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2024年2月20日 (火)

トランプの NATOに関する嘘,あるいは無知

今年11月の大統領選挙で返り咲きを目指すトランプ前大統領は 210日,在任中に,十分な軍事費を負担しないNATOの加盟国はロシアからの攻撃を受けたとしても防衛せず,むしろロシアに攻撃を促すと発言して,各国から批判が相次ぐ中,14日,改めて「負担金を払わなければアメリカは防衛しない」と強調しました。

これに関連し,‘CNN’,February 13, 2024付けに
Fact check: Debunking five false Trump claims about NATO
「ファクト・チェック:NATOに関するトランプ大統領の5つの誤った主張を暴く」
の見出し記事が掲載されていました。

下記,拙訳し,転載します。
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ワシントンCNNドナルド・トランプ前大統領は 大統領選挙戦で,北大西洋条約機構(NATO)の軍事同盟について不正確な発言を続けている。

トランプは土曜日の選挙集会で,かつてNATOの「大規模な(big)」国の大統領に対し,その国が「請求書」を支払わないのであればロシア軍から国を守るつもりはない,ロシアに「彼らが望むことは何でもする」よう「奨励」さえするだろう,と主張し,大西洋を越えた大騒ぎ(transatlantic uproar)を引き起こした。
トランプの扇動的な発言には,よくある虚偽の主張が含まれていた。 CNNなどのファクト・チェッカーが長年指摘してきたように,NATO同盟国が「請求書(bills)」を支払っていないとされるという彼の主張は真実ではない。

そしてトランプは長年にわたり,NATOとその加盟国による支出について,他にもさまざまな虚偽の主張を行ってきた。 以下は,彼が繰り返し述べた5つの発言の事実確認である。

Spending by NATO members
NATO加盟国による支出

トランプは,さまざまなNATO加盟国が「請求書(bills)」,「会費(dues)」,または「NATO手数料(fees)」を支払っていない,「我々に莫大な金額を負わせている」,または「NATOに何十億ドルも借りがある」と長年主張してきた。

Facts First : これらのトランプの主張はすべて誤りである。 NATO加盟国の大多数は,各加盟国が国内総生産の最低2を防衛に支出するという同盟の目標を達成していないが,2の目標は「ガイドライン」であり,もし,それが満たされてなくとも 請求書,債務(debts),法的義務(legal obligations)を生じさせない。 実際,このガイドラインでは NATO や米国への支払いはまったく求めてない。 むしろ,単純に,各国が独自の防衛計画に支出することを要求している。

トランプが大統領だった頃,このガイドラインは寛大な(forgiving)言葉で書かれており,それが確約(firm commitment)ではないことを明らかにしていた。 2014年にウェールズで開催されたNATOサミットで作成されたこのバージョンのガイドラインでは,まだ2に達していない加盟国は「NATO能力目標(Capability Targets)を達成し,NATOの能力不足を満たすことを目的として,10年以内に2ガイドラインに向けて進むことを目指す」と述べている。 言い換えれば,2014年に 2% 未満だった会員は,2024年までに目標を達成すると約束する必要さえなく,それまでに目標を達成するよう努力するだけだった。

NATOは,加盟国が組織自身の運営に資金を提供するために直接寄付することを要求している。しかし,同盟国の国防費のほんの一部を占めるこれらの拠出を加盟国が怠っている兆候はなく,トランプは,債務に関する彼の話は2のガイドラインに関するものであることを明確にしている。
カナダのカールトン大学国際関係 教授スティーブン・サイドマン(Stephen Saideman)は月曜の電子メールで,「不正確(inaccurate)という言葉は,米国に対する未払いの会費に対するトランプ氏のみかじめ料(protection racket)/カントリー・クラブの認識を実際にはカバーしていない」と述べた。
「あなたや他の誰もが知っているように,その資金は加盟国から米国やNATOに送金されるわけではない(ただし,ブリュッセルやその他の場所の建物の費用を支払う共通基金はあるが,それはそれほど多額のお金ではなく,2%議論の焦点ではない)。 その約束は,各国が自国の軍事に十分な額(GDP2,防衛装備費の20)を支出し,同盟全体がロシアを確実に抑止できる(deter)能力を持ち,同盟が合意するその他のことは何でもできるようにすることである。」とサイドマン氏は語った。

