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2022年8月14日 (日)

米国人のヨーロッパ旅行が変わる?

ヨーロッパを熱波が襲い,クーラーのある生活に慣れている米国人は真夏のヨーロッパ旅行を考え直す必要があるようです。

The New York Times’ 電子版が Aug. 4, 2022付けで
Stockholm Instead of Rome? October Instead of July? How Heat Waves Are Changing Tourism in Europe
「ローマの代わりにストックホルム? 7月ではなく10月? 熱波がヨーロッパの観光をどのように変えているか」
と題する記事を掲載していました。

下記,拙訳・転載します。
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旅行パターンの変化は,気候研究者が厳しい夏の暑さの「ホット・スポット」と説明しているヨーロッパでより一般的になる可能性がある。

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夏の旅行シーズンのピークである7月中旬,ヨーロッパからのニュースは良くなかった:熱気によって引き起こされた「表面の欠陥(surface defect)」により,ロンドンのルートン(Luton)空港の滑走路が一時的に閉鎖された。線路が過熱したため,イギリス全土で列車が遅れたりキャンセルされたりした。フランスの20以上の気象観測所は,史上最高の気温を記録した。そして,山火事は,フランス,スペイン,ポルトガル,イタリア,アテネのすぐ外を含むギリシャの観光地域で燃え上がった。

「町の中心にいると,アクロポリスを眺めることができ,遠くに赤いもや(haze)が見えることがある」と,消防士によって鎮静された山火事時にアテネにいた ‘Internova Travel Group’ のエグゼクティブ・バイス・プレジデントであるPeter Vlitasは述べている。

ヴリタス氏は,ホテルから煙の臭いがする可能性があり,部屋に細かい灰が吹き込むのを防ぐためにドアを閉めなければならなかったと付け加えた。しかし,アテネでの生活はいつものように快適だったと彼は言った。

「居酒屋は夜いっぱいで,タクシー運転手(cabbies)は忙しい。これは常に素晴らしいバロメーターである」と,まだアテネにいるVlitas氏は言った。「ギリシャはヨーロッパの他の地域と同じように,記録的な数の観光客を経験している。」

2年以上休暇を延期した後,旅行者は,見出しのような天気に直面しても,旅行をキャンセルすることを嫌がる。しかし,業界の何人かの人々は,目的地を交換したり,日中のスケジュールを作り直したり,旅行を12か月遅らせたりして,高温に対応するために計画を調整している旅行者の数が増えていると説明した。

気候変動のペースと軌跡(trajectory)を考えると,このような変化は今後数年で,より一般的になり,より必要になる可能性がある。これは,気候研究者が厳しい夏の暑さの「ホット・スポット」と説明し,将来の熱波がより長く,より頻繁に,より激しくなると予測しているヨーロッパへの旅行に特に当てはまる。

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この夏の観光客数が多いにもかかわらず,暑さが将来の標準になる可能性のある変化を推進しているという微妙な(subtle)兆候がすでにある。ヨーロッパの夏の旅行カレンダーは、4月,5月,9月,10月の静かな(そして涼しい)月に広がり始め,多くの旅行者が旅行プランを北の海岸に向けてシフトし始めている。

Shifting itineraries
旅行プランの変更

In the Know Experiences’ のシニア・バイス・プレジデント兼ゼネラル・マネージャーであるカレン・マギー(Karen Magee)氏は,7月中旬から,彼女の旅行代理店が,暑さを考慮して旅行計画を調整できるかどうかを尋ねるクライアントからの電話を受け始めたと述べた。

「それは新しいことだった」とマギーさんは言った。「前回,人々から電話があり,『ローマをスキップして,ビーチにアクセスしやすい都市を選ぶかもしれない』と言ったのは思い出せない。あるいは,彼らは市内の旅行プランを短縮し,計画よりも少し早く国に行くことを選んだのかもしれない。」

Azaria Travel’ の創設者であるDolev Azariaさんは,暑さを避けるために,ある家族が休暇の最初の5日間をローマではなくアムステルダムで過ごすための土壇場での選択(the last-minute choice)を支援した。他のクライアントは,トスカーナの計画を破棄し,少なくとも地中海のそよ風が吹くシチリア島に再予約した。

「目標は,熱にさらされている都市からウォーターフロントの近くにクライアントを移すことだ」とアザリア氏は言った。「そのため,コペンハーゲンやアムステルダムのような場所が登場したが,おそらく,クライアントが最初に行くことを選択しなかった場所です。」

しかし,アザリアさんは,これまでのところ,完全なキャンセルは行われていないと述べている:「今まで 非常に多くの抑圧された需要があった。基本的に,この夏に2年間の旅行を凝縮している。」

来年を見据えて,アザリアさんは夏の旅行シーズンを延長することを計画している:「夏は9月末を通り越して10月中旬まで続くことはすでにわかっている。」と彼女は語った。

猛暑のために旅行での救済を検討する可能性のある旅行者は,キャンセル・ポリシーが払い戻しの機会をほとんど残していないことに気付くかもしれない。旅行アドバイザーであり,‘Pyxis Guidesの創設者であるJude Vargasのクライアントは,ポルトガルへの家族旅行の暑さを心配していたが,結局それを続行した。
「彼らは子供たちが外にいることを心配していた」とバルガスさんは言った。「しかし,キャンセル・ポリシーのおかげで,彼らは『OK,私たちはコミットされている』と理解していた。」

