薄さを目指す腕時計,がまだある。
かつて 腕時計の高級さを示すバロメータとして「石の多さ(18石以上は高級?」と「薄さ」がありましたが,クォーツが誕生して以後,石の数については あまり神経質に言わなくなりました。そして「薄さ」は?
厚さ 10mm を超える「クロノグラフ」が誕生して以後,「厚さ」,あるいは「薄さ」はそれほど気にしなくなりました。しかし,技術力を示す薄さを目指す時計メーカーは依然 存在していて 0.1mm単位に薄さを追求しているようです。
男性情報誌 ‘GQ UK’,Oct.3,2022付けの電子版に
“The Race to Develop the World’s Thinnest Watch”
「世界最薄時計の開発競争」
と題する記事がありました。
下記,拙訳・転載します。
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超薄型時計の現在の熱狂は,時計メーカーの間でタイトルを獲得するための競争を推進している
時計メーカーは激しい競争(arms race)が大好きである 最初の,そしておそらく最も永続的なレースは,時計に最大数の機能または結合(complications)を搭載する競争であり,現在,2015年にリリースされた「ヴァシュロン・コンスタンタン」(“Vacheron Constantin”)の画期的な「リファレンス 57260(“Reference 57260”)」 は,57個の機能を備えている。
もちろん,深さの問題もある。ダイバーズ・ウォッチの中で,オメガは 6,000mの「シーマスター・プラネット・オーシャン・ウルトラ・ディープ(“6,000-meter Seamaster Planet Ocean Ultra Deep”)」ですべてを凌駕している(trumps)。
今,薄さに注目が集まっている。世界で最も薄い機械式時計のタイトルは,ピアジェ(Piaget)の「アルティプラノ・アルティメット・コンセプト(“Altiplano Ultimate Concept”)」によって保持されている:時計全体の厚さはわずか 2 mmで,新しい技術とミクロン・レベルの精度の部品製造の組み合わせによって実現されており,最も注目に値するのは,ベースプレートを廃止し,ムーブメントをケースバックにまっすぐに構築していることである。
しかし,小さな寸法(measurements)が大きな問題を引き起こす可能性がある。2018年に発表された「アルティプラーノ(“Altiplano”)」は,2020年に生産が開始されたばかりで (年間 10個以下しか製造されていない),クリスタルが針に触れてムーブメントの機能を妨げないように,航空機のキャビン内の圧力によって生じるわずかな歪みを許容するための調整を含む,エンジニアリングの極端な技巧(feats)を必要とした。
そして,今年の 3月下旬,ブルガリの 1.8 mm 「オクト・フィニッシモ・ウルトラ(“Octo Finissimo Ultra”)」が世界最薄のタイトルをかっさらった(nabbed)。また,ケースバックがベースプレートを兼ねており,興味深いことに,時間,分,秒を別々の文字盤に表示することでスペースを節約した。巻き上げと設定のために,竜頭の代わりに裏蓋(caseback)に取り付けられた 2つの歯車がある。 それは,21世紀の真にアイコニックな数少ない時計デザインの 1つである「オクト・フィニッシモ(“Octo Finissimo”)の美学(aesthetic)と完全に調和している。この記録により,このイタリアの宝石商は高級時計製造における名声をさらに高めた。
ブルガリのトップ期間(stint)は約3ヶ月で終わった。7月には,「リシャール・ミル(Richard Mille)」とフェラーリが協力して,さらに薄い時計を発表した。“RM UP-01” はわずか 1.75 mm で,クレジット・カードのように見え,驚くべき技巧である。 しかし,数値だけでは “RM UP-01” の全容はわからない。
概念的に先鋭的な時計である。コンポーネントは積み上げられておらず,広い表面積にわたって平面的に配置されており,針(通常は個別のコンポーネント) はホイールに直接取り付けられている。信じられないことに,「ピアジェ」や「ブルガリ」の薄い製品とは異なり,「リシャール・ミル」はベースプレートをケースに収めた伝統的なムーブメントのコンセプトを尊重している。
フェラーリとのパートナーシップを考えると - ブランドによれば「素材の選択と時計の出来栄え(execution)において最も目に見える形で表現されている」- “RM UP-01”をフォーミュラ 1 カーに匹敵するものと考えるのに役立つ。これらの車両が標準的なロード・カーに部分的にしか似ていないように,“RM UP-01” は時計としては 普通ではないように見える。このデザインは,ブランドが連想するおなじみのハイテク室内(tonneau)とは一線を画しているが,ベゼル(bezel)に散りばめられたスプライン・スクリューなど,おなじみの Mille タッチがいくつかある。
“RM UP-01”は,最も大胆な極端な時計製造であり,時計がどのように見えるかについて受け入れられている概念に挑戦し,それを作成するために必要な技術と創意工夫を推し進めている。
しかし,記録破りは安くはない。ほぼ 190万ドル(2億円超)で,1ミクロンあたり 1,000 ドル強を支払っている。
(転載了)
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折れ曲がるのではないかと心配になります。
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