最近 “Deep State” という言葉を目にすることがあります。トランプが その存在を主張していますが,明確な定義は不明です。
和英辞典にはー
「闇の国家◆【同】state within a state」 とあります。
英文Wikipediaには “Deep State” が二つの項目で説明されています。
① A deep state is a political situation in a country when an internal organ does not respond to the political leadership.
ディープ・ステートとは,国家の内部組織が政治指導者に反応しない政治状況のことである。
② A deep state is a type of government made up of potentially secret and unauthorized networks of power operating independently of a state's political leadership in pursuit of their own agenda and goals. In popular usage, the term carries overwhelmingly negative connotations and is often associated with conspiracy theories.
ディープ・ステートとは,国家の政治指導部から独立して独自の計画や目標を追求するために活動する,潜在的に秘密で無許可の権力ネットワークで構成された政府の一種。一般的な用法では,この用語は圧倒的に否定的な意味合いを持ち,陰謀論と関連付けられることがよくある。
又,Wikipedia には 上述とは別に
“Deep state conspiracy theory in the United States”
「米国のディープ・ステート陰謀論」
と題する記事があり,読んでみました。
下記,拙訳・転載します。
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米国のディープ・ステート陰謀論(the deep state conspiracy theory)は,連邦政府 (特に FBI と CIA) のメンバーによる秘密(clandestine)ネットワークであるディープ・ステートの存在を前提とする,誤った米国の政治陰謀論である。この理論では,選出された米国政府と並んで(alongside),または政府内で権力を行使する,高レベルの金融および産業組織のリーダーシップ内に協力者のネットワークが存在すると主張している。
ディープ・ステートという用語は,1990年代にトルコの長年のディープ・ステートとされる存在を指して使われ始めたが,オバマ政権時代を含め,米国政府を指す言葉としても使われるようになった。しかし,この理論はドナルド・トランプ大統領の下で主流の認識となった。トランプ大統領は 「ディープ・ステート」が自分と政権の政策に反対していると虚偽の主張をしている。
この用語は少なくとも 1950年代から前例があり,軍需産業複合体の概念と類似点を指摘する人もいる。軍需産業複合体は,国を終わりのない戦争に追い込むことで私腹を肥やす将軍と防衛請負業者(defense contractors)の陰謀団(cabal)を想定する。
誤りであることが証明されたにもかかわらず,2017年と2018年に行われた世論調査では,米国民の約半数が米国にディープ・ステートが存在すると信じていることが示唆されている。
Prevalence / 普及
ディープ・ ステートという用語は 1990年代にトルコで生まれたと考えられているが,ディープ・ステートの概念に対する信念は少なくとも 1950年代から米国に存在していた。1955年の ‘Bulletin of the Atomic Scientists’(原子力科学者会報) の記事には,選出された政治家を監視し,統制する隠された国家安全保障階層と影の政府である「二重国家(dual state)」の存在を信じる米国人の声が引用されている。
Usage by journalists and academics / ジャーナリストと学者による使用
政治学者ジョージ・フリードマン(George Friedman)は,大統領の連邦職員に対する権限が制限されていた1871年以来,このようなディープ・ステートが存在していたと主張している。
歴史家アルフレッド・W・マッコイ(Alfred W. McCoy)は,9月11日の攻撃以来,米国諜報機関の権力が増大したことで 「米国政府の第4の部門(fourth branch)が構築され」,それは 「多くの点で行政から独立しており(autonomous),ますます進んでいる。」 と主張した。
タフツ大学(Tufts University)のマイケル・J・グレノン(Michael J. Glennon)教授は,バラク・オバマ大統領は「二重政府(double government)」 と彼が呼ぶものに抵抗したり変えたりすることに成功しなかったと述べ,オバマ大統領が選挙公約の主要部分であったグアンタナモ湾収容キャンプ(Guantanamo Bay detention camp)を閉鎖できなかったことをディープ・ステートの存在の証拠だと指摘している。
