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2024年6月21日 (金)

世界の核兵器の状況(SIPRI Yearbook 2024 より)

2024年617日,SIPRIThe Stockholm International Peace Research Institute:ストックホルム国際平和研究所)が メディア向けにリリースした記事を下記,拙訳・転載します。

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Role of nuclear weapons grows as geopolitical relations deteriorate—new SIPRI Yearbook out now
「地政学的関係が悪化するにつれ,核兵器の役割が拡大SIPRI 年鑑の新版が刊行」

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(ストックホルム,2024617) SIPRIは本日,軍備,軍縮,国際安全保障の現状に関する年次評価を発表した。‘SIPRI Yearbook 2024’ の主な調査結果は,各国が核抑止力(nuclear deterrence)への依存(reliance)を深めるにつれて,開発中の核兵器の数と種類が増加しているというものである。

Nuclear arsenals being strengthened around the world
世界中で核兵器が強化されている

核兵器を保有する9ヶ国(米国,ロシア,英国,フランス,中国,インド,パキスタン,朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮),イスラエル)は核兵器の近代化を継続し,2023年にはいくつかの国が新たな核兵器または核兵器搭載可能な兵器システムを配備した(deployed)。

2024年1月時点で推定12,121発の世界全体の核弾頭(warheads)保有数のうち,約9,585発が潜在的使用のために軍備蓄されていた(military stockpiles)(下表参照)。これらの核弾頭のうち推定3,904発がミサイルや航空機に配備されており,20231月より60発多い,残りは中央貯蔵庫にあった。
配備された核弾頭のうち約2,100発は弾道ミサイルに対する高度運用警戒状態に保たれていた。これらの核弾頭のほぼすべてがロシアまたは米国のものだったが,中国が初めて高度運用警戒状態(state of high operational alert)の核弾頭を保有していると考えられている。

「冷戦時代の兵器が徐々に解体されるにつれ,世界の核弾頭の総数は減少し続けているが,残念ながら運用可能な核弾頭の数は年々増加し続けている」とSIPRI所長のダン・スミスは述べた。「この傾向は今後数年間続く可能性が高く,おそらく加速すると思われるため,非常に憂慮される。」

インド,パキスタン,北朝鮮はいずれも,弾道ミサイルに複数の弾頭を搭載する能力を追求しているが,これはロシア,フランス,英国,米国,そして最近では中国がすでに持っている能力である。これにより,配備された弾頭が急速に増加する可能性があり,核保有国がはるかに多くの標的の破壊を脅かす可能性も高まる。

ロシアと米国が合わせて全核兵器のほぼ90を保有している。両国の軍事備蓄量(つまり使用可能な弾頭数)は2023年も比較的安定しているようだが,ロシアは20231月よりも約36発多い弾頭を実戦部隊に配備していると推定されている。
2022年2月のロシアによるウクライナへの全面侵攻を受けて,両国とも核戦力に関する透明性(transparency)が低下し,核兵器共有協定(nuclear-sharing arrangements)をめぐる議論が重要性(saliency)を増している。

注目すべきは,2023年にロシアがベラルーシ領土に核兵器を配備したという公的な主張がいくつかあったが,実際に弾頭が配備されたという決定的な視覚的証拠(visual evidence)はない。

ロシアと米国は軍事備蓄に加えて,それぞれ以前に軍務から退役した1200以上の弾頭を保有しており,徐々に解体している。

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SIPRIの推定によると,中国の核兵器保有数は20231月の410発から20241月には500発に増加しており,今後も増え続けると見込まれている。中国は初めて,平時に少数の弾頭をミサイルに搭載するようになるかもしれない。
中国は,軍の編成方法次第で,10年目までに少なくともロシアや米国と同数の大陸間弾道ミサイル(ICBM)を保有する可能性があるが,核弾頭の備蓄量は,両国よりもはるかに少ないと見込まれている。

「中国は他のどの国よりも速いペースで核兵器を増強している。」と,SIPRIの大量破壊兵器プログラム(Weapons of Mass Destruction Programme)の上級研究員で,アメリカ科学者連盟(FASthe Federation of American Scientists)の核情報プロジェクト責任者であるハンス・M・クリステンセン氏は述べた。「しかし,核兵器保有国のほぼ全てが,核戦力増強の計画,あるいはそれに向けた大きな取り組みを行っている。」

英国は2023年に核兵器の保有量を増やしたとは考えられていないが,英国政府が2021年に核弾頭の上限を225発から260発に引き上げると発表した結果,今後,核弾頭の保有量は増加すると予想される。政府はまた,核兵器,配備された弾頭,配備されたミサイルの数量を今後は公表しないとした。

フランスは2023年も,第3世代の原子力弾道ミサイル潜水艦(SSBN)と新型空中発射巡航ミサイルの開発,ならびに既存システムの改修(refurbish)とアップグレードの計画を継続した。

インドは2023年に核兵器をわずかに拡大した。インドとパキスタンは2023年も新型の核兵器運搬システムの開発を続けた。インドの核抑止力(nuclear deterrent)はパキスタンが主眼だが,インドは中国全土の標的に到達可能なものを含め,より長距離の兵器にますます重点を置いているようだ。

