆,真面目に働いていましたが(当たり前),シンガポール出港時,安定性計算(重心計算)のミスが原因で,急転舵したとき傾斜し始めて怖い目に逢いました。速度を出してなかったので事なきを得ました。
独身だった三等航海士は,台湾の港での既婚の航海士達の当直を一手に引き受ける代わりに,ヨーロッパの港での当直を外してもらっていると言って,寄港の度に 私と町に出ていました。この船で,ゲスト用だと 執拗に煙草を勧められ,その時点までの禁煙を半年で止める羽目になって,以来,半年の禁煙実績があるので いつでも禁煙可能だと思いながら喫い続けています。

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