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2023年8月18日 (金)

米兵が板門店で 北朝鮮に逃亡した理由

7月18日,板門店の共同警備区域(JSAJoint Security Area)で,JSAを巡る見学ツアー中に 在韓米軍の兵士が北朝鮮側に越境する事件が起きました。ツアー参加者の話として報じられたところでは,越境した男は突然,大きく「ハハハ」と笑うと,北朝鮮側に走っていき,ツアーガイドが追いかけたが,間に合わず,男は朝鮮人民軍の兵士らに取り押さえられました。米軍当局者や米メディアによると,越境したのはトラビス・キング2等兵(23)で,暴行容疑で韓国の拘置施設に一時収監,17日に仁川国際空港に移送され,保安検査通過後,1人になった隙に空港を抜け出したとみられています。本国で軍の懲戒処分を受けることになっており,「米国に戻りたくない」と漏らしていたとも報じられました。

その後,北朝鮮からの 本件に関する情報はありませんでしたが,816日,朝鮮中央通信が 初めて本件について触れました。

BBC NEWS’ は Aug.16, 2023付けで
Travis King: North Korea says US soldier fled because of racism in army
「トラビス・キング:北朝鮮は米兵が軍隊内での人種差別を理由に逃亡したと主張」
の見出しで報じています。

下記,拙訳・転載します。
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北朝鮮は,米軍兵士トラビス・キングが先月,軍隊内での「非人道的な虐待と人種差別(inhuman maltreatment and racial discrimination)」を理由に自国の領土に侵入したと発表した。

23歳の二等兵は718日,ガイド付きツアー中に韓国からダッシュして国境を越えた。

国営朝鮮中央通信社(KCNAKorean Central News Agency)の報道によると,キング二等兵は不法越境を認め,北朝鮮への避難(refuge)を希望していた。

米政府は主張を検証できないと述べたが,この主張がこの事件に関する北朝鮮の初の公的コメントとなる。彼らはこれまでのところKCNAのみが発表している声明に登場した。越境以来,消息不明となっている米兵の安否への懸念が高まっている。

米国は,国境地域を管理し,北朝鮮軍との直通電話回線を持っている国連軍(the UN Command)の支援を得て,キング二等兵の釈放について交渉しようとしている。水曜日(816日)の北朝鮮の報告に対し,国防総省当局者は,キング二等兵を「利用可能なあらゆる手段を通じて(through all available channels)」安全に帰国させることが最優先事項であると述べた。

北朝鮮はキング二等兵をどのように扱うつもりかについて情報を提供していないが,兵士は「不法に」入国したことを認めたと述べた。
朝鮮中央通信の声明では,キング二等兵が訴追や処罰を受けるかどうかについては言及されておらず,彼の現在の居場所(whereabouts)や状態についても言及されていない。
KCNAは,「捜査中,トラビス・キング容疑者は,米軍内の非人道的な虐待や人種差別に対して悪感情を抱いたため,北朝鮮に来ることを決意したと自白した」と報じた。「彼はまた,不平等な米国社会に幻滅していると述べ,北朝鮮か第三国に亡命する意向を表明した。」

シンク・タンク国際危機グループ(the think-tank International Crisis Group)の上級コンサルタント,クリストファー・グリーン氏は,北朝鮮の声明がキング二等兵の不法入国を強調したという事実は,キング二等兵が望んでも滞在させることを考えていないことを示唆していると述べた。
グリーン氏は「それは驚くべきことではない。もしそうなれば,彼は北朝鮮にとって彼の政治的価値をすべて失うことになるだろう。」と述べたが,北朝鮮はまだトラビス・キングの米国への帰国交渉を急いでいないとも付け加えた。「ここ数週間,両国のハイレベル代表団が平壌を訪問したことが示すように,彼らは公然と中国とモスクワとの立場を放棄している。北朝鮮が対応を急いでいる、あるいはそうする必要があると考えるのは間違いである」

キング二等兵は偵察のスペシャリストで,20211月から軍隊に所属しており,ローテーションの一環として韓国に滞在していた。国境を越える前,彼は暴行容疑で韓国で 2ヶ月間拘留され,710日に釈放された。
同氏は懲戒手続きを受けるため米国に帰国するはずだったが,なんとか空港を出て,北朝鮮と韓国を隔てる非武装地帯(DMZDemilitarised Zone)のツアーに参加した。

世界で最も厳重に要塞化された地域の一つであるDMZは地雷で埋め尽くされ,電気柵と有刺鉄線で囲まれ,監視カメラで監視されている。武装警備員が24時間体制で警戒しているはずだが,目撃者によるとキング二等兵が駆け抜けた際には北朝鮮兵はいなかったという。

彼の家族は以前,彼が軍隊内で人種差別を経験したことを米メディアに語った。 また、韓国の刑務所で過ごした後、彼の精神状態が悪化したようだとも述べた。母親のクロディーン・ゲイツさんは「大きな悪夢の中にいるみたいだ」と語り,家族は答えを求めて必死だったと付け加えた。

北朝鮮は,現在も名目上共産主義の統治下にある数少ない国の一つであり,長年にわたり極秘かつ孤立した社会となっている。金正恩氏率いる同国政府も組織的な人権侵害で告発されている。
アナリストらは,両国関係がここ数年で最悪となっている現在,トラビス・キングの拘束が北朝鮮の反米メッセージに影響を与えていると指摘している。

北朝鮮は,特に人権侵害に対して国際的な批判を受けていることを考えると,人種差別や米国社会のその他の欠点を浮き彫りにする機会を楽しんでいた(relished)可能性が高い。

国連安全保障理事会は木曜日(817日),2017年以来初めて北朝鮮の人権状況を話し合う会合を開催する予定だ。
トラビス・キングに関するコメントに先立ち,北朝鮮メディアは米国主導の国連会議に関する声明を発表していた。
「人種差別や銃関連犯罪を助長する(fostering)ことに満足せず,米国は他国に非倫理的な人権基準を押し付けてきた」と書かれている。

(転載了)
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人種差別に反対してーなどの高潔な理由があったわけではなく,単に,米国に帰って懲罰を受けたくなかった,という単純な理由と思われます。
北朝鮮は 利用しようとする意志も見えますが,本心は 面倒で 迷惑なことでしょう。

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