‘Pew Research Center’,NOVEMBER 27, 2023付け見出し
“U.S.-Germany Relationship Remains Solid, but Underlying Policy Differences Begin to Show”
「米独関係は依然として堅調だが,根底にある政策の違いが見え始めている」
の調査報告を拙訳・転載します。
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Americans more likely than Germans to see China as security threat
米国人はドイツ人よりも中国を安全保障上の脅威とみなす可能性が高い
ピュー研究所とケルバー財団(Körber-Stiftung)との第7回共同調査の結果は,主要な世界情勢が大西洋横断同盟の限界を試す中でも,米国人とドイツ人が両国の関係を前向きに捉えていることを示している。
ウクライナとロシアの間の戦争はほぼ2年に及び,最近ではハマスとイスラエルの間で爆発的な暴力が地域紛争に発展する恐れがあり,両国の同盟国にとって外交政策の利害関係(stakes)は依然として重要である。そして,より自己主張の強い(assertive)中国との各国の関係は,依然として世界情勢の主要なテーマとなっている。
2023年9月に 米国人成人 1,014名とドイツ人成人 1,057名を対象に実施された共同調査から得られた重要なポイントは次のとおりである:
The U.S.-Germany relationship
米独関係
・米国人の 85%,ドイツ人の 77% が 両国間の関係は良好だと考えている。これは近年の傾向と一致しているが,2020年のジョー・バイデン大統領の選挙前には,両国関係に対するドイツの見方はもっと否定的だった。
・米国人の大多数は,中国への対処やウクライナ戦争などの重要な問題において ドイツをパートナーとみている。しかしドイツ人は,米国が自由貿易,民主主義の推進,ウクライナ戦争への対処においてパートナーであることは認めているものの,対中政策や気候変動保護に関する米国との提携については あまり自信を持っていない。
・米国では,民主党や民主党寄りの人々は,共和党や共和党寄りの無党派層よりもドイツを主要問題のパートナーと見なす可能性が高い。しかし一般に,ドイツに対する肯定的な感情は超党(bipartisan)である。
・ドイツ人が 米国を最も重要な外交政策のパートナーとみているのと同様に,米国人は英国をその役割を果たすと考えている。フランスはドイツにとって最も重要な外交パートナーとして二番目に選ばれているが,米国人は中国を二番目に重要だと考えている。
・ほとんどの米国人がドイツの力は近年 あまり変わっていないと考えているにもかかわらず,ドイツ人の57%は 自国の国際的な力が 最近 低下していると考えている。
American and German views of Russia
米国人とドイツ人のロシア観
・多くの米国人やドイツ人はロシアを軍事的脅威とみなしているが,米国人の方がこの点をより確信しており,68%がロシアは大きな脅威であると答えているのに対し,ドイツ人の36%である。ドイツではロシア軍が主要な脅威であるという懸念が昨年から14パーセンテージ・ポイント増加している。
・両国の人々は,米国とドイツの関係が,それぞれのロシアとの関係よりも重要であると考えている。しかし,ドイツ人の中では,右翼ポピュリスト政党「ドイツのための選択肢」(AfD:Alternative for Germany)の支持者は,他の政党の支持者よりもロシアとの結びつきに熱心である。
American and German views of China and other emerging economies
中国およびその他の新興国に対する米国人とドイツ人の見解
・10人中7人の米国人は中国を経済的,安全保障上の大きな脅威とみなしている。しかし,中国がドイツの安全保障に対する大きな脅威であると答えたドイツ人はわずか13%で,中国が経済的脅威であると答えた人は49%だった。米国とドイツの多数派は,中国の影響力拡大は自国にとって悪いことだと考えている。
・米国人とドイツ人の間では,ブラジル,インド,南アフリカなどの他の新興国の台頭について,それほど懸念はない。実際,ドイツ人の 51% が,新興国の台頭は自国にとって良いことだと答えている。この点に関して米国人の意見は より分かれている;39% は良いことだと答え,23% は悪いことだと答え,35% は変化がないと答えている。
