“Harrington Jacket” に関して
‘Gentleman’s Gazette’ のサイト,‘WARDROBE, CLOTHING AND ACCESSORIES’ のカテゴリーに
“The Harrington Jacket Guide”
「ハリントン・ジャケット ガイド」
と題する記事がありました。
‘Harrington Jacket’,特に ‘Baracuta’ のそれに関しては 私自身,かなりの知識を持っているつもりなので,批判の眼で読んでみました。
下記,拙訳・転載します。
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過去にはオーバーコートやカーディガン,そして最近ではブレザーを特集してきた。 ハリントン・ジャケットと比べるとカーディガン以外はフォーマル寄りだが,ハリントン・ジャケットはセミフォーマルとカジュアルの狭間にぴったりである。 ハリントン・ジャケットは,スティーブ・マックイーン,フランク・シナトラ,ジェームス・ディーン,ダニエル・クレイグなど,多くのスタイリッシュな男性に好まれているスタイルなので,ここではハリントン・ジャケットにもう少し焦点を当てたいと思う。北半球のほとんどの地域では今は寒すぎて着ることができないが,ハリントン・ジャケットはすぐに着られるようになるので,今がそれについて語るのに最適な時期である。
Characteristics of the Harrington Jacket
ハリントン・ジャケットの特徴
この衣服の歴史を掘り下げる(delve into)前に,まず,今日 知られているハリントン・ジャケットの特徴を定義しよう。
・腰丈のジャケット。
・素材は綿,毛,革(化繊もあり)のいずれか。
・通常は外側の単色。
・裾と袖口に伸縮素材を採用し,ウエスト周りにぴったり(snugly)フィットする。
・フロントは首元まであるフルジップ仕様。
・フロント下部の両側に45°の角度でカッティングされたボタン付きのフラップ・ポケットが2つ付いている。
・マンダリン・カラーのようなストレート・カラーで,2つのボタンで留める。
・ジャケットと着用者から雨を逃がすように設計されたバック・ヨーク。このユニークなデザインは傘からインスピレーションを得たもの。
・裏地はタータン・チェック。
History
歴史
ほとんどの情報源は,ハリントン・ジャケットは 1937年にマンチェスターのバラクータ(Baracuta)の創設者であるジョン・ミラーとアイザック・ミラー(John and Isaac Miller)によって英国で初めてデザインされたとされている。同時に,英国のグレンフェル(Grenfell)社は,1930年代初頭にまったく同じスタイルのジャケットを製造したと主張している。残念なことに,「ハリントン・ジャケット」という名前は,1964年に俳優のライアン・オニール(Ryan O’Neal)が TV シリーズ『ペイトン・プレイス』のロドニー・ハリントン(Rodney Harrington)役で「バラクータ G9」を着用するまで 存在してなかった。この名前は,ロンドンにアイビー・リーグ・ルックをもたらしたとされる紳士服小売業者,ジョン・シモンズ(John Simons)によって広められた。 彼らは今でもこのジャケットを在庫している。それに基づくと,日付が記載された衣類のアーカイブ写真が公開されない限り,実際に誰が最初に考案したのかを証明することは不可能と思われる。
Baracuta G9
バラクータは,最初 バーバリーとアクアスキュータムのために雨よけアウターウェアの製造を開始し,その後,独自に事業を拡大した。 彼らがレインウェアで名を馳せたこと,そしてミラー兄弟が熟練したゴルファーになることを目指していた(aspired)という事実は,ハリントン・ジャケットのデザインに大きな役割を果たした。したがって,外観を損なうことなく着用者を雨から守るように設計されていたため,当初はゴルファーの間で非常に人気があったのも不思議ではない。角度のついたフラップ・ポケットはゴルフ・ボールを入れるのに最適で,伸縮性のあるウエストと手首は腕を自由に振ることができる。 デザインには通気性の要素もあり,スポーツ全般に最適である。実際,名前の「G」はゴルフの略で,ゴルフ場で着用されていたことから日本人は「スイング・ジャケット(swing jacket)」と名付けた。
当時,ゴルフは裕福な上流階級の独占物であったため,ハリントン・ジャケットはゴルフとの結びつきから恩恵を受け,憧れと上昇志向(upward mobility)の対象とみなされるようになった。これは,1938年にフレイザー一族(the Fraser Clan)の族長である第24代ロバット卿(Lord Lovat)が,裏地にフレイザー・タータンチェック(the Fraser Tartan)を使用する許可をジョン・ミラーに与えたという事実によってさらに強化された。 ハリントン・ジャケットは当時 ‘G9’ と呼ばれていた。
1950年代に,バラクータは米国への製品の輸出を開始し,G9 はアイビー・リーグの大学の学生に選ばれ,すぐにプレッピー・ルックの定番となった。くだけ過ぎず,それでいてスポーティな,完璧なプレップ・ウェアだった。
G9 は 1954年に他ならぬエルヴィス・プレスリーによってより多くの観衆に紹介され,映画『闇に響く声(King Creole)』で着用した。米国では,1968年の映画『華麗なる賭け(The Thomas Crown Affair)』でスティーブ・マックイーンが着用したことでさらに人気が高まった。 彼はある作品でライフ誌の表紙を飾り,彼の伝説はその衣服と密接に結びついている。 ハリントン・ジャケットは,フランク・シナトラ,グレゴリー・ペック,さらにはジェームス・ディーンを含む多くの有名人によって着用された:後者は映画『理由なき反抗(Rebel Without a Cause)』で着用していた。
英国に戻ると,ハリントンは 1960年代のモッズ運動に採用され,この時代の象徴的な英国スタイルの一部となった。 その人気は決して衰えることはなく,70年代,80年代,90年代にスクーター・ボーイズ,パンク,スカなどの他のサブカルチャーに浸透することでリバイバルが続いた。実際,ブリット・ポップ・シーンの多くの歌手やバンドが愛用した。
その歴史,伝統的なブランドの欠如,スタイリッシュでありながら実用的なデザイン,カウンターカルチャーとの関連性により,さまざまな社会的および社会経済的グループの間で人気を維持している。このような多様なバックグラウンドを持つバラクータは,G9 の 70周年を記念して,パンク・エディションや「プロジェクト 137」と呼ばれる 137着のジャケットからなるアニバーサリー・エディションなど,数多くの限定エディションを制作した。バラクータは,裏地にエルヴィス・プレスリー,スティーブ・マックイーン,フランク・シナトラの名言とシリアル・ナンバーがプリントされた,G9,G10,G4 の 3種類の特別なジャケットをリリースした。
Style & Fit Advice
スタイルとフィット感のアドバイス
How does one begin with such a versatile garment?
