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2024年4月16日 (火)

日本製鉄の USスチール買収計画の行方は-

USスチールは412日に開いた臨時株主総会で決議を行い,日本製鉄による141億ドル(約2兆1600億円)規模の買収計画を可決し,同計画の行方は米規制当局と政治家の判断に委ねられることになる-と報道されています。

米国における本件の現状を ‘CNNApr.12,2024付け
US Steel’s shareholders just voted to end more than a century of American ownership. It may not matter
USスチールの株主はつい最近,1世紀以上にわたる米国の所有権を終わらせることに賛成した。それは問題にならない」
の見出し記事で読んでみましょう。

下記,拙訳・転載します。
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ニューヨーク(CNNUSスチールの株主は金曜日(412日),象徴的な米国メーカーを日本の「日本製鉄」が買収する契約を圧倒的多数で(overwhelmingly)承認した。しかし,物議を醸している合併(merger)の見通しが かつてないほど悪くなっている。

この取引は,自動車から電化製品(appliances),道路や橋に至るまであらゆるものを作る米国の主要産業の中心であるこの産業の将来にとって重要であるだけでなく,選挙年の政治と主要な同盟国である日本と米国の関係の中心でもある。
USスチールは,この提案に投票した株主の98%が141億ドルの取引に賛成したと発表した。

USスチールのデービッド・ブリット最高経営責任者(CEO)は「株主からの圧倒的な支持は,日鉄との取引(transaction)に対する説得力のある理論的根拠(rationale)を株主が認識していることの明らかな裏付け(endorsement)だ。」と述べた。 「これは重要なマイルストーンである。この取引はまさに,USスチールのすべての利害関係者(stakeholders)(労働組合および非組合員,顧客,地域社会,株主)にとって,そして米国にとっても最善の道を示すものである。」

しかし,この取り決め(deal)は全米鉄鋼労働組合(USWthe United Steelworkers union)と両側の政治家からの激しい反対に直面している。
USWは声明で「株主がこの象徴的な米国企業の従業員や退職者,さらには私たちが住んで働いている地域社会を現金化して(cash in)売り渡す(sell out)ことを選択したことに驚かない」と述べた。「ウォール街の投資家とUSスチール幹部は明らかに日本製鉄から最大の利益を得ようとしているが,一方で組合員を冷遇している。ありがたいことに,今日の投票は物語の終わりではない:最終的に決定を下すのは単に株主や経営陣だけではない。」

この取引が成立するには,独占禁止法(antitrust laws)を執行する司法省(the Justice Department)と,通常は目立たない(low profile)が強力な対米外国投資委員会(Committee on Foreign Investment in the United States)(財務省,商務省,国防省,国務省,国土安全保障省,司法長官を含むジョー・バイデン大統領閣僚で構成される)の両方からの承認が必要となる。
そして先月,バイデンは合意案に反対することを公に表明した。

バイデンは「米国の鉄鋼労働者によって支えられた強い米国鉄鋼会社を 我々は維持することが重要だ。」と述べた。「USスチールは1世紀以上にわたり米国を象徴する鉄鋼会社であり,国内で所有・運営される米国の鉄鋼会社であり続けることが極めて重要だ。」
専門家らは,バイデンや他の政治家(共和党,民主党双方)の反対により,合意が承認される(win approval)可能性は低いと述べた。

「選挙政治(electoral politics)が,この取引の国家安全保障上のリスクに対する深刻な評価を圧倒していることは明らかだ。」と,法律事務所スカッデン・アープス・スレート・ミーガー・アンド・フロムのCFIUSCommittee on Foreign Investment in the United States:対米外国投資委員会)および国家安全保障実務責任者のマイケル・ライター氏は述べた。「残念だが,もしあなたがUSスチールの株主であれば,売却が成功する可能性の低下を評価する際に無視することはできない。」

