ニューヨーク・タイムズが選んだ 2023年のベスト・ブックス 10冊
‘The New York Times’が Nov. 28, 2023付けで “The 10 Best Books of 2023” を発表しました。
選出は ‘The staff of The New York Times Book Review’ によるもので 2023年の 傑出した(standout)フィクションとノン・フィクションを5冊ずつ選んでいます。
下記,拙訳・転載します。
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毎年,春から数ヶ月かけて,我々は机に届く最も素晴らしい本について議論する。愛する家族,我々を夢中にさせるノンフィクションの物語,忘れられない架空の世界など。そのすべては,その年の最高の本を決めるという一つの目標に向かっている。
議論は白熱する。我々は議論し,説得し,そして(何よりも)最後の最後まで悩み(agonize),投票で10冊の本(フィクション5冊,ノンフィクション5冊)にたどり着く。
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【FICTION】
“The Bee Sting, by Paul Murray”
「ビー・スティング」ポール・マレー著
マレーは,危機に取り組む(grappling)アイルランドの家族を描いた悲喜劇(tragicomic tale) “The Bee Sting” で華々しく(triumphant)復帰を果たした。バーンズ家(ディッキー,イメルダ,キャス,PJ)は裕福なアイルランドの一族だが,2008年の金融危機以降,財産が急落し(plummet)始める。
しかし,この共通の苦難に加えて,4人全員がそれぞれに悪魔(demons)と戦っている:長く隠していた秘密の再浮上(re-emergence),脅迫(blackmail),過去の恋人の死,厄介な(vexing)友人同士の敵対関係(frenemy),心配な(worrisome)インターネットの文通相手などだ。この小説は,孤立を深めるバーンズ家の物語を織り合わせたものだが,マレーが織り成す全体的なタペストリーは,荒廃(desolation)ではなく希望だ。この本は,周囲の世界が崩壊する(crumbles)中でも,ある家族の信じられないほどの愛と回復力(resilience)を紹介する(showcases)本だ。
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“Chain-Gang All-Stars, by Nana Kwame Adjei-Brenyah”
「チェイン・ギャング・オール・スターズ」 ナナ・クワメ・アジェイ=ブレニヤー著
死刑囚たち(death-row inmates)が自由を得るためにテレビで決闘するというディストピア風刺(dystopian satire)の,アジェイ=ブレニャーのデビュー小説は,2018年の短編集 “Friday Black” に続くもので,読者を熱心な観客に引き込み,リングサイドに座る血に飢えた(bloodthirsty)ファンの共犯者(complicit)としてしまう。
「この本を読んで,私が嘲笑されていると認識している世界のこれらの部分について笑ったのと同じくらい,もっと認識を減らせばよかったとも思った。」と,ギリ・ネイサンはレビューで書いている。「『チェイン・ギャング・オールスターズ』の米国は,ばかげた(absurd)点まで鋭くなっているが,我々の米国と似ている」。お互いと自由のどちらかを選ばざるを得ない2人のトップ選手の悲痛なラブ・ストーリーの中で,格闘シーンは非常によく書かれており,これほど病んだ世界を受け入れるのがいかに簡単であるかを示している。
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“Eastbound, by Maylis de Kerangal”
「イーストバウンド」 メイリス・ド・ケランガル著
デ・ケランガルの短く叙情的な小説は,2012年にフランスで初版が出版され,ジェシカ・ムーアが新たに翻訳したもので,アリオチャ(Aliocha)という名の若いロシア人徴集兵(conscript)が他の兵士たちと一緒にシベリア横断列車に乗る様子を描いている。雰囲気は暗い(grim)。乱闘(brawl)の後,周囲の状況に動揺したアリオチャは脱走(desert)を決意し,そうすることで,民間人の乗客であるフランス人女性と不安定な同盟を結ぶことになる。
彼らの荒涼とした環境 ― デ・ケランガルはシベリアの風景を「手袋が裏返しになったような,生々しく,荒々しく,空虚な(raw, wild, empty)世界」と表現している ― は,危険度をさらに高めるだけだ。「この広大な土地と列車内での存在の不安定さは,人間のつながりの重要性を強調する」と,私たちの評論家ケン・カルフスは書いている。「戦時中,このつながりは解放(liberation)と救済(salvation)をもたらすかもしれない。」