トランプが就任する(inaugurated)数週間前の2017年のインタビューで,上院民主党院内総務のチャック・シューマー(Chuck Schumer)は,トランプがCIAを繰り返し批判したことを 「本当に愚か(really dumb)」 と呼び,「言っておくが,諜報機関と戦えば(take on),彼らは あらゆる方法で(six ways from Sunday)あなたに報復できる」 と述べた。ACLU(American Civil Liberties Union:アメリカ自由人権協会)だけでなく,さまざまな評論家がこの発言をディープ・ステートの存在の証拠だと指摘している。
サンフランシスコ大学の教師で作家のレベッカ・ゴードン(Rebecca Gordon)は,2020年に ‘Business Insider’ に寄稿した記事の中で,トランプは 「ディープ・ステート」 という言葉を,米国政府,特に裁判所,司法省,報道機関など,トランプを 「苛立たせる(frustrate)」 政府機関や,トランプの政策の実施を妨害したり,失敗させたりする 米国政府機関を指すために使用していると書いている。
Usage by public figures / 公人による使用
2014年,元議会スタッフのマイク・ロフグレン(Mike Lofgren)は,「強力な既得権益(powerful vested interests)」を守るディープ・ステートが存在し,「米国政府内外の既得権益のネットワークが,米国民の実際の利益や要望をほとんど考慮せずに,米国の防衛に関する決定,貿易政策,優先事項を決定している(dictate)。」と主張した。
2017年,元民主党下院議員デニス・クシニッチ(Dennis Kucinich)は,諜報機関の中に米国とロシアの関係を破壊しようとする(sabotage)人物がいると主張した。
元NSA(National Security Agency:アメリカ国家安全保障局)情報漏洩者のエドワード・スノーデン(Edward Snowden)は,公務員で構成されたディープ・ステートが存在すると主張している。
Usage by Trump and allies / トランプと同盟者による使用
ドナルド・トランプとその戦略家たち(strategists)は,大統領在任中,ディープ・ステートがトランプの政策に干渉しており,米国司法省はフマ・アベディン(Huma Abedin)やジェームズ・コミー(James Comey)を起訴しなかったことから ディープ・ステートの一部であると主張した。トランプの同盟者や右派メディアの中には,オバマ大統領がディープ・ステートによるトランプへの抵抗を調整していると主張する者もいた。トランプ大統領の支持者たちは,ディープ・ステートという言葉を,諜報員や行政府の役人がリークやその他の内部手段を通じて政策に影響を与えているという主張に当てはめた。
2018年,ニュート・ギングリッチ(Newt Gingrich)は,2016年の米国選挙へのロシアの介入に関する特別検察官(Special Counsel)の調査において,ロバート・ミュラー(Robert Mueller)が ディープ・ステートの一部であったと主張した。
2018年,‘The New York Times’ は,当時 「トランプ政権の高官」のものとされていた,国土安全保障省(DHS:Department of Homeland Security)の首席補佐官マイルズ・テイラー(Miles Taylor)による 「私はトランプ政権内の抵抗勢力の一員である」 と題する匿名の論説(op-ed:opposite the editorial page)を掲載した。この論説でテイラーはトランプ大統領を批判し,「[トランプの]政権内の高官の多くが,彼の政策の一部と最悪の傾向を挫折させるために内部から熱心に働いている」と主張した。元下院議長ケビン・マッカーシー(Kevin McCarthy)はこれをディープ・ステートが機能している証拠であると述べ,デビッド・ボッシー(David Bossie)は ‘Fox News’に寄稿し,これはディープ・ステートが 「アメリカ国民の意志に反して機能している。」と述べた。
2018年,共和党のランド・ポール(Rand Paul)上院議員は,CIAが機密情報に関する問題について ‘Gang of Eight’ にのみ報告していたのはディープ・ステートの一例であると主張した。
2020年,トランプ政権の閣僚でホワイト・ハウス首席補佐官代理のミック・マルバニー(Mick Mulvaney)は,ディープ・ステートが トランプに対抗しているという主張は 「絶対に,100%真実だ」 と主張した。
ディープ・ステートの概念は,トランプ支持の陰謀論運動 ‘QAnon’ の中心的信条(tenet)である。トランプのディープ・ステートに関する発言は,「長年の [ジョン・バーチ協会(John Birch Society)] の論点を繰り返している」 と評されている。