Impact on US-Japanese relations
日米関係への影響

バイデンと今週米国を国賓訪問中の岸田文雄首相は水曜日の共同記者会見で両者とも合意に関する質問を避けた。
岸田は「両者間で協議が行われていると承知している」と述べた。「双方にとって前向きな方向に議論が展開されることを期待している。日本は,米国政府により法律に基づく適切な手続きが実施されていると信じている。」
バイデンは「私は米国の労働者に対するコミットメントを支持する」と述べた。 「私は自分の言葉を守る男です。維持している。そしてそれに関して,私は同盟に対する我々のコミットメントを支持する。 これはまさに我々が強力な提携を結んで行っていることである。」

政府高官は首相の訪問前の記者団との会見で,取引に対する政権の反対が両国関係を損なうべきではないと述べた。
同高官は背景について「日米関係は単一の通商協定よりもはるかに大きく,重要だ。」と述べた。「6週間前,米国は日本の三井物産に対し,ここ米国にクレーン工場を建設し,全米のすべての港湾クレーンを置き換えるという200億ドルの契約を与えた。日本企業との200億ドルの契約ほど「信頼できる同盟者(trusted ally)」と言えるものはない。

「皆が 我々の立場を理解している」と高官は続けた。「我々は根本的に違う場所にいる。そして,この単一の商取引が,今回の訪問のみならず,両国の関係を定義するものではないと私は考えている。」

Concern for union jobs
組合の仕事への懸念

バイデンは先月の声明で,全米鉄鋼労働組合による取引への反対が自身の決断の理由の一部だったことを認めた。
「私は鉄鋼労働者たちに 彼らを支持していると言ったが,それは本気だ。」と彼は語った。
そしてバイデンが合意に反対を表明してから1週間後,USWはバイデンの再選を支持した。

バイデンの合意への反対だけではない。 オハイオ州上院議員J.D.バンスを含む多くの共和党議員たちもこの合併を非難しており,今週,USスチールが合併への株主の支持を求める際に「合併が直面する重大な政治的障害と規制上のリスクを正確に伝えていなかったため」彼らを誤解させたと非難した。

USスチール株は木曜日,バイデンの発言を受けて急落し,日本製鉄の提示価格である155ドルを23%下回って取引を終えた。キーバンク(KeyBanc)の鉄鋼アナリスト,フィル・ギブスは,たとえ最終的に取引が阻止されたとしても,投票に先立って株主の承認が事実上確実になったと述べた。 投票後も金曜日午後の取引で株価は3%近く下落した。
「少し前まで,株価は1株あたり20ドルで取引されていた。もちろん彼らはそれが素晴らしいことだと考えている。」と彼は語った。

What happens next?
次に何が起こるか?

取引が阻止された場合,次に何が起こるかは不明だ。

バイデンが 日鉄・USスチール協定への反対を表明した後,国内の自動車メーカーはホワイト・ハウスに書簡を送り,クリーブランド・クリフス -USスチール協定が成功すれば 自動車に使用される鉄鋼の6590%が単一企業の管理下に置かれることになると述べた。したがって,USスチールに対する日鉄との取引を支持すると述べた。

USスチールのライバルであり,労働組合を組織している国内のもう一つの大手鉄鋼メーカーであるクリーブランド・クリフス(Cleveland Cliffs)は,昨年夏にUSスチールを買収しようとしたが,1株当たり32.53ドルの現金と株式交換(cash-and-stock)の提案を拒否された。 そしてギブスは,このような協定にはUSWからの支持があるものの,独占禁止規制当局から承認を得ることができるかは明らかではないと述べた。

「米国の雇用は…公正で競争力のある鉄鋼産業も依存している」と自動車産業業界団体はホワイト・ハウスに宛てた書簡で述べた。 「政権が日鉄との取引に懸念を抱いているのであれば,別の案を真剣に検討する必要がある。検討すべきではない選択肢の一つは,国内の鉄鋼生産を単一企業に市場集中させる協定である。」

Different ways to make steel
鉄鋼を作るさまざまな方法

USスチール」も「クリーブランド・クリフス」も,今日では米国最大の鉄鋼会社ではない。 それは、USスチール社やクリーブランド・クリフス社が使用する巨大な高炉(blast furnaces)ではなく,スクラップやその他の原材料を溶かす電気炉で鉄鋼を製造するニューコア(Nucor)社だろう。

