米国の現代野球と大谷翔平
9月の出版予定の “Why We Love Baseball: A History in 50 Moments” の著者で ‘Sports Illustrated’ の元シニア・コラムニストであるスポーツ・ジャーナリストが ‘The Washington Post’,Aug.15,2023付けで “Opinion: Shohei Ohtani is doing things on a baseball diamond that scramble the mind”(オピニオン:大谷翔平は野球のダイヤモンドで心を混乱させるようなことをしている)のタイトルで投稿しています。
下記,拙訳・転載します。
************************
Joe Posnanski’s book “Why We Love Baseball: A History in 50 Moments” will be published by Dutton on Sept. 5.
ジョー・ポズナンスキーの著書 “Why We Love Baseball: A History in 50 Moments” が9月5日にダットン(Dutton)社から出版される。
過去,そう 150年ほどにわたって,差し迫った(impending)野球の死について書かれた解説記事(think pieces)は少なくない。ほぼ すべての検索エンジンに「野球は死につつある(baseball is dying)」と入力すると,このような考えがおよそ 100万件表示される可能性がある。
“The interest formerly manifested in baseball is rapidly dying out.”
「かつて野球に向けられていた関心は急速に消えつつある。」
それは 1885 年にオークランド・トリビューン新聞に掲載された。「野球がなくなる前に自分が死ぬだろうと常々思っていたが,ここでは野球が自分より先に死んでいくのが見える。」
これは,最初のワールド・シリーズ優勝チームの監督であるフランク・バンクロフト(Frank Bancroft)の言葉である。 彼は1918年にこう言った。
それ以来100年間,野球の破滅(doom)に関する記事が次々と報じられ,「なぜ野球はもはや国民的娯楽(the National Pastime)ではないのか」,そして「野球は死につつある。政府がそれを引き継ぐべきだ。」さらに「高齢化が野球の衰退に拍車をかけている。」などといった見出しが次々と報じられた。
私は,このゲームがこれまで直面してきた,そしてこれからも直面し続ける多くの課題を軽視したり(discounting),みくびったり(playing down)しているわけでない。しかし,数年前,私は別のことに気ついた:我々の見方はすべて間違っているのではないか?
150年経った今でも,我々が野球に少しでも興味を持っているというのは,本当の奇跡ではないだろうか?
ラザフォード・B・ヘイズ(Rutherford B. Hayes)大統領の政権について,我々が今でも気にかけていることは他に何だろうか? それはバスケットボールが発明される前のことであり,フット・ボールにフォワード・パスが登場する前のことであり,テレビ,映画,インターネットが登場するずっと前のことである。もちろん,ドラキュラ,シャーロック・ホームズ,オクラホマ州,一時停止の標識,コカ・コーラ,ジッパーも登場する前のことだった。
この考えが私に “Why We Love Baseball: A History in 50 Moments.”(なぜ我々は 野球を愛するのか: 50 の瞬間の歴史』という本を書くきっかけとなった。
そして,書くのが最も難しかった章は,多くの意味で極めて重要な(pivotal)章でもあった。 タイトルはシンプルに「翔平」。
日本の奥州市出身の29歳,大谷翔平選手が野球のダイヤモンドで心を混乱させるようなことをしていることをおそらくご存じだろう。
打者としては,三塁打,本塁打,四球,出塁率,長打率でアメリカン・リーグのトップかトップタイにある。
投手として,彼は他の選手よりも1試合当たりの被安打数が少ない。打者は彼に対してわずか .185しか打てず,野球全体の中で最低の被打率だ。
彼は本当に最高の打者であり,最高の投手であるかもしれない ― 同時に。
メジャーリーグでは前例がない。
最も近いのはベーブ・ルースで,熱心な野球ファンであれば,彼が伝説的なスラッガーになる前は偉大な投手だったことを知っているだろう。しかし,そのベイブですら,大谷がやっているようなことはしなかった。彼は毎日出場の選手になると,多かれ少なかれ投球をやめた。
ニグロ・リーグにはバレット・ローガン(Bullet Rogan)やマーティン・ディヒゴ(Martin Dihigo)のような素晴らしい投手と打者の組み合わせがいた。しかし,悲しいことに(alas),彼らはジャッキー・ロビンソン(Jackie Robinson)の前で影の中でキャリアを過ごした。
Ohtani is singular.
大谷は特異だ。
大谷についてこの本の中で書くのがこれほど難しい理由は,彼が常に自分自身の頂点を極め続けているからだ。
翔平の章の最初のバージョンでは,2022年6月に行われたカンザス・シティとの連戦(back-to-back games)について書いた;彼は火曜日に本塁打2本と8得点を記録し,水曜日には8イニングを無失点で投げ13奪三振を記録した。それは彼の並外れた才能(singular brilliance)を表しているように見えた。
しかし3月,彼は過去10年間で最高の選手だった友人でチーム・メイトのマイク・トラウトを三振させ,ワールド・ベースボール・クラシックで日本の対米勝利を締めくくった。 それがその章になった。
それ以来,彼はおそらくこれまでの選手の中で最も素晴らしい月を過ごした:6月には27試合で打率 .394,15本塁打を記録し,投手としても2勝し,打者37人から三振を奪った。
そして7月末,彼は最も特異な日を迎えた - デトロイトでのダブルヘッダーの第1試合で1安打完封勝利を収め,第2試合では特大ホームランを2本打った。
私は今後10年間で,その大谷の章を書き,書き直すことになるかもしれない。
非常に多くの点で,大谷は,我々が何年も経った今でも野球を愛する理由を完璧に表している。それは,大谷は野球そのものと同じように,驚くべきことと驚くべきことではないことを他に類を見ないほど融合させているからだ。そう,一方で,彼はこれまでにやったことのないことを行っている。
しかし同時に,彼は奇妙で(oddly)心地よい(sweetly)親しみを感じる。
少年野球をプやったことがある人なら誰でも,チーム内で最も優れた投手であり,最も優れた打者でもあったチーム・メイトのことをきっと覚えているだろう。
それが野球だ。 このゲームは米国の基準からすると古く,何世代にもわたってファンを魅了し,南北戦争後の米国再編(Reconstruction)と産業革命,激動の20年代と大恐慌,宇宙時代とディスコ時代,ITブーム,そして 我々が生きている今の時代にも ファンを魅了しなければならなかった。
野球は常に勝つ(prevails)。このスポーツが提供すべきものはすべて見たと思ったら - 魔法のように,ウィリー・メイズ(Willie Mays) あるいは ロベルト・クレメンテ(Roberto Clemente)あるいは ジョニー・ベンチ(Johnny Bench) あるいは ケン・グリフィー・ジュニア(Ken Griffey Jr.)などの選手:が現れる。あるいは大谷翔平。そしてすべてがまた新しく感じられる。
(転載了)
**********************
| 固定リンク | 0
「ニュース」カテゴリの記事
- 大谷翔平,MLB 300本塁打 達成(2026.07.10)
- UEFA Statement:“FIFA crossed a Red Line”(2026.07.08)






コメント