“AMETORA” の著者とのインタビュー
2015/12/1,出版社 ‘Basic Books’(米)から “AMETORA/How Japan Saved American Style” という本が出版されました。
著者は W. David Marx。本の内容について 出版社のサイトには次のように書かれています。
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最近の典型的な「アメリカ」の衣料品をよく見ると,中に日本のラベルが入っているのを見て驚くことがあるかもしれない。最高級のデニム(high-end denim)からオックスフォード・ボタンダウンまで,日本のデザイナーは「アメトラ(ametora)」,あるいは「アメリカン・トラディショナル(American traditional)」として知られるクラシックなアメリカン・ルックを採用し,ユニクロ,鎌倉シャツ,エヴィス(Evisu),カピタル(Kapital)などの企業にとって巨大なビジネスに変えた。この現象は,日本とアメリカのファッションの間の長い対話(dialogue)の一部である:実際,現代アメリカのワードローブの基本的なアイテムや伝統の多くは,日本の消費者とファッション専門家(fashion cognoscenti)の管理(stewardship)のおかげで今日も健在である。彼らは,生まれ故郷(native land)で流行遅れになった(out of vogue)時期に,これらのアメリカのスタイルを儀式化し(ritualized),保存した(preserved)。
“Ametora” では,文化史学者(cultural historian)の W.デビッド・マルクスが過去150年間のアメリカのファッションの日本での同化(assimilation)をたどり,日本の流行仕掛け人(trendsetter)や起業家がどのようにアメリカのスタイルを模倣(mimicked),適応(adapted),輸入,そして最終的に完成させ,日本の文化だけでなく,その過程で私たち自身をも劇的に再形成したかを示している。***********************
‘The Wall Street Journal’ の姉妹誌の週刊誌/新聞である ‘Barron's’ のサイト ‘PENTA’,Feb. 24, 2020付けに 著者 W. David Marx とのインタビュー記事がありました。
下記,拙訳・転載します。
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“20 Minutes With: W. David Marx on How Japan Saved Traditional American Style”
「『日本が伝統的なアメリカン・スタイルをどのように救ったか』に関するW.デビッド・マルクスとの 20分間」
W.デビッド・マルクスの本 「アメトラ:いかに日本がアメリカン・スタイルを救ったか(Ametora: How Japan Saved American Style)」は,奇妙な逸話から始まる。1964年の夏,何百人もの10代の若者が銀座の活気に満ちた地区に殺到した(descended)。その銀座が,東京都は,オリンピックのために集まる外国人にとっての,最高の重要な町(the city’s crown jewel)になることを望んでいた。
10代の若者たちは,3ボタンのスーツ・ジャケット,ボタンダウンのオックスフォード・シャツ,チノパン,革のドレス・シューズなど,日本の当局がこれまでに見たことのない服を着ていた。彼らは米国のエリートである東部大学の学生のように目立って(remarkably)に見えた — そして,それがまさにポイントだった。
その外観(look)はアイビー・スタイルとして知られており,それは米国のファッションに対する一人の男性の執着(obsession)の結果だった:それは,先見の明のある(visionary)ブランド,“Van Jacket” の創設者である石津謙介であった。 石津謙介のアイビー・リーグの美学(aesthetic)は,日本の若者に急速に広まった。(その キャッチ・フレーズ(tagline)は “For the young and the young-at-heart” だった。)しかし,警視庁は,これらの変わった服装の(unusually-dressed)若者が,訪ねる観光客に間違った印象を与えるのではないかと危惧し,10代の若者を一斉検挙し(rounded up),警察署にしょっ引いた(hauled)。
それは極端な(drastic)措置であり,最終的には10代の若者が勝利を収めた(win the day):銀座の急襲(raids)は,伝統的なアメリカのスタイルに対する日本での数十年にわたる(decades-long)執着(obsession)の始まりを運命づけた(marked)。アメリカでは使われなくなった織機(looms)で作られたセルヴィッチ・デニム(selvedge denim)やスウェットシャツから,J.プレスなどの伝統的なアメリカのブランドを日本企業が完全に(outright)購入するまで,日本のデザイナーは何十年にもわたってアメリカン・スタイルを採用し,改良し,自身のものとした。 (“Ametora” は “American traditional” を意味する。)
マルクス(41歳)は,東京に住む16年間,この移り変わりを記録してきた(chronicled)。フロリダ州ペンサコーラで育った彼は,17歳のときに初めてホームステイのために日本を訪れた。ハーバード大学で,マルクスは日本の社会と政治に焦点を当てて東アジア研究を学び,日本のストリートウェア・ブランド “A Bathing Ape” に関する卒業論文(senior thesis)を執筆した。それ以来,GQ,Harper’s,Nylonなどの雑誌に寄稿し,東京の慶應義塾大学で商学(business and commerce)の修士号を取得している。
マルクスは最近,アメリカのスタイルに対する日本の影響(逆もまた同様-and vice versa)に関して,“Penta” と話した。
PENTA:あなたの本の多くは,日本人がこれらの 伝統的なアメリカの衣服(traditional American garments)に 如何に興味を持ち,何年にもわたってそれらを改良したかについて書かれている。日本から来るものなら,品質は良くなると思うが,どうして これが(米国から・・・)起こった?