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電気炉は,高炉を使用して鉄鉱石などの原料から鋼を製造する従来の一貫製鉄所よりも,エネルギー使用量と必要な労働力の両方で効率的である。しかし,電気炉を使用するニューコアやその他の鉄鋼メーカーは,何十年にもわたって努力したにもかかわらず,自動車産業が必要とする品質の鋼を生産することができていない。その理由の一つは,彼らのビジネス・モデルが,低品位の鋼を大量に製造する方が利益が上がることを意味しているためだとギブス氏は述べた。

「自動車鋼材は依然として比較的ニッチな製品だ」と同氏は語った。 「新しい工場はその方向に進んでいると思う。しかし,それは一夜にしてできることではない。ニューコア はこれに長い間取り組んできた。」
同氏は,ニューコア社は自動車用品質の鋼材を製造できるかもしれないが,それではあまり儲からないと述べた。
「この市場では,彼らの時間の使い方はあまり有効ではなかった。」と彼は言った。

USスチールはアーカンソー州で鉄鋼を製造するために自社の電気炉を購入したが,今回の取引では,日鉄が相対的に価値を割り当てていない組合加盟の高炉事業よりも非組合事業をより高く評価している。
これがUSWがこの取引に強く反対する主な理由であり,日鉄が最終的に組合員を雇用している高炉操業を閉鎖することになるのではないかという懸念である。 日鉄は,取引が成立した場合にはUSスチールと労働組合との契約を尊重すると主張している。

US Steel still wants the deal
US
スチールは それでも取引を望んでいる

USスチールは先月,バイデンのコメントを受けて,取引が承認され完了することを依然として期待していると述べた。
「大統領は鉄鋼労働者の支持を得ていると述べた。 我々も同様である。」とUSスチールは声明で述べた。 「USスチールと米国の鉄鋼市場を成長させるための投資の一環として,この取引の結果として雇用の喪失,工場の閉鎖,生産の移転がないことが明らかになった。」

USスチールの労働組合の約束は尊重され,財務力の向上による恩恵を受けるだろう。日本製鉄からの大規模な資本投資に支えられたUS Steel製品は今後も米国で採鉱(mined),溶解(melted),製造され続けるだろう。」と同社は述べた。「これが従業員,顧客,株主,そして米国にとって最善の道であると我々は強く信じている。」

しかしUSWは,この契約の背後にある交渉には,どちらの企業も約束を履行すると信頼できるような内容は何もないと述べた。USWは,先月 日鉄から受け取った書簡は「労働者や退職者に対する義務を回避する(skirt)ことを可能にする,空虚な約束と無制限の(open-ended)文言を集めたものにすぎない。」と述べた。

「本質的に,重要な天然資源の損失とその生産に必要な資本の損失は国家安全保障の問題だ。」と‘KeyBanc’ のギブスは述べた。「これは,インフラストラクチャーから耐久消費財に至るまで、やりたいことすべてのための基礎的要素(building block)だ。」

ギブスによると,たとえ鉄鋼がコンピュータ・チップやその他のテクノロジーと違って軍事資産(military asset)とは考えられないとしても,協定に反対する労働組合や政治家たちの国家安全保障への懸念は合理的だ(legitimate)という。 原材料(raw materials)から鉄鋼を製造する能力,そしてその鉄鋼を製造するための訓練を受けた労働者が失われることは,重大な影響を与えるだろうと彼は述べた。
そして,選挙年の政治的状況を考慮すると,USWとその同盟者であるクリーブランド・クリフスは,この協定と戦う上でかなりの影響力(leverage)を持っているとギブスは述べた。

「このような取引において労働組合がこれほど大きな影響力を持っているとは思ってない。それを使用するほうがよいと判断した」と彼は語った。

(転載了)
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さらなる波乱が予想される今後の動きは如何?
米国自動車業界は USスチールが米国製鉄会社に吸収されて国内1社体制となるのを懸念して 日本製鉄の進出に賛成しているところが興味深いところです。

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