北朝鮮は引き続き,軍事核計画(military nuclear programme)を国家安全保障戦略の中心的要素として優先している。SIPRIは,北朝鮮が現在約50個の弾頭を組み立てており,核分裂性物質を保有しているため,合計で最大90個の弾頭を保有すると推定している。いずれも20231月の推定値を大幅に上回る。
北朝鮮は2023年に核実験は行っていないが,原始的な(rudimentary)サイロから短距離弾道ミサイルの初実験を実施したとみられる。また,核兵器を運搬するために設計された少なくとも2種類の対地攻撃巡航ミサイル(LACMland-attack cruise missile)の開発も完了している。

「他の核保有国と同様に,北朝鮮は戦術核兵器の開発に新たな重点を置いている。」と,SIPRIの大量破壊兵器プログラムの准研究員であり,アメリカ科学者連盟の核情報プロジェクトの上級研究員であるマット・コルダは述べた。「したがって,北朝鮮が紛争の非常に早い段階でこれらの兵器を使用するつもりであるかもしれないという懸念が高まっている。」

核兵器保有を公に認めていないイスラエルも,核兵器の近代化を進めていると考えられており,ディモナ(Dimona)のプルトニウム生産原子炉施設をアップグレードしているようだ。

Tensions over Ukraine and Gaza wars further weaken nuclear diplomacy
ウクライナとガザの戦争をめぐる緊張が核外交をさらに弱体化

核軍備管理と軍縮外交(disarmament diplomacy)は2023年にさらに大きな挫折(setbacks)を経験した。20232月,ロシアは,ロシアと米国の戦略核戦力(strategic nuclear forces)を制限する最後の核軍備管理条約である2010年の戦略攻撃兵器の更なる削減および制限のための措置に関する条約(新STARTTreaty on Measures for the Further Reduction and Limitation of Strategic Offensive Arms)への参加を停止すると発表した。対抗措置として,米国も条約データの共有と公開を停止した。

ロシアは11月,包括的核実験禁止条約(CTBTthe Comprehensive Nuclear-Test-Ban Treaty)の批准(ratification)を撤回した。米国は1996年に署名が開始されて以来,同条約を批准していないが,これは米国との「不均衡(an imbalance)」を理由にしている。しかし,ロシアは今後も署名国であり,包括的核実験禁止条約機構(CTBTOthe Comprehensive Nuclear-Test-Ban Treaty Organization)の活動に引き続き参加することを確認した。

一方,ロシアはウクライナに対する西側諸国の支援を背景に,核兵器の使用に関する脅しを続けている。20245月,ロシアはウクライナ国境付近で戦術核兵器訓練(tactical nuclear weapon drills)を実施した。

「冷戦以来,核兵器が国際関係でこれほど目立った(prominent)役割を果たすのを見たことはない。」とSIPRIの大量破壊兵器プログラムのディレクター,ウィルフレッド・ワンは語った。「核兵器保有5大国の首脳が共同で「核戦争に勝つことはできず,決して戦ってはならない(a nuclear war cannot be won and must never be fought)」と再確認してからわずか2年しか経っていないとは信じがたい。」

2023年6月にイランと米国の間で非公式合意が成立し,ウクライナのロシア軍に対するイランの軍事支援をめぐって高まっていた両国間の緊張が一時的に緩和されたように見えた。しかし,10月にイスラエルとハマスの戦争が始まったことで合意は覆され,イランが支援するグループがイラクとシリアの米軍を代理攻撃したことで,イランと米国の外交努力は終わったとみられる。この戦争により,中東非核兵器地帯設立会議にイスラエルを関与させる取り組みも損なわれた。

より前向きな見方としては,20236月に米国務長官アントニー・ブリンケンが北京を訪問したことで,軍備管理を含む可能性のあるさまざまな問題について、中国と米国の間で対話の余地が広がったようだ。その年の後半には,両国は軍同士のコミュニケーションを再開することで合意した。

Global security and stability in increasing peril
世界の安全と安定はますます危険にさらされている

SIPRI年鑑第55版では,過去1年間の世界的な安全保障の継続的な悪化(deterioration)を分析している。ウクライナとガザでの戦争の影響は,年鑑で検討されている軍備,軍縮,国際安全保障に関連する問題のほぼすべての側面に見られる。

世界のニュース報道,外交エネルギー,国際政治の議論の中心となったこの2つの戦争以外にも,2023年にはさらに50ヶ国で武力紛争が活発化した。コンゴ民主共和国とスーダンでの戦闘により,何百万人もの人々が避難を余儀なくされ,2023年の最後の数ヶ月間にミャンマーで再び紛争が勃発した。

武装犯罪組織は,中南米の一部の国で大きな安全保障上の懸念事項であり,特に2023年から2024年にかけてハイチの国家が事実上崩壊する原因となった。

「我々は今,人類史上最も危険な時期の 1 つにいる。」と SIPRI 所長のダン・スミスは語った。「不安定の原因は数多くある-政治的対立,経済的不平等,環境破壊,軍備競争の加速などである。深淵(abyss)が迫っており,大国が一歩下がって反省すべき時が来ている,できれば,共に。」

SIPRI年鑑には,核兵器管理,軍縮,核不拡散問題に関する通常の詳細な解説に加え,世界の軍事費,国際武器移転,武器生産,多国間平和活動,武力紛争などの動向に関するデータと分析を掲載している。

SIPRI年鑑2024の特別セクションでは,紛争におけるロシアの民間軍事会社と警備会社の役割,人工知能,宇宙,サイバースペースに関連する平和と安全保障のリスクを軽減するための取り組み;ガザとウクライナの戦争における民間人の保護に関する問題などについて取り上げている。

(転載了)
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