Brooks Brothers の迷い,進むべき方向。
米国のメンズ・ライフスタイル雑誌 ‘GQ’ の US電子版の ‘Style’ に-
“Does Brooks Brothers Really Need to Be Reinvented?”
「ブルックス・ブラザーズに本当に改革が必要なのか?」と題する記事が掲載されていました。
若干 長い記事ですが,近年の ‘Brooks Brothers’ の製品傾向のふらつき,破産,新しくcreative director として採用された Michael Bastian (マイケル・バスティアン)の考えなどが示され,最近の ‘Brooks Brothers’ の状況がよくわかります。
下記,拙訳・転載します。
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新しいデザイナーのマイケル・バスティアン(Michael Bastian)は急進的な(radical)アイデアを持っている:おそらく,ブランドを完全に(top-to-bottom)更新する代わりに,‘Brooks Brothers’ が本当に必要としているのは,クラシックで高品質の服を作ることである。
BY RACHEL TASHJIAN,February 3, 2022
新しいオーナーである ‘Authentic Brands Group’ が2020年8月に ‘Brooks Brothers’ を破産から救い出し(yanked),数ヶ月後にマイケル・バスティアンをブランドの新しいクリエイティブ・ディレクターに任命したとき,それは懐かしい動き(nostalgic move),あるいは保守的な動きのように見えた。バスティアンは,#menswear全盛期(heyday)に,‘Gant’,‘Mark McNairy’,‘Thom Browne’ などの生意気な(cheeky)プレップスターと共にメンズウェアのコードを洗練させ,大成功を収めた同名の(eponymous)ブランドを構築した - しかし,‘Gant’ と ‘McNairy’ はもはや定期的なコレクションを作成していないが,‘Browne’ は 男女兼用の衣服(gender fluid dressing)で 傑出した(preeminent)名前になっている,一方,バスティアンの服はかつてバスケットボール選手の間で人気があったが,試合前の地下通路は現在,‘Kapital’, ‘Balenciaga’, ‘Fear of God’ などのブランドの高級ストリートウェアで占められている。(面白いことに,豪華な仕立てとスポーツウェアを組み合わせたジェリー・ロレンソ(Jerry Lorenzo)のラインは,バスティアンの真の後継人かもしれない。)
このような変化の中で,バスティアンは ‘Brooks Brothers’ の運転席に座り,着実に発車した。彼はこれまでに5つのコレクションをデザインしたが,納期とサプライ・チェーンの問題により,彼の最初の2021年秋モノだけが店舗に到着した。2022年春モノは先週 到着し始めた。すべてが適切であり、非常にプレッピーでさえある。
2022年春のフル・オファリングは,‘Wasp’の休暇生活の2つの「クリッシュ」,‘Palm Beach’ と ‘Nantucket’に触発され,ダブルブレステッド・ジャケット,ボウタイに合わせたチェック柄のブレザー(plaid blazers),オックスフォード・クロス・シャツ,ファン・シャツ(fun shirts),シアサッカー・カフ付きのマドラス・アノラックがある。気まぐれで(whimsical)どうしようもない(go-to-hell)のプリントと,たくさんのシアサッカーがある。 言い換えれば,昔からの ‘Brooks Brothers’ があなたに用意し,あなたの父親と彼の父親は皆,覚えており,皮肉のないもの(irony-free)を提示した。
それがポイントだ,とバスティアンは昨年末のビデオ通話で語った。ブルックス・チームとの話し合いを始めたとき,彼は「‘Brooks Brothers’ から失くなって,もうやっていなかったことをするために」彼の名を冠したラインを始めたことを呼び戻した。これは,ベンガルのストライプ・シャツ,テニス・セーター,オックスフォード。クロスのシャツ,ワイド・チノパンを意味する。言い換えれば,「非常にシンプルで基本的な製品。現時点で最もホットなものではないかも知れないが,常にそこにある必要がある。
