銃による虐殺は 終わりのない米国の疫病である。
電子版‘The New Yorker’,January 23, 2023 付け
“Gun Violence Is America’s Never-Ending Plague”
「銃による暴力は終わりのないアメリカの疫病」
下記,拙訳・転載します。
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モントレー公園での銃乱射事件は,今年に入ってすでに発生している多くのうちの1件。
別の日,米国で別の 2つの致命的な銃撃があった。月曜日(23日)の午後,ケーブル・ニュース・ネットワークは,土曜日(21日)の夜に 11人が射殺された,ロサンゼルスの東に位置するアジア人が多数を占める都市モントレー・パークからの報道で忙しかったため, デモイン(Des Moines)のダウンタウンにあるチャーター・スクールでの生徒2人が死亡し,1人が重傷を負った銃撃事件のニュースをカットせざるを得なかった。
その日の後半に,北カリフォルニアの都市,ハーフ・ムーン・ベイ(Half Moon Bay)で銃撃があり,7人が死亡したというニュースがあった。「悲劇に次ぐ悲劇(Tragedy upon tragedy)」とカリフォルニア州知事のギャビン・ニューサム(Gavin Newsom)はツイッターでコメントした。
非営利の研究グループである「ガン・バイオレンス・アーカイブ(the Gun Violence Archive)」によると,1月はまだ1週間残っているが,今年はすでに38件の銃乱射事件が発生している。そのうち 6件では 4人以上が死亡した。(「アーカイブ」では,銃乱射事件(mass shooting)を,銃撃者を除いて 必ずしも致命的であるとは限らず,4人以上が撃たれたすべての事件として分類している。)
銃撃は,17の異なる州とコロンビア特別区の,全米(place from coast to coast)で発生した。モントレー・パークのスター・ボールルーム・ダンス・スタジオで発生した虐殺事件(massacre)は,72歳のアジア人男性によって行われたと警察は述べている。
「ガン・バイオレンス・アーカイブ」の集計などによると,銃乱射事件(mass shootings)には複数の種類があり,家庭内暴力,ギャングの暴力,精神障害の(disturbed)個人によるランダムな攻撃,同僚への攻撃,家庭内テロなどがあり,F.B.I. は,「政治的,宗教的,社会的,人種的,または環境的性質のものなど,国内の(domestic)影響に起因するイデオロギー的目標をさらに進めるために,個人および/またはグループによって犯された暴力的で犯罪的な行為」と定義されている。銃暴力の加害者(perpetrators)と被害者(victims)は,年齢,人種,社会的背景の壁を越える。 このような多面的な現象に共通の動機や根底にある心理的説明を下そうと試みるのは愚かな事(errand)だ。
しかし,CNN のコメンテーターで,F.B.I.の元副長官であるアンドリュー・マッケイブ(Andrew McCabe)が月曜日に指摘したように,最も致命的な銃乱射事件の多くを結びつける 1つのことがある: モントレー・パークでの虐殺で,使用されたと警察が言う半自動ピストル(semi-automatic pistol)など,非常に致命的な武器が簡単に準備できること。銃乱射事件がめったに起こらない他のほとんどの先進国と米国を区別するのは,この共通点である。
この避けがたい真実を前にして,新たな虐殺が起こるたびに,その反応は情けないほど(depressingly)予測可能だ: 大多数の部分の絶望感は,銃規制法の大幅な強化を支持している。土曜日の銃乱射事件を受けて,共和党員はすでに,カリフォルニア州やイリノイ州などの州には厳格な銃規制法があるが,暴力は止まらないと主張している。この議論は,カリフォルニアやイリノイのような場所で人々を傷つけたり殺したりするのに使用される銃の多くが,銃に関する法律が緩い州から違法に輸入されたという事実を都合よく無視している。
この場合,そうではなかったようだ。月曜日の報道によると,スター・ボールルーム・ダンス・スタジオで発砲した銃撃犯は,数十年前にカリフォルニアで合法的に購入できた武器を使用していた。彼がいつ,どのようにそれを手に入れたかはまだ明らかではない。いずれにせよ,ワシントン・ポストが週末に報じたように,1990年代に可決されたものもあるカリフォルニア州の銃規制法は,実際に銃による暴力を減らすのに役立ったという証拠がある: 銃器による死亡率は 7番目に低く,銃乱射による死亡率は平均を下回っている。
しかし,国家レベルでより効果的な銃法がなければ,これ以上の銃による死亡事故を防ぐ見込みはほとんどないことは疑いの余地がない。昨年6月,18歳の元生徒がテキサス州ユバルデ(Uvalde)のロブ小学校で 19 人の幼児を銃で撃ち殺した直後,議会は 30 年ぶりに超党派の銃器法を可決した。 これは,21歳未満の銃購入者の身元調査を拡大し,「危険信号」法(“red flag” laws)を導入する州に連邦政府の資金を提供する。これにより,裁判官は,他人にとって深刻な脅威と見なされる人々から銃器を取り除くことができる。これらの改革は歓迎されたが,問題の規模に取り組むには不十分であり,ほとんどの米国人はそれを知っていた。‘Pew Research’が実施した世論調査では,回答者の 78% が,新しい法律は銃による暴力を減らすのにほとんど,またはまったく効果がないと答えている。
現在,共和党が下院を支配しているため,今国会で銃規制法が制定される可能性は事実上ない。一方,地方レベルでは,昨年の最高裁判所の判決を受けて、ニューヨーク州の制限的なコンシールド・キャリー(隠して携帯すること)法を無効にするという 100年前の法律が制定されたことを受けて,銃規制法がさらに緩くなる可能性がある。保守派の過半数に対する論争の的で根拠のない意見で,Clarence Thomas 判事は,修正第2条は自衛のために公の場で銃器を携帯する幅広い権利を生み出したと主張した。最高裁判所の判決以来,全国の下級裁判所の多くの裁判官が,地方の銃規制法を阻止または無効にする判決を下した。ヒル(the Hill)の報告によると,これらの事件の裁判官は,シリアル番号のない銃を禁止すること,重罪で起訴されている人が銃を購入することを禁止すること,空港やサマーキャンプでさえ銃を禁止することは違憲であると述べた。
最新のものを含め,米国の銃乱射事件の重要な教訓は,それぞれが異なる状況,異なる動機,異なる犠牲者を含む個別の事件であるということである。我々は,被害者とその家族が被った,想像を絶する損失だけでなく,この特異性(specificity)を認識するよう常に注意する必要がある。
But we must never lose sight of the fact that all these tragedies take place in a culture that has facilitated the sale for profit of deadly weapons, making it relatively easy for people with deadly intentions to acquire one. Unless and until this environment changes, the carnage will continue.
しかし,これらすべての悲劇が,営利目的で致命的な武器の販売を促進し,致命的な意図を持つ人々が武器を比較的簡単に入手できる文化の中で起こっているという事実を,我々は決して見失ってはならない。この環境が無くなり,そして変わるまで,虐殺(carnage)は続くだろう。
(転載了)
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有効なワクチンはなく,終わりは なさそうです。
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