国連人権理事会でのロシアのメンバー資格停止に反対した国,棄権した国。
国連総会(193ヶ国)は4月7日に開いた緊急特別会合で,国連人権理事会におけるロシアのメンバー資格を停止する決議案を採決しました。賛成国:93ヶ国,反対国:24ヶ国,棄権国:58ヶ国でした。
決議は,ウクライナに侵攻したロシア軍による「重大でかつ組織的な人権侵害と乱用」を指摘,「ウクライナにおける人権と人道危機に重大な懸念」を表明するとしました。
採択には,投票した加盟国のうち3分の2以上の賛成が必要で棄権票は投票とは見なされません。
ロシアは今回の決議案の採決について,賛成票を投じたり,棄権した場合には,二国間関係に影響を与える「非友好的な意思表示」と見なすと警告,脅しを与えていました。
国連の公式サイト ‘United Nations/UN News’ は この状況を7 April 2022付けで 伝えています。
下記,拙訳・転載します。
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“UN General Assembly votes to suspend Russia from the Human Rights Council”
「国連総会,人権理事会からロシアを一時停止する投票実施」
国連総会は木曜日(4月7日)に,ロシアが人権理事会(the Human Rights Council)から停止されることを求める決議を採択した。
決議(resolution)は,193名の議員会議で,93ヶ国が賛成,24ヶ国が反対票を投じ,棄権を差し引いた投票の3分の2の多数票を獲得した。58ヶ国が棄権した。
反対票を投じたのは,ロシア,中国,キューバ,北朝鮮,イラン,シリア,ベトナムなどだった。
棄権国には,インド,ブラジル,南アフリカ,メキシコ,エジプト,サウジアラビア,アラブ首長国連邦,ヨルダン,カタール,クウェート,イラク,パキスタン,シンガポール,タイ,マレーシア,インドネシア,カンボジアなどが含まれる。
この会議は,ウクライナでの戦争に関する特別緊急セッションの再開を示し,ロシア軍による違反の報告に続いた。
先週末,首都キーウ(Kyiv)の郊外にあるブチャ(Bucha)市から憂慮すべき(disturbing)写真が明るみに出た(emerged)。そこでは,ロシアがこの地域から撤退した後,通りや集団墓地で数百人の民間人の死体が発見された。
投票に先立ち,ウクライナ大使のセルギー・キスリツヤ(Sergiy Kyslytsya)は,決議を支持するよう各国に促した。
「ブチャと他の数十のウクライナの町や村では,数千人の平和な住民がロシア軍によって殺され,拷問され(tortured),レイプされ,誘拐され(abducted),奪われた。これは,ロシア連邦の人権ドメインにおける最初の宣言からどれほど劇的に進んだかを示す例である。そのため,このケースは他にないもので,今日の対応は明白で自明である」と彼は述べた。
加盟国が人権理事会のメンバーシップを停止したのはこれが初めてではない。リビアは,後に転覆した統治者ムアンマル・カダフィによる抗議への弾圧を受けて,2011年に議席を失った。
ロシアの副大使であるゲンナジー・クズミンは,投票前の発言で,「既存の人権構造を破壊しようとする西側諸国とその同盟国による試みに反対票を投じる」よう各国に求めた。
Parallels with Rwanda
ルワンダとの類似点
投票はルワンダでの1994年の大量虐殺の記念日に行われ,ウクライナ大使は最近の歴史の中でこの暗いページとの類似点を示した。
「ルワンダでの大量虐殺は,国連が 国連安全保障理事会と総会で警告に対応しなかったときの世界のコミュニティの無関心(indifference)によるものだった。この悲劇の1年前,私たちはまさにこの日に追悼する(commemorate)。」とキスリツヤは述べました。「今日,ウクライナの場合,悲劇が目の前で起こっており,1年も経っていない。」
Grounds for suspension
停止の根拠
国連人権理事会は47名のメンバーで構成され,ジュネーブを拠点としている。ロシアは,2021年1月に,総会によって3年の任期を務めるように選出された15ヶ国の1国として組織に加わった。理事会を設立した2006年の決議の下で,総会は,重大かつ体系的な人権侵害を犯した場合,その国の加盟を停止することができる。
Russia quits Council
ロシアは理事会を辞任する
決議案の採択後,クズミン(Kuzmin)副常駐代表は突然,ロシアは,任期満了前に理事会を辞任することを,その日すでに決定していると述べた。彼は,理事会が短期的な目的のために,それを使用する国のグループによって独占された(monopolized)と主張した。
「これらの国は何年もの間,露骨で(in blatant)大規模な,人権の違反に直接関与しているか,またはそれらの違反を扇動してきた(abetted)。」と彼は通訳を介して語った。
「理事会のメンバーであるにもかかわらず,彼らは特定の国との真の協力と,人権状況の安定化のために短期的な政治的および経済的利益を犠牲にしようとしてない。」
‘Dangerous precedent’: China
「危険な前例」:中国
中国は決議に反対票を投じた国の1つだった。
張軍(ZHANG Jun)大使は,国連総会での性急な(hasty)動きは,分裂を悪化させ(aggravate),紛争を激化させ,和平努力を危うくする(jeopardize)ので,「火に油を注ぐ」ようなものになるのではないかと懸念した(feared)。「このように人権理事会のメンバーを論じる(deal with)ことは,新たな危険な前例をもたらし,人権の分野での対立をさらに激化させ,国連の統治システムにより大きな影響をもたらし,深刻な結果をもたらすことになる。」と彼は述べた。
EU commends ‘rare decision’
EUは「特別な決定」を称賛
欧州連合(EU)にとって,ウクライナでのロシアの侵害,および国の領土保全と主権の規模と重大さ(scale and gravity)は,強力で統一された国際的対応が必要とされている。
「この総会が今日下した特別な決定が,説明責任(accountability)の強いシグナルを送り,更なる人権侵害の防止と阻止に役立つことを願っている。」と、EU代表団の責任者であるオラフ・スクーグ(Olaf Skoog)大使は述べた。
A step in the right direction: USA
正しい方向への一歩:米国
米国が,終日の会議で最後に発言した国だった。
リンダ・トーマス・グリーンフィールド(Linda Thomas-Greenfield)大使は,決議の採択を「重要かつ歴史的な瞬間」と述べた。それはロシアに対する説明責任だけでなく,ウクライナの人々と一緒に立つことでもあると彼女は言った。
「今日,国際社会は正しい方向への全体としての(collective)一歩を踏み出した。私たちは,永続的で(persistent)悪質な(egregious)人権侵害者(human rights violator)が国連で人権の指導的立場を占めるこが許されないことを保証した。」とトーマス・グリーンフィールド氏は述べた。
「私たちは,この謂れのない(unprovoked),不当で(unjust),不道徳な(unconscionable)戦争についてロシアに責任を負わせ続けよう -そして,ウクライナの人々を支持するために私たちの力のすべてを行おう。」
(転載了)
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投票の賛成国,反対国,棄権国を下表に示します。
ロシアは,棄権した場合にも,「二国間関係に影響を与える『非友好的な意思表示』と見なすと警告,脅しを与えており, ロシアの報復を恐れながらも反対票をいれず,棄権票を投じた国がかなりあったと思われます。
それにつけても,安全保障理事会のメンバーに当事国がいたのでは 国連として機能しようがありません,どうすれば外せるのでしょう?
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