スペイン大停電の原因 ― 再生可能エネルギー発電移転の危険性
4月末に イベリア半島で発生した大停電の原因に関する政府等公式機関による発表は まだ見当たりませんが,ニュース,政治,文化などをレポートと分析で取り上げる,自由主義者(libertarian)系の代表的な雑誌およびビデオ ウェブサイト ‘reason.com’ が May 13,2025付けで
“Spain's Grid Collapsed in 5 Seconds. The U.S. Could Be Next.”
「スペインの電力網は5秒で崩壊した。次は米国かもしれない。」
のタイトルで 原因に関して書いていました。
下記,拙訳・転載します。
***********************
A massive blackout in Spain shows what happens when energy policy ignores the physics of electricity.
スペインで発生した大規模停電は,エネルギー政策が電気の物理法則を無視した場合に何が起こるかを如実に示している。
スペインとポルトガルで,5,000万人以上が ヨーロッパ近代史最大の停電に見舞われた。数千人の通勤者がスペインの交通機関のコンコースに取り残された。わずか5秒間で,国の電力供給の60%が消失した。これは嵐やサイバー攻撃によるものではなく,単に不適切な政策と,現代工学において最も適切に評価されていない(underappreciated)力,すなわち慣性の力(inertia)によるものだった。
発電所がオフラインになったり,需要が急増したりするとき,電力網には緩衝材がない; 即座に対応しなければ崩壊する(unravels)。そこで慣性(inertia)が関係してくる。石炭火力発電所,ガス火力発電所,原子力発電所では,巨大なタービン・ローターが数千回転で回転している。電力供給が停止してもタービン・ローターは回転を続け,蓄積されたエネルギーを放出することで周波数変動を遅らせ,バックアップが作動するまでの貴重な時間(数秒から1分)を稼ぐ。これはバックアップ電源ではなく,余裕のようなもの(breathing room)である。ペロトン(Peloton)のフライホイールのように,入力が不安定になって(falters)も系統を安定させ続ける。
周波数が極端に低下すると,自動保護機能が作動する。発電所は停止し,変電所は孤立する。送電網は生き残るために自らの支柱(limbs)を切り離す。不均衡が回復の対応を超える速さで拡大すると,崩壊は連鎖的に広がる(cascades)。地域全体が停電に見舞われる(go dark)。電力不足ではなく,時間不足が原因である。たとえ1分遅れたとしても,正しい解決策は解決策にはならない。(Even the right answer, a minute late, is no answer at all.)
まさにそれがスペインで起こったことである。4月28日,太陽光発電は約18GWの電力を発電していた。これは国内需要の半分以上に相当する量である。ところが,当局が「技術的変動(technical fluctuation)」と呼ぶ現象により,1時間以内にその3分の2以上が消失した。送電網の周波数は急激に低下した。フランスは連系線(the intertie)を通じて緊急電力を送ろうとしたが,不均衡(imbalance)により接続が遮断され,わずか5秒でイベリア半島全域の電力網が崩壊した(collapsed)。
専門家や政府規制当局は,太陽光発電だけが今回の失敗の原因かどうか確信を持ってない。しかし,再生可能エネルギー(renewables)の推進に躍起になっていた(hell-bent on)システムが,この失敗を壊滅的なものにした(catastrophic)のは間違いない。これは不運ではなく,誤った政策が顕在化した(manifest)結果だった。私はこれを「送電網の失敗の四騎士(the Four Horsemen of Grid Failure)」 と呼ぶようになった:
1. 補助金による(subsidized)変動性(volatility)。2018年から2024年にかけて,スペインは太陽光発電容量を3倍に増強し,記録的な速さで 20GW以上を増設した。この動き(boom)は,EUグリーン・ディールの資金,国内税額控除(domestic tax credits),手厚い固定価格買い取り制度(generous feed-in tariffs),そして優先アクセスの保証によって推進された。再生可能エネルギーは競争相手ではなく,法的に最優先だった(first in line)。正午には太陽光発電が定期的に(routinely)送電網を圧倒し,他の発電所を停止に(offline)追い込んだ。そして,あの日のように太陽光発電が消え去った時,その下には安定したものは何一つなかった。
2. 信頼性の低下(Penalized reliability)。スペインはわずか2年で,テルエル(Teruel)とコンポスティリャII(Compostilla II)を含む15基の石炭火力発電所(coal plants)を閉鎖した。両発電所は合わせて 2,200MWを超える慣性力に富んだ(inertia-rich)ベースロード電源を供給していた。ガス火力発電は温室効果ガス排出に対する罰金と価格設定規制によって抑制され(throttled),稼働させる価値がほとんどなくなった。かつて電力システムの静かな支え(quiet anchor)であった原子力発電は,2035年までに完全廃止される予定だった。電力網の回復力(resilient)を高めていた発電所は,単に脇に追いやられた(sidelined)だけでなく,経済的に消滅した。