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“The Fraud, by Zadie Smith”
「ザ・フラウド」 ゼイディー・スミス著
被告(defendant)が貴族(nobleman)を装った(impersonating)として告発された19世紀の有名な(celebrated)刑事裁判を基にしたスミスの小説は,ロンドンとイギリスの田舎の広大で鋭い一面(panoply)を描き,時代の社会的論争を少数の登場人物にうまく位置づけている。その中でも特に重要なのは,裁判を熱心に(avidly)追う未亡人のスコットランド人家政婦と,原告(claimant)の代理として証言する(testifies)元奴隷のジャマイカ人使用人だ。
スミスは小説家であると同時に有能な批評家でもあり,家政婦の雇い主である,かつては人気作家でディケンズの良きライバルだった人物を通じて,誰の物語が語られ、誰の物語が無視されているかを振り返りながら、当時の文学文化を風刺する機会を十分に見つけている。「いつものように,時が経つにつれてロンドンそのものとつながっていく(contiguous)ゼイディー・スミスの心の中にいるのは楽しいことだ。」とカラン・マハジャン(Karan Mahajan)はレビューで書いている。「ディケンズは死んだかもしれないが,ありがたいことにスミスは生きている。」
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“North Woods, by Daniel Mason”
「ノース・ウッズ」 ダニエル・メイソン著
メイソンの野心的で万華鏡のような(kaleidoscopic)小説は,読者をマサチューセッツ州西部の荒野にある家の入口(threshold)に導き,300年,400ページ近くにわたってその世界に先導する(ushers)。手紙,詩,歌詞,日記,医療記録,不動産物件リスト,ビンテージ植物イラスト,そして通常は小説のページには綴じられないさまざまな一時的な資料が散りばめられた(interspersed)セクションで,植民地時代から現代に至るまで,その地の住民を知ることができる。
リンゴ農家,奴隷制度廃止論者(abolitionist),裕福な製造業者がいる。甲虫のつがい。風景画家。幽霊。彼らの人生 (と死) は,一時的に交差するが,大部分はまばゆいばかりのデコパージュで重なり合っている。その間ずっと,自然界は,長い間苦しみ,時には破壊的な存在として見守っている。メイソンは,あなたが好きなだけ滞在し、好きなように過ごすことを勧めてくれる、最高に(consummate)親切なホストである。
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【NONFICTION】
“The Best Minds, by Jonathan Rosen”
「ベスト・マインズ」 ジョナサン・ローゼン著
本書は,著者とマイケル・ラウダー(Michael Laudor)の長年の友情を,ソファに釘付けにするような形で詳細に再現したものである。ラウダーは,最初はイェール大学ロー・スクールの卒業生として統合失調症(schizophrenia)の偏見をなくした(destigmatizing)ことで話題となり,その後,妊娠中の恋人を包丁で刺殺したことで話題となり,その後,厳重警備の精神病院に送られた。
切り抜き(clips),裁判所や警察の記録,法律や医学の研究,インタビュー,日記,ラウダーの熱のこもった文章(自身の本の企画書を含む)を参考に,ローゼンは,才気と狂気の間の曖昧な(porous)境界線,施設からの退所(deinstitutionalization)によって生じる複雑な政策上の問題,そしてコミュニティの倫理的義務(ethical obligations)について検証している。“The Best Minds” は,長い治療の苦労(slog)よりも利益,手っ取り早い解決策,ハッピーエンドを優先する社会に対する、思慮深く構成され、豊富な情報源に基づいた告発(indictment)である。
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“Bottoms Up and the Devil Laughs, by Kerry Howley”
「ボトムズ・アップ・アンド・デビル・ラフ」 ケリー・ハウリー著