トランプの FBI長官候補だった カシュ・パテル(Kash Patel)は,2024年に ‘the Shawn Ryan Show’ で話題となった動画でディープ・ステートについて語った:「私は初日に FBIフーバー・ビルを閉鎖し,翌日にはディープ・ステートの博物館として再開するだろう。」
Criticism / 批判
ニール・スタニッジ(Niall Stanage)は,トランプの 「ディープ・ステート」 という言葉の使用への批判が,それは現実に根拠のない陰謀論だと主張していると述べた。
カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)法学部のジョン・D・マイケルズ(Jon D. Michaels)教授は,エジプト,パキスタン,トルコなどの発展途上国の政府と比較すると,米国の政府の権力構造は 「ほぼ完全に透明(transparent)」であると主張した。マイケルズ教授は,米国の「ディープ・ステート」,つまり実際には「米国の官僚機構(bureaucracy)」には,規制,福祉,犯罪防止,防衛を担当する連邦政府機関と,それらを操作する職員が含まれており,トランプのこの用語の使用とは5つの重要な点で根本的に異なると主張している。
・エリート主義ではない(Not Elitist) – 米国では,官僚は,中東や西ヨーロッパの官僚と比べると,多様な社会経済的背景を持つ。
・影がない(Not Shadowy) – 米国の機関は,中東,アジア,ヨーロッパの機関と比べると,一般的に 「透明性がありアクセスしやすい(transparent and accessible)」。
・一枚岩(Monolithic)ではない – 米国のディープ・ステートは 「内部的に多様で断片化(fragmented)している」。
・防壁(Bulwark)であって破城槌(Battering Ram)ではない – 米国の公務員の行動は,本質的に防御的であり,積極的(proactive)ではない。
・憲法外の(Extraconstitutional)力ではない – 官僚は,大統領や機関の権限の行き過ぎに対する最終的なチェックとして機能することが多く,米国の憲法上のチェックとバランスのシステムの一部とみなされるべきである。
批評家らは,米国でこの用語を使用は,制度に対する国民の信頼を損ない(undermine),反対意見の抑圧を正当化するために利用される可能性があると警告した。
政治評論家で元大統領顧問のデイビッド・ガーゲン(David Gergen)は,この用語は,トランプ大統領の批判者の正当性を失わせる(delegitimize)ために,スティーブ・バノン(Steve Bannon),ブライトバート・ニュース(Breitbart News),その他のトランプ政権支持者らによって流用されたと述べた。
ハーバード大学の国際関係学教授スティーブン・ウォルトは、ディープ・ステートは存在せず,「超党派の外交政策エリートが存在する限り,それは明白な視界に隠れている」と主張した。
人類学者(Anthropologist) C・オーガスト・エリオット(C. August Elliott)は,トランプ政権への軍の関与を「浅はかな(shallow)国家」に例え,軍は政権を 「潜在的な難破(potential shipwreck)から遠ざける」 よう導くことを余儀なくされたと述べた。
言語学者(Linguist)ジェフリー・ナンバーグ(Geoffrey Nunberg)は,ディープ・ステートは 「その物語がそれらの陰謀物語の複雑な(intricate)文法に合致している」 という点で 「弾力性のあるラベル(elastic label)」であり,「大きな政府」 に関する保守派のレトリックが 「おせっかいな失敗者(meddlesome bunglers)」から「陰謀を企むイデオローグ(conniving ideologues)」へと移行したことに言及した。
‘Fox News’ のパネリスト,チャールズ・クラウトハマー(Charles Krauthammer)は,米国政府は 政府全体の陰謀(government-wide conspiracy)ではなく 官僚機構によって支配されていると主張し,この考えをばかげている(ridiculous) と呼んだ。
Polling / 世論調査
2017年4月に ABCニュース/ワシントン・ポストが 米国人を対象に行った世論調査によると,約半数(48%)が 「政府を秘密裏に操作しようとする軍,諜報機関,政府関係者」と定義されるディープ・ステートが存在すると考えており,一方で全回答者の約3分の1(35%)はそれが偽の陰謀説であると考え,残り(17%)は意見を述べなかった。ディープ・ステートが存在すると信じる人のうち,半数以上(58%)がそれが大きな問題であると答えており,調査対象者の 28% に相当する。
2018年3月にモンマス大学(Monmouth University)が実施した世論調査では,回答者の大半(63%)がディープ・ステートについてよく知らないが,ディープ・ステートが 「国家政策を秘密裏に操作または指揮する,選挙で選出されていない政府および軍関係者の集団」と説明される場合,米国にはディープ・ステートが存在する可能性が高いと大多数が考えていることがわかった。回答者の4分の3(74%)は,この種の集団が連邦政府におそらく(47%),または確実に(27%)存在すると考えている。
