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2022年6月 1日 (水)

米国で 有効な銃規制法が成立しないのは何故か?

5月に相次いで多数の死者を伴う銃乱射事件が発生した米国では その度に 銃規制論争があります,しかし ― 。

The Atlantic’ の電子版,May 26,2022付けに
The Real Reason America Doesn’t Have Gun Control
米国に銃規制がない本当の理由
と題する記事がありました。

以下,拙訳・転載します。
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The basic rules of American democracy provide a veto over national policy to a minority of the states.
米国の民主主義の基本的なルールは,少数の州に国家政策に対する拒否権を与えていること。

By ロナルド・ブラウンステイン(Ronald Brownstein):アトランティックのシニア・エディター,CNNのシニア政治アナリスト。

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米国人の生活に悲劇的なバックビートをもたらす銃乱射事件が繰り返されるたびに,同じ絶望的な(doomed)法律制定(legislation)のダンスがすぐに始まる。

憤慨した行動の要求は議会で 否応なく狂わされ(derailed),銃規制の支持者を失望させ,一般市民を困惑させ(perplexed),全米ライフル協会(the National Rifle Association)の影響力または議会の共和党員の非妥協的な(intransigent)反対を指弾する(point their fingers)。これらは両方とも正当な要因だが,ビル・クリントンの最初の大統領任期以来の銃規制法の行き詰まり(stalemate)は,最終的にははるかに深刻な問題にかかっている:それは,米国の政治における多数決の危機(crisis of majority rule)の高まりである。

世論調査によると,米国人は銃規制が銃の暴力に関連するすべての問題を解決するとは考えていないが,大多数は,普遍的な身元調査や攻撃兵器(assault-weapons)の禁止など,銃規制の支持者の中心的な優先事項を支持している。しかし,この圧倒的なコンセンサスにもかかわらず,昨日のテキサス州ユバルディ(Uvalde)での少なくとも19人の学童と2人の大人の虐殺(the massacre),または昨夜のジョー・バイデン大統領の感情的な懇願(emotional plea)が立法措置(legislative action)につながる可能性はほとんどない。

これは,銃規制が,国の多数意見が上院の規則のレンガの壁(the brick wall)にぶつかる多くの問題の1つであるためであり,議事妨害(filibuster)は,国の政策に対する拒否権(veto)を少数の州 -これらの州のほとんどは小さく,大部分は田舎(rural)で,主に(preponderantly)に白人と共和党が支配している-に与えているためである。

小さな州の不均衡な(disproportionate)影響は,米国の国力(national power)の争い(competition)を形作るようになった。民主党は過去8回の大統領選挙のうち7回,一般投票(popular vote)に勝った,これは,1828年の近代政党制の形成以来,どの政党も成しえてないことである。それでも,共和党は,これらの選挙のうち1回ではなく3回の選挙後,選挙人団(the Electoral College)に2回勝利し,一般投票には負けたが,ホワイト・ハウスを支配した。上院の不均衡はさらに顕著になっている。中道左派(center-left)のシンク・タンクである「ニュー・アメリカ」の政治改革プログラムのシニア・フェローであるリー・ドラットマン(Lee Drutman)の計算によると,上院共和党員は,1980年以来わずか2年間だけ,州の人口がその上院議員に割り当てられるとすれば,米国の人口の過半数を代表してきた,しかし,主に小さな州を支配しているため,共和党は42年間のうち22年間上院の過半数を支配してきた。

これらの不均衡(imbalances)の実際的な影響は,銃規制に関する最後の本格的な上院の討論によってドラマ化(dramatized)された。コネチカットでのサンディ・フック(Sandy Hook)小学校の銃撃事件の後,2013年に上院は,すべての銃の販売に身元調査を課す,バラク・オバマ大統領が支援する措置に投票した。再び各州の人口の半分を各上院議員に割り当て,法案を支持した54人の上院議員(および手続き上の理由でのみ反対した当時の上院多数党指導者ハリー・リード(Harry Reid))は19400万人の米国人を代表した。法案に反対した残りの上院議員は11800万人を代表した。しかし,立法を投票に移すために60人の上院議員の支持を必要とする上院の議事妨害規則のために,11800万人が勝った。

