トランプの政策,“dumb” というより “stupid”
2011年にオーストラリアで誕生した,学術関係者や専門家の研究をわかりやすく伝えるメディア・ウェブサイト ‘THE CONVERSATION’ の April 9, 2025 付け記事-
“Donald Trump’s policies are more than dumb — they’re stupid, according to stupidity researchers”
「ドナルド・トランプの政策は “dumb” というよりも,“stupid” であると『愚かさ』研究者は言う」
を下記,拙訳・転載します。
カナダ首相を辞任する前,ジャスティン・トルドー(Justin Trudeau)はドナルド・トランプの関税政策を 「非常に愚か(very dumb)」 と評した。これはトランプ政権の多くの政策を正確に表現しているかもしれない - が,より客観的に(objectively)正しい言葉は “stupid” だ。
実際,ケベック州最大の新聞 「ル・ジュルナル・ド・モントリオール(Le Journal de Montréal)」 は2月初旬,トランプの写真に350ポイントの活字で “stupid” という文字を一面に掲載した。これを意見と呼ぶ人もいるかもしれないが,愚かさの科学(the science of stupidity)は,これはむしろ定義に近いことを示唆している。
最近の研究は,意思決定者の計算不足の行動を簡潔に(succinct)表現する言葉を生み出した:“stupidity”(愚行)。
これは単なる非難(name-calling)ではなく,損失を構成する現象であり,明らかに機能不全(dysfunctional)に陥っている,あるいは,いかなる合理的な行動方針とも大きく矛盾し,隠された意図が関与しているのではないかと疑われる一連の行動を特徴としている。
Stupidity that causes everyone to lose
誰もが損失を被る愚行
故イタリアの経済史家カルロ・チポラ(Carlo Cipolla)による,人間の愚かさに関する画期的で取引的な(transactional)見解によれば,相互作用(interactions)は4つのカテゴリーに分類される:
1. すべての人に利益をもたらす知的な相互作用 ― スコットランドの哲学者アダム・スミスが提唱した,専門化と貿易による富の考え方のような,ポジティブ・サム・ゲーム。
2. ゼロ・サム・ゲームで損失をもたらす無力なやりとり。
3. ゼロ・サム・ゲームで利益をもたらす盗賊的なやりとり。
4. 当事者全員に損失をもたらす愚かなやりとり。
自由貿易は,知的なポジティブ・サムの相互作用に基づいている。トランプの取引におけるゼロ・サムの考え方は,勝者がいれば必ず敗者がいるというものである。
彼は,関税が効果を発揮するのは他国が報復措置(retaliate)を取らない場合のみであることを理解していないようだ。しかし,他国は報復措置を取る。そして,世界が今 目撃しているように,結果として生じる貿易戦争は世界経済を壊滅させかねない。
したがって,米国経済の活性化(boosting)を目的としたトランプの保護主義的(protectionist)措置は,経済不況を深刻化させ,長期化させるリスクのある「愚かな(stupid)」相互作用と言えるだろう。
Stupidity as recognizable actions
認識可能な行動としての愚行
現代の研究者たちは,愚行(stupidity)を体現する3つの認識可能な行動群(sets of actions)を特定している:
自信に満ちた無知(confident ignorance)-対処するための必要なスキルを持たないままリスクを負うことを意味する。これは,ダニング=クルーガー効果(the Dunning-Kruger effect)によって説明される - 単に自分の無知を知らないというだけでなく,反証があるにもかかわらず自信過剰であることを意味する。
トランプは自分が知らないことを知っているのかもしれない - だからテスラの創業者イーロン・マスクや 貿易関税の立案者であるピート・ナバロ(Pete Navarro)に多くの仕事を委任したのだが,2人ともそうした認識を持っていないようだ。