W.デビッド・マルクス:私が興味を持ったことの一つは,日本がどこかクールに,アメリカ合衆国 あるいは 西側の地図に載ったかということだった。日本はどうやってクールになったのか? そうではなかったからである。私の世代は任天堂の最初の世代で,日本はテクノロジーの面で米国よりも 物事が早く起こっていると漠然と感じていたが,日本はそれほどクールではなかった。
80年代後半から90年代初頭に戻ると,日本の報道では,日本の若者の文化,パンクを模倣する人々,または確固としたアメリカの個人主義をその中心に据えることなく,アメリカのカジュアル・スタイルを模倣する,非常に傲慢で非常に失礼な作品がたくさん見られる。日本がクールになった90年代半ばには,それは本当にひっくり返る。
セーターとジーンズとスニーカー(これらの種類のもの)で魅力的であることは,それらが古典的にアメリカのものであるということであり,そして,日本はそれらの第一の(premier)提供者(purveyor)になった。やや意外なことだった。これらの衣料のデザインは,米国の古典的な形と同じである。彼らは新しい種類のスウェットシャツを作ったのではなく,米国で失われた本物の生産技術を復活させただけだった。日本は,過去を保存する場所,そしてあなたに最も本物の物(authentic things)を与える場所として有名になり始めている。
PENTA:あなたの本は,アイビーの服を着た10代の若者についての,この驚くべき逸話(anecdote)から始まる。そして、それがいかにスキャンダラスで,怠慢(delinquent)と見なされたかについてである。それを,本を読んだことがない人のために文脈に入れて,アイビー・スタイルとは何かを説明してもらえますか?
W.デビッド・マルクス:人々は,1945年の戦後,アメリカ兵やアメリカ人が日本に現れ,日本人が彼らのスタイルを模倣し始め,60年代までには誰もがアメリカ人の服を着たという意味で,占領によってアメリカのスタイルが大きく影響したと考えている。しかし,私が調査で気が付いたのは,占領されるようになって,日本人はアメリカ文化を願望としての理想に惹きつけられたということだったが,物質的な意味ではなかった。人々はアメリカ人のようには着なかった。アメリカン・スタイルをはぎ取って日本人に売り戻すようなものを作っている会社はなかった。
それは,本当は,60年代初頭に始まる,一人の男から。この男は “Van Jacket” というブランドを始めた石津謙介である。彼は50年代の終わりにプリンストンに行き,プリンストンの学生が非常にクラシックなアイビー・リーグのスタイル(ツイードジャケット,チノパンツ,ボタンダウンのオックスフォード・シャツ)を着ているのを見た。そして言った「うわー,これを日本で若い人たちに売ることができる。」
それは,まさにオリンピックの時期である1950年代後半から1964年頃に実際に始まる。
それは若者のファッションが本当に非行な(delinquent)ものとして見られた最後の瞬間だった。 そこから,若者の市場は本当に爆発する。
PENTA:この本では,アイビー・スタイルが何度も登場し(reemerges),その間にあるこれらすべてのトレンドを乗り越えているのは興味深いことである。アイビー・スタイルは 今日どのように生き残っているか?
