米国インフレの現状
‘Pew Research Center’,August 7, 2024付け
“Eggs, gasoline and car insurance: Where inflation has hit Americans hardest”
「卵,ガソリン,自動車保険:インフレが米国人に最も大きな打撃を与えている分野」
の見出し調査報告を 下記,拙訳・転載します。
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米国経済がコロナウイルス関連の不足と閉鎖から回復し始め,消費者物価は40年以上ぶりの急上昇を見せた。現在,多くの米国人はインフレを国の最大の問題の一つとみている。
政府は主に,200以上の商品やサービスからなる「市場バスケット(market basket)」の価格を調べ,それらが時間の経過とともにどのように変化したかを評価することでインフレを測定している。この価格データに基づくインフレ指標はいくつかあるが,最も広く引用されているのは全都市消費者物価指数(CPI-U:the Consumer Price Index for All Urban Consumers)である。2020年初頭以来,この指標は2022年6月に 9.1%で最高値に達し,1981年11月以来最も速い前年比上昇となった。
2022年6月のピーク以来,インフレは大幅に緩和している。2024年6月のCPI-Uはわずか3.0%で,連邦準備制度理事会(FRB)のインフレ目標2%に近づいた。これにより,FRBがまもなく金利引き下げを開始するのではないかという憶測が高まっている。
しかし,それは必ずしも価格が下落していることを意味するわけではなく,単に以前よりも上昇が緩やかになっているというだけだ。ほとんどのものは,COVID-19パンデミック以前よりもかなり高価になっている。そして,トップラインの数字に焦点を当てると,個々の品目のインフレ率が「公式」率を大幅に上回ったり下回ったりする可能性があるという現実が見えにくくなる可能性がある。
これらすべてを念頭に置き,我々はCPI-Uと,その主要なインフレ数値に含まれる200以上の製品とサービスを詳しく調べたいと考えた。
Which goods and services have gotten more – or less – expensive in recent years?
近年,どの商品とサービスがより高価になったか,またはより安価になったか?
全体として,2024年6月のCPI-Uは,パンデミックが米国を襲い始める前の2020年1月の水準を21.8%上回った。しかし,多くの製品とサービスのコストはそれよりもはるかに上昇している。
最も値上がりしたのはマーガリンで,6月時点で2020年1月より56.8%値上がりしている。その他の顕著な値上がりは,自動車修理サービス(47.5%増),自動車保険(47.3%増),獣医サービス(35.6%増)など。
一方で,一部の商品やサービスはパンデミック前より値下がりしている。例えば,男性用スーツ,スポーツ・コート,アウターウェアは2020年1月より6.3%値下がりしている。また、食器やカトラリーは9.9%値下がりしている。
価格が最も大きく下落した商品の多くは,コンピューター,スマートフォン,その他のテクノロジー関連製品だ。こうした場合やその他の場合,CPI-Uや関連指数をまとめている労働統計局(BLS:the Bureau of Labor Statistics)は,収集した生の価格データを,製品の改良や品質の経時的変化を考慮して調整している。
たとえば,2007年,Apple の初代 iPhone の価格は $499 (8 GB バージョンは $599) で,今日のユーザーが当然のように思っている多くの機能がなかった。現在,はるかに高性能で機能的な iPhone 15 の 128 GB ベース・バージョンは $799で販売されている。他のスマートフォンも,時間の経過とともに同様に品質が向上している。
スマートフォンの価格指数は,2020年1月から 2024年6月の間に 53.9% 下落した。つまり,2020年初頭に一般的だった機能を備えたスマートフォンを今日購入すると,当時の半分以下の費用で済むということである。
What items carry the most weight in the CPI-U?
CPI-U で最も重視される項目は何か?
CPI-U の何百もの商品やサービスは,指数を計算する際にすべて均等に重み付けされているわけではない。代わりに,BLS は各項目に重み付けして,消費者全体の購入に占める割合を反映させる。
CPI-U で最大の項目は,「所有者の主な居住地の等価家賃」(OER:owner’s equivalent rent of a primary residence)で,2024年5月時点で指数全体の約4分の1 を占めている。この難解に聞こえる(arcane-sounding)用語は,基本的に,所有している家を賃貸するのにかかる費用を推定する。これは,住宅としての価値(CPI-U ではサービスとして扱われます)と投資としての価値(時間の経過とともに市場価値が上昇すること)を切り離す試みであり,投資は CPI-U に含まれていないためである。
OERインフレ率は2023年春に8.1%でピークに達し,2024年6月でも5.4%にとどまっている。全体として,OER価格は2020年1月の水準より23.8%高く,24.0%上昇した賃貸インフレ率をわずかに下回っている。賃貸価格は CPI-Uの2番目に大きな要因であり,総指数の約7.6%を占めている。
多くの品目で,価格は徐々に上昇または下落するか,良くても横ばいになる傾向がある。たとえば,パンの価格は,2014年から2020年初頭まで,年間数パーセンテージ・ポイント以上変化することはほとんどなかったが,2022年には急騰した。しかし,一部の品目ははるかに不安定(volatile)で,予測できない急騰(surges)や急落(steep declines)がある。
CPI-Uの約3.6%を占め,指数の3番目に大きく影響しているガソリンは,その代表的な例である。ガソリン価格は,年間時期,地政学的イベント,製油所の操業,その他多くの要因に基づいて変動する。
全体的に,全グレードのガソリンの価格指数は,2020年1月よりも2024年6月に35.9%上昇した。しかし,それはかなりの変動(volatility)が隠れている。2020年1月から2022年6月まで,ガソリン価格はほぼ2倍(89.5%上昇)になったが,それ以降は 28.3%下落している。実際,米国エネルギー情報局(the U.S. Energy Information Administration)のデータによると,2024年7月末の全国平均ガソリン価格(1ガロンあたり$3.598)は,その浮き沈みにもかかわらず,2014年8月初旬の$3.595とほぼ同じだった。
Which items have seen particularly sharp price spikes since 2020?
2020年以降,特に価格が急騰した商品はどれだろうか?
全グレードのガソリン価格が89.5%上昇したのは,パンデミック期間中で最大の上昇率に近かった。しかし,燃料油(家庭用暖房用オイルなど)の価格指数は,2020年1月から2022年6月の間に91.0%上昇し,その後下落した。今年6月時点で,燃料油価格は2020年1月より22.2%上昇している。
過去数年間で最も急激な(しかし短命な)価格上昇を見せた商品は,地味な(humble)卵だった。卵の価格は2023年1月にピークを迎え,2020年1月の基準値より94.0%上昇した。それ以降価格は下がっているが,卵はパンデミック前より約40.1% 高いままである。
(転載了)
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日本と変わらない,モノのよっては 日本より高い上昇率があるようです。
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