国家安全保障国家(the national security state)とそれに巻き込まれた(entangled)人々についてのハウリーの記述には,作り話家(fabulists),真実を語る人,戦闘員,内部告発者(whistle-blowers)などが含まれている。中心にいるのは,国家安全保障局(the National Security Agency)の契約労働者で,スパイ法(the Espionage Act)に基づき,‘The Intercept’ に機密情報を漏らした罪で有罪判決を受け,63ヶ月の懲役刑を宣告されたリアリティ・ウィナー (Reality Winner)「本名だが,今は忘れよう」) である。
プライバシーとデジタル監視に関するハウリーの探求は,最終的に陰謀論者(conspiracy theorists)と ‘QAnon’ の荒地へと彼女を導く。それは驚くべき、そして必然的なストーリー展開である;もちろん,闇の国家(deep state)を巡る旅は,彼女をウサギの穴へと導くだろう。その結果,この本は,心を奪われる,ダークなユーモアがあり,あらゆる意味で分類不能な(unclassifiable)本になった。
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“Fire Weather, by John Vaillant”
「ファイア・ウェザー」 ジョン・ヴァイヤン著
2016年,カナダのアルバータ州フォート・マクマレー(Fort McMurray)で猛烈な山火事が発生。時宜を得た “Fire Weather” で,ヴァイヤンは,火災がどのように始まり,どのように拡大し,どのような被害をもたらしたか,そしてこの大惨事につながった一連の要因について詳しく述べている。消防士,石油労働者,気象学者,保険査定士などが紹介されている。
しかし,ここでの真の主人公(protagonist)は,手に負えない恐ろしい力であり,飽くなき欲望を持つ火災そのものである。この本は,現実のスリラーであると同時に,何が起こったのか,そして気候が変化しても人間は変化しないのに,なぜ火災が何度も繰り返し起こるのかを瞬間ごとに記録したものである。
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“Master Slave Husband Wife, by Ilyon Woo”
「マスター・スレイブ・ハズバンド・ワイフ」 イリョン・ウー著
1848年,ジョージア州の奴隷夫婦,エレンとウィリアム・クラフトは,病弱な若い白人農園主とその男性奴隷に変装して(disguised)北へ大胆に逃亡した。エレンは裕福な御曹司(scion)に変装し,ストーブパイプ帽をかぶり,濃い緑色の眼鏡をかけ,読み書きができない(illiteracy)のを隠すために右腕を吊っていた。あり得ないことだが,危機一髪(close calls)の場面や断固たる(determined)奴隷捕獲者たちにもかかわらず,クラフト夫妻は逃亡に成功し,イギリスで奴隷制度廃止論者の講演会を回り,旅の記録を一般向けに執筆した。
米国の有力な奴隷制度廃止論者が「この国の歴史上最もスリリングなものの1つ」と評した彼らの物語は,それだけでも注目に値する。しかし,クラフト夫妻の逃亡を小説のような詳細さで描き出す(conjures)ウーの没入感あふれる(immersive)描写は,調査,物語の話術(storytelling),共感、洞察力(insight)の功績(feat)でもある。
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“Some People Need Killing, by Patricia Evangelista”
「サム・ピープル・ニード・キリング」 パトリシア・エヴァンジェリスタ著
この力強い本は,主にロドリゴ・ドゥテルテがフィリピン大統領を務め、超法規的殺人(略してEJK:extrajudicial killings)という殺人キャンペーンを展開した2016年から2022年までの年を扱っている。このような殺人が頻繁に行われるようになったため,当時 独立系ニュースサイト「ラップラー(Rappler)」の記者だったエヴァンジェリスタのようなジャーナリストは,コンピューターにフォルダーを保存し,日付ではなく死亡時刻で整理していた。
エヴァンジェリスタは,回想録の親密な暴露とフィリピンの歴史のより大きな文脈を提供しながら,言語にも細心の注意を払っている。それは彼女が作家だからというだけではない。言語は,コミュニケーション,否定,脅迫,甘言(cajole)に使用できる。言語は嘘を広めることもできるが,真実を語ることもできる。
(転載了)
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日本語に翻訳された本はないようです。
この記事を読んで 最も感じたことは 使われている単語に 私には 馴染みのない,難しいものが多いこと,おそらく教養に関係しているのでしょう。
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