(簡易)空母「かが」と,搭載戦闘機「F35-B」
9月17日,空母化に向けて改修中のヘリコプター搭載型護衛艦「かが」が米カリフォルニア州サンディエゴ沖に向けて 海上自衛隊呉基地を出港しました。10月5日~11月18日に現地で,最新鋭ステルス戦闘機F35Bを用いた運用試験を実施し,発着艦などに関する各種データを収集する予定です。
運用試験では 米海軍や米海兵隊の協力の下,F35Bの垂直着艦や短距離発艦の可否を確認,甲板から格納庫への機体のけん引など,運用におけるさまざまな段取りや所要時間を点検します。海自隊員のほか,2024年度中に6機のF35Bを配備を予定する航空自衛隊から約20人が参加します。
「かが」は,海自最大級の「いずも型」護衛艦(全長248m)の2番艦で,政府は2018年に定めた中期防衛力整備計画で,警戒監視や有事の際の防空態勢を強化するため,いずも型の2隻に対して,事実上の空母とすることを明記しました。
いずも型に搭載するF35Bは,ジェット・エンジンの排気口を下に向けることで,短距離で発艦し,垂直に着艦することが可能です。1番艦の「いずも」は,ジェット・エンジンの排気熱に対する耐熱塗装を施す1回目の改修を終えていますが,「かが」は 2022年3月から 今年3月29日に終了した改修で,甲板の耐熱塗装工事に加えて,艦首方向から向かってくる気流の乱れを抑え,航空機発艦時の安定性を増加させるため,飛行甲板の前端を台形から四角形に変更しています。又,甲板には 戦闘機が発着艦する際に目印となる黄色の「トラム・ライン」が引かれました。(下の写真:改装前(右)後(左))
空母に改装する「いずも型」護衛艦は,本格空母と異なり ジェット戦闘機の発艦に不可欠の「カタパルト」(射出機)と着艦時に必要な「アレスティング・ワイア」設備が装備(計画)されておらず,STOVL(Short Take Off and Vertical Landing:短距離離陸・垂直着陸)戦闘機の運用を考慮しており,それが ‘F-35B’ です。
下記は 英文Wikipedia ‘Lockheed Martin F-35 Lightning II’ の F-35B に関する記述を抜粋,拙訳・転載しています。
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F-35B の F135-PW-600型には,STOVL 操作を可能にする「シャフト駆動リフト・ファン (Shaft-Driven Lift Fan:SDLF) が組み込まれている。ロッキード・マーティン(Lockheed Martin)が設計し,ロールス・ロイスが開発した SDLFは,リフト・ファン(lift fan),ドライブ・シャフト(drive shaft),2つのロール・ポスト(roll post),および「3 ベアリング・スイベル・モジュール」(three-bearing swivel module:3BSM) で構成されている。
ノズルには,非平行ベース(nonparallel base)を持つ短い円筒に似た 3つのベアリングがある。歯付きエッジがモーターによって回転すると,ノズルはエンジンと直線位置から垂直に旋回する(swivels)。推力偏向(thrust vectoring)3BSM ノズルにより,メイン・エンジンの排気が航空機の尾部で下向きに偏向され,加圧燃料を作動流体として使用する「燃料駆動(fueldraulic)」アクチュエータによって動かされる。
ハリアー(Harrier)のペガサス・エンジンは揚力を得るためにエンジンの推力のみを直接利用するが,F-35B のシステムは,機体前部近く(コックピットの後)に設置されたリフト・ファンで旋回ノズルの推力を増強する。ファンはクラッチと連動して低圧タービンから駆動シャフトを介して動力を得て,3BSMノズル推力に対抗するトルク(torque countering)を提供する。
低速飛行中のロール(左右傾斜)制御は,ロール・ポストと呼ばれる翼に取り付けられた推力ノズルを通して加熱されていないエンジン・バイパス・エアを流用する(diverting)ことで実現される。
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エンジンは一基のままなので,垂直方向の推力(揚力)のための追加エンジンで重くなる STOVLと違って 飛行性能は オリジナルの F-35 とほぼ同じでしょう。
これで 尖閣諸島付近の防衛に睨みを利かせることになるのでしょう。
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