このような信頼性の基盤は,‘Brooks Brothers’ のようなブランドにとって非常に重要だ。」これは,リーバイスが常に501または5ポケット・コードを使用する方法である。または,お気に入りのTシャツの作成者が,何らかの理由で突然これらのものを作らなくなる可能性がある時に対する防御策である。彼は,ブランドがそれらを作るのをやめた場合,それが「裏切り(betrayal)のように感じる」ものを中心にブルックスを構築したかった。
どれも素晴らしく聞こえる。しかし,我々はエメ・レオン・ドレ(Aimé Leon Dore)やノア(Noah)のようなブランドが現代の若者のために用意したスポーツウェアを改変した(rejiggered)世界に住んでいるので,バスティアンが製品を十分に改革しているかどうか疑問に思うのは当然である。
しかし,バスティアンは自分自身を,彼のファッション性の高い真正性(bonafides)を苦境に立つ(beleaguered)ブランドにもたらすために招かれた創造的なダイナモとは見なしていない。代わりに,彼は自分の役割をまったく異なるものとして見ている:エゴがなく,製品についての詳細を知っている。彼は,インスタグラムでのコメントや,‘Brooks Brothers’ のウェブ・ストアでの顧客の癖(habits)を追跡しながら,顧客について執拗に考えている。「私はただ考えている- そして,おそらくこれは私の人生と私のキャリアのこの段階にあることからだ -私は車輪の改革をする必要はない」と彼は先月のビデオ通話で言った。
「それと同じで,オックスフォード・クロスのシャツは完璧だ。私がする必要があるのは,それを守り,最高の形でそこにあることを確認することだけだ。」靴下ガーター(sock garters)やバック・ボタン・ボクサーパンツのようなスタイルの時代錯誤(anachronisms)と同じだ。‘Brooks Brothers’ は,彼が知っているように,「そこにいる多くの人が愛しているこれらすべてのクレイジーな小さなメンズウェアのものがある。そして,我々はそれを行う最後の場所だ。」
「デザイナーとして,あなたはブランドがあなたよりも大きいという考え方に身を置く必要がある。」と彼は続けた。「私はそれでとても快適だ。このブランドは200年以上の歴史があり,それは私と,私たち全員の後にずっと続くだろう。私にできる最善のことは:関連性を保ち,軌道に乗せ,アイコンを磨き,より ‘Brooks Brothers’ にすることだ。」
言い換えれば;‘Brooks Brothers’ で,バスティアンは ‘Brooks Brothers’ を改革していない。 代わりに,彼はブランドの改革のアイデアを改革している。
メンズウェアのブランド・リフレッシュ・プレイブックは比較的シンプルである。 過去10年間,改革は,J.Crewや ブルックスのような中価格の小売業者が高級ブランドと競争するための方法だった - もし競争しない場合は,精神的に彼らに似ていると位置付け,サン・ローラン(Saint Laurent)やブリオーニ(Brioni)と一緒に男のクローゼットに並ぶ価値のある服を作ることになる。J.Crewは,フランク・ミュイチェンス(Frank Muytjens)の下で,エディ・スリマン(Hedi Slimane)の細いシルエットとマッド・メン(Mad Men)の純粋なままの(pristine)仕立てを反映したスーツを量産した(churned out)。(ジェナ・ライオンズ(Jenna Lyons)の下にある婦人服は,プラダの隣に座らせてもらうように頼んだようだった。しばらくの間,そのけばけばしい(screaming)カシミアのセーターとスパンコール(sequin)のスカートが ネッタポルテ(Net-a-Porter)によって拾われた。)
‘Brooks Brothers’ はトム・ブラウン(Thom Browne)を雇い,ブラック・フリースと呼ばれる高級な(fancy)ラインをデザインした。 その後,若い社会の第一人者(doyennes)のための,フィギュアを抱き締めるガウンで最もよく知られているザック・ポーゼン(Zac Posen)をクリエイティブ・ディレクターとして雇った。牽引力(traction)を獲得する方法は,優れた製品を作成することではなく(ただし,ブルックスでのブラウンの仕事は確かに時代を先取りしていた),大きくて派手な製品を作成することだった。