・民主主義国家が軍事的緊張,気候変動,新型コロナウイルス感染症のパンデミックなどの国際的な大惨事に対処するのに最も適しているという点で,両国で強い合意が得られている。米国人とドイツ人のおよそ10人中8人がこの考えを持っています。
これらは、ピュー研究所が2023年9月15~24日に米国成人1,014人を対象に実施した調査と,ドイツの成人1,057人を対象に2023年9月6~12日に実施したケルバー財団の調査の結果の一部である。
2022年と同様,米国人の調査はオンラインで実施された。2017年から 2021年にかけて,ピュー研究所によるこのテーマに関する米国の調査は電話で実施された。ドイツ人を対象とした調査は,2023年を含むすべての年ですべて電話で実施された。ケルバー財団調査の追加結果は,新しくリリースされた出版物 “Berlin Pulse” でご覧いただける。
How Americans and Germans see bilateral relations
米国人とドイツ人は二国間関係をどう見ているか
米国とドイツの人々は,自国間の関係は良好であると言い続けている:米国人の 85% が米国とドイツの関係はある程度,または非常に良好であると考えており,一方,ドイツ人の 77% が同じように答えている。
2021年以来,ドイツの環大西洋関係に対する見方は肯定的であり,米国およびジョー・バイデン大統領に対する全体的な態度も同様である。しかし,ドナルド・トランプ大統領が就任した2021年以前は,欧州全体で米国のイメージが崩れる(crumbled)中,ほとんどのドイツ人は米国との関係を否定的な見方をしていた。
・米国では,ドイツに対する見方に関し,人口統計や政治的グループ間の違いは比較的少ない。
・しかしドイツでは,AfD支持者は他党支持者よりも米独関係に懐疑的な(skeptical)傾向がある。
米国人はドイツをさまざまな国際問題におけるパートナーとみなす傾向がある。米国人の大多数は,自由貿易の推進,環境保護,世界中の民主主義の推進,ウクライナ戦争への対処,中国との関係においてドイツをパートナーとみている。
ドイツ人も同様に,米国をウクライナ,貿易,民主主義推進のパートナーと見なしている。しかし,米国を中国問題のパートナーとみなしているドイツ人は約半数のみで,環境保護のパートナーと考えている人はさらに少ない(29%)。2022年の調査では,ドイツ人の10人中4人が米国を気候保護のパートナーだと考えていた。
・質問されたすべての問題について,民主党員は共和党員よりもドイツをパートナーと見なす可能性が高い。この違いは環境保護の問題で最も顕著に表れる。しかし,共和党の大多数は依然としてドイツを調査対象のすべての問題に関してパートナーとみている。
・ドイツが近年国際的な影響力を失ったかどうかについては,ドイツ人とアメリカ人の意見が一致していない。ドイツ人の大多数は,過去 2年間で自国の影響力は増加したり変化したりするよりむしろ,減少したと述べている。しかし,米国人の大多数はドイツの影響力は変わっていないと言っている。この 2年間は,アンゲラ・メルケル首相後の時代にほぼ相当する。メルケル首相は 16年間ドイツ首相を務めた後,2021年12月に退任した。
・連立(coalition)与党の社会民主党(SPD:Social Democratic Party)に反対する政党を支持するドイツ人は、ドイツの国際的影響力が低下している見る可能性が高い。
Most important foreign policy partner for U.S. and Germany
米国とドイツにとって最も重要な外交パートナー
米国人もドイツ人も,自国間の関係は概して前向きだと考えていますが,外交政策にとって自国の最も重要なパートナーについては異なる見解を持っている。
ドイツ人は一般に,最も重要な外交政策のパートナーとして米国を挙げており,43%がそう答えている。 ドイツについて同じことを言う米国人ははるかに少ない (6%)。その代わりに,米国人の4分の1が英国をアメリカの外交政策にとって最も重要なパートナーとして挙げている。これらの調査結果は,近年の同様の調査で得られた調査結果と一致している。
