地球温暖化による海面上昇,最大の原因は海水の膨張。
‘EARTH・ORG’ サイト,Sep 25th 2023付け
“Explainer: What Is Causing Sea Level to Rise?”
「解説:海面上昇の原因は何か?」
を 下記,拙訳・転載します。
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人類は 200年以上前から海面の測定を始め,これが地球温暖化の進行速度を示す重要な気候指標であることに気付いていた。現在,地球の気温上昇により,海面は 20世紀の大部分に比べて 2倍以上の速さで上昇している。この現象は沿岸地域に壊滅的な影響を及ぼし,インフラを破壊し,毎年何百万人もの人々を避難させている。海面上昇の原因と,それがなぜ重要なのかを見てみよう。
海面は1880年から約24cm上昇した。20世紀のほとんどの期間,海面は年間1.4mmの割合で上昇した。しかし,2006年から2015年の間には,その割合はほぼ倍増し,年間上昇 約3.6mmに達している。気候の現状レポートによると,2020年の海面は記録上最高となり,世界平均は衛星高度計の記録開始年である1993年の平均 91.3mmを上回った。当然のことながら,2020年は世界史上最も暖かい3年のうちの1年でもあり,同時に熱帯低気圧が平均を大きく上回る発生数を記録した。
海面上昇予測によれば,たとえ世界が温室効果ガスの排出量が少ない道をたどったとしても,世界の海面は今世紀末までに 約0.7mまで上昇し続けるだろう。しかし,世界が排出量を削減できず,気温上昇が3℃,あるいは4℃の水準にまで達したなら,2100年までに海面は2000年より2.8mも上昇する可能性がある。
海面がこれほど重要な理由は,この現象に関連する極端な事象 -洪水,海岸線の浸食,嵐による危険など -が,世界中の海岸沿いの都市環境に壊滅的な(devastating)影響を及ぼすからである。これらの事象は,住宅や商業ビル,道路,橋,地下鉄などのインフラ,水道,発電所,埋立地を脅かす。国連によると,海面上昇による被害に関連する潜在的コストは,2050年までに1,116億ドル,今世紀末までに3,672億ドルという驚くべき額に達する可能性がある。
世界的には,東京,ムンバイ,ニューヨーク,上海,ラゴス,ロサンゼルス,カルカッタ,ブエノスアイレスの 10大都市のうち 8つは海岸沿いに位置している。同時に,沿岸地域の人口増加率も加速している。現在,世界人口の約10% が海抜10m未満の沿岸地域に住んでおり,約44% が海岸から 100km以内に位置し,海面上昇に対して極めて脆弱である(vulnerable)。
海面上昇によるリスクが最も高い国は,危険な沿岸地域に約4,300万人が住む中国,3,200万人のバングラデシュ,2,700万人のインドである。米国沿岸の多くの大都市でも,50年前と比べて 300%~900% も多くの破壊的な高潮洪水が発生している。最も洪水が発生しやすい島には,地球上で最も平坦な国で 1,200 の小島から成り,約54万人が暮らすモルディブと,太平洋の中心に位置する人口 12万人の小さな島,キリバスがある。
What Is Causing Sea Level to Rise? / 海面は何が原因で上昇するか?
1. 水温の上昇に伴い,海洋の体積が拡大
海面上昇の主な原因の 1つは,海水温の上昇によって引き起こされる熱膨張と呼ばれる現象である。地球が温暖化しているのは,主に熱を閉じ込める温室効果ガスの蓄積によるもので,その 90% は海洋に吸収されている。水温が上昇すると,海洋の体積が拡大する。
この現象は数十年にわたって一定の速度で進行しており,20世紀を通じて発生した海面上昇の約75% を占めている。しかし,氷塊(ice masses)の縮小が加速するにつれて,その相対的な寄与は依然としてかなり高いものの,ある程度までに減少している。1993年から 2010年の間に,海洋熱量の急激な増加により発生した海面上昇は 約19mmで,同期間の合計上昇 54mmの 3分の1 に留まった。
2. 氷河(Glaciers)と氷床(Ice Sheets)が溶ける
現在、世界の陸地表面の約10% が氷河に覆われており,地球上の淡水の 70%が氷河に蓄えられている。しかし,地球温暖化と気温上昇により,これらの巨大な氷床は前例のない速度で後退している(retreating)。
1994年から2017年の間に,世界中の氷河は30兆トン近くの氷を失い,現在は年間1.2兆トンに相当する速度で溶けている。最も急速に消滅している氷河には,アルプス,アイスランド,アラスカの氷河がある。
アラスカだけで,世界の質量損失の25%を占めている。同様に,世界最大の単一の氷塊である南極の氷床は前例のない速度で溶けており,2100年までに1m以上,2500年までに15m以上の海面上昇を引き起こす可能性がある。同様に,2012年から2016年の間に,グリーンランドの氷床は年間2470億トンを失い,1990年代全体の7倍以上の速度で消滅している。
海面上昇の原因としては,氷河の減少が熱膨張に次いで2番目に大きい。ネイチャー誌の調査によると,2000年から2019年の間に,氷河と氷床の減少による融解水だけで世界の海面上昇の21%を占めた。
3. 陸上の液体の水が減少し,海へ移行
人間の活動と気候変動は水循環に影響を与え,海だけでなく,湖,川,地下水,貯水池などの陸上の水の量にも直接影響を及ぼす。毎年,約 6トン(*?原文通り)の水が地球の陸地表面を循環している。雨は海に戻る途中で水域と土壌に留まる。これを「陸水貯留(land water storage)」と呼ぶ。人間は,地面や湿地から継続的に水を汲み上げることでこの循環を加速させ,最終的に海に流れ込む。
陸上貯水量は海面上昇への影響が比較的少ないものの,依然として重要な要素であり,いくつかの研究では,気候による陸上貯水量の増加が海面変動にどのような影響を与えたかが示されている。過去 20年間,汲み上げた地下水によって世界の海面は年間 0.38mm上昇した。さらに,科学者は,陸上貯水量が 21世紀末までに予測される世界平均海面上昇の約10% を占めると予測している。ただし,太平洋諸島,アフリカ南岸,オーストラリア西岸など,いくつかの高リスク地域ではその割合は大幅に高く,60% に達する可能性がある。
Future Outlook / 今後の展望
今後数十年間,海面が上昇し続けることは間違いない。上昇の程度は,今後の温室効果ガスの排出率に大きく左右される。転換点(tipping point)がいつになるかは予測でない。そのため,現時点での最善かつ唯一の選択肢は,将来の排出量を削減し,都市の破壊や大規模な人口移動(mass human displacement)を回避するための抜本的な対策を講じることで,今後数世紀にわたってさらに海面が上昇するのを緩和する(mitigate)ことである。
(転載了)
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海水温度の上昇は 海面上昇のみならず,今年 多く発生した 大雨の原因,さらには魚の生息域の変化ー不漁の原因にもなっていると考えられます。
トランプには関係ないことでしょうが ・・・ 。
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