5月に中国の高層ビルが揺れた原因が発表された。
2021年5月18日,中国深圳にある高さ356m,72階建ての高層ビル「賽格広場(SEGプラザ)」が 突然揺れました。ビルは2001年竣工,低層階には家電店,20階以上は居住層になっています。
5月21日,ビルを所有する深圳市賽格集団(SEG)は,原因を調査するため,ビルを閉鎖し,テナントや買い物客にビルへの立ち入りを禁止した,と報じられています。
そして 7月15日,調査結果 および 対策が発表されたとの報道がありました。もっとも詳細に報道していた ‘South China Morning Post’ の記事を拙訳・転載します。
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“Chinese investigators announce cause of mysterious shaking in Shenzhen’s SEG Plaza”
「中国の捜査官が深圳SEGプラザでの不思議な揺れの原因を発表」 July 15, 2021
・Planned work includes removing antennas and repairing damage – but plaza will no longer be among Shenzhen’s 10 tallest buildings.
計画されている作業には,アンテナの取り外しと損傷の修復が含まれるが,プラザは深圳で最も高い10の建物の1つではなくなる。
・Property agent says the landlord may have to offer substantially discounted rent to get tenants back and restore confidence.
不動産業者は,家主がテナントを取り戻し,信頼を取り戻すために大幅に割引された家賃で提供しなければならないかもしれないと言っている。
(5月18日,建物が揺れ(sway)始めたとき,深圳のSEGプラザから何千人もの人々が避難した。 2ヶ月後,調査員は問題を解決するための説明と計画があると言う。)
調査員(investigators)によると,2ヶ月前の深圳のSEGプラザでの不思議な揺れ(mysterious shaking)の主な原因は,建物の上部にある2つの長いマストからの「渦によって引き起こされた共振(vortex-induced resonance)」だった。
木曜日(7月15日)の声明によると,建物は全体的に安全であるが,長いアンテナの取り外しや過去20年間に「蓄積された損傷(damage accumulated)」の修復など,必要な修正(rectification)作業には1ヶ月以上かかると予想された。
華強北電子機器地区(the Huaqiangbei electronics district)にある350m(1,150フィート)のランドマーク的な超高層ビルが5月18日の午後に揺れ始め,当局は何千人もの人々を建物から避難させた。その後(the following days),さらに震え(tremors)が報告された後、安全検査のため閉鎖された。
声明によると,2ヶ月のテストの後,調査員は,プラザの下を走る地下鉄,空調装置や近くの建設プロジェクトによって引き起こされる振動などの潜在的な要因を除外した。
「SEGプラザの建物の振動は,渦によって引き起こされる屋上マストの共振と建物の動的特性の変化の組み合わせによって引き起こされる」と声明は述べている。
調査員は63回の振動試験を実施し,マストが2.12 Hzの周波数で振動するとき,建物の「曲げおよびねじれ振動(bending and torsion vibration)」が発生したことを示した。専門家チームは,建物は過去20年間,特に屋上マストに接続された床が「累積的な損傷(accumulative damage)」を受けていたと述べた。しかし,彼らはそのような損傷は建物の全体的な安全性に影響を与えなかったと強調した。
調査結果に基づいて,屋上マストの取り外しと損傷部分の修理を含む修正計画が提案された。
マストを取り外した後,現在 深圳で5番目に高い建物であるSEGプラザは,292mに縮小され,市内で最も高い10の高層ビルの1つではなくなる。
建物のある福田区(Futian district)のスポークスマンは,政府は影響を受けたテナントに一時的なスペースを提供し続けると述べた。
「屋上マストが取り外され,必要な修理作業が完了するとすぐに,テナントはオフィスやショップに戻ることができる」と彼は述べた。
5月下旬に引っ越した呉(Wu)という電子卸売業者は,問題が解決されたことを喜んでいるが,別の建物に「より良い長期的な解決策」である恒久的なスペースをすでに見つけていたと述べた。「政府の調査官はこの問題に非常に熱心に取り組んできたと思うが,個人的には,100%の安全を保証できる人はいないと思う。自分のビジネスが再び中断するのを避けたいだけだ。」と,セルフィー・リング・ライト(selfie ring lights)やその他のライブ・ストリーミング機器を販売しているウー氏は述べている。
深圳の ‘Centaline’ 不動産業者は,オーナーが家賃を大幅に引き下げない限り,「SEGプラザ」が損失を取り戻すことは「楽観的」ではないと述べた。「テナントが [深圳]の他の場所を見つけるのは難しくない。オーナーは,テナントの継続を促すために大幅な割引を提供する必要がある。」と名前を明かさなかった代理店は語った。
「家主(landlord)が家賃を半額にしたとしても,何人残るだろうか?」 彼女は自問し,「経験から判断すると,多くは残らないと思う。信頼を取り戻すには長い時間がかかる。」
香港大学建築学部のウルリッヒ・キルホフ(Ulrich Kirchhoff)准教授は,タワーの振動は偶発的な事故(one-off-incident)であったため,政府の報告書では「主要構造物の安全性は健全であると考えるのが正しいかもしれない」となるだろうと述べた。
しかし,本土のメディアは,建物が1階あたり平均2.7日の建設スピードで急いでいると報告しており,彼は建物の建設の速さについて懸念を抱いている。
「潜在的に,建物の品質は,早期建設(fast-track construction)のために損なわれる」と彼は言った。「さらに,人々はもはや建物の完全性(integrity)を信頼しないと思う。心理的ダメージは実際の体調よりも深刻な場合がある。」
(転載了)
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トップにマストがあるのに気が付きませんでした。
結論は-
・マストのカルマン渦(Karman Vortex)起振力との共振
(建築後20年になるので カルマン渦発生の風速は過去 いくらでもあったと推測されるが,マストの固有振動数が高く,共振しなかった。最近,マスト基部の構造が経年劣化で弱くなった結果,マスト基部のバネ定数低下 → マストの固有振動数低下 → カルマン渦発生振動数と一致,共振)

・マストの振動が ビル本体構造に伝播・起振。
-ということのようです。
マストが共振状態になったからといって,ビル本体を揺らす力があるのか-の疑問もある。
円柱マストにカルマン渦が発生した時の対策として よく紹介されるのは,ワイア(それなりの太さの)をスパイラルに巻いて空気の流れを乱す方法です。
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