NATOの推計によれば,2023年の時点でNATO加盟国30ヶ国中11ヶ国が2の目標を達成している。 これは2014年のメンバー3国から増加した。

ジョージ・ワシントン大学エリオット国際関係大学院の研究教授で大西洋横断プログラム(Transatlantic Program)の責任者でもあるエルワン・ラガデック(Erwan Lagadec)は月曜日の電子メールで,NATO加盟国が2023年の2目標に関してより強固な表現に同意したと指摘し,「我々は次のように正式に宣言した」と述べた。 「国内総生産(GDP)の少なくとも2を毎年防衛に投資するという永続的な取り組みを続けていく。」 ラガデックは,「加盟国はおそらく初めて,単に『可能であれば達成しようとする』のではなく,2達成(実際,少なくとも2達成)に向けて熱心に取り組んだ」と述べた。
しかし同氏は,このより強力な宣言でも2に達するまでの「期限は定められていない」と指摘した。 いずれにしても,米国や NATO に対して実際の負債が生じることはない。

NATO members’ spending before Trump took office
トランプ大統領就任前のNATO加盟国の支出

トランプは大統領として,2017年に就任するまでNATO加盟国の支出は「毎年」減少していたと主張した。時には15年,16年,あるいは18年間にわたって減少が続いていたと主張した。

Facts First :就任するまでNATO加盟国の支出が毎年減少していたというトランプの主張は誤りである。 NATOの公式データによると,トランプの大統領就任前2年間で米国以外の加盟国の防衛費はそれぞれ増加しており,2015年は1.62016年は3.0増加した。この増加は,NATO加盟国がGDP2を再約束した後に生じたものである。 ロシアによるウクライナのクリミア地域併合(annexation)を受けて,2014年のサミットでガイドラインが示された。

トランプ政権時代の各年の非米国の国防費の増加は,2015年と2016年の増加よりも大きく,増加率は2017年に5.9%2018年に4.3%2019年に3.6%2020年に4.6% だった。そしてNATO イェンス・ストルテンベルグ(Jens Stoltenberg)事務総長はトランプ大統領を少なくとも部分的には評価したと認めた。 しかし,トランプが下落傾向を逆転させたと主張するのは間違っている。

「前年比のデータを見ると,欧州の国防支出の底値からの転機はトランプ大統領以前の2014年に起きており,明らかにクリミアの影響によるものだ」とラガデック氏は述べた。

サイドマン氏は,一般的にトランプを嫌っているため,トランプの影響力を過小評価している可能性があるが,「ヨーロッパにおける国防費の増加については プーチンが最も称賛に値する」と述べた。 同氏は,「2008年の経済危機後,各国がアフガニスタンから撤退し始めたため,どの国も国防予算を削減していたが,クリミア占領(seizure)ですべてが変わった」と語った。 そして,トランプが引き起こした増額は,同盟国をおだてた(cajole)トランプの努力によるものではなく,トランプの発言が「同盟と同盟国に対する真の敵意」のように聞こえたことを考慮すると,米国がもはや約束を守らないことに対する同盟国の懸念によるものである可能性が高いと主張した。

ジョー・バイデン大統領の下,米国以外のNATO加盟国は2021年に国防支出を2.8%増加させ,2022年には推定2.0増加し,2023年には推定8.3増加した。
2023年のこの大幅な急増は,2022年の「ウクライナへの本格的な(full-fledged)侵攻への反応であるのは明らかだ」とラガデック氏は述べた。