うっかりミス(absent-minded failure)とは,人々が正しい行動をとるべきことが分かっていても,愚かな行動をしないよう十分な注意を払っていなかったことを意味する。組織は課題(agendas)を設定するが,問題が組織の目標に深刻な影響を与えるほどに至らなければ,無視する。
一例として,最近のイエメンのフーシ派に対する米国の攻撃が挙げられる。米国当局は,計画に関する情報を安全でない接続やメディア関係者と共有することで,重要な安全保障上の要素を無視した。
統制の欠如とは,独裁的な(autocratic)意思決定者が,リーダーの先入観に基づいた計画を実行する責任を負っている者からの異議を受け入れず,組織に危害を加えることを意味する。
このような独裁的な意思決定者は,自らの提案を裏付けるために偏った情報を選択する可能性がある。このようなリーダーの下で働く人々は,情報を選択的に利用し,選択肢を制限し,先入観に基づいた計画を実行する努力に賛同するか,(自発的か否かに関わらず)組織を去るかのいずれかである。
米国では,司法省の恩赦弁護士(pardon attorney)エリザベス・オイヤーが解雇された。彼女は,2011年に家庭内暴力で有罪判決を受けた俳優メル・ギブソンの銃所持権回復を支持しなかった。ギブソンの恩赦は,大統領との個人的な関係に基づいていたと報じられている。
Types of stupidity
愚行の種類
組織研究者は,意思決定において知的能力を活用することを拒否し,行動の正当性を明確に示さない人々を 「機能的愚行(functional stupidity)」 と呼んでいる。これにより,グループのメンバーは深く考えることなく,日常的な業務を迅速に遂行することができる。
機能不全的な愚行(dysfunctional stupidity)は,組織に裏付けられた反省,推論,そして正当化の欠如である。組織は,新しい意思決定や非定型的な意思決定に直面した際に,知的資源を活用して知識を処理したり,規範や知識の主張に疑問を呈したりすることができない。コミュニケーションを遮断し、批判を抑制し,疑念を封じ込めることで,組織は上司の命令を遵守しようとする。
トランプ政権の一例としては,マスクが率いる政府効率化省(DOGE:the Department of Government Efficiency)が幅広い政府データにアクセスすることを無条件に許可したことが挙げられる。
愚行を維持するには,組織の複数の階層の役人による共同の努力が必要となる場合がある。
個人レベルでは,迅速な対応の必要性から重要な情報を無視することで,愚行が強化される。
結果として,個人による迅速な意思決定や近道は,マイナスの結果をもたらす。例えば,トランプ政権は減税を可能にするために,コスト削減策を迅速に講じる必要があると見せかけ,法的に義務付けられたサービスを削減することなくコスト削減を実現する方法を見つけるという,より論理的なアプローチを無視している。
組織においては,利用可能な情報をすべて処理できない場合,許容できる代替行動が制限されるため,愚行が強化される。データは制限され,管理は強化され,組織の役人は慣れ親しんだ対応策に頼ってしまう。経験の浅い意思決定者は,根拠のない仮定に頼ったり,全く仮定を持たなかったりする。
世界中の金融市場を直撃し,最終的にトランプ氏に政策停止を強いた 「相互(reciprocal)」貿易関税を見れば明らかである。関税は現行の関税率に基づいて算出されたものはなく,他の関税は米国と他国との貿易赤字に基づいて算出された。また,他の関税は,全く根拠がないようだ。
(転載了)
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“dumb” と “stupid” の違いがよく分かりません。
英和辞典に示された,形容詞としての意味は次のとおりです:
“dumb”:〈主に米話〉頭の悪い,ばかな,あほな,間抜けな,常識のない
“stupid”:①〔分別や的確な判断力がなくて〕頭の悪い,頭の鈍い,ばかな,愚かな,愚劣な
② 〈話〉〔行為・話・計画などが〕ばかげた,みっともない,くだらない
感覚的には “dumb” は 「軽いばか」,“stupid” は 「本格的なばか」でいいのでしょうか?
で,トランプは “stupid”?
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