このような多目的な衣服はどのようにして袖を通し始めればよいのだろうか?
1.いつものように,最初に注目すべきはフィット感である。古典的なハリントンの身頃は,胸のサイズと腕の関係で常に短くカットされている。
2.ジャケットの裾のリブは常にパンツのベルトまたはウエストバンドを覆うようにし,袖はリブが手首を覆うのに十分な長さでなければならない。そうでない場合は,別のものを試すこと。
3.クラシックな G9 のアウター・シェルは,撥水性のあるポリ・コットン・ブレンドで作られているが,私はピュア・コットンも好きだ。最近では,コーデュロイ,レザー,その他あらゆる種類の素材も見つかる。
4.バラクータは「G9 オリジナル」と呼ばれるスタイルを販売しているが,現代のバージョンは古いジャケットよりもスリムで,高品質の生地を使用しているため,実際にはオリジナルのハリントン・ジャケットではない。もちろん本物を求めるならヴィンテージ・ジャケットを選ぶしかないのだが,それでも見つけるのは難しいだろう。
明らかに,このジャケットは典型的な春/秋の気候でのあらゆる種類のアクティビティに適している。もちろん,本来の用途であるゴルフだけでなく,オートバイやオープンカーの運転や食料品の買い出し,ピクニックなどにも着用できる … 可能性は無限大である。見た目に関しては,いくつかのオプションがある。
ジェームス・ディーン / スティーブ・マックイーン – クールでカジュアルな外観は,最小限のものを保つことで最もよく実現される。ジーンズ,Tシャツ,ブーツがそれを美しくまとめる。これらの要素を試す範囲は広く,組み合わせて自分に合った外観を実現することができる。
プレッピー – 前述したように,ハリントンはプレッピーの定番である。 チノパン,ポロシャツ,ボート・シューズと合わせたり,ポロシャツの代わりにボタンダウン・シャツを着て蝶ネクタイをしたり,チノパンの代わりにショート・パンツ(蝶ネクタイなし)を着用したりすることもできる。初期の採用者はフレッド・ペリーの T シャツと合わせて着用することがよくあったが,ラベルを気にするのはブランドの被害者(brand victims)だけである。常に品質,カット,デザインを最初に探すことをお勧めする。
セミフォーマル / 洗練 – ブレザー / スポーツ・コートを適切なハリントンに置き換え,アンサンブルの残りの部分は同じに保つ。印刷物での響きや見た目に反して,実際に効果があり,間違いなく他の人より目立つことになる。
What Harrington Jacket to Buy
ハリントン・ジャケットを買うべきか
ハリントン・ジャケットは,こうした多様な文化とサブカルチャーの間の橋渡しに成功し,現在でもミュージシャンや反逆者たち(rebels)に多くの支持を得ている。 このため,ハリントンは現在多くのブランドやメーカーによって作られており,あらゆる価格帯で入手可能である。イヴ・サンローラン(Yves Saint Laurent),ラルフ・ローレン(Ralph Lauren),ランブレッタ・クロージング(Lambretta Clothing),トミー・ヒルフィガー(Tommy Hilfiger),オービス(Orvis),プリティ・グリーン(Pretty Green),ブルックス・ブラザーズ(Brooks Brothers),メルク・ロンドン(Merc London),フレッド・ペリー(Fred Perry),テスカ(Tesca),アイゾッド(Izod),ベン・シャーマン(Ben Sherman),ラコステ(Lacoste),ライル・アンド・スコット(Lyle and Scott),ロンズデール(Lonsdale)などによって作られている …
(管理者注:本文では この後に 各メーカーの価格が示されていますが,掲載時期の関係で現時点とは異なるので 省略します。)
(転載了)
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気になったのは「英国のグレンフェル(Grenfell)社は,1930年代初頭にまったく同じスタイルのジャケットを製造したと主張している。」の一文です。
確かに ‘Grenfell’ のホームページの ‘Timeline’,1931年に “BIRTH OF THE GOLFING JACKET” とあって そのポスターが添付されています。
但し,ポスターのイラストから確認できるそのデザインの “Harrington Jacket” と明らかに異なる点が 三つあります ― ①袖口が リブではなく カフ,②脇ポケットがパッチ(貼り付け),③カラーのボタンが一つ。
‘Baracuta’ が 裏地のフレーザー・タータンを含んで G9 を完成させたのが 1938年なので ミラー兄弟が ‘Grenfell’ の “Golfing Jacket” を参考にしたことは 大いに考えられます。
それでも,厳密には “Harrington Jacket” は ‘Baracuta’ が起源と考えます。
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