旅行保険でさえ,熱波のために旅行をキャンセルする旅行者をカバーすることはありそうにない,と旅行保険センターの販売とマーケティングのディレクターであるダン・ドレネンは言った。このようなシナリオに適用される唯一のポリシーは,「如何なる理由でもキャンセル(cancel for any reason)」保険である,とドレネン氏は言った。彼は,この種の保険は通常(typically),普通の(normal)補償よりも約40%高く,一般に,旅行総費用の最大75%を返金すると付け加えた。彼は旅行者に,保険を購入する前に調査を行い,ブローカーに相談するようにアドバイスした。そうすれば,彼らは何がカバーされ,何がカバーされないかを理解できる。

「人々はこれらの契約(policies)がすべてを行うと思い込んでいるが,そうではない」とドレネン氏は言った。

Adjusting on the road
旅程途中での調整

旅行に専念している人は,暑さを管理するためにいくつかの実用的な手順を踏むことができる。バルガスさんは,クライアントが午後のツアーを涼しい夜の時間にシフトするのを手伝っているが,この旅行シーズンはとても忙しいため,直前の(last-minute)スポットを見つけるのは難しいかもしれない。彼女はまた,ファンが取り付けられたスプレー・ボトルを持って旅行することを勧める。これは,「特に子供がいる場合は,救いの恩恵(saving grace)」と彼女が説明したポータブル・デバイスである。日よけとして使用する傘を持っていることも役立つ。 彼女は,来年の旅行を楽しみにして,5月や10月のような月に焦点を合わせていると付け加えた。

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マドリッド市議会の観光局長であるHéctor Coronel Gutierrezは,夏の暑い時期に彼の街を訪れる訪問者に,日陰の多いマドリッド・リオ公園や子供たちが水を飛ばして楽しめる噴水エリアなどの緑地を探すようアドバイスした。7月と8月は暑いが,街は5月と6月よりも静かになる傾向があるため,混雑を避けるのは簡単だと 彼は付け加えた。

スペインではエアコンを見つけるのも簡単だが,米国人の旅行者には建物が 慣れている母国に比べ暖かいと感じるかもしれない。今週初め,エネルギー消費量を削減するために,スペイン政府は,ショッピングセンター,映画館,空港,その他の場所(venues)で,サーモスタットを27 または 80.6 未満に設定することを許可しないと発表した。

それでも,最近スペインから帰国した旅行作家兼ツアー・オペレーターのリック・スティーブスは,夏の旅行者は,高温でエアコンがないのが普通のロンドン,パリ,フランクフルトのような都市よりも,実際にはマドリードの方が快適だと感じるかもしれないと述べた。

「スペインのように猛暑(crazy heat)に慣れている場所は,それに対応する(accommodates)ライフスタイルを持っている。シエスタ(siesta:昼寝)があり,歩道に帆布の日よけ(canvas awnings)があり,歩き回っているときに日陰に入ることができる。人々がさわやかな場所(breezy spots)で食事をすることができるようにデザインされたレストランがある。」とスティーブス氏は言った。

スティーブス氏は,日焼け止めを付けたり,水をたくさん飲むなどの実用的な手順に加えて,暑さの中で列に並ぶことを避けるために,事前に美術館のチケットを予約するよう旅行者にアドバイスした。将来の旅行を計画するとき,彼は,ツアー会社が5月と9月ではなく現在 4月と10月と定義している“shoulder season(旅行の最盛期)に旅行することを検討するように人々に勧めているバルガス氏に共感した(echoed)。

「これは、気候変動の悪化する影響を乗り越えて(regear)生きるための調整期間である」と,ヨーロッパへの “carbon-heavy” フライトに飛び乗ったにもかかわらず,気温が高いことに不満を言う旅行者の皮肉を指摘したスティーブス氏は言った。彼は,ツアー会社がヨーロッパへの旅行の排気を軽減する(mitigate)ために,気候擁護(climate advocacy),気候スマート農業(climate-smart agriculture) および同様のイニシアチブに投資すべきであると提案した。カーボン・オフセットは別のオプションだが,専門家は一般的に,これらのプログラムだけではフライトの全炭素コストをカバーできないことに同意している。

ワシントンD.C.に本拠を置くシンク・タンクである世界資源研究所(the World Resources Institute)の気候適応作業(climate adaptation work)を率いるレベッカ・カーター博士は,今日すべての温室効果ガス排出を止めたとしても,ある程度の追加の温暖化がすでにシステムに焼き付けられていると述べた。しかし,私たちは気候温暖化ガスの噴出(spewing)を止めていない。二酸化炭素排出量は増加しており,地球はかつてないほど急速に温暖化している。

カーター博士は,この夏の猛暑は「偶然の出来事(fluke)ではない」,むしろ「私たちがもっと見るであろうトレンドの始まり」と述べた。

ヨーロッパの現場での証拠(the evidence on the ground)は明らかだ:英国では,記録簿の中の最も暑い10年(1884年にさかのぼって)はすべて今世紀に発生した。
ドイツでは,「暑い日」(気温が3086)以上に達する日)の平均年間数は,1950年代以降大幅に増加する傾向にある。
そしてフランスでは,科学者たちは,北東部の都市ストラスブールの平均気温が,1970年代に南南西に約240マイル離れたリヨンで見られた気温とほぼ同等であると計算した。

カーター博士は,気候変動は熱波やその他の異常気象の形で起こり続け,その多くが旅行ロジスティクスを混乱させる(disrupt)だろうと付け加えた。(彼女は,飛行機が特定の温度を超えて飛行することは認定されていないことを指摘した。この制限で,過去にすでに運航停止なったフライトがある。)しかし,個々の旅行の決定に関しては,その多くは個人の許容範囲に帰着する。

「どこに行くか,いつ行くか,行くかどうかを決めるときに私たち全員が経験する要因の長いリストの中で,天気と気候変動は計算の一部でなければならない」とカーター博士は語った。

(転載了)
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旅行先を変えるか,旅行時期を変えるか,今後は 本気で考える必要がありそうです。

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