« 久しぶりの 「バームクーヘン」 | トップページ | ‘Made in Japan’ の Brooks Brothers,OCBD シャツ »

2022年2月26日 (土)

「フェリシティ・エース」の火災に関連して- 自動車運搬船の事故。

Autoweek’ サイト,FEB 23, 2022 付けに-
Felicity Ace Fire is Out But Why Do Car Carriers Have So Much Trouble?
Felicity Ace で火災が発生したが,なぜ自動車運搬船はそれほど多くの問題を抱えているのだろうか?」
と題する記事が掲載されていました。

下記,拙訳・転載します。
****************************

There have been eight major incidents since 2002, half of them capsizings.
2002年以降,8件の重大な貨物船事故が発生しており,その半分は転覆している。

001_20220225143501

・北大西洋の自動車運搬船 ‘Felicity Aceで火災が発生したようで,今日,曳航索が取り付けられる可能性がある。

・船は3,965台のフォルクスワーゲン,ポルシェ,ベントレー,ランボルギーニを運んでいた。

・疑問が生じる:自動車運搬船は他の貨物船より危険か?

大西洋岸中部で燃え上がる自動車運搬船「フェリシティ・エース」の劇的な写真は世界中で注目を集めているが,これらの種類の船で,半定期的に発生した最新の事件だった。

ポルトガル海軍の情報筋によると,6日間の火災と噴出する白い煙の後,自動車運搬船「フェリシティ・エース」の炎はおさまった。船には,早ければ今日(223日)にも曳航索が取り付けられている可能性がある。炎は船のいくつかの甲板全体で燃え,その多くはリチウム・イオン電池で動く電気自動車を含んでいた。火災の原因は不明のままである。

しかし,この事件は,いわゆる “ro / ro” 船に関連する驚くべき事故の名簿(roster)を浮き彫りにしている。この名前は,ロール・オン(roll-on),ロール・オフ(roll-off)を意味し,車両を運搬船に積み降ろしする方法を表している。2002年以降,自動車運搬船で8件の重大な事故が発生しており,平均して2年半に1件の事故が発生していることになる。

002_20220225143501

2002年以降の8つの主要な事故リストは次のとおりである:

2002 自動車運搬船「トリコロール(Tricolore)」は 2,871台のBMW,ボルボ,サーブを積載して イギリス海峡で衝突事故を起こし,沈没した。沈没した船は浅瀬に座り,この海域の航行に大きな脅威をもたらした。サルベージ作業には1年以上かかり,「トリコロール」はダイヤモンド(工業用ダイヤモンドだが,それでも)で覆われた(encrusted)巨大なチェーン・ソーを使用して9つのセクションに切断された。「トリコロール」の各部分は海面に運ばれ,リサイクルされた。全ての車はスクラップになった。

2004 自動車運搬船「ヒュンダイ105Hyundai 105)」がシンガポール沖でタンカーと衝突した。シンガポールの海事港湾局によれば,パナマ船籍の積載重量 約280,000トン・タンカー「MTカミネサン(MT Kaminesan)」は,4,191台の現代とキアの新車と 1,9000 台の日本の中古車を積んだ自動車運搬船の側面に165フィートの穴を開けた。。

20064700台のマツダ車を搭載した自動車運搬船「クーガー・エース(Cougar Ace)」が,アリューシャン列島沖でバラスト水を移動させているとき転覆した。ポートランドに曳航されて直立させたが,マツダ車はすべて粉砕・リサイクルされた。

2012 「バルティック・エース(Baltic Ace)」がコンテナ船と衝突し,ロッテルダムの沖合約25マイルで11人の乗組員と共に沈没した。沈没から2年後,「トリコロール」と同様のサルベージ作業が開始された。船は8つに切断され,はしけで運ばれて廃棄された。積載されていた1400台の三菱車は廃棄された。

003_20220225143601

2015 「ホーグ・オーサカ(Hoegh Osaka)」が,バラスト水不足で,重いランド・ローバーが上部甲板に積載されていたため,イングランド沖で左舷に旋回中,転覆した。船はサウサンプトンに曳航され,レンジ・ローバー,ジャガー,ミニを含む1400台の車両を降ろすことができるように直立させられた。