このすべての変化は,2008年の金融危機とその余波の中で起こった。しかし,その危機が中産階級を財政的および精神的に全滅させた(obliterated)ように,単に良い,高品質の服のアイデアもその光沢(luster)を失ったようだ。これは私が去年の春,Noah のデザイナーであるブレンドン・バベンジエン(Brendon Babenzien)と話し合ったもので,彼がJ.Crewの新しいトップに就任する(took the reins)直前だった。バベンジエン氏によると,お金を持っている人は特定の商品を購入し,収入やライフスタイルに合わせて特別な願望(aspirations)を持っていたのに対し,お金をあまり持ってない人は別の商品を購入していた。
今,彼は言った,誰もが同じライフスタイル,製品,そして外観を目指している。「それは徹底している(from top to bottom):誰もが情報を共有し,誰もが製品の購入を通じてまったく同じライフスタイルを追求している。」と彼は言った。「私にとって,それは本当に創造性を制限する。誰もが同じように見え,同じであり,同じように行動し,同じ音楽を聴き,同じ言葉を言いたいだけである。それは,多様で,ユニークで,創造的な社会であるべきものにとっての惨事(disaster)である。」
また,‘Zara’,‘Asos’,‘H&M’ などのファスト・ファッション ブランドが,単に高級ブランドを参照したり,ノック・オフしたりするのではなく,それらのブランドと同じモデル・エージェンシー,写真家,スタイリストを使用している場合,違いを区別することはほぼ不可能になる。他の方法で服を着たいという欲求は消えるようにみえる。言い換えれば, ‘Brooks Brothers’ や J.Crewのようなブランドが行き詰まり(falter)始めたように,他のすべてがファッションになりつつあった。
これは,シンプルな服が欲しかった人にとっても(バベンジエンの言葉を使うと)惨事だった。バベンジエンの最初のJ.Crewのコレクションは,今年の後半に披露する(drop)予定だが,彼のNoahは,ワードローブの基礎を形成するシンプルな服ですでに評判を確立している。J.Crewでの彼の挑戦は,それらのファンを彼と一緒に連れてくるだろう。
一方,バスティアンは,このより単純な(straightforward)製品主導の戦略ですでに成功を収めている。「私はここに1年ギリギリいて,シーズン5をやっと終えたところだ。」と彼は言ったが,その作品はすでにオンライン買い物客に受け入れられている:「顧客は非常に意見が分かれている(opinionated)。つまり,『セーターがきつすぎる』,『チクチクし(scratchy)過ぎる』などのコメントが付いている。そしてそれはまるで,このブランドがまさにその墓にあったように気づく!正しい方向に進んでいる製品が戻ってきたことをとてもうれしく思う。」
バスティアンの最大の課題は,‘Brooks Brothers’ がまだ若い顧客に大きな影響を与える必要があるということである。(あなたのように,これを読んでいる人!)私は彼が ‘ALD’ と ‘Noah’ の復活の準備で何を作ったか尋ねた。記録のために,彼はそれを愛している:「驚くこと?そういうわけでタイミングも正しいと思う。十分に長生きした場合のように,これらのサイクルを繰り返す。」
彼は1980年代の ‘The Preppy Handbook’ を経験し,その後,彼のブランドでこれらのコードの復活を主導した。 「そして今,それはまったく新しい方法で戻ってきている。これは,より包括的で,少しクールで,性別固有のものが少し少なく,本当に素晴らしい。それはそれを再び新鮮で刺激的なものにする。そして,それらのアイデアはすべて,‘Brooks Brothers’ にとって本当に素晴らしいものである。ほこりを払うのに最適な時期だと思う。」
しかし,若い男たちはまだブルックスを「私の父のお気に入りの店」と見なしていると彼は言った。もちろん,開始する場所の1つはアーカイブである。‘Brooks Brothers’,‘Banana Republic’,‘J.Crew’ などのブランドは,北米自由貿易協定(NAFTA:North American Free Trade Agreement)が合成物を普及させる(ubiquitous)前に作られたシンプルな綿,リネン,ツイル・パンツとジャケットでいっぱいだったという理由で,自慢の(vaunted)デザインの遺産を持っている。そして今,彼らはついに,ほとんど混じりけのない(unadulterated)形で,戻ってくることをいとわない。「アーカイブは文字通り底なしだ」と彼は言った。「古いカタログのほとんどがある。 我々はそこを通り抜けると,あなたは最も常軌を逸した(insane)ものを見つけるだろう。‘Brooks Brothers’ は常にテーラード・ウェアであるという認識がある。そこには常にこのスポーツウェアのコンポーネントがあったが,ほとんどの人にとっては頭に浮かぶことではないかもしれない。」
