2024年 夏の暑さを振り返って
今年の夏は記録上 人類が経験した最も暑い夏でした。
年間を通しても 最も暑い一年になりそうです。
‘UNDRR/Prevention Web’,25 September 2024付け
“How cities worldwide respond to the 2024 hottest temperatures”
「世界の都市は 2024年の最も暑い気温に どのように対応したか」
の見出し報告を紹介します。
(UNDRR:United Nations Office for Disaster Risk Reduction,国連防災機関)
下記,拙訳・転載します。
*********************
コペルニクス気候変動サービス(the Copernicus Climate Change Service:CS3)の新しいデータによると,2024年の夏は世界的に記録上最も暑かったことが明らかになった。
2024年,世界は最も暑い6月と8月,史上最も暑い日,そして記録上最も暑い北半球の夏を経験した。これらの前例のない気温により,2024年は記録上最も暑い年になる可能性が非常に高い。
コペルニクス気候変動サービス(C3S)の副所長サマンサ・バージェス氏によると,温室効果ガスの排出を削減するための緊急措置が講じられない限り,この夏に見られた極端な気温現象は悪化し続ける可能性が高い(コペルニクス:2024年夏、2024年)。
下記の 2023年と 2024年の地表気温異常(surface air temperature anomalies)のコペルニクス・データによると,2023年8月と 2024年8月の気温は産業革命前の水準より 1.51℃ 高く,両期間の地表気温は 16.82℃ で、1991年~2020年の8月の平均より 0.71℃ 高くなっている。
2024年8月は,平均気温が産業革命以前の水準より1.51℃ 高い月が13ヶ月連続で続く月となった。2023年9月から2024年8月までの各月は,記録開始以来の12ヶ月間のどの月よりも月平均気温が高く,1991~2020年の平均より 0.76℃ 高く,1850~1900年の産業革命以前の平均より1.64℃ 高くなっている。
2024年8月のヨーロッパの平均気温は1991~2020年の平均より 1.57℃ 高く,2022年8月(平均より 1.73℃ 高かった)に次いで,ヨーロッパ大陸で2番目に暖かい8月となった。南ヨーロッパと東ヨーロッパでは,平均を上回るが,アイルランド北西部とイギリス,アイスランド,ポルトガル西海岸,ノルウェー南部では、平均を下回る気温が見込まれる。
南極東部,テキサス,メキシコ,カナダ,北東アフリカ,イラン,中国,日本,オーストラリアなど,世界の他の地域でも8月の気温は平年を上回った。
Impacts of high temperatures around the world
世界中で猛暑が及ぼす影響
デイリー・メール紙は,猛暑が世界の多くの地域に及ぼした影響について報じている。
・2024年の春から,メキシコと中米は数週間にわたり猛暑に見舞われ,長期にわたる干ばつと相まって深刻な水不足と数十人の死者を出した。
・サウジアラビアでは,イスラム教徒のメッカ巡礼であるハッジの最中に猛暑のため1000人以上が死亡。6月17日にはメッカのグランドモスクの気温が 51.8℃ に達した。
・パキスタンのカラチでは,猛暑,頻繁な停電,一部地域での水不足により病院がパンク状態となった。
・インドでは4月と5月に数日にわたり気温が 48.9℃ に達し,エアコンのない数百万人が影響を受けた。
・「日本は7月初旬に気温が記録的な高値に達したため,東京はじめ都道府県の半数以上に熱中症警報(heatstroke alerts)を発令した。
・2024年夏季オリンピックが7月下旬にパリで開幕する準備が進む中,ヨーロッパの大部分は長期にわたる熱波に見舞われた。
LA Times は,夏季は 「カリフォルニアや世界の他の多くの地域で爆発的な山火事,猛暑,熱波,熱中症による死亡が目立った」 と報じている (Smith,2024)。
気温上昇は気候プロジェクトと一致しているが,2024年の暑さは多くの人が予想していたよりも長く続き,気温は 2023年後半と同程度だと,バークレー・アースの気候科学者 ジーク・ハウスファーザー(Zeke Hausfather) 氏は言う (Smith, 2024)。
彼は,地球温暖化に関連する気候パターンであるエルニーニョは5月末に消滅したが,気温の低下にはつながらなかったと付け加えている。これは,エルニーニョがなくても暑い状況が安定していたことを意味し,追加の要因が働いていることを示唆している(Smith, 2024)。
また,気温がパリ協定の 1.5℃ という温度制限を超えていることも注目に値する。この制限は,2023年から2024年にかけて気候変動による最悪の影響を防ぐために設定されたものである。
Overshooting the 1.5℃ temperature limit agreement
1.5℃ の気温制限合意を超過
政策立案者や環境保護団体は長年,地球温暖化の最悪の影響を防ぐため,気温上昇を 1.5℃ に抑えることに注力してきた。しかし,今年8月は平均気温がパリ協定の気温基準である 1.5℃ を超えた 13ヶ月目となり,地球は悲惨な節目を迎えた。では,私たちは限界を違反した(breached)のだろうか?
気候分析(Climate Analytics) は,気候変動は 20~30年にわたる人為的な気温変化の平均であり,年ごとの変動ではないため,そうではないとしている (Schleussner 他,2023)。
Greening schoolyards in New York to combat heat
ニューヨークの校庭を緑化して暑さ対策
ニューヨークは,校庭から始めて,街の緑化を進めている。この街は 「コンクリート・ジャングル」というニックネームで呼ばれ,気候変動の影響で悪化した都市ヒート・アイランド(UHI:urban heat island)により過熱状態にある。街は,あらゆる年齢層の住民が暑さから逃れて楽しめる,涼しく日陰のある緑地を切望している。
市内には 220校の公立学校があり,公共土地信託 (TPL:the Trust for Public Land's) のグリーン・コミュニティ・スクールヤード・プログラムのおかげで,これらの学校のアスファルトの運動場が,学校ごとに公園や緑地に生まれ変わる。TPL は,これらの生まれ変わった緑地が,創造とコミュニティ構築の機会となるだけでなく,ニューヨーク市を襲うますます過酷な暑さと洪水を緩和するのに役立つと考えている。
WRI(World Resources Institute:世界資源研究所)の記事によると,ニューヨーク市は70%以上に防水性がある ー つまり市は土地の大半を舗装し,雨水が地面に浸透するのを防いでいる。水を素早く吸収するのに十分な土壌と自然の地形がなければ,都市は大雨の際に洪水のリスクが高くなる。
(TPL の)グリーン・コミュニティ・スクールヤードは,空きアスファルト・スペースを活気のある緑のコミュニティ・スペースに変えるというシンプルな取り組みで,簡単に再現でき,規模も拡大できる。記事によると,フィラデルフィア,ワシントン州タコマ,カリフォルニア州オークランドなど,都市形態や密度,統治構造,砂漠気候などの気候が異なる 15の米国都市もニューヨーク市に倣っている。
この取り組みでは,現在 10,000人の住民に対して 2.2 というニューヨーク市の低い公共遊び場率を,米国の 100大都市の平均である 3.1 まで引き上げることも目指している。都市住民が緑地にアクセスしやすくすることで,緑地がもたらす気候,環境,社会,経済の恩恵を享受できる。
(転載了)
*********************
| 固定リンク | 0
「ニュース」カテゴリの記事
- 米軍オスプレイ,墜落寸前事故で 再度 飛行停止(2024.12.12)
コメント