W.デビッド・マルクス:現在,純粋主義者のアイビー・ブームは,日本と世界中で終わっている。
しかし,それは日本のファッション文化の基本に浸透している(seeped)。若者向けファッションの日本最大のブティック・チェーンの1つである “Beams” のようなブランドは,アメリカ東海岸のブランドのように始まる。そして,“Uniqlo” の創業者である柳井正は,父が故郷で “Van Jacket” のブティックを経営していたことから,アイビー・リーグ・スタイルで育った。“Uniqlo” に行っても極端なアイビー・リーグはあまり感じないが,そこに根ざしています。 基本的に日本では,アイビー・リーグ・スタイルがベース・ファッションで,その後は基本的にすべてがバラバラになっている(splintered)ことがわかる。
PENTA:今日のアメリカン・スタイルに影響を与えている日本のスタイル・トレンドは何か?
W.デビッド・マルクス:最も明らかな例は,ブランドそのものということ。
メンズウェアをリードしているブランドを見ると,かなり明確な2つは “Engineered Garments” と “Visvim” である。メンズウェアだけでなく,ストリートウェアとのクロスオーバー・ファンがたくさんいる。日本はトレンドの最初のアイデアを採用しないことがよくある。しかし,日本はそれらのトレンドに合った服を作ることと,雑誌を通してスタイリングを示すことの両方でしばしば最速である。
PENTA:あなたの本を読んだり,「ポパイ」(1976年に創刊された影響力のあるファッション出版物)のようなさまざまな男性誌について読んだりして,トレンドを定義する上で光沢のある(glossy)雑誌がまだ本当に重要だった昔のことを懐かしく思いました。日本にはまだ堅調な(robust)プリント・ファッション雑誌市場がありますか?
W.デビッド・マルクス:はい,間違いない。10年前と比べると輝き(luster)が少し失われているが,米国と比べるとまだ非常に強い。書店に行くと,日本で販売されているタイトルの数に戸惑う(bewildered)だろう。しかし,いくつかのことが継続している:まず,日本には多くのブランド広告があり,ファッション・ブランドにとって,雑誌は依然として最も信頼できる広告掲載場所である。
第二に,日本と米国では雑誌の役割が異なり,最近では,米国は日本の雑誌に非常に似たものになっている。70年代に戻って,“Vogue”,“GQ”,その他のこの種類の雑誌を見ると,それらは特にあまり規範的(prescriptive)ではなかった。それらはあなたに感触を与え,季節が何であるかについての一般的な感覚をあなたに与えるだろう,しかし,それらは「これをしなさい,あれをしなさい(do this, do that)」とは言わない。
日本の雑誌はあなたが物を着る方法について非常に規範的(prescriptive)である。雑誌には価格が示していて,あなたは実際にそれを買うために店に電話をする。日本の雑誌は,カタログとスタイリング・ガイドのように機能する。特に東京の外に住んでいて,これらのトレンドをリアルタイムで見ることができない場合,多くの若者がそう感じる。何を買うべきか,どのように着るべきかについての具体的な指示を得るのは非常に役に立った。
PENTA:東京を訪れる,メンズウェアに夢中になっている友人がいる場合,彼らにチェックを勧める最適なショップはどこか?
W.デビッド・マルクス:有楽町の「ビームス・プラス(BEAMS+)」は,アメリカのクラシックな伝統的なアイテムに極めて優れている(really great)。 「鎌倉シャツ」は、オーダーメイド(made-to-measure)のシャツを手頃な価格(affordable prices)で手に入れるのに最適な店である。デニムに関しては,「フルカウント(FULLCOUNT)」は本当によくできたデニムだが,比較的最小限で(relatively minimal),できるだけオリジナルに近づけようとしている。
(転載了)
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1965年に出版された日本の写真集 “Take Ivy” が 40年後に米国で話題になり,2010年に米国の出版社から 英語版として復刻・再出版されたことからも “How Japan Saved American Style” は正しい表題です。
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