ブルックス・ブラザーズ 破産の余波
ブルックス・ブラザーズは 2020年7月8日,新型コロナウイルス感染症の流行による長期間に渡る店舗営業の休止が響き,連邦破産法11章の適用を申請し経営破綻し,2020年8月11日,オーセンティック・ブランズ・グループとサイモン・プロパティ・グループの合弁会社,‘SPARC Group LLC’ に売却されました。
現在,日本で 日本のブルックス・ブラザーズの店舗,米国のホーム・ページを見る限り,破産の影響を感じることはありませんが,本国においては 破産による,それなりの余波はある(あった)ようです。
‘The New York Times’ が “The Ghosts of Brooks Brothers”(ブルックス ブラザーズの幽霊)の見出しで報じています。(Published:April 2, 2021,Updated:June 23, 2023)
下記,拙訳・転載します。
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小売業者が破産を申請した後,ある夫婦に放置されたマネキンでいっぱいの倉庫と,それを処分するための高額な(hefty)値札を残された。
コネチカット州エンフィールド(ENFIELD, Conn. )— ブルックス・ブラザーズの店舗の遺骨は,ここマサチューセッツ州境に近い倉庫の 10万平方フィートに渡って,段ボール箱やゴミ(junk)の海に混じって散乱している。
たくさんの(legions of)マネキン,かつてネクタイをディスプレイしていた空の円形テーブル,過ぎ去った時代(bygone era)の乗馬紳士のポスターなどが展示されている。クリスマス・ツリーのセクション全体と,リボンで吊るされた無数の金色の羊の装飾品がある。これは,ゴールデン・フリース(Golden Fleece)として知られる1850年以来のブルックス・ブラザーズのシンボルである。仕立屋への白紙の注文書が散乱している(strewn about)。どうやら今でも現役のネオンサイン。アパレルはないが,最近閉鎖されたブランドの工場の 1つから来たと思われる重いミシンが並んでいる。そしてバスルームには,ブルックス・ブラザーズと筆記体(cursive)で書かれたウェルカム・カーペットがトイレの隣に置かれている。
昨年のブルックス・ブラザーズの破産申請(bankruptcy filing)と売却の余波(fallout)で,その塊全体がここに放棄された。2019年に10億ドル近い売上があった小売店の残骸だ。それ以来,この倉庫を所有するチップとロザンナのラボンテ夫妻(Chip and Rosanna LaBonte)は,倉庫をすべて処分する方法を見つけ出すために奔走している。
不用品撤去業者ら(Junk removal companies)は,ブルックス・ブラザーズが11月まで借りていたスペースをクリアにするには少なくとも24万ドルかかると伝えた。請求書を支払うために,ラボンテ家は家を売らなければならない。
夫妻の窮状(plight)は,パンデミック中に連鎖的に発生し,工場労働者から経営者に至るまであらゆる人々に影響を与えた小売業の倒産が広範囲に及ぶ影響を示している。
小規模なベンダーや家主は,長期にわたるビザンチン(byzantine:複雑な)破産手続きの間,特に大企業と比較して訴訟費用に支出できる金額に制限があるため,窮地に陥ることがよくある。そして,破産したブランドが売却されると,ラボンテ家のような人々は,たいてい,塵の中に取り残されることになる。
バーンズ・アンド・ソーンバーグ(Barnes & Thornburg)のパートナーで小売破産専門家のジェームス・ヴァン・ホーン氏は,「これは非常に悲しい状況だが,残念ながらかなりの頻度で起こっている。なぜなら,これは法律が起草される段階での破産状況の一部に過ぎないからである」と述べた。「残念ながら,債権者(creditors)が被害者になる可能性があり,自らに属するものを取り戻すための選択肢がほとんど,あるいはまったくない場合もある。」
‘S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンス’(S&P Global Market Intelligence)によると,昨年米国で起きた600件を超える企業破産の中で,ブルックス・ブラザーズのような小売業者は目立っており(prominent),その申請件数は過去10年間で最高となった。
60代のラボンテ夫妻は清算人(liquidator)らと協力してブルックス・ブラザーズの残骸(detritus)を可能な限り売却しており,マサチューセッツ州シャーボーンにある自宅もリストに入れようとしている。彼らは破産裁判所に申し立てを行っているが,受け取ったとしても未払い金の5パーセント未満しか受け取れないと予想しており,手続きが絶望的に混乱していると告白した。何よりも,特にブルックス・ブラザーズが裕福な新しいオーナーの下で営業を続けていることから,彼らはこの状況に怒り,そして信じられない(incredulous)と感じている。
「廃業や破産は理解しているが,彼らの問題を私たちに押し付けてそこから手を引いて,私たちにこの浄化費用を負担させる(incur)のか?」 ラボンテ氏はエンフィールドでのインタビューでこう語った。 「このような出費を予想する人は誰もいない -私たちにはそれに対処するために蓄えた金(rainy day money)はない。」
夫妻は2010年にこの倉庫を購入した。商業用不動産への初めての進出(foray)で,それ以前は住宅プロジェクトに取り組んでいたと語った。彼らは他のテナントとセルフ・ストレージ セクションを持っているが,散らかっていて(mess),片付けられるまでそのスペースを他のことに使用できないという事実に不満を抱いている。