2019年10月の ‘The Economist/YouGov’ の世論調査では,回答者にディープ・ステートの定義を与えることなしで,共和党員の70%,無党派層の38%,民主党員の13%が ディープ・ステートが 「トランプを倒そうとしている(trying to overthrow Trump)」 ことに同意した。
2020年12月の ‘National Public Radio/Ipsos’ の世論調査によると,米国人の 39% が トランプ大統領を弱体化させよう(undermine)としているディープ・ステートがあると考えている。
Closely related concepts / 密接に関連する概念
2015年の著書 『国家:過去,現在,未来(The State: Past, Present, Future)』で,学者のボブ・ジェソップ(Bob Jessop)は,3つの概念の類似性についてコメントしている。
1. ディープ・ステート,マイク・ロフグレン(Mike Lofgren)による 2014年の定義を引用している:「政府の要素とトップ・レベルの金融および産業の一部が混在する組織で,正式な政治プロセスを通じて表明される被統治者の同意に関係なく,効果的に統治することができる。」
2. ダーク・ステートとは,政治学者ジェイソン・リンゼイ(Jason Lindsay)の2013年の記事によると,「公衆の目から隠され」,あるいは 「明白な視界に隠れながら」 日常生活ではなく資本のニーズに応える 「役人,民間企業,メディア,シンク・タンク,財団,NGO,利益団体,その他の勢力のネットワーク」のことである。
3. トム・エンゲルハート(Tom Engelhardt)の2014年の著書によると,「秘密のベールの背後で活動する,これまで以上に監視されず、説明責任のない中枢」で構成される米国政府の第4部門。
ディープ・ステートは,作家のマイク・ロフグレン(Mike Lofgren)によって軍産複合体と関連付けられており,彼はこの複合体をディープ・ステートの私的な部分であると特定している。大学教授でジャーナリストのマーク・アンビンダー(Marc Ambinder)は,ディープ・ステートに関する神話(myth)は,ディープ・ステートが 1つの組織として機能するというものだと示唆しているが,実際には 「ディープ・ステートには多数の組織が含まれており,それらは互いに対立している(odds with)ことが多い。」 と述べている。
(転載了)
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トランプは 意に沿わない組織などを “Deep State” と呼び 陰謀団として切り捨てるようです。
【英語の勉強】
"Let me tell you, you take on the intelligence community, they have six ways from Sunday at getting back at you."
「言っておくが,諜報機関と戦えば(take on),彼らは あらゆる方法で(six ways from Sunday)あなたに報復できる」
“six ways from Sunday”:
あらゆる方法で[手を使って],徹底的に,とことん,あちこちに
この慣用句の語源には 諸説あるようですがー
‘GRAMMARIST’ には 次のように示しています。
「“sixways from Sunday” という慣用句は,あらゆる方法で,何かを完璧にやり遂げた,あらゆる代替案を検討した,という意味である。“sixways from Sunday” は,18世紀半ばに “bothways from Sunday” および “twoways from Sunday” というフレーズとして始まったようだ。これらの初期のフレーズは,両目が同時に焦点を合わせず,2つの異なる方向を見ているように見える斜視と呼ばれる目の状態を指していた。そこから,“bothways from Sunday” および “twoways from Sunday” という用語は,何かを斜めに見るという比喩的な意味を獲得した。1800年代半ばまでに,“twoways from Sunday” および “nineways from Sunday” という用語が登場し,意味は 『途方に暮れる』に進化した。このフレーズは,1800年代後半にアメリカで再び進化し,『あらゆる方法』を意味するようになった。このフレーズには今でもさまざまなバリエーションがあり,問題の数字は 6,7,9,1000 など,前置詞は from,to,for などだが,この慣用句で言及される曜日は常に Sunday であり,この慣用句はあらゆる意味で同じ意味を持つ。“six ways from Sunday” における Sunday は,曜日名であるため大文字で表記されることに注意。」
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