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2023年2月25日 (土)

ルイ・ヴィトンが現代美術の巨匠の作品を広告に無断使用?

ニューヨーク・タイムズは221日,米国の抽象表現主義画家ジョアン・ミッチェルの作品を管理する財団が最近ルイ・ヴィトン本社に権利侵害行為の中止を求める書簡を送ったと報道しました。
偽造など知的財産権侵害に敏感に反応し,知的財産権侵害に対して2017年の1年間だけで世界で38000件以上の法的措置を取ったルイ・ヴィトンが,現代美術の巨匠の作品を許諾を得ずに広告に使ったというものです。書簡では,3日以内にミッチェルの作品が使われたすべての広告を中断しない場合にはルイ・ヴィトンの著作財産権侵害行為に対する法的措置に出ると通知しています。

ARTnews’ は Feb.21,2023付けで
Joan Mitchell Foundation Issues Cease and Desist to Louis Vuitton Over Use of Paintings in Handbag Ads
「ジョアン・ミッチェル財団は,ハンドバッグの広告での絵画の使用をめぐって ルイ・ヴィトンの使用停止を要求」
の見出しで伝えています。

下記,拙訳・転載します。
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ジョアン・ミッチェル財団は,高級ファッション会社のルイ・ヴィトンが,女優レア・セドゥ(Léa Seydoux)を起用した最高$10,500ドルのハンドバッグの広告キャンペーンで,抽象表現主義者による少なくとも3つの作品を無断で複製したとして告発した。

火曜日(21日),ミッチェルの遺産を管理し,ミッチェルの死後数十年間に多くのアーティストを直接サポートしてきた財団は,ルイ・ヴィトン・マルティエ(Louis Vuitton Malletier)にキャンペーンを停止・撤回し,取得した広告の充分な説明と謝罪を求めるレターを送った。

「これは私たちが同意したものではないことを人々が理解することが重要である」と財団のエグゼクティブ・ディレクターであるクリスタ・ブラッチフォード(Christa Blatchford)は ‘ARTnews’ に語った。「これが 何故 起こったのか,それが私の質問である。正直なところ,彼らの側でそれがどのように起こったのか理解できない。私は本当に理解できない。」
ブラッチフォード氏によると,キャンペーン開始前の昨年 12月,ルイ・ヴィトンはジョアン・ミッチェルの作品のすべての画像のライセンスを管理しているミッチェル財団に何度か連絡を取り,今後の一連の広告で作品を使用する許可を求めていた。しかし,財団は,ミッチェルの作品の画像は主に教育目的で使用されるイメージで,展示会の商品などの商業的使用は非常に限られているという長年の方針により,会社の要求を繰り返し断っていた。
「私たちは学問を本当に信じている」とブラッチフォードは言った。「私たちは,ミッチェルのイメージが学者や博物館で使用されているときに自由に利用できるようにしたいと考えている。それが私たちの強調事項である。」

ブラッチフォードによると,‘ARTnews Top 200 Collector’ と ‘LVMHMoët Hennessy‐Louis Vuitton SE)’ の最高経営責任者である ベルナール・アルノー(Bernard Arnault)のアート・アドバイザーであるJean-Paul Claverie は,広告キャンペーンで写真を使用する許可と引き換えに財団に寄付を申し出たが,財団は拒否し続けた。

それにもかかわらず,同社は,キャンペーンを進め,212日のニューヨーク・タイムズ・サンデー・スタイル セクションとオンラインで,最初に公開した。 同社のカプシーヌ(Capucine)ハンドバッグの広告では,ミッチェルの 3枚の絵画の前でバッグを持っているセドゥが登場する:La Grande Vallée XIV (For A Little While), 1983年からの三連作; Quatuor II for Betsy Jolas (1976); そして Edrita Fried (1981)

ブラッチフォード氏は,「これは,弁護士が白か黒かはっきりしている状況の 1 つである」と述べている。 「リクエストの記録を持っている。私たちはすべての合意を持っており,詳しく説明したが,それは無視された。」
ルイ・ヴィトン・マルティエの親会社であるLVMHは電子メールで,この話を最初に報じたニューヨーク・タイムズに「ルイ・ヴィトンはコメントしない」と語った。ルイ・ヴィトン財団美術館(Fondation Louis Vuitton)への状況に関するコメントへの ‘ARTnews’ のリクエストは,LVMH に転送された。

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広告は作品のトリミングされた画像を特徴としており,ミッチェルの作品と印象派のクロード・モネの作品を組み合わせた大規模な展示会で撮影されたように見える。それらは,パリ郊外の私立美術館であるルイ・ヴィトン財団美術館で展示された。画像はミッチェルや財団の認可を得ていない。ブラッチフォードは,212日はミッチェルの誕生日でもあると指摘した。

財団は,ミッチェルの作品の無断使用を指摘する声明の中で,「これらの作品をこの目的で,このような方法で撮影することを許可することにより,ルイ・ヴィトン財団美術館は JMFJoan Mitchell Foundation) との契約に違反している。」と述べている。
2月27日に閉幕するルイ・ヴィトン財団美術館の「モネミッチェル」展では,モネの有名な「睡蓮」の作品を含む 35点の絵画が,ミッチェルの絵画やパステル画 35 点と対話している。

ルイ・ヴィトン財団美術館は法的にはルイ・ヴィトン・マルティエとは別の組織だが,どちらもフランスの多国籍高級コングロマリットである LVMH が所有している。

ブラッチフォード氏は,ルイ・ヴィトン財団美術館とルイ・ヴィトン・マルティエについて言及し,「2つの実体の間の距離として私たちが考えていたものが,私たちが期待していた方法で存在していないように見えることを知ってがっかりしている」と述べた。「ルイ・ヴィトン財団美術館が正しい方法で仕事をすることができるように,距離が実際に固まることを願っている。」

ブラッチフォード氏は,ジョアン・ミッチェル財団は将来,ミッチェルの作品の商用利用に対する姿勢を変えるかも知れないと述べたが,ルイ・ヴィトンとの今回の経験はその可能性に水を差した。「問題は,最初の商業的パートナーシップを持つ機会が完全に奪われたことである」と彼女は言った。

ルイ・ヴィトンは企業として,象徴的なロゴのような自社の視覚的商標の知的財産と保護を真剣に受け止めている。同社のウェブサイトには,同社が偽造(counterfeiting)に関して「ゼロ・トレランス・ポリシー(zero-tolerance policy)」を持っており,その知的財産部門は2017 年に「世界中で 38,000 以上の偽造防止手続きを開始した。」と書かれている。
ウェブサイトは,「デザイナー,アーティスト,ブランドの創造性と権利を維持することは,彼らが長期的に存続するために不可欠である。」と続いている。

ルイ・ヴィトンは,草間彌生,村上隆,ジェフ・クーンズの作品をフィーチャーしたハンドバッグを以前に販売したこともあり,主要な現代アーティストとの有名なコラボレーションにも慣れている。

広告で取り上げられたカプシーヌ(Capucine)のハンドバッグは最高 $10,500で販売されているため,ブラッチフォード氏は,その詳細が存命のアーティストをサポートするという故アーティストの財団の使命と「不一致」であると見做し,「彼らがミッチェルのアートワークを,そのように贅沢品のために使用していることは,私たちにとって衝撃的だ」と付け加えた。
(転載了)

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さて 今後の展開は?

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