1818年に設立され,米国で継続的に運営されている最古のアパレル・ブランドであるブルックス・ブラザーズは,2011 年にエンフィールドの倉庫を借り始め,最近では月額約 2万ドルの料金で借りている。(ブルックス・ブラザーズはまた,エンフィールドに本社と配送センターを構えている。) 約375,000平方フィートの広さを持つこの建物は,KBRC不動産を通じてラボンテス家が所有している。 それが同社の唯一の不動産であり,夫婦の主な収入源である。
昨年,多くの米国人がリモート・ワークをし,クローゼットのすべてを置き去りにしたため,小売業全体のオフィス服装部門は大打撃を受けた。 「J.クルー」と「アン・テイラー」と「メンズ・ウェアハウス」のオーナーらも破産を申請し,「バナナ・リパブリック」などのチェーン店では売上が急落した。店舗の臨時休業に加え,プロム,卒業式,結婚式,その他のイベントなどの特別な行事が中止になったことも苦境に拍車をかけた。
これらすべてが,2020年で最も重大な小売業の破綻の一つとなった7月のブルックス・ブラザーズの破産申請につながった。ブルックス・ブラザーズは,申請当時,4人を除く米国大統領全員に衣装を着せており,同じく閉鎖を余儀なくされた米国の工場に誇りを持っていた。
しかし投資家はこのブランドに価値を見出し,この小売店はすぐに米国最大のショッピング・モール運営会社サイモン・プロパティ・グループ(Simon Property Group)とライセンス会社オーセンティック・ブランズ・グループ(Authentic Brands Group)によって3億2500万ドルで買収された。
両社は,SPARCグループと呼ばれる合弁事業を通じて,‘Lucky Brand denim’ や ‘Forever 21’ を含む一連の破産モール小売業者を買収している。
ブルックス・ブラザーズを買収した時点で,SPARC は,パンデミック前には世界中で 424店舗あったブルックス・ブラザーズの小売店を少なくとも 125店舗運営し続けることを約束した。
新しいオーナーの下で,ブルックス・ブラザーズは小切手の代わりに電信送金(wire transfers)に切り替えたが,11月まで倉庫の家賃を支払い続け,数十の店舗を閉鎖し,米国内の3つの工場を閉鎖したため,さらに多くの商品をそこに送ったとラボンテ夫妻は語った。しかし感謝祭の後,同社は夫婦に賃貸契約と倉庫の中身を拒否する手紙を送った。この取引に詳しい関係者によると,倉庫とその中身はSPARCによるブルックス・ブラザーズの買収には含まれていなかったという。その結果,新オーナーはラボンテス家に対して法的責任を負わない可能性が高いとヴァン・ホーン氏は述べた。
SPARCの代表者はコメント要請への返信を停止した。
「彼らはすべての店舗備品にそれを使用した。テーブル,備品,釣り竿,カヌーなど,店舗を装飾するために店舗に出入りするものすべてにそれが使用された」とラボンテ氏は言った。「おそらく20,000平方フィートのクリスマス・ツリーがあり-実際の商品以外はすべてある。」
誰が今それを欲しがるか:顧客の中にはマネキンを探している地元の衣料品メーカーや,‘The Gilded Age’(金ぴか時代)と呼ばれる次期HBOシリーズのセットデザイナーも含まれている。先週の月曜日,年配の夫婦がクリスマスの飾りや空のギフトボックスを眺めながらその空間をさまよっていた。‘Habitat for Humanity’ (住まいの問題に取り組む国際NGO)は数日間購入品(haul)を調査しており,物資の一部を引き取っている。それでも,ラボンテ氏は,残り(leftovers)の約30パーセントが売れたと推定している。
清算人(liquidator)はラボンテス夫妻に,4月中旬くらいまでに売れるものを売るために約2万ドルを支払った。夫婦は取り分を受け取らず,残ったものを処理することになる 12月にガラクタ撤去の専門家がそのスペースの撤去にかかる費用を査定したところ,ある見積もりは約24万3,000ドルで,もう1つの見積もりは29万ドル近くだった。
ラボンテさんはブルックス・ブラザーズについて「彼らにとて我々は新型コロナウイルスの犠牲者に過ぎない,それは理解している」と語った。「しかし,彼らはそこにどれだけの物があるか理解していなかったとも思う。」
ニューヨーク・タイムズ紙に料金を確認した不用品回収業者は,大量の商品を撤去するには費用がかかると述べた。費用には,人件費,ゴミ捨て場,寄付およびリサイクル・センターへの複数回の出張,フォークリフト,大型ゴミ箱,18フィートのボックス・トラックなどの特殊な機器の使用が含まれる。
夫妻に24万3000ドルの見積書を提示したイーストサイド・ジャンクのオーナー,リック・マクドナルド・ジュニア氏は,「私はこの仕事を7年間やっているが,このようなことはこれまで見たことがない」と語った。「彼らは天文学的な(astronomical)量のものを残した。」
昨年,ライセンス会社オーセンティック・ブランズが破産状態からのブルックス・ブラザーズの買収を発表したとき,同社の最高経営責任者ジェイミー・ソルター(Jamie Salter)氏は,小売業者の遺産とその「信じられないほどの歴史」について語った。
そうした歴史の一部が詰まった倉庫に直面していた(confronting)ラボンテ夫妻は、こうしたコメントを見て悲しかった。
夫妻は最近声明を発表し,「低家賃で一時的な(fly-by-night)ごろつき(bullies)のように活動する場合,彼らはどのような遺産を主張できるのだろうか?」と尋ねた。
(転載了)
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