スペイン,ポルトガル,一部フランスで発生した大規模停電の原因は?
4月28日 昼頃,スペイン,ポルトガル,一部フランスで発生した大規模停電は5月1日までにほぼ復旧したようです。
しかし,停電に至った詳しい経緯は明らかになっておらず,専門家の間ではスペイン国内での送電設備のトラブルを主因とする見方がある一方,イベリア半島の系統の脆弱性を指摘する声も上がっています。両国は全電源に占める再生可能エネルギーの割合が多く(60%),送電線事故を端緒として,電源の連鎖脱落を起こした可能性もあるようです。
種々のメディアが伝えていますが,ここでは オーストラリアで誕生した,学術関係者や専門家の研究をわかりやすいニュース・スタイルで伝えるメディア・ウェブサイト ‘THE CONVERSATION’ の May 2, 2025 付け記事―
“Spain-Portugal blackouts: what actually happened, and what can Iberia and Europe learn from it?”
「スペイン・ポルトガル停電:実際何が起こったのか,そしてイベリア半島とヨーロッパは何を学ぶことができるのか?」
を読んでみました。
下記,拙訳・転載します。
********************:
4月28日(月)の朝,スペイン半島の電力システムには何ら異常は見られなかった。需要は例年のこの時期としては平常水準で,利用可能な総発電容量で十分に満たされていた。
前日,スペイン国営電力網(the Spanish National Grid Network:REE,Red Eléctrica Española,商号:Redeia)は,翌日の電力供給を担う施設を決定するため,通例通りの毎日のオークションを開催していた。REEはスペインの電力供給を管理しており,正式には民間企業だが,資本の20%を保有するスペイン政府の支配下にある。REEのウェブサイトには次のように記載されています:
「我々は,必要な場所にいつでも電力が供給されるようにし,再生可能エネルギー(renewable energies)の推進によって持続可能な電力供給を実現する責任を負っている。これらの理由から,Red Eléctricaはスペインの電力システムの基盤であり,同国が現在進めている環境移行(the ecological transition)プロセスの礎石(cornerstone)である。」
12:30: business as usual / 12:30: 通常通り
12時30分時点では,スペインのエネルギー需要の大部分は再生可能エネルギー,特に太陽光発電によって賄われており,全体の半分強を占めていた。この状況は月を通して繰り返されており,スペインでは,適切な条件が整えば,太陽光と風力発電を合わせた発電容量で,日中の最も明るい時間帯の国内電力需要全体を賄うことができる。
スペインの原子力発電所は,計画通り,通常の半分の稼働率で稼働していた。所有者によると,高額な料金設定のため,電力価格が非常に低い時期には採算が取れないからとのことだった。
当時,公式市場における電力価格は約 -1ユーロ/MWhとマイナスだった。この価格で,スペインはモロッコ,ポルトガル,さらにはフランスにも電力を輸出していた。さらに,利用可能なエネルギーの多くは,低地の河川流域から貯水池に水を汲み上げるために使用されていた -これは,大規模にエネルギーを貯蔵する唯一の実用的な方法である。しかし,この容量には限界があり,貯水池がほぼ満杯になることがあるので,無期限に貯蔵し続けることはできない。
12:33: something strange happens / 12:33: 奇妙なことが起こる
12時30分から12時35分までの5分間に,いまだに公式な説明がつかない異常(anomalous)事態が発生した:イベリア半島の電力網が突然停止し(sudden drop),完全な停電(total blackout)が発生した。
最初の数分間は混乱が続き,固定電話と携帯電話のネットワークが途絶えたこと(disruption)で事態はさらに悪化した(aggravated)。他のヨーロッパ諸国も影響を受けているという噂が広まり(私自身も,急いで購入した電池式ラジオでこの噂を聞いた。),サイバー攻撃の可能性がすぐに指摘された。しかし,私はこの仮説(hypothesis)に疑問を抱いた。電力システムを制御するコンピューター・ネットワークは通常,インターネットから切り離されているため,ヨーロッパ全域で電力網が停止すれば,まるでドラマ「ブラック・ミラー(Black Mirror)」のような事態になるからだ。
数分後,私の命綱であるラジオが,停電はイベリア半島に限定されているとアナウンスした。つまり,最も可能性の高い原因(the most likely cause)は技術的な障害だということである。
What went wrong? / 何が起こったのか?