次に多い割合の米国人(11%)は,中国が米国にとって最も重要な外交政策のパートナーであると答えている。さらに6%がカナダを挙げているが,より小さい割合ではイスラエル,日本,メキシコ,または米国そのものを挙げている。
ドイツ人の中で,約4分の1(26%)がドイツ外交政策の最も重要なパートナーとしてフランスを挙げ,残りの5%が中国を挙げている。昨年以来,自国の最も重要な外交政策のパートナーとして米国を挙げるドイツ人の回答者の割合は7ポイント増加し,フランスを選ぶ回答者の割合は6ポイント減少した。
・米国の最も重要なパートナーとして英国を挙げている人々の間には大きな党派的な違いはないが,民主党員は共和党員よりもカナダが米国にとって最も重要なパートナーであると言う可能性が高い。
・共和党員は民主党員よりもイスラエルを自国の最も重要なパートナーとみなす可能性がはるかに高い。 (この調査は最近のイスラエル・ハマス戦争前に実施された。)
・ドイツでは,AfD支持者の14%が自国の最も重要なパートナーとしてロシアを挙げており,この割合は他のどの政党よりも大幅に高い。
American and German views on Russia and Ukraine
米国人とドイツ人のロシアとウクライナへの見方
米国人もドイツ人も,ロシアとの関係よりも自国同士の関係を優先している。米国人の約半数(51%)は,米国にとってドイツとの緊密な関係がより重要であると答え,約3分の1(32%)はドイツとロシアの両国との関係が同等に重要であると述べている。さらに7%は,米国にとってドイツとの関係よりもロシアとの緊密な関係を優先することが重要であると回答した。そして,同様の割合で,どちらの関係も重要ではないとしている。
ドイツ人の4分の3は,ロシアとの関係よりも米国との緊密な関係の方が重要だと答えている。逆に,14% は米国との関係よりもロシアとの関係を優先し,別の 8% は両方の関係が重要であると回答した。
両国とも党派に沿って意見が分かれている::::
・米国では,民主党員は共和党員よりもロシアよりもドイツとの関係を優先する可能性が高い(62% 対49%)。
・ドイツでは,AfD支持者の間では,ドイツにとって米国(44%)とロシア(39%)のどちらと緊密な関係を築くことがより重要であるかについて意見が分かれている。
・学士号以上の教育を受けた米国人は,ドイツとの関係がロシアとの関係よりも重要であると答える可能性が,それ以下の教育を受けていない人々に比べて22パーセンテージ・ポイント高い。
米国とドイツの関係,そして自国とロシアの関係について比較的似た見解を反映し,米国人とドイツ人も,ウクライナ情勢に対処するパートナーとしてお互いを見るという点では一致している。米国では10人に6人以上(64%)がドイツはウクライナ戦争への対処のパートナーであると述べており,同様の割合のドイツ人(69%)が米国についても同様であると答えている。
・米国での見方は年齢によって異なり,65歳以上の成人は若い世代よりもドイツをウクライナ戦争への対処のパートナーと見なす傾向が高い。
・ドイツでは,最年長と最年少の年齢層に大きな差はないものの,AfD支持者は米国をウクライナ問題のパートナーと見なす傾向が他党支持者に比べてはるかに低い。
同時に,ロシアの軍事的脅威の深刻さについては米国人とドイツ人の意見が分かれている。米国の人々は,ロシアが自国の安全保障に対する重大な軍事的脅威であると言う可能性がドイツの人々よりもはるかに高い。
米国人の10人中7人近く(68%)がロシアを大きな軍事的脅威とみなしているが,約4分の1はロシアを小さな脅威だと考えている。ロシアが米国の安全保障にとって全く脅威ではないと答えたのはわずか5%だった。
対照的に,ドイツ人の 36%しか ロシアがドイツの安全保障にとって大きな軍事的脅威であると述べていない。ドイツ人の10人に4人はロシアの脅威は小さいと答えているが,約10人に2人(21%)はロシアをドイツの安全保障に対する脅威とは全く考えていない。
米国人とドイツ人の見解はいずれも昨年の調査結果とほぼ一致しており,米国人はドイツ人よりもロシアが自国の安全保障に対する重大な脅威であると回答する可能性が大幅に高い。ロシアが主要な脅威であると答えるドイツ人の割合は,昨年より若干増加した(2022年の22%から2023年の36%)。
・米国では,高齢者は若い人よりもロシアを主要な軍事的脅威と見なす傾向が高い。65歳以上の成人の約 4分の3 (74%) がそう答えているのに対し,30歳未満の成人では約10人に6人 (59%) しかそう答えていない。