3. バックアップがなおざりにされていた(Neglected backup)。スペインは,送電網規模の(grid-scale)バッテリー,デマンド・レスポンス,新規の揚水発電設備を持たず,安定した供給と完璧な条件に賭けていた。太陽光発電が崩壊し,風力発電も停止した時,代替手段(fallback)はなかった。フランスとの連系線さえも,過負荷に耐え切れず機能不全に陥った。ミスを許容する余地はなかった。
4. 規制当局の傲慢さ――計画者が物理的な計画を立てられるという致命的な思い込み。(Regulatory arrogance—the fatal assumption that planners could schedule physics.)インフラは工学的なタイムラインではなく,イデオロギー的なタイムラインに基づいて段階的に廃止された。運用者よりもモデルが信頼され,警告は無視され,システムは脆弱(brittle)になった。
そして,これらすべてが積み重なって,電力網が抱え得る最も危険なもの:つまり慣性ギャップ(inertia gap)を生み出した。そして,4月のように太陽光発電が大量に(en masse)停止すると,回転するもの(spinning)は何も残らない。かつてこうしたショックを緩和していた機械は,既に停止しているか,脇に追いやられるか,あるいは価格高騰で存在すらしなくなっていた。
全米で,私たちは同じ過ちを繰り返しいてる。テキサス州は,テキサス電力信頼性評議会(ERCOT:the Electric Reliability Council of Texas)を通じて,現在,風力と太陽光発電で35%以上を賄っており,日によっては 80%を超えることもある。しかし,ERCOTは島嶼国の送電網であり,外部からの援助や安定性の借り入れはできない。2023年には,突然の周波数低下によりシステムが緊急事態に陥った。大規模な送電網規模バッテリーが間一髪で作動し,大惨事を回避した(averting)。
しかし,これらのバッテリーは高価な応急処置(band-aids)であり,ベースロード電源ではない。テキサス州が2030年までに化石燃料発電(fossil fuel generation)の廃止を推進する中で,供給と安定性のギャップは拡大する一方である。カリフォルニア州では日中は再生可能エネルギー100%を達成するが,日没時にはその割合が急激に低下する。ガス発電所は,この低下を補うために必死に稼働させなければならない。それが引き起こした慣性をシミュレートするために,カリフォルニア州は現在,石炭と原子力がデフォルトで提供していた慣性を模倣する(mimic)巨大なフライホイールを設置している。
国の他の地域は,少なくとも紙の上では,より均衡が取れているように見える。しかし,13州にまたがる卸売電力の流れを管理する地域送電組織である ‘PJM Interconnection’ は,2030年までに最大58GWの安定発電能力を失う見込みだ。信頼性が危機に瀕しているため,同社は経営を立て直すため,現在 11.8GWの新規ガス火力発電所の建設を急ピッチで進めている。
ミッドコンチネント独立系統運用機関(MISO:The Midcontinent Independent System Operator)もこれに追随している。同社はこの10年内に 25GWの石炭火力発電所を廃止し,10GWの太陽光発電を追加する計画だ。しかし,MISO独自の予測によると,2028年までに安定発電能力が 4.7GW不足するとのことだ。さらに,インディアン・ポイント発電所を閉鎖した後,ニューヨーク州は 2,000MWの不足を補うため,洋上風力発電とカナダの水力発電に賭けている。
安定した電力は,代替となる電力会社が現れるよりも速いペースで廃止されつつある - 待機列,訴訟,サプライチェーンの混乱に巻き込まれているのである。私たちは10年もの間,変動性への補助金支給,信頼性へのペナルティ,そして蓄電池が予定通りに到着することを祈ってきた。一方で,電力網を支えてきた,低速ながらも安定した重量級の機械は解体されつつある。
スペインの停電は,単なる技術的な失敗ではなかった。政治的な失敗だった。「四騎士」が制御不能になった時に何が起こるか,その予兆だった。なぜなら,タービンの回転が止まると,消えるのは電気だけではないからだ。それは,まさに幻想である。
著者:マーク・オエストライヒ(Marc Oestreich)は、非営利コンサルティング会社 ‘Crane + Grey’ の創設パートナーであり,日刊エネルギーニュースレター ‘GridBrief’ の編集者である。
(転載了)
********************
太陽光発電も 風力発電も計画発電には不適であり,電力不足が発生した時 瞬時にバックアップするシステムが必要だということのようです。
政策だからといって,プロの技術者が それを無視するなど 考えにくいのですが ・・・ 。
| 固定リンク | 0
「ニュース」カテゴリの記事
- Trump Says ‘I Love the Inflation’(2026.06.14)
- トランプのNBCとのインタビュー書き起こし(2026.06.12)

コメント