2016 フランスとスペインの間のビスケー湾で,土木設備と丸太を積載していた自動車運搬船の「モダン・エクスプレス(Modern Express)」が 強風のため転覆した。天候が良くなって,船はスペインのビルバオに曳航され,そこで起こされて,貨物が降ろされた。最終的に船を廃棄することが決定された。

004_20220225143601

2019 正常な復元性を保つのに十分な水バラストがなかったため,自動車運搬船「ゴールデン・レイ(Golden Ray)」がジョージア州の沖合で4200台のキア車と現代車を積載して転覆した。船と車は全損を宣言された。

2022 フォルクスワーゲン,ポルシェ,ベントレー,ランボルギーニなどを積載した「フェリシティ・エース(Felicity Ace)」が,アゾレス諸島近くのポルトガル沿岸から1000マイル沖で火災を発生させた。 今朝の時点で,まだ浮かんでいた。

これらは,過去20年間で8回,つまり2年半に1回発生した自動車運搬船の事故である。これは心配すべきレベルなのか? 大いにあるのか?

ロイズ・オブ・ロンドン(Lloyd's of London)は,2018年から2020年までの3年間で年間平均50件の主要な輸送事故を記録し,3年間で合計150件の事故をリスト化している。150の商船のトラブルで1件の自動車運搬船の事故しか発生してないため,自動車運搬船は,その高い側面にもかかわらず,本質的に危険であるようには思えない。しかし,特に「ゴールデン・レイ」の場合のように,休暇中の観光客が完全に見渡せる場所に,肥大化したシロイルカ(bloated belugas)のように横たわっている場合,多くの注目を集める(garner)。

半分のケースでは,それは単にバラストが不足しているか,適切な場所のバラストが不足しているという問題だった。古代には,船が直立して安定した状態を保つために岩や鉛でバラストされていた。現在,バラストはほとんどの場合,水である。これにより,各港で貨物が変更されたり,航行中に燃料を消費して負荷が軽くなったときに,乗組員がバラストを動かすことができる。

また,船は,特定の沿岸環境を非在来の海洋生物(non-native sealife)を含む外来のバラスト水で汚染しないように,異なる港に近づくときに船倉内の水バラストを交換する必要がある。

しかし,古い水を汲み出すときは,同時に同じ速度で新しい水を汲み上げる必要がある。これを2006年の「クーガー・エース」ではしなかった。船会社は,バラスト水を頻繁に置換する必要がないように,UV処理やその他のさまざまな方法でバラスト水を洗浄する実験を行っている。

これらの船にどのように車を積み込むかという問題もある。車は複数のデッキに運転して持ち込まれ,所定の位置に固定される。しかし,上部の甲板に重い車をたくさん積載し,下部の甲板に十分な数の車を積載しないと,2015年の「ホーグ・オーサカ」の事故の場合のように,船はトップ・ヘビーになる。

次に,衝突がある。これは,巨大な看板のような外板を有する自動車運搬船では起こりそうにないようだが,それでも発生する。衝突によって船の特定の断面のみが損傷する場合は,その断面を区画化して(compartmentalized),流入する水の量を制限し,船を浮かせておくことができる。

しかし,火災は海上で最悪の種類の災害になることがよくある。
「フェリシティ・エース」の場合のように,火災はすぐに制御不能になり,船全体に広がり,鋼構造,貨物,さらには塗料さえも燃え尽きる可能性がある。

水で火災に対峙することは,船体の内部で制御されていない周りで,より重い水がスロッシングすることを意味し,船の間違った部分に集まると不安定になる可能性がある。火曜日までに,「フェリシティ・エース」の消防隊は船体に水を噴霧するのではなく,船体の外側に水を噴霧して十分に冷却し,火災によって鋼が溶けて船が沈む可能性が低くなった。