The US share of NATO spending
NATO支出に占める米国の割合

トランプは大統領として,自分の前,米国は「NATO100を支払っている」あるいは「100に近い金額を支払っている」と繰り返し主張した。

Facts First : トランプの主張は誤りだ。 NATOの公式統計によると,トランプの大統領就任の前年である2016年,米国の国防支出はNATO加盟国の総国防支出の約71を占めており,大部分を占めているが,「100」または「100に近い」わけではない。 そして,トランプの主張が,NATOの組織経費をカバーし,各国の国民所得に基づいて設定されるNATOへの直接拠出金について話しているのであれば,さらに不正確となる:2016年に米国が負担したのはこれらの拠出金の約22だった。

NATOの総軍事支出に占める米国の割合は2023年には約68%に低下した。そして米国は現在,NATOへの直接拠出金の約16%を負担しており,これはドイツと同じである。 ラガデック氏は,米国のシェアが「トランプ氏をなだめる(placate)ために」22から引き下げられたが,米国が同盟のGDP総額の半分以上を占めていることを考えると「優しい取引(sweetheart deal)」だと述べた。

What previous presidents told NATO members
歴代大統領がNATO加盟国に語った内容

トランプが大統領として,NATO加盟国に国防費増額の圧力をかける前は,米国大統領らはNATO加盟国にそうするよう求めさえしなかったとトランプは繰り返し主張した。 彼は土曜日の集会でのコメントの中でバラク・オバマ前大統領を名指しした。 トランプは自分自身に圧力をかけたとNATO加盟国に言及した後,こう続けた。「そして,彼らはオバマの方が好きだと聞いている。 彼らはオバマをもっと好きになるはずだ。理由を知っているか? 彼は何も求めなかったからだ。」

Facts First  : トランプの主張は誤りだ。 オバマも前任のジョージ・W・ブッシュ大統領も,公の場での言葉遣いはトランプほど対立的ではなかったものの,他のNATO加盟国に対し国防費を増やすよう繰り返し圧力をかけていた。

2014年のベルギーでの記者会見で,オバマはこう語った。「集団的自衛権(collective defense)があるということは,全員が協力しなければならないことを意味する。そして,私は,一部の同盟国の防衛費の水準が低下していることについて,若干の懸念を抱いている -すべてではないが,多い。 トレンド・ラインは下がってきている。」 2016年のドイツでの演説でオバマは,「すべてのNATO加盟国は,共通の安全保障に向けてその全額(GDP2)を貢献すべきだが,これは常に起こるわけではない。 正直に言うと,ヨーロッパは時々自国の防衛に満足していることがある。」 2016年のカナダ議会での演説で同氏は,「同盟国として,そして友人として,カナダを含むすべてのNATO加盟国が共通の安全保障に全額貢献することで,私たちの安全はさらに高まると言わせてほしい」と語った。

2002年,NATO首脳会議に先立ってチェコ共和国で行った演説で,ブッシュは,すべてのNATO加盟国は同盟に軍事貢献する必要があり,「一部の同盟国にとっては,そのためにはより多くの国防費が必要になるだろう」と述べた。 ブッシュと政府高官らは残りの大統領任期を通じて歳出拡大を推進し続けた。 2008年にルーマニアを訪問したブッシュは,「強力なNATO同盟を構築するには,強力な欧州の防衛能力も必要だ。したがって,私はこのサミットで,ヨーロッパのパートナーに対し,NATOEUの両方の作戦を支援するために防衛投資を増やすよう奨励するつもりだ。」と述べた。

The cost of NATO’s headquarters
NATO本部の費用

トランプは大統領在任中もその後もNATOを批判しながら,NATOがベルギーの本部建設に30億ドルを費やしたと主張してきた。

Facts First :トランプの30億ドルという数字は正確とは言えない。 NATO2020年にCNNに対し,本部ビルは承認された予算117,800万ユーロ,月曜日の為替レートで約127,000万ドルに基づいて建設されたと語った - 確かに高価な施設ではあるが,トランプが主張した金額の半分に満たない。

(転載了)
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それでも トランプを支持する米国民は存在します。
賢く見えるかどうかは別にして 噓吐きにみえるかどうかは 判断してほしいものです。

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