REEからの12時30分から12時35分の間の入手可能なデータを分析すると,いくつかの異常な事象が観察される。
停電の数分前,電力系統に変動(fluctuations)が観測され,それまで非常に低かった風力発電の発電量が急増した(spike)。フランスは,おそらく半島の電力系統に問題があることを察知したため,スペインからの電力輸入を突然停止した。これにより,需給の不均衡が深刻化した。
その時点で,稼働中の数少ない原子力発電所は過負荷信号を受信した。プロトコルに従い,制御棒が挿入され,自動的に停止した。
しかし,最も驚くべきは太陽光発電(solar photovoltaics)の挙動だった。わずか数秒で 18,000MWの発電量が 8,000MWへと急落した。太陽は照っていたので,数千もの太陽光発電施設を停止させる自動指令だったに違いない。
REEの情報筋によると,この問題はスペイン南西部の一部の太陽光発電所の切断(disconnection)によって引き起こされた可能性があるが,通常であれば,電力系統は制御 -需給調整メカニズムを通じてこれを調整できるはずである。需給調整は通常通り主に水力発電によって行われていたが,この電源の調整能力が限界に達した時点があった。
したがって,現在の証拠は,送電網の同期(synchronisation)に問題があることを示唆している。送電網に電力を供給するすべての電源は,同じ周波数,つまり50Hzで同期させる必要がある。この同期を促進するには,安定したベース・ロード電源が要求され,これは通常,原子力発電所やその他の大規模なガス・水力発電所によって供給される。これらの電源は,擾乱(disturbances)に対する自然な緩衝材として機能し,発電量や需要の急激な変化に対して周波数を安定させる役目を果たす。
しかし,太陽光発電などの変動性再生可能エネルギー源には,この能力がない。これらの電源は直流電力を生成し,それを50Hzの交流電力に変換するが,周波数の変動に自動的に反応することはできない。
12時33分時点で,スペインの電力系統は安定した電源基盤がほとんどなく,さらに,稼働していた数少ない原子力発電所も電力系統の電圧変化(surge)を検知して停止させられていた。水力発電所(hydroelectric facilities)は制御能力(regulation capacity)の限界に達しており,ガス火力発電所(gas-fired plants)の稼働状況に関する措置は講じられていなかった。
幸いにも,10時間も経たないうちに電力系統はほぼ回復した。しかしながら,被害は既に発生しており,その影響は今もなお続いている(lingering)。
The diagnosis / 診断
この異常な状況は,不十分な送電網管理,太陽光発電設備の送電網への不適切な接続,そしてその他の未知の障害が重なったことを示している。私の見解では,これらのシステムを管理するコンピュータ・プログラムが,このような状況に適切に対応できていなかった可能性があり,重要な役割を果たした可能性が高いと考えられる。
送電網は互いに分離可能な複数のゾーンに分割されているものの,送電網全体に散在する数千の小規模太陽光発電施設が一斉に遮断されたことで,すべての送電網が影響を受けた。さらに,スペイン本土と欧州の系統の相互接続は弱く,安定したフランスの送電網とのより強固な接続が,スペインの送電網の同期を容易にする(facilitate)だろう。
日照時間が最も多い時間帯(the sunniest hours)の太陽光発電は,あらゆる供給を歪め(distorts)(価格が下落するか),より安定した電源は価格保証がない限り経済的に採算が取れなくなり,生産意欲を削ぐことになる。したがって,問題は再生可能エネルギーと原子力発電のどちらかではなく,安定性を維持しながら,ある瞬間にどれだけの太陽光発電を送電網に供給できるかということである。
より懸念される根本原因は,会長職を 通常,元大臣や高官が務めているREEへの政治の関与である。現会長は,弁護士であり,元住宅大臣でもあるベアトリス・コレドールである。REEは,やや政治的な色合いがある(politicised)「100%再生可能エネルギー(100% renewables)」という目標を掲げている。
4月28日の停電発生から数時間後,スペインのペドロ・サンチェス首相は,停電の原因は「民間事業者(private operators)」にあるのではないかとの疑念を表明し,原子力発電の導入拡大が電力系統の安定化に役立つと主張する人々を無知だと非難した。スペインがEUの承認を得ている(EU-endorsed)現在のエネルギー・ロードマップには,2027年から2035年の間にすべての原子力発電所を段階的に廃止することが含まれている。
停電の2日後,コレドールは初めて公の場で,このような事件は二度と起こさないと発言したが,原因がまだ不明な状況では断言する(assertion)のは難しい。
「100%再生可能エネルギー」といったエネルギー問題に関する決定は,厳密かつ透明性のある(rigour and transparency)分析を行い,国民に情報を提供する独立した技術支援を受けることが不可欠である。合理的な分析は,再生可能エネルギーと原子力を対立させるようなものであってはいけない。また,REEのような技術機関は,政治的権力構造から離れた立場の,できれば適切な技術訓練を受けた人々によって運営されるべきである。欧州連合(EU)もまた,協調的なエネルギー政策と,停電や潜在的な外部からの攻撃に対処できるヨーロッパ規模の電力網を持つべきである。
(転載了)
Author:J. Guillermo Sánchez León
Instituto Universitario de Física Fundamental y Matemáticas (IUFFyM), Universidad de Salamanca
(サラマンカ大学基礎物理学・数学研究所)
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停電発生の端緒となった原因と それが大規模停電に派生した原因があるようで 厳密な解明には時間がかかりそうです。
又,再生可能エネルギーを主とする発電の運用システムに宿題を残しそうです。
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