火曜日の夜の時点で,計画は「フェリシティ・エース」をバハマに曳航することだった。フォルクスワーゲン・グループのスポークスマンによると,搭載されている車はすべて廃棄される可能性が高いという。
貨物は自家保険(self-insured)であり,これはVWが損失を受ける(absorb)ことを意味する。それはあなたや私には大変なことのように思えるかもしれないが,VWは昨年900万台の車を販売したので,約4000台は0.04%に相当する。 VWは生き残るだろう。

火災がどのように発生したか,電気自動車をより安全に輸送する方法があるかどうかを判断するには,今後の調査が必要である。ガソリン車は電気自動車よりもはるかに火災が発生しやすいことを念頭において - EVと比較して,ガソリン車とハイブリッド車を組み合わせると,純粋なガソリン車の場合は60倍,ハイブリッド車の場合は200倍の確率で火災が発生しやすい。

それにもかかわらず,車は興味をそそる貨物となる。ある船のエンジニアとして,私たちが話をしたのは,「貨物がランボルギーニとベントレーだったので,みんな興奮している。もしそれが鉄鉱石だったら,誰も気にかけなかっただろう。」

(転載了)
*********************

上述の事故を起こした自動車運搬船のうち,名前に「エース(ACE)」が付く船の実質船主は(株)商船三井です。
2020
年,モーリシャスで座礁し 燃料油 約1,000トンの流出事故をおこした,DW 200,000トンの 大型ばら積み船MV Wakashio” の運航担当も(株)商船三井 でした。

直接,商船三井が運航してない船の日本人ではない乗組員の教育や質に問題は?

又,バラスト水の量を変えないでバラスト水を置換する方法としては 新しい海水をポンプで押し込んで古い海水バラストをデッキの孔からオーバーフローさせる方法が一般的に採用されているようです。「クーガー・エース」の場合,一旦 バラストタンクを空にした後,新しい海水を入れる方法だったため 復元性に問題が生じたものと思われます。

「フェリシティ・エース」の状況を報せる “Felicity Ace Incident Information Centre” によるとー

シンガポール2022年2月25日付(続報6)
MOL Ship Management (Singapore)(以下「船舶管理会社」)が管理する自動車運搬船“FELICITY ACE”(以下「本船」)の火災事故に関し、情報を更新します。

本船からの煙は現状収まっており、視認されていません。現在、本船からの油の流出は確認されておらず、船体姿勢も安定しています。 

サルベージチームがヘリコプターで本船に乗船し、アゾレス諸島沖の安全海域に向けて大型救助艇「Bear」により曳航を開始しています。
2隻の大型タグボート「ALP Guard」と「Dian Kingdom」および、消火能力と曳航能力を有した救助艇「V.B. Hispania」も、本船のエスコートの為に並走しています。

商船三井と船舶管理会社およびサルベージチームは、今回の事故の早期解決に向け、現地当局及びアゾレス諸島の関係者とともに事態の収束に努めます。

シンガポール,2022年2月24日付(続報5
MOL Ship Management (Singapore)(以下「船舶管理会社」)が管理する自動車運搬船“FELICITY ACE”(以下「本船」)の火災事故に関し、情報を更新します。

本船は、現在アゾレス諸島から南方に島から離れる方向に移動しており、引き続き本船からの白煙が目視できる状況ですが、煙の量が減っている事が確認されています。
現在、本船からの油の流出は確認されておらず、船体姿勢も安定しています。 

引続き2隻の大型タグボートにより、船体を冷却すべく本船に放水を継続しています。消火能力と曳航能力を有した追加の救助艇2隻も現場に向かっており、両船とも現地時間の本日中に現地に到着する予定です。 

安全が確認でき次第、今後サルベージチームが本船に乗船し、曳航準備や消火活動の計画を策定していく予定です。
商船三井と船舶管理会社およびサルベージチームは、今回の事故の早期解決に向け、現地当局及びアゾレス諸島の関係者とともに事態の収束に努めます。

| |

« 久しぶりの 「バームクーヘン」 | トップページ | ‘Made in Japan’ の Brooks Brothers,OCBD シャツ »

ニュース」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 久しぶりの 「バームクーヘン」 | トップページ | ‘Made in Japan’ の Brooks Brothers,OCBD シャツ »