最近,彼は,ヒッピーの顧客を獲得するためのブランドの策略(ploy)である「ブルックス・ゲート」と呼ばれる70年代からの廃止された「ディフュージョン・ライン」(有名デザイナーによる廉価版:diffusion line)に夢中になっている。(当然,オンラインでフォローしている熱狂的集団(cult)がある。)
「ここで,ブーツカットのチノパンのような奇妙な小さなものを見つけることができる」と彼は言った。
「彼らはレーダーの下で最初のノン・アイロン・シャツを開発した。 そして,信じられないほどのカラーブロック・ダウン・ベストのような本当にクールなアウターウェアは,‘Brooks Brothers’ のものである。」
その歴史は,「本物の方法で,ほとんど何でもする機会を私たちに与えてくれる」と彼は言った。彼のブルックスは,他の誰かのルックブックから借りたり,存在しない新しい遺産を作成したりする必要はない。「だぶだぶのズボン(baggy pants)が欲しいですか?私たちはそれをした」と彼は言った。 「スキニー・パンツが欲しいですか? やった。あなたは ソフト・ショルダー,それとも ストロング・ショルダーが欲しいですか? ダブルブレスト? このブランドはそれをすべて行った。」
それで,バスティアンは本当にブーツカット・チノパンを作りたいのですか? 「そうだ」と彼は言った。「まあ,私はここにはまだちょっとしかいない。私の仕事の最大の部分は,これらすべてのアイコンが処理されていることを確認することだ。第二部は,それらのファッショナブルな(fashion-y)ものをもっと紹介することだ。」
まず,彼は ネイビー・ブレザー,シェトランド・セーター,ボクサー・パンツを以前の栄光に戻す必要がある。「そして,[その顧客]が店に戻ってきて,快適に来店できるようになると,[私は]しばらく見たことのなかったものや,もっとおしゃれなもの,またはもっと贅沢なもの,あるいは 彼らが試してみたいと思うかもしれないフィット感で彼らを誘惑することができます。」
言い換えれば,‘Brooks Brothers’は,非改革-改革(non-reinvention-reinvention)のために完全に準備ができている(primed)。ミレニアル世代とZ世代は,それ自体がトラッド・ドレッシングに戻っていない可能性がある,正確な意味においては(per se)ブルックスのウェブサイトやルックブックのプレッピーなスタイルはあまりにも攻撃的(aggressive)だと思う人もいると思うが,センスは良いが品質が期待外れ(under-deliver)なインスタグラムの風格(patina)を約束する直販(direct-to-consumer)製品の劣悪さにますます慣れている(attuned)。したがって,よりよく作られたヴィンテージ・ファッション,クラシックなレストラン、そして古き良き時代のデートへの関心。
「ご存知のとおり,」バスティアンは言った「世界で最も奇妙なことは,男性の車輪が非常にゆっくりと回転するため,最も進んだ人と最も進んでいない人が重なることである。祖父がまだ着ているような,ダブル・プリーツのバギー・パンツのように,そして20代の若いクールな男のように,その大きなバギー・ハイウエストのダブル・プリーツパンツを望んでいる。」
もちろん,それは ‘Brooks Brothers’ がほぼ1世紀にわたってオンとオフを繰り返してきたようなものである。 「そして,私たちはその波に乗っているようなものだ。」
(転載了)
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私は 1985年頃から ‘Brooks Brothers’ を買い始め,1995年から2005年の10年間に買った衣料はほぼ ‘Brooks Brothers’ の製品でした。その終わりの頃から「らしさ」が薄れてきたような気がしていました。
8年前に リタイアしてからは ほとんど買うことはありません。
そのうち,どのような変化が起こっているのか覗いてみましょう。
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