Views of China’s rise and its economic and military threat
中国の台頭とその経済的・軍事的脅威についての見方
米国人の圧倒的多数は,中国が近年世界的に影響力を増してきたことは,米国にとってむしろ悪いことだと考えている。イツ人の大多数も自国に対して同じことを言っている。
・民主党員よりも共和党員の方が,中国の台頭は米国にとって良くないとの意見を持っている(82% 対70%)。
・ドイツでは,AfD支持者は中国の台頭に対してそれほど懸念を抱いていない:中国の台頭はむしろ悪いことだと答えた人(42%)と,影響はないと答えた人(38%)がほぼ同数だった。さらに 19% が,それは良いことだと答えている。
・50歳以上の米国人は,18歳から49歳の米国人よりも,中国の台頭は米国にとって悪いことであると確信している(81% 対 62%)。また,学士号以上の米国人は,それ以下の教育しか受けていない米国人も同様である(79% 対 67%)。
・ドイツでは,年齢層や教育レベルを問わず大多数が中国の台頭はむしろ悪いことだと考えている。
米国人はまた,中国を米国の安全保障に対する軍事的脅威であると同時に,米国経済に対する経済的脅威であるともみなしており,各質問について10人中7人がそう回答している。
さまざまな人口構成グループが中国を軍事的および経済的脅威としてどのように見ているかは,中国の台頭に関する意見をほぼ反映している:
・共和党員と民主党員は,中国が大きな軍事的脅威(81% 対67%)であり,大きな経済的脅威(79% 対69%)であるという点で一致しているが,共和党はこれをより切実に感じている。
・50歳以上の米国人は,18歳から49歳の米国人(それぞれ62%と67%)よりも,中国を主要な軍事的脅威(79%)と主要な経済的脅威(75%)とみなす傾向が高い。
・ドイツ人は中国を軍事的脅威と経済的脅威と同等に見ていない。むしろ,ドイツ人は経済的脅威として中国のことをずっと懸念している。
ドイツ人10人中8人以上が中国を大きな経済的脅威,あるいは経済的脅威とみており,49%が同国が大きな経済的脅威を与えていると回答した。特に緑の党(Greens)の支持者はそう言いやすい。
ドイツ人の55%は中国を大小の軍事的脅威だと考えているが,ドイツの安全保障に対する大きな脅威だと考えている人はわずか13%である。
Views on the rise of emerging economies
新興国の台頭に対する見方
ブラジル,インド,南アフリカなどの新興国の台頭について尋ねられたとき,米国人は中国の台頭ほど懸念してない。 10人中約4人は,この種の国が将来的に世界的な影響力を獲得すれば,それは米国にとってむしろ良いことになるだろうと答えているが,同様の割合の人は,影響はないと答えている(35%)。およそ4人に1人の米国人が,それは米国にとってさらに悪いことになるだろうと答えている。
全体として,ドイツの回答者は米国人よりも新興国の台頭を肯定的に捉えている。ドイツ人の約51%は新興国の台頭はドイツにとって良いことだと答え,17%はむしろ悪い事だと答え,27%は中立的に考えていると答えた。
・ドイツの緑の党の支持者は新興国の台頭を良いことだと考える可能性が最も高く,4分の3がそう考えている。
Views of whether democracies or non-democracies are better equipped for global problems
民主主義と非民主主義のどちらが地球規模の問題に対してよりよく対応できるかについての見解
米国人とドイツ人の圧倒的多数は,パンデミック,気候変動,軍事的緊張といった長期的な世界的課題への対処においては,民主主義政府が非民主主義政府よりも優れていると主張しており,各国ともおよそ10人中8人がこの意見を持っている。
・共和党員と民主党員の圧倒的多数は,民主主義が地球規模の問題に最もよく対処できる政府システムであることに同意している。しかし,共和党員は民主党員 (10%) よりも非民主的な統治に対して寛容である (19%)。
・ドイツでは,AfD支持者の62%が民主主義国のほうが地球規模の問題をよりよく解決できると答える一方で,28%が非民主主義国のほうがこうした問題に対処する能力が高いと答えている。
(転載了)
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