結果は今日でも変わらないだろう。 昨年,下院は身元調査を拡大および強化するための法律を可決した。しかし,それもまた,上院で共和党の議事妨害によって阻止された。

その通り抜け不能な反対は,銃文化に最も深く専念している場所と有権者への共和党の依存を反映している。

ピュー研究所による昨年の調査によると,銃を持った家庭に住む共和党員の割合(54)は,銃を持っている民主党員の割合(31)をはるかに上回っている。(全体として,ピュー研究所は,大人の10人中4人が銃を持った家に住んでいて,10人中3人だけが銃を持っていることを確認した。)2020年の「ランド・コーポレーション」の調査によると,銃の所有率が最も高い20州が,上院の共和党議員のほぼ3分の250人中32人)を選出し,2020年にドナルド・トランプ大統領を支持した州の約3分の225人中17人)を占めていた(comprised)。ほぼ対照的に(mirror image),銃の所有率が最も低い20州が,上院の民主党議員のほぼ3分の250人中32人)を選出し,バイデンが勝利した州の約3分の225人中16人)を占めていた。銃の所有率が最も低い20の州には,銃の所有率が最も高い州(約6,900万人)の2.5倍以上の住民(約19,200万人)がいる。しかし,上院では,これらの2つの州は同じ重みを持っている。

銃規制に反対する中で,議会の共和党員は明らかに,他の共和党の有権者のそれでさえ,他のどの観点よりも彼らの党の銃所有者の感情を優先している。ピューの調査によると,米国人の大多数が身元調査(background checks)(81),攻撃兵器の禁止(assault-weapons ban)(63),および大容量の弾倉(high-capacity ammunition magazines)の禁止(64)を支持している;過半数はまた,許可なしに武器の隠しての持ち運び(concealed carry)に反対している。銃を所有していない共和党員の大多数は,民主党の銃の所有者と同様に,さらに偏ったマージンでそれらの意見を共有した。銃を所有しているほとんどの共和党員でさえ,身元調査を支持し,許可されてない隠しての持ち運びに反対していると投票で述べた(テキサスを含むより多くの赤い州が許可している)。これらすべてにもかかわらず,共和党の選出された当局者は,銃規制にほぼ反対しており,ほとんどすべての制限をレッド・アメリカの価値観への軽視の兆候と見なすという点で,NRA(全米ライフル協会)のようなグループに傾倒している。

NRAは制度的に弱体化しているが,共和党内でのその影響力は,地理的な線に沿った米国の政治の再構成によって拡大されている。議会がクリントンの最初の任期中にブレイディ法案(the Brady Bill)を通じて国の身元調査システムを作成し,後に攻撃兵器の禁止を承認したとき(それ以降は失効した),地方の構成員を代表するかなりの数の議会民主党員が立法に反対し,郊外の大きな支持者を持つ共和党員がそれを支持した。しかし,30年間の選挙による再分類により,これらのグループは両方とも大幅に縮小した。その結果,2021年に下院が身元調査法案(universal-background-check bill)を可決したとき,8人の共和党員だけが賛成し,1人の民主党員だけが反対した。

上院の小さな州の偏見は,気候変動,中絶,移民など,米国人が広く同意している他の問題に対する立法措置を妨げている。銃規制と同様に,世論調査は一貫して,米国人の大多数が気候変動への行動を支持し,ロー対ウェイド事件(ロー対ウェイド裁判:Roe v. Wade)の転覆に反対し,文書化されていない移民(特に両親によって米国に連れてこられた若者)に法的地位を提供することを含む包括的な移民改革を支持することを示している。下院は,これらの各視点を反映した法案を可決した。これらの問題に対する上院の不作為は,銃の所有率が最も高い州の大きな影響を反映している。これは,文化的に保守的な白人クリスチャンの割合が高く,移民の割合が低い,化石燃料経済に巻き込まれている傾向もある。

ユバルディの悲劇,または将来の別の銃乱射事件の余波で銃規制に関する議会の行動に希望がある場合,それはほぼ確実に議事妨害の改革または排除を必要とするだろう。そうでなければ,米国の政治の基本的なルールは,明らかに大多数の米国人が同意しない場合でも,共和党が彼らの優先順位を課すことを許し続けるだろう。難しい真実は,多数決の体系的な侵食に最初に対処することなしに,銃による暴力が加速する米国の流行(epidemic)に立ち向かう方法がないということである。

(転載了)********************

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銃規制反対の共和党の存在があれば,米国の立法のシステムを変更しない限り,銃規制が今より厳しくなることはなさそうです。

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