ヨーロッパのエアコン事情(UKは除く)
ヨーロッパも去年から 30℃越えの暑さが常態化し,エアコンの普及率の低さが問題になっています。
ロンドン市長室のサイトには ロンドンにおいて 涼しさを求めて逃げ込める「クール・スポット」の案内図が示されています。
‘Euronews.green’ のサイトに
“Air conditioning use has more than doubled in Europe since 1990”
「ヨーロッパでは 1990年以来,エアコンの使用が 2 倍以上に増加」(Updated 04/09/2023)
のタイトルの記事が掲載されていました。
下記,拙訳・転載します。
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ヨーロッパ人はエアコンを使用しない傾向があるかもしれないが,特に大陸の南部諸国で,エアコンとヒート・ポンプの売上が着実に増加している。
文化的には,ヨーロッパ人は今でもエアコンに抵抗がある。しかし,前世紀に入ってから気温が上昇するにつれて,大陸ではエアコンの使用が着実に増加していることが数字で示されている。
国際エネルギー機関(IEA:the International Energy Agency)が2018年に発表し,2016年のデータに基づいたこの問題に関する最新の報告書によると,EUのエアコンの台数は中国や米国よりもはるかに少ない。全体のエアコン設備数は少なく (9,650 万台),人口あたりの設備数も少ない (住民 1,000人あたり約20 台)。
2016年には,中国,米国,日本の 3ヶ国だけで世界のエアコン・ユニットの 3分の2 を占めた。
IEAのより最近ではあるが正確さは劣るデータによると,2022年のエアコン普及率は米国で 90% であるのに対し,欧州ではわずか 19% である。(*因みに 日本は 91%)
IEA はEUに関する予測の中で,2023年までに 1億3,000万台が設置されると予測しており,その数は 2050年までに欧州大陸で 4倍になると推定している。
IEA の報告書における他の国々と比較したEU市場の特徴の 1つは,エアコン設備が個人の住宅ではなくオフィスなどの商業用建物に最初に設置されたことである。
IEA によると,エアコン設備は 商業ビル(commercial buildings)よりも地域市場(domestic market)の方が早く進んでいる。しかし,エアコンを設置することは,多くの場合,小さな贅沢のままである。
米国のバークレー大学とドイツのマンハイム大学の4人の研究者による16ヶ国で実施した調査によると,全体的に見て,エアコンを設置する世帯数は裕福な国ほど多く,裕福な世帯の間でより急激に増加していることがわかった。
設置コストが障害の 1 つである;エアコンを稼働させると光熱費が増加することも問題である。
The vicious circle of air conditioning
エアコンの悪循環
エアコンの使用量が増えると,製造から配送,使用,リサイクルまで,エアコンのライフ・サイクル全体にわたって次の 3つの影響が生じる:
1.エネルギー消費の増大;
2.温室効果ガスの増大;
3.空気が暖められ,特に都市部でのヒート・アイランド現象の発生。
国際エネルギー機関 (IEA) によると,現在,世界中で排出される CO2 総量 370億トンのうち,エアコンは年間約10億トンの CO2 を排出している。
国際エネルギー機関(IEA)の専門家クララ・カマラサ(Clara Camarasa)は,エアコンは「電力網に多大な圧力をかけ,温室効果ガスの排出を加速させ,気候危機を悪化させる(exacerbating)可能性がある」と説明する。
彼女はさらに付け加える:「[エアコン] 要件の急速な増加により,非効率でエネルギー集約型(energy-intensive)の機器の使用につながる可能性がある。また,エアコンには多くの場合,大量の水を必要とし,一部の特定の冷媒を使用すると,特に温暖化の可能性があり,オゾン層にも有害である。」
EUでは建物の冷房の必要性が 1979年から 2022年の間に 4倍に増加しており(quadrupled),欧州大陸の北部ではその傾向がますます顕著になっている。
EC統計局(Eurostat:Statistical Office of the European Communities)によると,現在,欧州の家庭における最終エネルギー消費量に占めるエアコンの割合はわずか 0.5% にすぎない。この割合は,国の地理的位置と高温にさらされる状況によって異なる:
都市部ではエアコンの使用がヒート・アイランド現象を助長する。エアコン・システムは地球規模の気候変動に影響するだけでなく,都市部に熱を放出することで建物を冷却し,都市部は熱を蓄え,特に夜間に再び放出する。
フランスでは,気候変動の経済学の研究者ヴァンサン・ヴィギエ(Vincent Viguié)率いる Cired (Centre international de recherche sur l'environnement et le développement) のチームが,パリでの熱波とエアコン・レベルの組み合わせをシミュレーションした。
彼らは,9日間38℃の熱波が続いている間,市内のすべてのエアコン完備の建物の室内温度を23℃に維持した場合,パリの通りの気温は夜間に2.4℃ 上昇すると計算した。
この熱波は 更なるエアコンの使用を促し,建物の冷房を永久に(for good)放棄すべきだという悪循環に陥る可能性がある。
A basic necessity?
基本的な必需品?
しかし,一部の地域ではエアコンが基本的な必需品となっている。
「純粋主義者(purists)の中には,エアコンをまったく使用すべきではないと考える人もいるが,それは現実的ではないと考える。」とイェール大学・気候変動・健康センター(the Center on Climate Change and Health)所長のロバート・ダブロウ(Robert Dubrow)は言う。
ロバート・ダブロウが共同執筆した最近のIEA報告書によると,エアコンの利用によりすでに年間数万人の命が救われており,その数は増え続けているという。
研究によると,エアコンのある家庭では熱関連死亡のリスクが 約75% 減少する。
専門家全員が,賢明な行動方針は,エアコンの使用そのものを減らすことではなく,一方ではより効率的なシステムを推進し,他方では建物の断熱と植生(planting vegetation)を優先することであることに同意している。
国際エネルギー機関(IEA)の専門家であるクララ・カマラサは,「都市部のヒート・アイランド対策の手段として,自然ベースの解決策(nature-based solutions)への関心が高まっている。緑地,緑の屋根は,効率的なテクノロジーを補完するものとして,都市の回復力を高める(resilient)ことができる。」と指摘する。
したがって,彼女は,「可逆ヒート・ポンプを優先し,建物の断熱性を改善することで,エネルギー需要の増加に対処しながら,より持続可能(sustainable)で回復力のある(resilient)都市の構築に役立つ可能性がある」と信じている。
(転載了)
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