道徳的であるために信仰は必要か?
‘Pew Research Center’,APRIL 20, 2023付けで
“Many people in U.S., other advanced economies say it’s not necessary to believe in God to be moral”
「米国とその他先進国の多くの人々は,道徳的であるためには神を信じることは不要と言う。」
のタイトル調査結果がありました。
下記,拙訳・転載します。
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2022年春のピュー研究所の調査によると,ほとんどの米国人は,道徳的であり,良い価値観を持つ目的で神を信じる必要はないと言っている。米国人の約3分の2がそう言い,約3分の1は神への信仰は道徳の不可欠な要素であると言っている (65% 対 34%)。
しかし,この質問に対する回答は,米国人が生活の中で宗教を重要視しているかどうかによって劇的に異なる。宗教は自分にとって,あまり,あるいは 全く重要ではないと言う人のおよそ10人中9人が,神を信じなくても道徳的であることは可能であると信じており,宗教が非常に,またはある程度重要であると回答した米国人は約半数に過ぎない (92% 対 51%)。プロテスタントのグループによって見解は異なるが,カトリック教徒はプロテスタントよりもこの見解を保持する可能性が高い(63% 対 49%)。
政治的な方向性に沿った違いもある:民主党員と民主党支持の人々は,共和党員と共和党支持者よりも,道徳的であるために 神を信じる必要はないと言う傾向がある (71% 対 59%)。リベラルな民主党員は特にそう言う傾向があり (84%),保守的な共和党員の約半分 (53%) だけが同じことを言う。
さらに,50歳未満の米国人は,高齢者よりも,良い価値観を持つために神を信じる必要はないと言う傾向がやや高い (71% 対 59%)。また,大卒以上の学歴を持つ人は,高卒以下の人よりもこれを信じる可能性が高くなる (76% 対 58%)。
宗教と道徳の関連性についての見解は,調査対象となった他の 16ヶ国でも同様に異なっている。これらの国では,成人の約3人に2人の中央値が,人々は神を信じなくても道徳的に振る舞うことができると答えており,米国の割合よりもわずかに高くなっている。
Views of religion and morality in other countries
諸外国の宗教観・道徳観
ヨーロッパと北米の国々では,回答者の少なくとも 10人中6人が,神を信じることが道徳的であるために必要ではないと考えている。これには 10人中9人のスウェーデン人が含まれており,調査対象国の中で最も高い割合を占めている。
対照的に,イスラエル人は,神への信仰が道徳的であるために必要かどうかについて,ほぼ均等に分かれている。
反対に,マレーシア人で神を信じなくても道徳的になれると信じているのは約5人に1人だけ。調査対象となった他のすべての国では,少なくとも半数の人がこの見解を持っている。
米国と同様に,他の国でも宗教や人口統計学的要因による違いが存在する。たとえば,無神論者(atheist),不可知論者(agnostic),または「特に何もない」と自認する人々は,宗教に所属している人よりも,神への信仰を道徳から切り離す可能性がはるかに高い。
とはいえ,宗教に関係している人々の間でさえ,良い価値観を持つために神を信じる必要があるとはほとんどの人は考えていない。調査対象のほとんどの国で,自分が宗教に属していると答えた人の半数以上が,神を道徳的であるために信じる必要はないと答えており,これには,宗教に傾倒しているスウェーデン人の 86% と,宗教に傾倒しているオーストラリア人の 75%が含まれる。
イスラエルの場合のように,国や宗教によって大きな違いが現れることもある。イスラエルのイスラム教徒の 8割近くが,道徳は神への信仰と結びついていると述べ,イスラエルのユダヤ人の過半数はそうではないと述べている。しかし,イスラエルのユダヤ人の間で見解は大きく異なる:ハレディ (Haredi 「超正統派」) とダティ (Dati 「宗教的」) である 10人中9人近くが,-どちらも一般的に正統派と見なされているが -良い価値観を持つには神を信じる必要があると述べている ( 86%)。しかし,マソルティ (Masorti「伝統的」) であるユダヤ人の半分とヒロニ (Hiloni:「世俗的(secular)」,最大のグループ) のわずか 7% しか同意してない。
政党,年齢,教育レベルによる回答の違いも,米国の結果と一致している。政治的イデオロギーが測定されるほぼすべての国で,政治的左派の人々は,政治的右派の人々よりも,神への信仰は必ずしも良い価値観を持つ必要はないと言う傾向がある。スウェーデンは,神を信じなくても良い価値観を持つことができるという点で,左右の割合がほぼ同じである唯一の国である。
さらに,調査対象国の約半数の若い成人は,年配の回答者よりも,神への信仰は道徳とは関係がないと言う傾向が有意に高かった。たとえばギリシャでは,30歳未満の成人の5人に4人以上が,神への信仰と道徳を切り離しているのに対し,そうではない50歳以上の成人の約半数 (84% 対 51%) と比較される。ポーランド,イタリア,シンガポール,ハンガリー,オランダ,カナダ,英国でも年齢差が大きい。
少なくとも大学の学位を持っている人は,良い価値観を持つために神への信仰は必要ないと言う傾向がある。教育による違いは,スペインとドイツで最も大きい。
全体として,この質問に対する回答は,調査対象の国全体で比較的一貫している。
The economic context of religion and morality
宗教と道徳の経済的背景
最新のグローバル調査で調査対象となった国はすべて先進国だが,以前のピュー研究所の調査では,新興国および発展途上国における神への信仰と道徳との関連性が調査された。2020年のコロナウイルスのパンデミックが始まったとき,ピュー研究所は調査が直接行われている国でのフィールド・ワークを一時停止した。その多くは新興国または発展途上国である。状況が改善するにつれて,これらの国にゆっくりと戻ってきているが,これらの国を含めるには間に合わない。
2019年に新興国および発展途上国 10ヶ国を含む 34ヶ国を対象とした調査では,国内総生産 (GDP) が低い国ほど,神への信仰が道徳にとって不可欠であると考える人の割合が高いことがわかった (r = -0.86)。たとえば,1人あたりの GDP が最も低いケニアでは,95% の人が神を信じることが道徳の必要な側面であると考えていた。対照的に,2019年に調査対象となった国の中で 1人あたりの GDP が最も高い国の1つであるスウェーデンでは,この見方を示したのはわずか 9% だった。
ブラジル,南アフリカ,チュニジア,ナイジェリア,インドネシア,フィリピンでも,10人中8人以上がこの見解を持っていた。2019年の時点で,すべて新興国または発展途上国である。
2022年の調査と同様に,2019年の調査でも,年配の人や教育を受けていない人は,神への信仰と道徳的な生活に関連性があると考える可能性が高いことがわかった。
(転載了)
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道徳的であることと信仰を持つことに関係があるとは思いません。
すなわち 「神を信じているから 道徳的である」とは言えません。
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